 |
ダニエル爆走! 史上最大の逆転劇!
|
(2008.10.13) |
ああ、早稲田が……
所沢から都下の瑞穂町をへて青梅市にむかう179号線、ぼくたちは青梅街道とよんでいるが、三ヶ島のあたりに早稲田大学競走部の合宿所がある。丘陵地をのぼってゆけば狭山湖に通じるのだが、丘陵の中腹あたりに早稲田大学所沢校地があって、スポーツ施設は周囲に点在している。競走部の選手たちはそこのグランドを本拠にしている。
合宿所のある青梅街道はぼくのランニングコースになっている。
10月13日(月=祝)、朝からは晴れて、爽やかな秋日和である。いつものように合宿所のかたわらを走りながら、今日は出雲で、早稲田がひさしぶりにブレークするだろう……などと思いをはせていた。
大学というよりも日本の長距離を代表する選手になった竹澤健介をはじめ、高原聖典、加藤創大というような実績ある面々にくわえて1年生の八木勇樹もいまやエース格の実績をもっている。
5000mの平均タイムをみても駒澤とほとんど互角の形勢で、この2校がぬけだすかっこうになっている。マッチレースとなれば、竹澤健介という絶対的なエースををもつ早稲田に分があるだろう。駒澤も今年は5000m=13分台の選手を6人そろえてきて、必勝を期している。両雄対決がたのしみだった。
ところが……。
両雄対決などまるで幻におわってしまったのだから、駅伝はわからない。両雄は終始きそいあうことはなかったのである。
早稲田は1区に起用した1年生の八木勇樹がまったくの誤算だった。なんとトップから1分46秒おくれの17位、短い距離をつなぐ駅伝で、これだけおいてゆかれては、1区ですでにして終戦というものである。
最大のみどころは最後にやってきた!
それにしても……。
日本大学のダニエルの快走には眼をみはららされた。5区をおえてトップをゆく駒澤と追う5位・日大の差は1分29秒……。駒澤は宇賀地強、追っかける日大はダニエル……。1分20秒差ならば逆転してみせるとダニエルは豪語していたらしいが、両者の10000mのタイムの比較ではとうていムリな話である。
いくらインカレの10000mと5000mのチャンプといえども1分29秒あれば、もはや安全圏だろうと思っていたのだが、ひさしぶりに最後の最後までテレビから眼はなしできなかった。
ダニエルは山梨学院のコスマスをひきつれるかっこうで猛追、トップをゆく宇賀地はつよい向かい風にあおあられぎみだったが、1q=2:50秒のペースでやってくる。第一工業大の留学生・ジュグナも後ろにいて、2位以降は留学生のあらそいとなっていた。
ダニエルはペースがあがらないで空回りしているような宇賀地との差をみるみるとつめて、7.2qでは15秒差までやってくる。背中の見えるところまでくれば、もはや追う者がつよい。もはや時間の問題であった。
そして……。8.1qでとうとう1分29秒差をつめて、まえをゆく駒澤をとらえて、一気にトップに立つのである。宇賀地はまるでゆめからさめたように。しばらくはダニエルを追っていたが、8.7qでつきはなされてしまう。かくして史上最大の逆転劇が実現したののである。
ダニエルひとりのためにある。今回の出雲はまさにそんな印象であった。
波乱含みのスタート!
レースは序盤から波乱含みであった。
今回は例年になくハナからハイペースのせめぎあいとなった。第一工業大のキプゲノン、広島経済大のガンガという留学生がハイペースでひっぱり、スタートからバラけた展開となった。ふたりについていったのが駒澤の星創太と東洋大の柏原竜二という1年生だった。
1q=2:38、3q=8*19というハイペース、早稲田の八木勇樹ははやくも3qでついてゆけなくなっておくれはじめる。
3qすぎでトップ集団をひっぱったのは東洋の柏原、留学生にひるまずに果敢にせめてゆく姿勢、好感のもてる走りだった。中間点は11:06、区間新のペースである。トップ争いは第一工業大、広島経済大、東洋の3チームにしぼられたが、満を持してしかけてのは広島経済大のガンガであった。
4.2qでガンガはトップにおどりでて、残り3qで追いすがる柏原をふりきってしまうのである。
1区を終わって候補の駒澤は43秒遅れの4位、日大は44秒おくれの6位とまずまずの位置につけたが、早稲田は八木のブレーキで、なんと1分46秒おくれの17位、出雲4連覇がかかっていた東海大も1分27秒おくれの15位としずみ、候補にあげられているチームのなかでもくっきりと明暗がわかれた。
2区でながれをつかんだのは伏兵・東洋大であった。1区の柏原のもたらした好リズムにのって宇野博之が1.4qでトップを奪い、完全に前半の主導権を手中にしてしまうのである。2位いかは日大、山梨、駒澤、第一工業が秒差でつづくという大混戦になったが、東海と早稲田は2区をおわってもそれぞれ14位、17位という下位に低迷していた。
