第17回 東日本実業団対抗女子駅伝競走大会]



三井住友海上が8年連続8回目の制覇!


 「全日本実業団女子駅伝」の関東地区予選にあたる「第18回東日本実業団対抗女子駅駅伝競走大会」は、11月3日(土=祝)、さいたま市でおこなわれ、三井住友海上が2時間13分098秒で優勝、8年連続8回目の制覇となりました。2位は第一生命、3位はホクレン。4位には大健闘のアルゼがとびこみ、昨年は全日本を制覇た資生堂は5位にとどまりました。6位から11位までは、しまむら、日本ケミコン、パナソニック、積水化学、ヤマダ電機、日立……となり、この11チームが全日本大会の出場権を獲得しました。
 三井住友海上は1区の大平美樹が10秒差の4位につけ、2区を終わってトップの第一生命から遅れること16秒の2位、3区のエース・渋井陽子の快走で逆転トップを奪い、あとは独走態勢のもちこみ、そのままゴールしました。2位は3つの区間賞をとった第一生命、3位には3区のO・フィレスに11人抜きで勢いづいたホクレンがとびこみました。



◇ 日時 11月03日(土=祝)午前8時00分スタート
コース:埼玉県庁〜鴻巣〜上尾競技場  6区間=42.195km
天候:くもり  気温12.9度 湿度80%  風:なし
三井住友海上(大平美樹、山下郁代、渋井陽子、高吉理恵、、大崎千聖、岩元千明)


総合力と安定感に勝る! 三井住友が圧勝!
(2008.11.03)
今シーズンの渋井は本気モード!

 渋井陽子がやってきたとき、「おやッ」と思った。ほんとうにシブなのか? 思わず眼をみはった。顔つきがいままでのイメージとまったくちがうのである。……
 浦和の県庁前で1区のランナーを見送って、ただちに高崎線で桶川に移動、駅前から旧中山道まで走った。進行方向とは逆に400mほど進んで、人影まばらな観戦ポイントに落ち着いたとき、遠く先導車がみえた。
 トップでやってきたのが三井住友海上の渋井陽子だったのである。2位の第一生命・尾崎好美とはかなりの差がついていたが、ぼくがJRで移動している間に、レースの流れは大きく動いていた。しかも、この3区の中盤で勝敗の流れがほぼ固まりかけていたのである。
 渋井がタスキをもらった第2中継点でトップをゆくのは第一生命で2位の三井住友海上との差は16秒であった。
 渋井にしてはゆったりとしたはいりだった。後ろからアルゼのモンビが迫ってくるが、まったくあわてない。モンビを引き連れて第一生命の尾崎好美を追い上げにかかる。じわりじわりとペースをあげてゆく。3.5qでモンビがついてゆけなくなった遅れ始める。トップとの差はどんどんと詰まり、4,5qの上尾駅付近で尾崎をとらえて、待望のトップに躍り出るのである。5q=15:36は区間新のペース。尾崎も離されまいとくらいついていたが、6.4qで渋井が2段スパートすると、みるみる置いてゆかれた。三井住友の8年連続8回目の制覇は、この瞬間に決したのである。
 渋井がぼくの目の前にあらわれたとき、つまり残り2qの地点だが、2位との差はすでにして200mぐらいついていた。
 それにしても、今年の渋井は眼の形相がちがう。顔つきは精悍そのもの、躰もきっちりしぼりこんでいるようで、今年に賭ける意気込みのほどを感じさせる走りであった。わずか5秒差で区間賞こそフィレスにもっていかれたが、価値ある区間新記録だといえる。
 北京オリンピックを目前にして、いよいよ本気モードに突入か。東京国際マラソンではかなり期待できそうである。(写真は渋井湯子)


前半は第一生命が主導権をにぎる!

 午前8時の浦和の埼玉県庁前は曇天でいくらか湿気が高め、気温はこの季節として寒くも暑くもない。浦和駅から県庁前まで駆け足でいったが、汗ばむこともなく、ランナーにとっても絶好のコンディションだったのではあるまいか。
 駅伝の観戦は実にあっけない。8時にスタートした選手たちは、ひとかたまりになってぼくの目の前を駈けぬけていった。
 三井住友海上の大平美樹がいた。資生堂の弘山晴美がいた。アルゼの那須川瑞穂がいた。第一生命の勝又美咲がいた。見慣れているせいか。彼女たちはそれぞれファインダーのなかで自己主張していた。
 2qの通過が6:34秒というから、ゆったりとしたペースである。選手たちはいぜんとしてひとかたまりで進む。集団をひっぱるのは三井海上の大平と日立の野口美穂、動きが出てきたのは4qすぎだった。積水化学(田中真知)とファイテン(高橋知世)が集団からこぼれおちてゆき、なんとここでパナソニックの大谷木霞が苦しげにあえぎはじめるのである。
 そして……。4.5qあたりで第一生命の勝又美咲がペースアップ、完全にレースの主導権をにぎってしまった。
 タイム的には5qが16分そこそこだから、それほど速くないが、勝又がぐんぐんと後続を引き離す。追ってくるのはアルゼの那須川、日本ケミコンの正井裕子……。
 アルゼ、日本ケミコンは好発進、三井住友の大平も10秒遅れの4位なら、まずまずというところ。資生堂も15秒遅れならますまず……だろう。しかしホクレンは31秒遅れの10位、パナソニックの55秒遅れの15位は誤算だったろう。


