第52回 全日本実業団対抗駅伝競走大会



コニカミノルタが2年ぶり6度目の優勝!

 ニューイヤー駅伝で知られる全日本実業団対抗駅伝は1日、前橋市の群馬県庁前を発着点とする7区間、100キロで行われ、コニカミノルタが4時間46分28秒で2年ぶり6度目の優勝を果たしました。
 コニカミノルタは1区で太田崇が首位のSUBARUに迫ること3秒差の3位という好位置につけると、2区ではエースの松宮隆行が区間賞の快走、トップを奪って独走態勢をつくると、後続のランナーたちも安定した力を発揮、そのまま楽々と逃げ切りました。
 2位は前回優勝の中国電力、3位には前回まさかの大敗をきっしたホンダが入りました。4位は健闘の安川電機、トヨタ自動車九州が5位、優勝候補の一角にあげられていた日清食品は6位に終わりました。前回復活の気配をみせた旭化成は27位とおおきくくずれ、古豪カネボウも33位とふるいませんでした。


◇ 日時 2008年 1月 1日(火=祝) 9時00分 スタート
コース:群馬県庁スタート〜高崎市役所〜伊勢崎市役所〜太田市尾島総合支所〜太田市役所〜桐生市役所〜JA赤堀町〜群馬県庁をゴールとする7区間100km
天候:晴れ 気温:4.5度 湿度:67% 風:北北西3.2m 
コニカミノルタ(太田崇、松宮隆行、S・アレックス、山田紘之、坪田智夫、池永和樹、礒松大輔)



コニカミノルタ ドラマなき圧勝劇!
(2008.01.01)

「走る者」の想いと「観る者」の想い

 駅伝はすっかり正月の風物詩となってしまった。
 元旦はニューイヤー駅伝、2〜3日は箱根駅伝である。いずれも午前から午後までぶちぬきのライブ放送である。
 駅伝がかくも人気を獲得したのはなにゆえなのか? ひとくちでいえば、筋書きのないドラマがあるからだろう。駅伝は順位がめまぐるしく変転する。マラソンは落ちてゆくドラマだとすれば、駅伝はのぼりつめてゆくドラマがある。だから「元気」をもらえる。そのように考えると、新年のはじめにふさわしいのかもしれない。
 いわば縁起物と化した「駅伝」を、多くの人たちは暖かい部屋で、ときにはほろ酔い気分で観戦している。ひたすらドラマチックな展開を待ちわびている。
 だが……。
 実際に駅伝を走っているランナーたち、あるいは監督、コーチをはじめとする関係者の想いはちがうだろう。かれらはこぞって「駅伝にドラマなんか要らない……」と思っているはずだ。順位が落下傘のように乱高下して、ドキドキハラハラの展開なんか望んではいない。
 トップを奪ったならば、そのままゴールまでしっかりタスキを運んでいってほしいと、ひたすら願っているにちがいないのである。ファンが驚喜しようが、落胆しようが、そんなの関係ない……のである。
 第52回をかぞえる全日本実業団駅伝、近年にしてはめずらしく、波乱のない平坦なレース展開に終始した。コニカミノルタにとっては、まさにシナリオ通りにハマったレースというべきで、2区以降、陣営は笑いをかみ殺しながら、安心してなりゆきをみつめていただろう。裏をかえせば、テレビ観戦者にとって最悪の展開だったということになるのだが……。
 そういう意味で、奇しくも、駅伝を「走る者」の想いと「観る者」の想い、その乖離現象が浮き彫りになるレースとなった。


ライバルが自滅 思うツボの展開!