駒澤が思いどおりの展開にもちこんだが……
3区にはいっても東洋大(大西智也)はつよかった。駒澤(深津卓也)、第一工業(中野良平)、山梨(小山大介)らが集団になって追ってきたが、前半はおさえて後半につきはなすという巧さをみせ、トップをまもりぬいた。
早稲田はここで竹澤健介を起用した。竹澤は2.7qまでに6人ぬいて11位まで浮上したが、そのあとはまるで伸びを欠いてしまった。おそらく故障をかかえており、本調子ではなかったのだろう。エースがそのようなありさまでは戦えるわけがない。
3区をおわったところでトップは東洋大、13秒差で第一工業大がゆき、そこから4秒遅れで駒澤がつづくという展開、さらにトップから1分04秒差でダニエルのいる日大がつづいていた。
エース区間のひとつである3区で大西以上にきわだったのは第一工業の中野良平であった。5位でたすきをもらうと駒澤、山梨、日大と競り合い、一気に2位までおいあげてきた。最終的には東洋の大西をうわまわって区間賞をもぎとった。各大学のエースがそろう区間だけに価値ある走りであった。
レースはしだいに駒澤がじりじりとトップに肉薄、まさに注文通りというべきか、おあつらえむきの展開になった。
4区にはいって駒澤の池田宗二は第一工業の谷口亮とともに東洋を追った。そして4.5kqで池田はトップをゆく東洋の千葉優にならびかけ、のこり700mで突き放した。駒澤はまさに予定どおりに、4区でトップをうばったのである。
早稲田の東海もこない。日大との差は1分13秒と微妙だが、もはや駒澤の優勝は動かぬものとおもわれた。さらに5区ではさらに差がひあいて1分29秒……、駒澤はビクトリーロードをひたはしっているようにおもわれた。
だが……。
駒澤中心の展開か? しかし波乱の目も……。
日本大学は4年ぶり4度目の制覇である。勝因はひとえに大砲ダニエルを活かせる展開にもちこんだことによる。5区までのランナー5人が粘りに粘ってダニエルのためにお膳立てをしっかりつくった。2区の谷口恭悠が快走、7位から2位におしあげ、3区以降のメンバーもねばって5区をおわって4位、トップ駒澤大との差をなんとか射程距離ぎりぎりのところで踏ん張った。ダニエルはもちろんだが、そこまでしぶとくねばった5人の走者もお手柄だったといっておこう。
駒澤はあと一歩にせまりながら、またしても最終区で逆転されてしまった。最後の最後で日本大学に寝首をかかれ、今回も優勝はならなかった。駒澤にとっては出雲は鬼門というほかない。しかし今年も戦力はなかなかのもの。全日本では巻き返しがあるだろう。早稲田が疑問だけに今シーズンも全日本、箱根は駒沢中心に展開するとみておこう。
大健闘したのは第一工業である。快挙である。関東いがいの大学で3位にもぐりこんだのは初めてのこと。ひとえに2人の留学生の力がおおきいが、3区で区間賞をもぎとった中野良平のように他の選手も着実に力をつけている。全日本でも期待できそうである。
ほかには東洋大学、最終的には5位まで順位をおとしたが、前半はレースの主導権をにぎり、レースは東洋を中心にしてすすんでいた。距離がながくなれば持ち味がいきるチームだけに全日本、箱根ではこわい存在になりそうだ。
4位の山梨学院もつねに5位以内につけるという安定した戦いぶり、モグスを欠きながらの4位は大健闘したといっていい。チーム力は着実に上昇しているとみた。さらに上積がありそうである。
期待はずれの筆頭はやはり早稲田大学だろう。期待の1年生が結果をのこせず、さらに竹澤健介をはじめ上級生たちもいまひとつ。とくに竹澤の状態がなんとも心配である。1区で出遅れ、2区も伸びず、3区に配したエースの竹澤健介も本調子にはほどとおく、なんと11位に沈んだ。まさか。これほど大くずれするとはおもわなかった。果たして全日本でどこまで建て直すことができるのか。
佐藤悠基の東海は箱根予選会をかちあがってくることはたしかだろうが、今年の戦力ではかなり苦しいだろう
出雲の結果から、学生3大駅伝ののこる2つのゆくえをさぐると、全日本、箱根は駒澤大学、東洋大学、日本大学、山梨学院大学が一歩リードか。早稲田も加わってくるだろうが、とりあえず全日本でどこまでチームをたてなおしてくるか。注目したいとおもう。ほかに全日本では第一工業大学も上位候補にくわえておかねばなるまい。
実力拮抗であるいは全日本も波乱の眼があるやもしれない。
|
|
|
|
|
 |
|
出場チーム&過去の記録 |
|
 |
関 連 サ イ ト |
|
 |
|