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選手層の分厚さで圧倒! 立命館が怒濤の3連覇!
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(2008.10.28) |
明暗をわけたエース対決!
2区を終わったとき、おもわずウム……と首をかしげた。トップをゆく佛教大と3連覇をもくろむ立命館との差は42秒……。距離にしておよそ200m、女子の駅伝とはいえ、10q以下の区間をつなぐ駅伝では「大差」である。
トップをゆく佛教大の3区は西原加純、立命館は小島一恵、ともに優勝候補といわれるチームのエースランナーである。佛教大の西原は、なんと立命館のサポーターである「立命館大学秋田県校友会」のBlog(http://blog.goo.ne.jp/ritsuaki)の筆者でさえも「阿修羅西原」と形容し、「愛すべき」エースとエールをおくるほどの存在である。
200mも離れれば追っかける側からはほとんど背中がみえないだろう。話すといかにも年齢相応の女子大学生という感じだが、タスキをかけて走り出すと「夜叉」の相貌になる小島一恵、駅伝では図ぬけた走りをみせるランナーとはいえ、42秒は苦しいだろう。
立命館の3連覇は危うし!……。ふと、そんな思いが脳裡をかすめたのである。
立命館は3年前の23回大会で3連覇にのぞんだが、3区で名城の当時1年生だった佐藤絵理に足もとをすくわれた。もしかしたら今回は佛教大が名城の役割を果たすのか? 気楽な観戦者としては興趣つきないものがあった。
西原の入りは悪くなかった。3q=9:42、好ペースでトップをゆく。4位でタスキをうけた小島は1qが3分11秒の入りだったが、最初はいまひとつ迫力がないようにみえた。だが、じりじりとペースをあげ、城西国際の中村萌乃をひきつれて名城の野村沙世を追いはじめる。
小島のエンジンがかかったのは3.5qすぎからだった。名城の野村をぬいて2位にあがると、前をゆく佛教・西原の姿が完全に視界にはいったのだろう。ギアアップした小島とは対照的に足が空回りするかのように西原はのたうちはじめたのだ。
流れは一変した。42秒あったその差が中間点では28秒、5.8qでは16秒、6.6qではなんと10秒差までつまった。
ここまでくれば、もう射程距離である。だが、西原もそこからねばりをみせた。そこから差がつまらない。1qあまりは膠着状態がつづいた。
小島はそこでひとたび力をためていたというのか。7.5qすぎでレースはふたたび動き出した。7.7キロでは6秒差、8.4qでは4秒差、9q手前では2秒差と手のとどくところまでやってくるのである。
西原にも意地があろう。木崎さと子にかわってチームを背負うエースの意地というべきか。抜かせることはなく、わずか1秒ながら小島に先んじた。
だが……。レースの流れは一変、4区以降は主導権をにぎった立命館の分厚い布陣がモノをいう結果になってゆくのである。
先手をとったのは佛教大だが……
前回の25回大会は立命館の1年生・大沼香織があれよあれよと逃げて、1区が勝負のわかれめになったが、今回の1区は主力どころが好位置をうばいあう展開となった。
とびだしたのは初出場・関西大学の松山祥子である。1q=3:16だから、それほど早くはないが、松山が20人ぐらいの先頭集団をひっぱってゆく。
3q手前では松山が完全に抜けだした。後続は佛教、京産、立命館、名城、城西国際、白鴎というかたち。主力は2位集団につけて周囲をうかがっていた。
トップの松山は3q=9:25で前回をうわまわるハイペース。4q=12:39で2位集団を100mあまりぶっちぎった。5q通過も区間新のペースである。
優勝をねらう後続集団に動きがあったのは4.6qあたりだったろうか。佛教大学の石橋麻衣がいかにもチャレンジャーらしく果敢にしかけて、集団からとびだした。
松山のスピードはその後もゆるぎはなく、区間新記録こそのがしたが、2位以下に13秒差をつけて堂々の区間賞でタスキを渡した。
2位は13秒差で佛教大、3位に城西国際大が17秒差でつづいた。名城は25秒差で5位、そして候補の筆頭・立命館34秒差の7位にあまんじた。
今回も2区はいかにも2区らしく、めまぐるしく順位が変動した。
1q手前で、4位でタスキをうけた京都産業大(賀元あすか)が関西大学(片平悠水)をとらえてトップに立つが、後ろから佛教大の森唯我と城西国際の高橋千都が追ってくる。うしろからやってくる立命館の竹中理沙は1q=3:18となんとなく重い。
2qではトップはまさにダンゴ状態……。京都産業大、城西国際大、佛教大にくわえて名城大の西川生夏が急追してやってきた。候補はみんなやってきたが立命館だけがとりのこされていた。後方からは日大の後藤麻衣が果敢に攻めて10人抜きで6位まで押しあげてくる。
トップ集団を割ったのは佛教と名城であった。4.2qで森唯我と西川生夏がぬけだしてマッチレースとなった。両者がたがいにゆずらなかった。ラストスパートではわずかに佛教の0森がうわまわったが、なかなかみどころがあった。
立命館の竹中も中盤から後半にかけて追いあげ4位まで順位をおしあげてきたが、トップとは42秒差と逆に8秒も離されてしまった。
トップをゆく佛教と名城のラストスパートのをあおりをくって、ラストだけで一気に大差をつけられてしまったのである。競っていたらこうはならなかっただろうが、このあたりも駅伝のおもしろさというべきだろう。
1年生が区間記録で独走態勢!