 区間距離が変更されてからというもの、1〜3区はトライアル、4区であらためて仕切り直しでヨーイドン……、そして5区が勝負どころ。そういう駅伝だといわれてきた。2区の最長区間をはさんで1区と3区は助っ人外人選手の指定ポジションになっているからである。
 ところが……。
 クライマックスはめずらしく前半にやってきた。今回にかぎり1区と2区の展開が命運を決してしまったといっていいだろう。
 1区はいつものように外人選手たちが引っ張った。SUBARUのG.アセファ、JFEのJ.ギタウ、日立電線のJ.シェケイ、愛三工業のH.チェノンゲなど……。1q=2:50前後だからそれほど速くはない。
 3q=8:30というペース、外人の先頭集団に食いついていったのがコニカミノルタの太田崇、旭化成の大野龍二、自衛隊体育学校の室塚健太、Hondaの池上誠悟であった。とくに太田の積極的な走りが眼を惹いた。
 中国電力の新井広憲、日清食品の板山学らはおよそ18人あまりの第2集団をなしてすすんだが、候補の一角にあげられていたトヨタ自動車九州の植木大道は第2集団にもついてゆけず、昨年の大津とおなじように1区で脱落してしまった。
 6.5qでトップ集団はペースアップ、第2集団との差はひろがるばかり、8qでは100mもついてしまった。コニカミノルタにとってはまさに思うツボの展開となってしまう。
 さらに日清食品の板山学は第2集団にもついてゆけなくなって落ちこぼれ、トヨタ自動車九州にいたっては、8qですでに1分も遅れていた。ライバルたちが自滅してどんどん脱落するのだから、コニカミノルタにとっては笑いがとまらなかっただろう。
 10q通過が28:30……、自衛隊体育学校の室塚と愛三工業がこぼれ落ち、トップ集団は6人になるものの、コニカミノルタの太田、旭化成の大野はまだふんばっている。
 区間賞争いでレースが動いたのは10.5qだった。SUBARUのアセファがスパートをかけ、ギタウが追ってゆく。太田と大野も遅れずに追走したが、最後は地力の差がモノをいうかたちで結着、SUBARUのアセファが前評判通りの強さを発揮した。


勝負を決した2区の攻防!

 コニカミノルタは3秒遅れの3位と好ポジションを確保したのとは裏腹に中国電力はコニカミノルタから48秒遅れの11位、日清食品とトヨタ自動車九州にいたっては、ともにコニカミノルタからおよそ2分も遅れてしまい、明暗がくっきりとしてしまったのである。 かくして優勝のゆくえを占いうえで、第2区の動向が大きな意味をもつようになってしまった。つまり好リズムで発進したコニカミノルタに対して、出遅れた中国電力、日清食品、トヨタ九州の3チームの巻き返があるかどうか。流れを一変させるほどの勢いを得るかどうか。興味はもっぱらその一点にあった。
 コニカミノルタの2区は松宮隆行、1.5qで3秒差を詰めて、SUBARUの高橋憲昭、JFEの森脇祐起に追いついた。だが一気には前に出ないで併走、5q=14:15のペースでたんたんと進む。7.8qで集団をひっぱりはじめ、そして9qでスパートをかけると、2人ともあっさりと置いてゆかれた。
 後ろからはトヨタ自動車九州の三津谷祐が追ってくる。5q=14:02と松宮を上回るペースで31位からあがってくる。10qの通過は27分54秒で、松宮よりもおよそ30秒も速い。11q手前では8位集団14人をまとめて抜き去った。12.4qでは5位集団にとりついたが、そこからはさすがに伸びを欠いた。それでも24人抜きの7位までやってきた。
 トップをゆく松宮の走りは安定していえて、まったくゆるぎがなかった。前半突っ込んだために脚にケイレンがきたのか。後半は失速した三津谷にくらべ、後半はむしろペースアップして、終わってみれば三津谷に18秒先んじて区間賞である。
 中国電力は尾方剛が区間4位の走りで5位まで順位をあげ、トヨタ九州も7位まであがってきたが、逆にコニカミノルタには水を開けられてしまい、流れは一気にコニカミノルタに傾いてゆく。
 日清食品は誤算だった。2区に起用した徳本一善が苦しい走りに終始してまったく伸びなかった。トップから4分17秒もの大差をつけられて27位、これでは3区にひかえるゲデオンの活きてはこない。
 旭化成、カネボウも誤算だったろう。旭化成は、マラソンの佐藤智之を送り出したが、なんとも苦しい走り、後続に次ぎつぎにとらえられ、区間35位という信じられないブレーキ、4位から一気に32位まで順位を落としてしまうのである。
 カネボウの瀬戸智弘は脚を痛めたらしく、終始脚を引きずるような走りでもはやレースにはならなかった。後に知るところでは2qあたりで太股に肉離れが来ていたという。
 主力どころがもたつくなかでコニカミノルタはやすやすと独走態勢をきずきあげてしまったのである。


今年もゲディオンが快走!

