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終わってみれば横綱相撲! 2区からぶっちぎりの独走!
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(2009.11.24) |
2区、3区、男女のエースが決めた!
竹澤健介、小林祐梨子……。
現在、最も勢いがあり、日本の将来を担う長距離ランナーといえば、文句なしに、この2人の名をあげる。おおむね異論はないだろう。
2年まえは5区の竹澤健介がトップに肉薄し、6区のアンカー・赤羽有紀子が、ケニアのヌデレバを競り落として、男女混合駅伝となった最初の大会を制した。
今回の勝負は2区がポイントになった。
オーストラリアに遅れること9秒でタスキをうけた2区の小林祐梨子は、急がず慌てずにじっくりとかまえ、じりじりと差をつめにかかる。相変わらずの大きなストライドでバネの利いた走りは健在であった。
3q手前ではトップをゆくオーストラリアのN・チャップルの背後に迫り、しばらく並走するかと思ったが、ならぶまもなく前に出た。
4q=12:01は区間新記録のペース、だが後半いまひとつ伸びなかったのは気温のせいか。わずか1秒差で自身の区間記録更新をのがしたが、日本チームに勢いをつけるに十分は走りだった。
小林は現在、豊田自動織機に席をおいているが、社内留学制度で岡山大にも通っており、勤務実態がないという理由で実業団登録が認められていない。高校時代から駅伝では無類の強さをほこってきたが、そんな駅伝には岡山大を卒業するまで走れないのだ。走れる駅伝といえば、本大会と横浜国際駅伝だけだった。だが、横浜国際は今年からなくなり、この国際千葉だけになってしまった。
走りたくても走れない……。そんな鬱憤をふきとばすような快走ぶりだった。
2区をおわってライバルの筆頭とみていたケニアは、なんと1分29秒おくれの6位、この時点で日本は断然有利に立った。
小林からタスキをうけた竹澤健介は、勢いそのままに突っ走った。いつもながらの軽やかな走り、見た目にはそれほど速いと思われないが、1q=2:40というからなんとも速い。3q=8:19、5q=14:13……。
3区のオーダーをみわたして10000m=27分台のランナーは竹澤のほかには誰もいない。その竹澤に額面通り走られては、後続との差はどんどんひらく一方になるのは当然だった。
かくして3区をおわったところで日本とケニアとの差は1分48秒とさらにひろがり、この時点で日本ナショナルチームの勝利は、ほぼ動かないものとなったのである。
むしろ2位争いが熾烈でオーストラリア、アメリカ、学生選抜などが絡んで、順位はめまぐるしく変転した。
あの山の神が1区で仕掛けた!
注目の1区は学生選抜の柏原竜二がスタンドのトラック周回から飛び出した。いつもながらの果敢な攻めの姿勢、ぶっちぎりのトープで競技場をとびだしていった。好感のもてるレースぶりである。
柏原を日本の上野裕一郎、オーストラリアのC・モットラム、ケニアのK・カマクヤらが追う展開でレースは幕あけたが、3q手前ではモットラムとカマクヤが柏原をとらえ、日本の上野もふくめてトップ争いははげしくなった。
オーストラリアのC・モットラム、このなかでは一枚抜けた存在である。唯一5000m=12分台の選手である。ヘルシンキ世界陸上の銅メダリスト、それがダテではないことをみせつけてくれた。
4q=10:40秒とハイペースで通過、ケニアのカマクヤをじりじりと引き離したのである。後続では落ちてきたカマクヤを日本の上野裕一郎が追い上げる展開で、中継所にとびこんでいった。
日本はトップのオオストリアに遅れること9秒、1秒差でケニアがつづき、日本とケニアのマッチレースの様相がみえてきたのである。
1区で健闘したのは学生選抜である。柏原はほとんど玉砕的な飛び出しをしておきあんがら、中盤から終盤も粘りぬき、5位ながら、トップには23秒しか遅れをとらなかったのである。
1区の柏原の踏ん張りが2区の小島一恵の快走(3位まであがってくる)を呼び込み、3区の矢澤曜が2位まであがってくる伏線になるのである。
復活! 赤羽有紀子、佐藤敦之
3区でトップに立って、ほぼ2年ぶり制覇が現実のものとなったせいか。4区のランナー・赤羽有紀子も3区までの流れにのってしまった。ゆったりとはいったようにみえたが3q=9:13というから区間新ペース、終始ひとり旅であったが、終わってみれば15:34は区間タイ記録である。
3区になってケニアはL・チュウノレンゲでようやく6位から3位まで順位をあげてきたが、赤羽の快走で日本との差は1分58秒までひらいてしまった。
先の東日本実業団女子駅伝で赤羽の走りは精彩を欠き、近年まれにみるほどキレがなかったが、本大会でみるかぎり、ほぼ復活したといっていいだろう。赤羽の調子がもどれば、12月の全日本でのホクレンには眼離しできなくなる。今年のホクレンは昨年以上に期待できそうな気配である。
学生選抜は3区でも踏ん張った。森唯我は一時、ケニアのチュウノレンゲに2秒差まで迫られるのだが、最後は突き放して、2位をまもった。
駅伝というものは不思議なもので、ひとたび好転の流れにのると、すべてが良循環しはじめる。5区の佐藤敦之も5q=14:17という好ペース、意識して区間新記録をねらっていたのか。このランナーはマラソンはポカが多いが、駅伝ではほとんどとりこぼしというものがない。駅伝では無類の強さを発揮するという奇妙なランナーである。
佐藤も区間賞の走りで、A・キルイのふんばりで2位にあがってきたケニアに2分11秒もの大差をつけてしまったのである。
学生選抜が大健闘!
かくして日本の優勝は動かないものとなり、最終区の興味はもっぱらケニアと学生選抜の2位争いにしぼられた。
2位のケニアはあのC・ヌデレバ、そして3秒差で追う学生選抜は佛教大の吉本ひかりであった。マラソンならともかくスピード勝負の7qあまりの区間なら、日本のどのランナーが出てきても勝負になる。2年まえには同じ区間で赤羽有紀子にあっさりあしらwれてもいる。さらにヌデレバは8日まえに横浜国際マラソンを走っているから、そのつかれもある。上り調子の吉本が果敢に攻めれば、あるいは……のシーンもあるだろうと観ていたが、予想たがわぬ結果になってしまった。
吉本はアップダウンのはげしいコースにもかかわらず、ヌデレバに追いつき、あっさりと突き放し、学生選抜を2位におしあげたのである。日本ナショナルチームの中村友梨香をも上回る区間賞の快走、みごとというほかない。
日本の優勝は若くて勢いのある選手たちが、額面通りの実力を発揮したこと、それに刺激されて佐藤や赤羽というベテランが奮起したことにつきる。
2位のケニアはメンバーの顔ぶれが貧弱だったこと。とくにトップクラスの女子選手たちがこなかったせいであろう。
健闘したのは学生選抜である。2区からは4位以下に落ちたことがない……という堅実ぶり、メンバー落ちとはいえ、ケニアを競り落としたのは賞賛に値する。とくに佛教大勢の活きの良さが目につき、6区の吉本ひかりの区間賞は、その名のとおり、ひときわ光を放っている。
千葉選抜も最終4位に食いこみ、日本勢は3チームとも5位以内にもぐりこんだ。オーダーの顔ぶれからみて当然といえば当然だが、日本の選手たちには自分の現在のありようをチェックするにはいい機会になったことだろう。
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出場チーム&過去の記録 |
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