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学生チャンプがまさに王者の走り!
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(2008.11.13) |
なんとも希有な女子駅伝
晩秋の福井市街に全国から女性ランナーがつどい、華やかに駈けぬける。実業団チームも大学生チームも、クラブチームも、地域選抜もなんでもござれ……。みんないっしょに走りましょう……というような、めずらしい女子駅伝である。
ライブ放送ではなくて、深夜の2時過ぎからのビデオ放映、しかも時間短縮された編集画面だから、とてもレース全体を俯瞰するかたちでの観戦はできない。ほとんどが上位3〜5チームぐらいの動静のみしか捕捉できないという、なんとも窮屈な観戦になってしまう。
それにしても……。
立命館大学の強さはきわだっていた。2区でトップに立つと、もはや他のチームの追従をゆるさなかった。ケニアからの助っ人をもつ九電工、スズキもパナソニックもまるで歯がたたなかったのだから……。
勝負は1区で決した!
勝負はすでにして1区で決していた。
C・ムヤンガ(パナソニック)、P・マチャリア(スズキ)という新顔のケニア人ランナーがいながら、1q=3:19という比較的ゆっくりしたはいり、これでは大学生ランナーもついてくる。
中盤からはようやくケニア人2人がひっぱる展開になったが、立命館大Aの小島一恵が積極的にくらいついていた。果敢についていったのが功を奏したというべきか。
残り1qでムヤンガ、マチャリアの競り合って抜けだし、小島がおいかけるという展開、最後はパナソニックのムヤンガが区間を制したが、立命館大Aの小島一恵がわずか14秒おくれの3位につけていた。
優勝候補の一角とみられていた九電工の1区・江崎由佳はトップから1:15、3位の立命館大Aからも1分もおくれて、なんと14位とほとんどブレーキ状態、はやくも圏外に去ってしまう。
学生チームの健闘が目立ち、4位には佛教大Aがつけて、トップから40秒おくれれ、5位には名城大Bがつけて42秒おくれ……。
2区は3qという短い距離だが、ここで明暗がくっきりと分かれた。トップをゆくパナソニックの田鍋舞、2位のスズキ・坂井彩奈は牽制しあったわけでもあるまいが、いまひとつのデキで、後ろからやってくる立命館大Aの駒井直美の姿がぐんぐんとちかずいてくる。
駒井は1年生ランナーだが、スピードにのって追いあげ、残り1qで14秒あった差をつめてきて、田鍋と坂井をいっきにぬいてトップをうばってしまう。小島の勢いをしっかりうけついで一気にトップに立つのである。
九電工は2区を終わっても10位、いぜんとして下位に低迷していた。
畏るべき大学1年生ランナーたち
2区をおわってトップをゆくのは立命館大A、2位は5秒おくれでスズキ、3位は6秒おくれでパナソニックがつけており、3位のパナソニックと4位の名城大Aまでは14秒あまりも差があり、優勝争いは3チームにしぼられたかにみえた。
だが立命館大Aは3区でも強かった。先の全日本大学女子駅伝でも快走した田中華絵が後続との差をぐんぐんとひろげてしまう。
さらに4区の竹中理沙も好調な走りをみせ、4区終了時には2位との差を26秒にしてしまう。追っかけていたはずのパナソニックは名城大Bにもぬかれて3位、トップの立命館Aからなんと55秒もの大差をつけれらてしまうのである。
立命館大と名城大との勝負づけは、すでにして全日本で決している。4区で26秒差の2位まできたが、もはや敵ではない。
かくして4区終了時点で、立命館大Aの初優勝は決定的なものとなってしまったのである。
立命館大Aのオーダーには切れ目というものがなかった。5区の岩川真知子も突っ走った。2位・パナソニックとの差を1分16秒までにひろげると、アンカーは1年生ながら学生女子10000mチャンプの沼田未知にタスキがわたる。
沼田の先の全日本と同じように快走した。軽快なキレのある走りである。髪をゆさゆさとゆれ、ときおり光を撥ねるメガネの奥の眼がするどい光をはなっている。膝にしたがすくっとのびる走りはみごとというほかない。
最終区には九電工のケニア人ランナー・ワルグルやパナソニックの平良茜、スズキの赤川香織、佛教大Aの西原加純など有力ランナーがいたが、終わってみれば沼田が区間賞をもぎとっていた。
時代が変わりつつあるのか?
立命館大Aの勝因はひとくちにいえば選手層の厚さというべきか。区間賞は6区の沼田だけだが、あとの5人のランナーはすべて区間3位までにはいっている。しかも1区の小島一恵のみが3年生で、残りの5人はすべて1年生という布陣である。底知れぬ強さというべきか。学生の優勝は10年ぶりだという。
「勝ちにこだわっています。勝ちつづけるために前だけをみつめて走ります」
立命館大のエース・小島一恵のことばだが、6人のランナーすべてが、そのように肝に銘じているようだった。
2位の九電工は5区の奥永美香と6区のワンゲルのふたりで、ようやく2位までやってきた。その地力はさすがと思わせるが、優勝争いができなかったうえに、学生チームにやぶれるようでは12月の全日本でもあまり期待できないだろう。
パナソニックにしてもスズキにしても同じことがいえるだろう。気が付いてみるとベスト10のなかに学生チームが6つも名をつらねている。もしかしたら女子長距離の勢力地図がかわりつつあるのかもしれない。
それにしても……。
大学生のレベルがあがったのか? それとも実業団の力が落ちているのか? 今回のレースだけでは、どちらともいえないだろうが、総体的に大学女子のレベルが上向きになっているように思える。
かつて、高校生のエリートランナーたちは、こぞって実業団の有力チームにはいったが、昨今では受け皿となるチームがすくなくなっている。そこそこ力のあるランナーでも大学で競技をつづけるという道をえらぶケースもふえている。
大学生でも実業団の選手と互角にわたりあえるランナーがでてこないと、日本女子のレベルの向上はない。立命館大や名城大、あるいは佛教大の活躍は、あるいはそういう時代が到来する予兆なのかもしれない。ぜひ、そうああってほしいものである。
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出場チーム&過去の記録 |
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関 連 サ イ ト |
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