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最終区で福士が逆転トップ! |
(2009.11.09) |
▽福士加代子がもどってきた
本大会で福士加代子は負けをしらない。いつも圧倒的な強さを発揮する。たとえば17回大会はまさに圧巻であった。
この大会で福士は最長区間(8q)の最終区ではなく4q区間の4区に登場してきた。ワコールは前半で出遅れて、なんと福士に襷がわたったときは1分05秒おくれの5位だった。前をゆくのはラ・ラ・ラ、スズキ、サニックスという実業団チームであった。
トップから1分もおかれてはもはやテレビにも映らないだろう。いくら福士でも4q区間ではむずかしかろうとみていた。
ところがその福士がみるみる背後から追ってきたのである。2,7q付近ではサニックスをとらえて3位にあがると、もう先頭をゆくラ・ラ・ラとスズキを射程距離におさめてしまった。テレビ画面のなかにも福士はとびこんできた。橋をくだってくるチョンマゲヘアーが影絵のように映えていたとをいまもよく覚えている。
まさか……。ズームレンズのいたずらだろうと思っていたが、チョンマゲヘヤーはみるみる追いすがってきたのである。獲物を追う鷹のような鋭い眼光、スピード感にあふれ、力強い走りだった。福士は残り1キロ地点でスズキ、ラ・ラ・ラをまとめて抜き去った。並びかけることもない。適度の間隔をとったまま、相手に一瞥もくれずに、かたわらをすり抜けていったのである。4q区間で区間記録をなんと41秒も更新するという爆走であった。
あれから8年後の今回の福士は最終区に登場である。今年の福士はいまひとつ調子があがっていない。世界陸上への出場を果たしたが、トラックでもいまひとつさえなかった。先の全日本の出場権をかけた実業団女子駅伝西日本大会でも最長区間(10q)の5区に出場したものの、区間2位におわっている。12月の岐阜をまえにして、どこまで調子がもどっているか。本大会は全日本を占うレースというべきであった。
5区を終わってワコールは3位、トップのホクレンから48秒遅れであった。10q区間で48秒、福士ならばやすやすと追いつきひっくりがえせる秒差である。
6年ぶりに福井に登場した福士加代子は、やはり駅伝になると強い。ハナからつっこんでいった。前をゆく佛教大Aの吉本ひかりは1.8qでトップをゆくホクレン関野茜の背後にひたひたと迫り、1,9qでは交わしてトップに立った。その背後に福士がひたひたと接近してくる。
福士は3.7qでホクレンの関野を、3.8qではトップにいた佛教大Aの吉本をならぶまのなく抜き去ってしまったのである。区間の半ばにいたるまでに福士はあっさりと勝負をきめてしまったのである。タイムは24:40……。区間記録に11秒およばなかったが、後半は独走でこの記録ならば、復調なったとみていいだろう。
▽フィレスが鬱憤を晴らす!
本大会の1部は実業団と学生、県選抜が覇を競う。実業団と学生が同じ土俵で競うというめずらしい駅伝である。
とくに今回は学生女子駅伝の覇者・佛教大と前年の覇者・立命館大、学生3位の名城大と学生のトップクラスが顔をそろえ、昨年の実業団3位のホクレン、ワコール、デンソーなど全日本クラスの実業団チームと対決するという構図になった。
佛教大、立命館がどこまで戦えるか。そういういみできわめて興味深い大会となったのである。
学生チームはいずれも複数エントリーで、佛教大と名城大は2チーム、立命館はなんとA、B、Cの3チームの出場にふみきっている。おそらく12月の選抜大会を視野において部員たちをいい意味で競わせようというネライがあるのだろう。
注目の第1区はホクレンのO・フィレスとユニクロのC・ダニエルがひっぱり、立命館Aの小島一恵、ワコールの湯田友美などが追う展開ですすんだが、フィレスが東日本実業団で長い距離を走れなかった鬱憤を晴らすかのようにハイピッチでぶっとばした。
1q=3:19、1〜2q=3:06、2〜3q=3:00というハイペースをきざみ、2qで後続をひきはなし、3qでは独走状態になってしまう。
ダニエルもついてゆけず後退、そのダニエルに立命館Aの小島一恵が必死にくらいついてきたのが印象的だった。
ダニエルのみがまるで別者、後続を41秒もぶっちぎり、あっさりと区間記録を更新してしまった。2位には41秒遅れでユニクロ、3位には立命館A、4位は立命館C、5位には立命館Bとつづき、ワコールは6位、学生チャンプの佛教大Aは17秒おくれの7位であった。
▽佛教大Aが健闘!
1区でトップに立ったホクレンは2区以降もトップをキープした。2区は橋本和美が区間3位の走りで、2位にやってきた立命館Cに52秒と差をひろげた。3位以降は立命館A、ユニクロ、ワコール、佛教大Aがほとんど差なくつづくという展開、後方からはデンソーがP・モジュスの区間新の快走で7位まであがってきた。
3区もホクレンがトップをまもり、45秒遅れで、立命館C、立命館A、ワコール、佛教大Aが差のないところでつづいていた。
4区で動きをみせたのは佛教大Aである。2q地点で立命館C(阿南光)、立命館A(阪田千尋)ワコール(中條宏美)、佛教大A(森知奈美)がダンゴ状態となり2位集団を形成する。大手町ののぼりでワコールの中條がひとたび抜けだして2位にあがったが、3qあたりで、なんと佛教大の森が中條を交わして2位までやってきたのである。
佛教大Aは5区にはいっても上げ潮ムードで石橋麻衣がホクレンの根城早織を猛追、中継所ではわずか10秒差まで追い上げ、トップ争いにもからんできたのである。佛教大Aは4区の森知奈美と5区の石橋麻衣がともに区間賞、全日本の勢いをそのままに活かした格好、大健闘というべきであった。
さらに後ろからはワコールの樋口紀子もじりじりと差をつめ、トップのホクレンとは43秒、2位の佛教大Aとは33秒差にして、エースのアンカー・福士加代子に託したのである。アンカーに福士がいるオーダーでは5区を終わったところでのタイム差がおおきなポイントであったが、樋口はきっちりとその役割を果たしたということになる。
▽前回の覇者・立命館大の意図は?
優勝したワコールはなんといっても福士加代子の爆走がモノをいった。さらに3区以降のランナーが好走した。3区の松本梢が区間賞、4区の中條、5区の樋口は区間2位とアナがなかった。福士の復活で、これならば12月の全日本実業団は期待できそうである。
2位の佛教大Aはさすが学生チャンプだけのことがある。4区の森知奈美と5区の石橋麻衣が区間賞、6区の吉本ひかりの福士ににつづく区間2位である。まさに充実一途で勢いがかんじられた。
3位のホクレンは6区のなかばまでトップをキープしていたが、最後は力尽きてしまった。もうひとりのエース・赤羽有紀子を欠いており、ベストメンバーではないだけに、このチームもまだ登り目はある。全日本実業団では期待できそうである。
昨年の覇者・立命館は選手層の厚さをみせつけるように今回はA、B、Cの3チームをエントリーしてきた。いったいどういう意図があったのだろう。チーム力が分散したせいか、最後は名城大Aにも交わされて6位、7位におちてしまった、陣営としてはそれも織り込みずみのことだったのか。本大会で何かを試したのだとしたら、選抜大会のエントリーに注目してみたい。
12月の選抜では今回の結果をふまえてベストメンバーでのぞんでくると思われるが、ふたたび佛教大Aとのマッチレースになることはまちがいないだろう。
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出場チーム&過去の記録 |
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関 連 サ イ ト |
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