みどころあった3区の攻防 渋井VS.フィレス

 2区も第一生命が強かった。森春菜が快走して、ライバル。三井住友との差を逆に5秒もひろげてしまった。ホクレン、パナソニックが13〜14位と低迷しているのと裏腹に、アルゼと日本ケミコンはきわめて3位、4位と好位置につけていた。スターツもこの時点では6位と健闘していた。
 豊田自動織機も49秒遅れの7位ならばまだまだ上位を狙える位置にあった。それにトップかた最下位のファイテンまでの秒差は1分58秒だから、勝負のゆくえはエース区間の3区にゆだねらるかたちとなった。
 そして3区……。冒頭に書いたように三井住友の渋井陽子が力でねじ伏せてしまうのだが、後続もめまぐるしく順位が変動していた。
 1区、2区で出遅れて15位に甘んじていたホクレンのO・フィレスが猛然と追い上げる。何せ陸上8位のスピードがある。1q=2:50というハイペースで入り、1qすぎてすでに8人抜き、おわってみれば11人抜きで一気に3位まで浮上してくるのである。
 ぼくが待ち受けていた8q地点で、フィレスはアルゼのモンビに後ろにいたが、まさか10人抜きをしていたなど、そのときは夢にも思わなかった。
 さらにパナソニックのキムエイも8人抜きで一気に5位まで順位をあげてくる。地力のあるチームがやっと眼を覚ましたというわけだが、すでにして遅し……の観あり。三井住友海上にはすでに1分30秒以上もちぎられていた。
 波乱は豊田自動織機であった。2区ではまだまだ上位をのぞめる位置につけながら、3区で一気に15位まで順位を落としてしまうのである。
 3区のランナー・脇田茜といえば、大阪の世界陸上代表なのだが、膝を痛めていたらしく、2q付近から足を引きずっての走行、ぼくの眼のまえに通りかかったときも痛々しくて見てはいられなかった。
 豊田自動織機のエントリーをみると補欠は1人しかいない。ぎりぎりのメンバーでの出場であることがわかる。
 陣営は脇田の足に不安があることを知っていて走らせたのか。テレビで見ていると走り始めてすぐに足を引きずっている。脇田はなんとか完走したが、プライドはズタズタになっただろう。将来ある選手である。走れないのなら途中でやめさせても良かったのではと思うのだが……。(写真は上段:アルゼのモンビを追うホクレンのフィレス中段:しまむらの大島めぐみ。下段:豊田自動織機の脇田茜)


復活! 赤羽有紀子が区間新で5区を制す

 4区以降は三井住友の一人旅である。4区(最短の4q)は新人・高吉理恵がなんと区間賞で独走態勢をきずいてしまう。5区の最中区間は土佐礼子ではなく大崎千聖、いまや三井海上の若きエースになるつつある大崎も気持ちよく走っていた。
 5区の残り300m地点で待機していたぼくの前までやってきた大崎、なにやら手を挙げたかと思うと、タスキを肩からはずして手にもった。そこから歯をくいしばってラストスパートにはいった。
 大崎よりももっと気持ちさそうに走っていたのはホクレンの赤羽有紀子だろうか。微笑を浮かべながら、ぼくの前をあっという間にすり抜けていった。後で知るところでは赤羽は区間新記録だったというから、ナットクである。それにしても赤羽の復活はみごとというほかない。
 34分37秒というのは98年に高橋尚子がマークした34分51秒の従来の記録をなんと14秒更新しているのである。赤羽は昨年の8月に長女を出産しながら、その年の秋、秋田国体成年女子5000mで優勝するなど、ますますランナーとして充実しつつある。きっとよいパートナーに恵まれたのだろう。
 アンカーの待つ中継点まで300m地点といえば、ランナーたちはほとんどラストの追い上げにはいっている。誰もかれもが荒い吐息をもらしながら、懸命に駈けてゆく。苦しげにあえぐさま、見ていて、これぞ駅伝という臨場感、不思議な感動を覚えた。
 中盤以降の興味はもっぱら全日本出場権をめぐる争いになったが、5区を終わって8位のパナソニックまでが確定、残り3つの椅子をヤマダ電機、積水化学、日立、アコムで争うかたちになった。9位から12位まではわずか39秒であった。
 とくに11位の日立と12位のアコムはわずか2秒差であったが、最後は日立が押しきって最後の椅子を確保した。(写真 上段:大崎千聖  下段:赤羽有紀子)


関東の3強は本戦でも主力を形勢する!

