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東海大! 余裕の布陣で余裕の3連覇!
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(2008.10.13) |
これぞエースの走り! 伊達秀晃
伊達秀晃は佐藤悠基とともに東海大を支える二本柱である。果たしてこの2枚の切り札をどのように切ってくるのか。久しぶりに大学3駅伝すべてに出場がかなった東海大、今年の意気込みと戦略は、そこから見えてくるだろう。そういう意味で出雲は注目の一戦であった。
伊達秀晃は出雲では無類の強さを誇っている。一昨年はアンカーとして駒澤をねじ伏せ、昨年はエース区間の3区で、逃げまくって独走態勢をつくり、歴史的な圧勝の足がかりをつくった。
昨年と入れ替わったのはわずか一人という東海の出場メンバー、ならば昨年と同じく伊達と佐藤は3区と6区に配するのが正攻法だろう。だが……、伊達は3区ではなく4区に出てきた。
昨年の東海は2区の杉本でトップに立ってしまったが、今回は3区を終わって、トップは駒澤、4秒遅れで順天堂、そこから13秒遅れの3位につけていた。駒澤の4区は深津卓也、順天堂は山田翔太、激しくトップを争う背後から、伊達は一気にやってきた。
深津の1qの入りが2:50だったが、伊達はさらにハイピッチで追い上げてくる。軽快な足どりで2qでは日本体育大学をとらえ、3qではとうとう駒澤をとらえてしまうのである。あとは、ゆるぎのない安定した走りで、差はひらく一方……。
タスキをもらうと、思い切りよくハイピッチで入って、中盤もゆるめずに、最後の1qでギアアップして押しきってしまう。17秒の差を詰めて、逆に2位駒澤に28秒もの差をつけてしまい、流れは一気に東海に傾いた。
今回も伊達の快走によって、3連覇のゴールがくっくりと見えてきたのである。
意地をみせた中央・上野裕一郎
前回は2区で東海がトップに立ってしまったために、ほとんど山場というものがないままに終わったが、今回は短い距離をつないでスピードを競う駅伝らしく、3区までははげしく競り合い、観るレースとしてもなかなか面白かった。
出雲駅伝の歴史をかえりみても初めてという、細かい雨がふりしきるなかでスタートした第1区、最初から飛び出したのは中央大学の上野裕一郎であった。
1q=2:35といえば速い。東洋大の大西智也が追って行こうとしたが、途中でやめてしまった。2q=5:25、3q=8:20……。雨中をものともせずにハイピッチでとばして独走状態、5qのラップは14:04秒、区間新記録のペースであった。
今年の学生長距離界は10年にいちどの黄金期だといわれている。大阪の世界陸上に早稲田の竹澤健介が出場、日本代表クラスといわれる選手が目白押しなのである。竹澤のほかに東海の佐藤悠基、伊達秀晃、順天堂の松岡佑起、日本体育大学の北村聡、さらに加えて中央の上野裕一郎である。上野は今年5000mで自己ベストを10秒以上縮めて、日本歴代5位のタイムをマークしている。
昨年までの上野はあまりピリッとしなかったが、今回は一皮むけたというべきか。並み居るライバルたちに眼にものみせてやらねば……という意地と気迫が感じられた。
上野の爆走の影で、早稲田期待の加藤創大は5q手前で失速、早くも圏外に去ってしまった。
上野は6q手前になって、苦しげに顔がゆがんだが、今年の上野はくずれることはなかった。終わってみれば区間記録を更新、2位の順天堂に13秒差をつけて中継所にとびこんだ。
めまぐるしく順位が変転! 見どころいっぱいだった3区の攻防
1区を終わって、2位は順天堂、3位には米国IVYリーグ、候補の日本体育大は23秒遅れの4位、東海は26秒遅れの5位、駒澤は37秒遅れの9位つけたが、日本大学は52秒遅れの11位と出遅れていた。
2区になって、上がってきたのは日本体育大と駒澤大であった。日本体育大学の1年生・出口和也が中央を追っかけ、駒澤の豊後友章がじりじりと追ってくる。
出口は5q手前で2位にあがり、トップを行く中央の梁瀬峰史の背後にひたひたと迫り、残り900mでトップを奪ってしまうのである。
2区を終わって、上位は大混戦の様相となり、トップの日本体育大から22秒のあいだに中央大、米国IVY、東海大、駒澤大の4チームが入り、日大も36秒差、東洋大が44秒差でつづいていた。
3区もさらにめまぐるしく順位が変動した。日本体育大(野口拓也)と中央大(徳地悠一)とトップを併走、第一工業大のG・グキ、駒澤の宇賀地強、東海の前川雄がつづくという展開、後方からは10位でタスキをもらった松岡佑起、15位から早稲田の竹澤健介が追い上げを開始する。
3qでトップ争いはさらに熾烈となり、3.8qで駒澤の宇賀地がトップを奪ってしまう。順天堂の松岡の追い上げも急を告げ、5qすぎでは5位まで押し上げてきて、7.4q地点では東海大の前川をかわして8人抜き、なんと4秒差の2位まで追ってきたのである。