 3区は例によって外国人選手たちの競演だった。N・ゲディオン(日清食品)、M・マサシ(スズキ)、J・ダビリ(小森コーポレーション)、S・ワンジル(トヨタ自動車九州)、S・アレックス(コニカミノルタ)などなど……。
 今年も日清食品のN・ゲディオンがみせてくれた。3q=7:46というハイペースですでに7人抜き、5qの通過が13:09で14人抜き……。ゲディオンの前ではトヨタ自動車九州のワンジルがさすがにハーフの世界記録保持者らしく、4q手前で4位に浮上、10qでは2位までやってきた。だが、トップとの差はまだ2分もある。
 コニカのアレックスも堅実にこなしたので中国電力との差はさらにひろがって2分55秒、区間賞のゲディオンの活躍もあって、日清食品は13位までやってきたが、トップとの差はいぜん3分49秒……。完全に圏外に去った。
 4区ではトップのコニカと2位のトヨタ自動車九州との差はさらにひろがって2分42秒というから1qほどの距離がある。相手の背中がみえない状態でエース区間の5区を迎えるのである。


今年も魅せた! ミスター駅伝・佐藤敦之

 5区のコニカミノルタはンながく不振にあえいでいた坪田智夫であった。5q=14:20、中間点=22:45というから、なかなかのペースである。安定した走りで確実にトップをまもった。みごとな復活の走りであった。
 坪田より速かったのが中国電力の佐藤敦史である。トヨタ自動車九州の今井正人とほとんど同時にタスキを受けて併走状態でスタート、このベテランと新鋭がはげしく2位を競う合った。だが、北京オリンピックのマラソン代表を手中にした佐藤はさすがの走りをみせてくれた。
 いつもながら、ものすごいピッチを刻む佐藤敦之の走りは健在だった。上半身の力がすっかりぬけて、四肢がリズミカルに躍動するさまが何とも小気味いい。
 勝負はあっけなかった。2.6qで佐藤がギアチェンジすると、さすがの今井ももはや後ろにつけなかった。差はみるみるとひろがっていった。
 佐藤の奮闘で中国電力は55秒詰めてコニカミノルタとの差を1分56秒としたが、そこまでであった。逃げるコニカミノルタは6区初出場の池永和樹が区間賞、逆にその差を2分59秒にまでひろげてしまうのである。そして最後は当日のエントリー変更で出てきた代役の礒松大輔がゆうゆうとタスキをゴールまで運んでいったのである。
  最終区ではHondaの藤原正和と中国電力の油谷繁の2位争いもみどころ十分であった。土原がタスキをもらったとき、2位をゆく油谷との差は39秒もあったが、藤原はけんめいに追いあげた。
 7qすぎから差はみるみる詰まりはじめるのだが、油谷もけんめいに逃げる。差はつまれども、またひろがる。果てしなくその繰り返しがつづき。10qすぎでは、ひとたび3秒差まで藤原が迫ってきた。もはや捕らえるのは時間の問題か……と思いきや、油谷もさすがの走りをみせる。ひとたび詰まった差がまたしてもするすると広がってゆくのである。 藤原には追い切れなかったというツケが回ってきて、最後は老練な油谷に突き放されてしまった。油谷繁というランナーの底力を見る思いがした。


Honda、安川電機が台頭!

 それにしても……。コニカミノルタに、これほどの強さをみせつけられると、王座はまだまだ当分はゆるがない……とみなければなるまい。
 コニカミノルタの勝因は1区で主導権を握ったこと。さらには分厚い戦力ゆえのことだろう。区間賞は2つだが、他のメンバーをみわたしても、3区のアレックスをのぞいて全員が区間2位〜3位に名を連ねている。
 2位の中国電力もまずまずというところか。スピードの争いになってはコニカミノルタに勝ち目はあるまい。
 健闘したのは3位のHonda、さらには4位の安川電機であろう。Hondaは昨年の悔しさを晴らしたといっていい。3区以降は安定した戦いぶりを見せており、なかでもアンカーで登場した藤原正和の復活を喜びたい。毎年、思わぬアクシデントに見舞われ、持てる実力を発揮できないでいるが、次回に向けても期待がもてる内容だった。
 安川電機もムラのない布陣でとくに後半の粘りに見るべきものがあった。
 トヨタ自動車九州はやはり1区の出遅れがひびいたようである。6位に終わった日清食品は今年もどこかチグハグなままに終始した。あれだけの戦力をもちながら、本番ではいつも優勝争いに加われない。まさに不思議なチームといわねばならない。実力というより、もしかしたら個の選手に何か精神的なもの、モーティベーションのありかたに問題があるやもしれぬ。
 意外だったのは旭化成である。昨年2位から27位まで順位を落としてしまった。33位まで落ちたカネボウといい、古豪の凋落は一抹の寂しさを感じるのはぼくだけではないだろう。