 三井住友海上の勝因は分厚い戦力と、絶対的な安定感である。区間賞はわずか2つだが、全員がそれにひとしい成績をマークしている。今回はとくに駅伝になったらめっぽう強い渋井陽子の意地をみた。
 2位のホクレンは3区でフィレス、5区では赤羽有紀子……と、エース区間2つで区間賞を獲っているからあなどれないものがある。もし1区と2区でうまく発進していたら、三井住友ときわどい勝負になっていただろう。本戦でも期待できそうなチームである。
 3位の第一生命も充実している。3区間で区間賞をとるなど、上位2チームとそれほど大きな差はない。
 4位のアルゼは大健闘というべきか。2年続けて12位に泣いた悔しさを3度目で晴らしたかたちである。前半の流れにうまくのって最後まで大崩がなかった。すでにして安定性勢力になりつつある。
 期待はずれはやはり資生堂か。昨年チームだが、主力選手の一部がセカンドウインドウに行ってしまい、選手層が薄くなったことがやはり大きかったのかもしれない。
 豊田自動織機はやはり3区の脇田がすべてだった。
 さて……。最後に今大会の結果から、少し早いが全日本を占っておこう。昨年、三井住友は本戦で思わぬ不覚をとったが、今年の戦いぶりをみるかぎり、ほとんど死角はみあたらない。全日本でも候補の筆頭にあげなくてはなるまい。ホクレン、第一生命も今シーズンは上位争いは必至で、きわどい勝負にもちこむケースもあるやもしれない。

 同日、関西では淡路島駅伝が行われ、九州h予選も含めて、全日本出場チームがすべてきまった。関東以外は次の通りである。
 北陸…… 北国銀行
 関西…… 京セラ、ノーリツ、四国電力、ワコール
 中部…… スズキ、デンソー、ユタカ技研、小島プレス
 中国…… 天満屋、ユニクロ、デオデオ
 九州…… 九電工、一八銀行、OKI
 



出場チーム&過去の記録

出場チーム
三井住友海上陸上競技部

資生堂ランニングクラブ
パナソニック女子陸上競技部
第一生命女子陸上競技部
ホクレン女子陸上部
日立製作所女子陸上競技部
しまむら女子陸上競技部
豊田自動織機女子陸上競技部
ヤマダ電機女子陸上競技部
アコム陸上競技部
アルゼ・アスリートクラブ
積水化学女子陸上競技部
スターツ陸上競技部
セガサミー陸上競技部
ファイテン女子陸上競技部




関 連 サ イ ト

東日本実業団陸上競技連盟



駅伝TOP
駅伝ひとくちメモ
駅伝BBS







最 終 成 績
<順位 チーム名 記  録
三井住友海上 2時間13分09秒
第一生命 2時間15分03秒
ホクレン 2時間15分06秒
アルゼ 2時間16分25秒
資生堂 2時間18分00秒
しまむら 2時間18分04秒
日本ケミコン 2時間18分18秒
パナソニック 2時間18分50秒
積水化学 2時間20分03秒
10 ヤマダ電機 2時間20分09秒
11 日   立 2時間20分38秒
12 アコム 2時間21分04秒
13 豊田自動織機 2時間22分12秒
14 セガサミー 2時間22分50秒
15 スターツ 2時間22分57秒
16 ファイテン 2時間23分54秒



区 間 最 高
区間 距離 選手名 所属 タイム
 6.6 勝又 美咲 第一生命  21:03
 3.695 森  春菜 第一生命   11:25
10.0 O・フィレス ホクレン   ◎31:01
 4.0 高吉 理恵 三井住友    12:51
11.1 赤羽有紀子 ホクレン   ◎34:37
 6.8 岩元 千明
安藤美由紀
三井住友
第一生命
  21:37

最終成績の詳細はこちら

TOPへ][駅伝TOPへ

バックナンバー
2007-2008 駅伝時評プロローグ
第19回 出雲全日本大学選抜駅伝
第84回 箱根駅伝予選会
第25回 全日本大学女子駅伝
第18回 東日本実業団女子駅伝
第39回 全日本大学駅伝
第23回 東日本女子駅伝
第23回 北陸女子駅伝
第19回 国際千葉駅伝
第27回 全日本実業団女子駅伝
男子58回・女子第19回高校駅伝
第52回 全日本実業団駅伝
第84回 箱根駅伝
第26回 都道府県対抗女子駅伝
第13回 都道府県対抗男子駅伝
第5回全日本大学女子選抜
第26回 横浜国際女子駅伝
2007-08駅伝時評 エピロローグ







Copyright (c) 2006 FUKUMOTO TAKEHISA. All Rights Reserved.