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秋晴れの空の下、花咲く公園で火花散る大激戦!
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(2007.10.22) |
新春の箱根路に花咲こうとする蕾たちの競演!
立川の昭和記念公園は、いままさにコスモスまつりのまったさなかである。ピンクに彩られたセンセーション、レッドイリュージョン、そして現在はイエローガーデン、イエローキャンパスの季節を迎えている。
澄んだ秋空のもと、広大な秋桜畑がいかにも華やかに映え、歩き疲れたぼくたちの眼を潤してくれる。
10月20日はさらにもうひとつ……。およそ500を数える若いランナーたちが爽やかな風のように園内を駈け抜けていった。コスモスが秋の花ならば、かれらは新春の箱根路で花咲こうとする蕾たちというべきか。
予選会は追っかけ泣かせのレースである。今年もコースが変わって観戦ポイントがいまひとつ定まらないのである。
駐屯地のスタート地点や立川市内で前半をキャッチしてから、公園内に入って2ヶ所ぐらいを想定したのだが、移動に時間がかかりすぎて、モタモタしていれば公園にはいるころにはもうすでにレースが終わっているという事態にもなりかねない。
やむなく今回はスタート地点と市内をあきらめて、西立川口から入って、14qすぎと18qすぎで待ち受けることにきめた。ならば、それほど移動する必要もない。2周目でトップ集団を見送ってゴールにゆけばいいのである。
8時30分に立川駐屯地を出発はテレビで観たが、選手たちはひろい滑走路に咲いた花のようで圧巻だった。
今回は各校戦力からみて、昨年の早稲田大のように抜けた存在はみあたらず、大激戦の様相であった。10000mの力からみれば、まず城西大と大東文化大、あとは山梨学院大、中央学院大、拓殖大、インカレポイントをたくさん持っている国士舘大、法政大、さらには帝京大、神奈川大、明治大、東京農大、國學院大、上武大、青山学院大……と、ざっと見渡しただけでも14校の名があがる。
実力はほとんど紙一重、当日の調子によって、どのように転ぶか分からない。近年まれにみる実力伯仲のレースになるだろうとみていたが、事実、予想を上回る乱戦もようになった。
圧巻! M・モグスが意地の走りをみせた!
おそらく箱根本戦でも台風の目になるだろう山梨のM・モグスはどれほどのタイムでやってくるだろうか。10qの通過を28〜29分とみれば9時10分から11分ぐらいだろうと思っていたが実際には少し早かったように思う。
先導者の後ろから音もなくあられて、あっという間に眼のまえを遠ざかっていった。速い……の一言である。1周目はカメラのピントが合わないままに見送り、2周目は目の前で最後尾の周回遅れの選手を何人も抜いていった。
スタートと同時に飛び出して、1q=2:43、5qが13:56だというから、とてつもなく速いというべきだろう。10qの通過が27:57秒だから、ほとんどペースが落ちていないのだる。
モグスに続いたのが中央学院の木原真佐人、サングラスをかけた風貌はなかなか精悍であった。ぼくの眼の前を通りかかったときにはすでに1分ちかく差がついていた。
第3集団は大東文化大の佐々木悟がひっぱっていたが、5qでトップとは50秒差、ぼくの目の前ではすでに2分以上の差がついていた。
その後も1位と2位は不動、佐々木悟のひっぱる3位集団は少しづつばらけはじめる。モグスの15qの通過は42:31、2位の木原との差は1:18、3位集団との差は2:20とひろがってゆくのである。
モグスは57分こそ切れなかったが57:01で歴代最高タイムをマーク、2位で日本人1位の木原真佐人も58:40で日本人として歴代最高タイムだから、本来の力を出し切った。
ランナーの吐息と足音を間近に感じながら……
荒い吐息、いがいに音高い足音……。秋晴れの陽射しで、2周目になると選手たちの顔や首筋にかけて汗できらきら光っていた。「がんばれッ」「ファイト、ファイト」と短いい声が飛び交うなか、選手たちは黙々と駈けぬけていった。駅伝の予選とはいえ、きわめて孤独なタイムレース、自分とどのように折り合いをつけるかが勝敗の分かれ目になるから、いかにも過酷だなあ……と思った。
前夜、Sさんから電話があった。Sさんは法政OBで箱根も走ったこともあり、ぼくのランニングの師匠である。
今年のオレンジエキスプレスはかなりピンチである。Sさんはそのように言うのであった。資料だけで判断するかぎりぼくも、今年の法政はかなりヤバイとみていた。
ぼくは法政のOBでもない。だが、Sさんのためいきが耳の奥にのこっていたせいだろう。法政のランナーがしきりに気になっていた。
「がんばれ法政……」
眼はひとりでオレンジのパンツと黒字にオレンジのHマークのあるユニフォームを探し、通りかかると思わず声が出ていた。
となりにいた老夫婦は「農大ガンバレ!」としきりに声をかけ、通過人員を細かくしていた。
法政のランナーは第3集団にも2人つけていた。法政も東京農大も印象としては、思ったよりははるかに善戦しているようにみえた。
開けてビックリのシステムにやきもき!
