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立命館大学が4区で佛教大を逆転!
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(2007.12.25) |
これぞエースの走り……小島一恵
駅伝のエースとはどういう存在なのだろうか?
ひと口で言えば勝負どころの区間でレースの流れというものを一変させてしまう。劣勢にあるわがチームの負の流れを断ち切り、さらに大勢逆転の足がかりをきずく。そういう頼りがいのあるランナーを指していうのだろう。
たとえば立命館宇治の小島一恵、いまや駅伝にかんするかぎり、大学生女子のスーパーエースになりつつある。先の全日本大学女子駅伝ではエースランナーのそろう3区に登場、6.5qという距離は初めての経験にもかかわらず、1q=3:11というハイペースで素っ飛ばして区間新記録の快走、3区にしてあっさり優勝を決めてしまった。
全日本の小島は逃げる展開だったが、今回は追ってゆく展開で登場した。
2区を終わって、トップをゆくのは佛教大、2位が日大……。トップをゆく佛教大の森唯我から遅れること26秒で小島はタスキをうけとったのである。
トップの森の1qのはいりが3分19秒、悪い走りではない。だが小島は全日本のときと同じように最初から突っ込んでいった。タスキを受けてすぐに前をゆく日大をとらえ、3qでは10秒差まで迫っている。
小島の後ろからは名城大の西川生夏が東農大を抜いてあがってくる。3強対決の構図がしっかりとできあがった。
小島はその後もどんどんと前を追いかけ、とうとう4.1qではトップの森に追いついて交わした。だが森唯我も佛教大の準エース格のランナーらしくかんたんには退かない。小島の後ろにピタとつけて離れない。
両者はほとんど併走状態ですすんだが、最後になって小島は26秒差をつめてきたというツケを払わされるハメになる。森が意地をみせてラストで小島を振りきって中継所にとびこんだ。
小島は2秒差でつづき、トップこそ奪えなかったが、またまた区間新の快走、立命館の5連覇がはっきり見えるところまでチームを押し上げてきた。
前半は佛教大がペースをにぎる
先手をとったのは全日本2位の佛教大であった。佛教大は優勝を争う力をもちながら、過去においてなんども1区で失敗、力をだしきれぬままに終わるケースが多かった。
今回は1区にエースの木崎良子を起用、立命館を意識して、はっきりと勝負をかけてきた。優勝をねらうんだ……という意欲のほどがはっきりと感じられた。
全日本のときの木崎はいまひとつの出来だったが、その汚名を濯ごうというのだろう。今回は積極的にレースを運んでいた。
1qのはいりは3分13秒前後だったせいだろう。3qをすぎてもトップ集団はばらけない。3.2qになって、ようやく木崎が集団を割った。反応したのは日大のキンゴリー・アン、順天堂の稲富友香、立命館の境田遙らであった。
木崎が1q=3分ペースのハイピッチで飛び出した。いつもながらの軽快でストライドののびるパワフルな走りであった。
日大のアンも順天堂の稲富が追ってゆこうとするのだが、登載エンジンのパワーがまるでちがっていて、じりじりと置いてゆかれてしまった。
木崎はそのまま中継所にとびこみ、終わってみれば区間新、2位の日大を11秒、3位の順天堂には13秒、そしてライバルの立命館24秒、名城には29秒の差をつけて、予定通りに立命館5連覇の前に立ちはだかったのである。
2区は3qの最短区間だが、佛教大の快走はつづいた。佛教大の2区は出田千鶴が軽快に走り抜けた。木崎の好リズムに乗ったというべきか。区間新記録で2位の日大との差を25秒までひろげ、3位にあがってきた立命館、この区間は先の全日本では1区で区間賞をもぎとった大沼香織だったが、逆に2秒引きはなして、その差を26秒にしてしまったのである。
1区から2区、その差は詰まらずに逆にひろがった。ここまでは完全に佛教大のペースであった。それだけに立命館大3区・小島の追い上げは千金の価値があった。佛教大にかたむきつつある流れを一気に断ち切ったのだから……。
立命館大が4区で奪首に成功
4区も3.5qの短い区間だが、レースはここで動いた。
トップの佛教大は白子莉乃、追う立命館は仲泊幸恵であった。トラック5000mのタイムでは仲泊のほうに分があるが、ロードだから同じモノサシでは測れない。だが、追う者の強みというべきか。仲泊は自信を持って走っていた。
