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立命館大が準パーフェクトで圧勝!
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(2007.10.28) |
秘密兵器の1年生が区間新記録の快走!
まさかレースのヤマ場がこんなに速くやってくるとは夢にも思わなかった。1区は思いがけなくハイペースで始まり、3qをすぎてトップ集団は3人にしぼられていた。
名城大の西川生夏、立命館の大沼香織、大阪体育大の山下沙織である。なかでも終始イニシャティブをにぎろうとしていたのは名城の西川であった。ユニバーシアード代表の西川を終始マークするようにくらいついていたのが立命館の1年生・大沼であった。
169pの西川と149pの大沼……、併走すると20pもの身長差が際立つが、走りの大きさと勢いでは大沼が勝っていた。
3qすぎで両者が抜けだして、マッチレースの様相になるのだが、王座奪還をめざす名城にしてみればおそらく意外な展開と息を飲んだことだろう。
名城は1区に西川生夏、2区に川井美佳、3区に佐藤絵里を配してきた。2区に樋口紀子、3区に小島一恵を使ってきた立命館、まずは1区の西川でリードして、優位に立とうという腹だったにちがいない。
事実、実力的にみて西川で先手をとれるの計算はまちがってはいなかった。期待たがわず西川はスタートから意欲的な走りをみせ、主導権をにぎろうとしていた。1qの入りが3:17、2qが6:33と快調なピッチで、昨年1区で区間賞をとった立命館APUのM・ワンガリでさえもついてこれなかったほどであった。
2qから3qまではさらにペースがあがり、9:29秒で通過、候補の1校である佛教大が遠くおいてゆかれ、大阪体育大の山下も遅れ始める。
だが……。ライバルの立命館の大沼がついてきたのは、大きな誤算だったのではあるまいか。
むしろ、そこからは大沼のほうが走りが軽快になってきて、この1年生、タダモノではないと思わせた。むしろ西川のほうが煽られるしまつだった。
4qの通過が12:41……。大沼の走りは安定してゆるぎがない。だが西川は上半身がブレはじめた。そして……。大沼がスパートしたというよりも、西川のほうがじりじりと遅れはじめるかたちで差がひろがってゆくのである。
終わってみれば立命館大の大沼は区間新記録の快走、ライバル名城大に18秒の差をつけてしまったのである。
とまらない立命館、2区、3区も区間新記録!
大沼は秘密兵器ぶりをいかんなく発揮したというべきか。1区の1年生起用がズバリ当たって、勝負の流れは1区にして一気に立命館のほうに傾いていったのである。
立命館の2区は昨年2連覇のテープを切った樋口紀子、名うての駅伝巧者がひかえていた。ほどよいリードをもらったせいだろう。好リズムで発進、1q=3:13秒のペースを機械のように刻んで、区間新を上回るペースで4qを通過、2位との差はみるみる1分を越えてしまうのである。
樋口もまた区間新記録の快走、そのどっしりと揺るぎのない安定した走りは、いかにもチームの大黒柱というににふさわしい。1年生の勢いをしっかり受けとめて、4年生のエースが2連覇のVロードをきっちりと切りひらいた。
かくして2区を終わって2位の名城との差は1:04……。3位には大健闘の城西大、4位には大阪体育大とつづいたが、優勝候補の一角とみられていた佛教大がトップから1:45も遅れをとってしまった。
立命館の1区と2区の勢いは3区になってもとまらなかった。3区のランナーは小島一恵、いちども6,5q以上の距離を走ったことがない。あるいは……と思われたが、1q=3:11というハイペースで入って、そんな懸念をあっさり素っ飛ばしてしまった。
各大学のエースが目白押しの3区で、なんと力で押し切ってしまうのだから、その潜在能力たるや底知れぬものがある。
力のあるランナーに余裕をもって逃げられては、追っかけるほうはどうにもならない。
名城大・佐藤絵理の走りは今年もピリッとしなかった。追えども追えども差が詰まらない。むしろ後ろから追ってくる城西の酒井優衣におびやかされるしまつで、1年生のときのような切れ味がなかった。あの端正な顔がゆがみ、口をおおきくひらいて、喘ぐさまがなんとも痛々しかった。
追っかけるチームのモタつきで、3区で勝負は決した!
日本インカレの覇者であり、ユニバの10000m銀メダルの佛教大・木崎良子も今回はかなり苦戦のようだった。順位こそ一つあげたが、道中では京都産業大の1年生・杉山友里に食いつかれ、城西の酒井の背中を目前にしながら、捕らえることができなかった。
勢いの差とはいえ、立命館の小島に自らの区間新を破られたのは、悔いの残るところだろう。
前半3区を終わって、トップの立命館と2位の名城の差は1分43秒である。追う名城といえどももはや背中すらみえないところに逃げこまれてしまった。3位には大健闘の城西、候補の佛教大は2分あまりも遅れてしまい、この時点で圏外に脱落した。
前半をみて、大健闘は3位につけた城西大、5位に来ていた京都産業大を挙げなくてはなるまい。6位には日大がつけていたが、玉川大学はこの時点でトップから3分35秒遅れの9位に甘んじていた。 意外だったのは城西国際大で3区を終わってなんとトップから5分遅れの15位と順位を落としたことだろう。
追っかけるチームのモタモタぶりが目立ち、3区を終わって立命館の優勝はほぼ動かぬ形勢となってしまう。
立命館は4区以降の勢いもとまらなかった。4区の1年生・山本菜美子、5区の境田遙も区間賞、アンカーの松永明子は区間2位に終わったため、完全優勝こそならなかったが、準パーフェクトを達成してしまうのである。
十倉マジックで選手は活き活き!