全員集合! ヨーイドンのタイムレースだから、観戦者には順位の変動は何ひとつみえてこない。すべてはコンピュータで集計された5キロごとの計時によるほかはないというのがこの予選会である。
前半は城西大とモグスの山梨学院大を中心にレースはまわっていたようである。10q地点で各校10人が通過した順序は次の通りであった。
城西大、大東文化大、神奈川大学、東京農業大学、山梨学院大学、中央学院大学。帝京大学、国士舘大学、上武大学、青山学院大学、明治大学、平成国際大学、法政大学
要するに、拓殖大学をのぞいて候補にあがった大学がすべて名を連ねている。
15q地点でもほぼ同じ体勢だが、若干変動があるものの、予想通り大混戦である。10人通過の順位は次の通りである。
大東文化大、城西大、中央学院大学、神奈川大学、帝京大学、東京農業大学、青山学院大学、拓殖大学、山梨学院大学、国士舘大学、上武大学、平成国際大学、明治大学、法政大学。
10q地点も15q地点でもタイムでは城西大がトップ、2位は山梨学院大学、3位は東京農業大学という形勢であった。
2周目の200位を見送ってゴールのある広場に歩いてゆくと、上位をめざす各校のランナー10人はほとんどゴールしていた。ワイドスクリーンに映し出された各校上位10人がゴールした順番は次の通りであった。
1中央学院大学 2神奈川大学 3帝京大学 4城西大学 5大東文化大学 6青山学院大学 7東京農業大学 8国士舘大学 9拓殖大学 10山梨学院大学 11上武大学 12明治大学 13平成国際大学 14法政大学
なんと法政は14位ではないか。あまりにも順位が悪すぎる。やはり……。かすかに不安の影がよぎった。
法政大が笑い、青山学院大が泣いた!
最後のランナーがゴールしたのは9時55分ごろだったろうか。モグスがゴールしてからおよそ28分にである。ワイドスクリーンにゴールの瞬間が映し出されると、結果発表をみるために集まってきて折り重なる人の波がゆれて拍手がまきあがった。
結果発表はいつもながら緊張感がただよう。確実視されるチームはもちろん、ボーダー付近にさまようチームならなおさらである。
1位は中央学院大、2位は帝京大学、3位は城西大学……と、順次に読みあげられてゆく。4位は山梨学院大学、5位は大東文化大学、6位は神奈川大学……。ここまではレース順位通りに確定である。
残りの3校は関東インカレ・ポイントが加味され、毎年のように悲喜こもごものシーンがやってくる。昨年、一昨年は国士舘が笑い、拓殖が泣きをみた。果たして今年はどうなのか。そして法政の命運はいかに……。
7位は国士舘大学、8位は東京農業大学、そして最後の一つは……。ほとんどダメだろうと思っていた法政大学……であった。
法政はなんと3分20秒ものインカレポイントをもっていて、それが最後にモノをいうかたちになった。逆に泣きを見たのは32年ぶり出場がかかっていた青山学院大学であった。レースタイムでは法政を上回りながら、インカレポイントが1分35秒しかないために19秒差で泣きをる結果になってしまったのである。
かくして帝京大が3年ぶり、東京農業大学が4年ぶりに復活、連続出場をめざした明治大学と前評判が高かった拓殖大学は最後の最後で落選となった。
本戦でも上位に絡めるか! 中央学院大、城西大
ひときわ歓声と拍手がまきおこったのは、東京農業大学がコールされたときではなかったか。
東京農大の名物といえば、大根をもって勇壮に踊るあの「大根踊り」(正式名称は「青山ほとり」)である。今シーズンは久しぶりに復活、2日の午前7時あたりから大手町に「青山ほとり」の歌声がひびきわたることだろう。
1位の中央学院大学は個人成績で木原真佐人が2位、4位に篠藤淳が4位にはいり、あとのメンバーもすべて100位以内、終わってみればきわめて安定した戦いぶりであった。
2位の帝京大は馬場圭太が個人6位と大健闘、あとのメンバーも7人までが100位以内につけていた。同じく2位の城西大はもともと力上位のチームだけに、それほどの出来ではないが、9人までが100位以内につけているのをみると総合力はなかなかのものである。4位の山梨学院大はスーパーエースのモグスにひっぱられてのもの、5位の大東文化大は前評判が高かっただけに、この程度では不満ののこる結果というべきか。
6位の神奈川大学は今年も抜けた選手はいない。だが100位までに11人がもぐりこんでいる。いかにも総合力で勝負するこのチームらしい。
7位の国士舘大、今年もインカレポイント3分25秒も持っていたが、後ろ指をさされる展開にならなかった。それなりに力をつけているようだ。
8位の東京農業大は外丸和輝(5位)、清水和朗(9位)という2人の2年生が牽引車となった。
9位の法政大はつねにボーダーをさまよう展開だったが、最後の最後にきわどく綱渡りを終えたようである。高嶺、姜山という3年生2人、そして柳沼も20位以内という健闘ぶりが生きた。
惜しかったのはやはり青山学院大である。8人までが100位以内につけながら、あと一歩およばなかったのは不運というほかない。
期待はずれをあげれば拓殖大学であろうか。全日本大学駅伝の予選を3位で通過した実力を発揮することなく沈んでしまった。
予選会通過した9チームのうち、中央学院大、城西大あたりは、うまくゆけば本戦でも上位に絡み、シード権争いを演じる可能性があるとみた。
予選会はもうひとつの箱根!
予選会の今朝も、本戦が行われる1月2日の大手町と同じく、午前8時前ごろから立川駅周辺、昭和記念公園にかかけては、人の波で泡立ち、実に賑やかであった。
ゴール地点の広場のあちこちに各大学の大きな人の輪があり、旗や幟が林立していた。
各チームの所属する大学関係者はもちろん選手の家族や親戚縁者、報道関係者、そして、老若の熱心な箱根駅伝ファンがつめかける。予選会とはいえ、あの盛り上がりかたは尋常でない。もうひとつの箱根駅伝がそこにあるというような熱気をはらんでいた。
事実、予選会で敗れたチームの選手にとっては10月20日に箱根は終わってしまう。かれらにとっては、予選会こそが、箱根駅伝そのものなのだということをあらためて思い知らされた。
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