出場チーム&過去の記録

出場チーム
日清食品陸上競技部
HONDA
コニカミノルタ陸上競技部
カネボウ陸上競技部
小森コーポレーション陸上部
SUBARU陸上競技部
日立電線マラソン部
富士通陸上競技部
JALグランドサービス陸上競技部
JR東日本ランニングチーム
日産自動車陸上競技部
スズキ陸上競技部
トヨタ紡織陸上部
NTN陸上競技部
トヨタ自動車陸上長距離部
愛知製鋼陸上競技部
愛三工業長距離チーム
トーエネック陸上競技部
YKK陸上長距離部
山陽特殊製鋼陸上競技部
佐川急便陸上競技部
大塚製薬陸上競技部
四国電力陸上部
中国電力陸上競技部
JFEスチール競走部
マツダ陸上競技部
トヨタ自動車九州陸上競技部
九電工陸上競技部
安川電機陸上部
旭化成陸上部
SUMCO TECHXIV陸上競技部
西鉄駅伝部
黒崎播磨陸上競技部





関 連 サ イ ト

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 最 終 成 績
<順位 チーム名 記  録
コ ニ カミノルタ(東京) 4時間46分28秒
中国電力(広島 4時間49分45秒
Honda(埼玉) 4時間49分56秒
安川電機(福岡) 4時間51分45秒
トヨタ自動車九州(福岡) 4時間51分58秒
日清食品(東京) 4時間52分12秒
トヨタ紡織(愛知) 4時間52分30秒
富士通(千葉) 4時間52分46秒
スズキ(静岡) 4時間53分42秒
10 大塚製薬(徳島) 4時間54分04秒
11 四国電力(香川) 4時間54分16秒
12 SUBARU(群馬) 4時間54分20秒
13 日産自動車(神奈川) 4時間54分23秒
14 九電工(福岡) 4時間54分47秒
15 JR東日本(東京) 4時間55分04秒
16 日立電線(茨城) 5時間55分17秒
17 小森コーポレーション(茨城) 4時間55分18秒
18 ヤクルト(東京) 4時間55分21秒
19 愛三工業(愛知) 4時間55分23秒
20 JFEスチール(広島) 4時間56分13秒
21 NTN(三重) 4時間56分52秒
22 自衛隊体育学校(埼玉) 4時間57分27秒
23 マツダ(広島) 4時間57分42秒
24 トヨタ自動車(愛知) 4時間57分44秒
25 佐川急便(京都) 4時間58分11秒
26 山陽特殊製鋼(兵庫) 4時間58分27秒
27 )旭化成(宮崎) 4時間58分27秒
28 SUMCO TECHXIV(長崎) 4時間58分34秒
29 YKK(富山) 4時間59分30秒
30 JALグランドサービス(千葉) 5間間00分09秒
31 中電工(広島) 5時間02分10秒
32 愛知製鋼(愛知) 5時間02分12秒
33 カネボウ(東京) 5時間03分47秒
34 トーエネック(愛知) 5時間04分43秒
35 西鉄(福岡) 5時間05分02秒
36 黒崎播磨(福岡) 5時間06分30秒
37 自衛隊山口(山口) 5時間24分04秒


区 間 最 高
区間 距離 選手名 所属 タイム
12.3 G・アセファ SUBARU  34:37
22.0 松宮 隆行 コニカミノルタ  62:28
11.8 G・ゲディオン 日清食品  30:59
10.5 梅木 蔵雄 中国電力  29:30
15.9 佐藤 敦之 中国電力  46:03
11.8 池永 和樹 コニカミノルタ  34:09
15.7 藤原 正和 Honda  46:53










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