両者のせめぎあいはほとんど併走で幕あけたが、1qすぎて仲泊がトップに立ち、引き離しにかかと、差はじりじりとひろがっていった。
最初の1qをゆっくりとはいって、中盤から勝負をかけた。仲泊はその冷静な勝負勘で立命館は4区にして初めてトップに立ち、5連覇への道筋をきっちりとひらいたのである。
仲泊は先の全日本では控えに回っていて出場していない。そんなランナーが大舞台でポイントになる繋ぎの区間でしっかり仕事をする。立命館の選手層の厚さがきわだっている。
仲泊の区間賞で立命館は25秒の差でトップに立ったが、今年は佛教大もしぶとかった。いつもなら4区を起点にして流れは一気に立命館にかたむいてゆくのだが、今回は5区でも勝負の結着はつかなかった。
逃げる立命館はキャプテンの松永明子、追う佛教大は荻野恵理子、やや松永のほうに分があるが力はほとんど互角の形勢……。松永は順調な滑り出しでゆるぎのない走りだったが、後ろから荻野が猛然と追い上げてきたのである。
松永は堅実な走りでのりきったが、なんと佛教大の荻野が区間新の快走、その差を6秒つめて19秒差に迫ってきたのである。
かくして勝負はアンカー対決までもつれこんだのである。
ラストランは貫禄の走りで5連覇のテープ
立命館のアンカーは4年生の樋口紀子、佛教大は1年生ながらエース的存在の西原加純であった。19秒差ならば5000mの持ちタイムからみて、微妙なところ。逆転の目がないわけではなかった。
樋口にとってはラストラン、負けるわけにはいかない。軽快なピッチで逃げた。さすがは駅伝巧者というべきか。それとも4年生の貫禄というものか。
差はじりじりとひらきはじめた。2qでは28秒差……。樋口のリズミカルな走りにくらべ追う西原の走りは全日本の最終区で区間賞をもぎとったときのような勢いがない。いかにも重そうでのたうっていた。足にマメをつくって術後だという話だが、その影響もあったのだろう。
両校の後ろからは名城の佐藤絵理が追っていたが、もはや2年前ほどの勢いはなかった。
かくして区間の半ばにして立命館の5連覇は確定してしまった。かくして後半は楽らくと走ったアンカーの樋口紀子は右手の指5本を大きくひろげて、5連覇のゴールテープをほこらしげに切ったのである。
上位3チームのうしろは大混戦の様相、7位の東京農業大学が追い上げてきて一気に4位まであがってきた。それはひとえに区間賞をもぎとったアンカーの佐瀬まり子の快走によるものである。
「選抜」の開催日に疑問あり!
優勝した立命館は選手層の厚さがきわだっていた。メンバーがそれぞれ安定した力を発揮、けっして大きくくずれることはない。誰が出てきても自分の役割というもをきっちりと果たすことができる。そのあたりに一日の長があるようである。
2位の佛教大はいま一歩およばなかったが、底力のあるところをみせつけた。3つの区間賞は優勝した立命館をしのいでおり、着実に地力は強化されている。来年あたりはさらに上位は拮抗するだろう。
名城は今回も3位に甘んじた。エースの佐藤絵理もそうだが、名城のランナーはいづれも立命館や佛教大をしのぐほどの素質に恵まれている。けれどもレースでは力を発揮することができないでいるのはどういうことだろう。佐藤絵理をはじめいずれも伸び悩んでいる。なぜなのか? そこのところを解明しなくてはなるまい。
他のチームでは東京農業大が大健闘、全日本10位から大きな変わり身をみせた。最終区の佐瀬まり子の区間賞は希望の灯火になるだろう。
学連選抜では東海学連選抜の5位、大いに讃えられるべきだえろう。前回は関西選抜だったが今回は東海がつねに上位で踏ん張っていた。
期待を裏切ったのは京産大か。全日本では4位を占め、古豪復活の狼煙をあげたが、今回は16位と大きくくずれてしまった。若い選手が中心だけに、ブレ幅が大きいのだろうがなんとか関西の第3勢力になってほしいものである。
ところで……、例年2月におこなわれてきた本大会だが、前回からコースが変わって1月になり、今年からはなぜか12月の年の瀬になってしまった。12月におこなうのは今年だけの措置なのか、それとも来年以降も同じスケジュールになるのか?
それにして、なぜ12月なのか。女子の大学駅伝のレースが増えるのはファンとして大歓迎である。しかし全日本と選抜は区間数も総距離もほとんど変わらない。同質のレースを2か月もたたないいうちにおこなう意義はいったい何なのだろう。
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