立命館大は思った以上に強かった。なんといっても選手層の厚さが群をぬいている。毎年のように有望新人が加わっているせいだろう。レギュラークラスがたとえ2人や3人故障したとしても何ら動じることない。そういうチームになっている。
たとえば昨年1区を走った仲泊幸恵なんかは今年は補欠に回わり、代わりに出てきた1年生の大沼香織は区間賞をとっただけでなく、区間新記録をつくってしまうのをみても明らかだろう。
しかも……。その大沼香織は本大会の予選にあたる「関西学生対抗女子駅伝」にも出場していないのである。同大会に立命館はA、Bの2チームをエントリーしている。優勝したAチームの顔ぶれは1区から順に堀岡智美、山本菜美子、小島一恵、境田遙、松永明子、仲泊幸恵……である。Bチームは人見麻友、松本紗季、山口文、武智真実、榎本春菜、大槻奈里という顔ぶれである。樋口紀子は出場しておらず、大沼もAチームの控えに回っていた。
本戦ではAチームを軸にして、樋口紀子を加えた布陣でくるだろうと思われた。事実そのとおりになったのだが、あっと驚く起用が2つもあった。ひとつは小島一恵の3区起用であり、予選のBチームでも走っていない大沼の1区起用である。
むろん成算あってのことだろうが、サプライズ起用がズバリ当たるところが、十倉マジックの真骨頂というべきか。選手の実力だけでなく気質や性格まで見抜いていなければとても出来ない芸当というものだろう。
昨年も感じたのだが立命館の選手たちは、誰も彼もがのびのびと走る。その陰には十倉みゆきコーチが10年かかって培った肥沃な土壌があるようだ。(「讀賣新聞」2007.10.29付けの「人」に十倉みゆきが登場している)
なすすべもなく敗れた名城大、選抜で奮起を期待!
王座奪還をめざした名城大はなすすべもなく敗れた。名城の選手たち、一人ひとりの出来が悪かったというのではない。みんなソコソコ力を出している。ただ、それ以上に立命館の選手たちが持てる力を発揮した。名城の選手たちにしてみれば、自分たちの予想以上に立命館がはるか先を行っていた……という思いなのではあるまいか。
選抜では佐藤絵理、西川生夏の奮起を期待したい。チームを建て直して、最後まで優勝争いを演じてほしいものである。
それにしても……。立命の離されて意気消沈したというのか。最終区で佛教大に52秒差の逆転をゆるしてしまったのは、やはり悔いが残るだろう。
潜在的な力においてそれほど差はない。にもかかわらず試合であれほどの差がつくのはなぜなのか。立命館とは対照的に、名城の選手は、どこか表情も走りも固くて、本番の舞台では、持てる力を100%出すことができないでいる。昨年もそうだったし、今年もそうだった。なぜなのか? そのあたりをとくと考えてみる必要があるだろう。
今年の佛教大はスーパーエースの木崎良子、森唯我という2枚看板にくわえ西原加純という新戦力が加わり、強力な候補の一角にのしあがったが、またしても1区で後手を踏んだのが最終的に致命傷になったようである。最後は西原加純の区間賞の力走でゴール前で名城を捕らえるのだが、2位といえども優勝争いにからんだものではないだけにそれほど値打ちはない。
京都産業大、城西大に復活の兆しあり
健闘したチームをあげればまず4位の京都産業大である。なにせ初出場の12回大会から4連覇を達成した強豪であるが最近はいまひとつ精彩を欠いていた。
今年はメンバー6人のうち4人までが1年生である。とくに日本インカレ10000m8位の3区・杉山友里をはじめ、2区の竹中麻有美、6区の竹本紗代らはいずれも区間上位に連ねている。強い京産復活の兆しを感じさせる成績だったといえる。来年あたりは台風の目になるやもしれない。
5位の城西大も復活の足がかりをきずいたというべきか。2区と3区で2枚看板の坂井田歩と酒井優衣がもてる実力を発揮した。前半から中盤にかけて3位〜4位をキープしていたのが大きかった。
後半の5区と6区はシード権争いが熾烈だった。5区を終わって5位の京都産業大から8位の白鴎までは18秒差で、京産、玉川、日大、白鴎が2つの椅子を争っていた。結着はアンカー勝負にゆだねられた。
京都産業大がことのほか強く、城西をとらえるほどの勢いで前にいってしまい、最後は日大、玉川、白鴎で残り1つを争うかたちとなった。玉川と日大は最後の最後までまで激しく争ったが、最終的には玉川の粘りがまさった。
それにしても……。今回は立命館の強さが際立っていたせいで、観るレースとしては、いささか平板になってしまったが、レースは生き物だからしかたがないだろう。
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