松岡は8月のユニバーシアード(バンコク)で、5000メートルで銀メダルを獲得、いかにも今年の成長をうかがわせる走りで、みごとこのエース区間で区間1位をもぎとった。1区の上野のつづいて、いかにも学生四天王にふさわしい走りをみせてくれた。期待の竹澤は3位……に終わった。いまひとつのびなかったのはチームとして流れが全般的に悪かったせいだろう。
駅伝レースの面白さという点では、やはり3区の攻防がもっとも見ごたえがあった。
楽々と逃げる佐藤悠基の後方で、2位をめぐって激しいバトル
かくして冒頭でのべたように4区で東海大がトップに立つのだが予定通りというべきか。5区の皆倉一馬も区間1位、そしてアンカーの佐藤悠基は28秒の貯金をもってスタート、盤石の態勢で危なげなくやすやすと逃げ切った。
今年も佐藤悠基は華麗なフォームがひときわ水際立っていた。追ってくると思われた日本大学のG・ダニエルはタスキをもらった時点で、すでに1分25秒ものハンディがあり、勝負はすでに決していた。
今回も佐藤悠基は楽々と逃げ、6人でつないだタスキを悠々とゴールまで運び、「どうだ3連覇だぞ」といわんばかりに指3本を立て、あふれるような笑顔でテープを切ったのである。
しかし最終区の2位争いは最後までもつれた。5位でタスキを受けた日大のダニエルはすぐに前を行く順天堂をとらえ、出雲大社布巾では日体大をとらえてしまう。4,8qでは併走する日大のダニエルと日本体育大の北村聡が2位の駒澤(安西秀幸)をとらえてしまうのである。
2位争いの結末はやはり地力にまさる日大のダニエルが制し、昨年とおなじく最後は2位まで押し上げてきた。
駒澤は今年も2位をまもることができずに最終区で4位に甘んじる結果になった。
危険な賭けに成功! ひとかわ剥けた東海大学
東海大の勝因はやはり学生界を代表する大砲2枚に加え、分厚い選手層がモノをいったとみる。昨年2連覇を達成したメンバーのうち、入れ替わったのはわずか一人だけなのである。
とくに1区〜3区までのランナーがうまくつないだのが最大の勝因だろう。大駒をつかわないで3区を終わってトップから17秒差という絶好の位置を確保していた。それが4区での逆転をもたらしたのである。今回の戦いぶりをみるかぎり、殊勲者は伊達、佐藤という2枚の大砲よりも、1区から3区のランナー、藤原昌隆、荒川丈弘、前川雄の3人をあへねばなるまい。
3区で使うとみられていた伊達を4区に使ったのは、当人の体調がかんばしくなかったからだというのだが、本当にそうなのだろうか。
うがったみかたをすれば、伊達をあえて4区に配して、今年の戦力を占ったのではないかと思われる。
距離の短い駅伝は前半にミスるともはや挽回が不可能になる。東海はそれを承知のうえであえて後半にウエイトを置く布陣でのぞんできた。全日本、箱根をにらんでのひとつの試みだったとすれば、そこに東海の今年にかけるなみなみならぬ意欲がほのみえる。
危険な賭けというべきだが、みごとに試みは成功したとみる。東海としてはこれで自信をもって全日本、箱根とステップを踏んでゆくだろう。
出雲だけで判断するのは早計だが、今シーズンの東海大は、昨年までとはひと味ちがうような気がする。
上位5校ぼ実力拮抗も東海が一歩リードか
2位の日大は1区での出遅れが敗因だろう。そえでも中盤に態勢をととのえて、アンカーのダニエルで2位まで追い上げてきた。その地力にはやはり侮れないものがある。
3位の日体大も確実に力がついている。1年生の出口和也が快走して区間賞をもぎとった。大健闘というべきである。今シーズンも安定勢力である。
駒澤大は最後は4位に終わったが、3区ではトップを奪いなど、今シーズンも候補の一角を占めるだろう。絶対的なエースはいないが、総合力で勝負するチームカラーは健在である。決め手がないゆえに、最終区で順位を落としてのはいたしかたがない。
順天堂大も3区までは上位争いを演じていた。今年は5位に終わったが、昨年よりも順調な経過をたどっている。全日本での戦いぶりをとっくりと見定めたい。
いまひとつだったのは中央大である。せっかく1区の上野裕一郎でトップを奪いながら、3区以降で大きく失速してしまった。東洋大にもかわされるというテイタラクぶり、かなり重症というべきか、それとも今年の実力はこんなものなのか。
竹澤健介のいる早稲田大は一部では優勝候補の呼び声もあったが、あるいは期待がすぎたのだろうか。5年ぶりに出雲路にもどってきて注目したが、久しぶりではやはり荷が重かったのかもしれない
。竹澤につづく期待の星といわれている加藤創大、1区に起用されたが区間15位という大ブレーキ、これではチーム全体の勢いはつくはずがない。駅伝の怖さをまざまざとみる思いがした。
ざっと見渡して、やはり上位5校、東海、日大、日本体育大、駒澤大、順天堂大が5強を形成、なかでも東海大は眼放しできない存在だといえる。
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出場チーム&過去の記録 |
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関 連 サ イ ト |
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