かくして冒頭にのべたエース区間の3区をむえたというわけだが、さすがは立命館の大黒柱である。小島一恵はみずからの区間記録をあっさりと更新してしまった。
立命館の強さは、そこからであった。4区に配したのは沼田未知、1年生ながらインカレ10000m優勝の実績を持つ。4区、5区といえば、いわば繋ぎの区間だが、そんなところにインカレ・チャンピオンを配してくるのだから、選手層の厚さたるや、まったく類がない。
沼田未知は昨年の全国高校駅伝では3区に登場、区間5位の成績で豊川にはげしく追いあげられていた。メンバーになかではいまひとつキレがなかったが、今回はその汚名をそそいだというべきか。
沼田がタスキをもらってまもなく、500mもゆかないうちに、佛教大の出田千鶴をかわしてトップに立った。沼田は軽快な足どり、快調なピッチにゆるぎなく、2qではじりじりと出田をひきはなしてしまうのである。
後続との差をひろげて独走態勢、沼田のペースは最後までおとろえることなく、なんと2位佛教とのあいだには39秒もの大差がついていた。3区の小島につづいて区間新記録である。
3位の名城は1分49秒、4位の京産までは2分あまりの大差がついてしまい、これで立命館の3連覇はくっきりとみえてきた。
とどめを刺したのが5区の田中華絵というべきか。やはり1年生の田中はアゲンストの風をものとめせずに、あのアップダウンははげしいコースを、いかにも力つよい走りで押しきってしまった。13分07秒は先輩の後藤麻衣の記録を0秒1更新する堂々の区間新記録である。
5区を終わって立命館と2位の佛教との差は1分18秒……。6区の立命館アンカーは4年生の松永明子である。昨年もアンカーでゴールテープを切った松永にしてみれば、あとはタスキをゴールにはこんでゆくだけ。もはや、うしろからは誰も追ってはこない。かすかに色づいた欅並木を走るのは、さぞ心地よかったことだろう。
底知れぬ立命館のチーム力
かくして立命館は史上2校目となる3連覇を達成、史上最多となる5度目の制覇である。のこる記録は京都産業大のもつ4連覇のみとなった。
立命館の勝因はやはりたよりになるエースの存在にくわえて、圧倒的な選手層の厚さというものだろう。今回は1年生を4人も起用してきた。昨年の優勝メンバーだった大沼香織、山本菜美子、境田遙といったところが故障のせいもあるがメンバーから外れるというありさまである。
さすがに1区、2区に起用した岩川真知子、竹中理沙が彼女たちの実力からすればブレーキ気味だったが、終わってみれば圧勝である。たとえ主力に故障があってもかわりはいくらでもいる。
学生駅伝、とくに選手寿命の消長のはげしい女子の場合は連覇は至難だといわれているが、立命館の場合はまさに別格、4連覇、5連覇もそれほどむずかしくないとみた。
佛教大は今回も2位にあまんじた。過去において1区で致命的な出遅れをするチームだったが、今回は2位と好発進したのもかかわらず、またしても立命館に敗れた。とくに今回は力負けしたという感がつよい。
名城もいまひとつ決め手を欠いた。前半の滑り出しはよかったのだが、中盤の3区と4区でおおきき置いてゆかれてしまった。
最終区では佐藤絵理が区間賞の快走で佛教大を追いあげた。1年生で華々しくデビューしながら、2年、3年のときはいまひとつ精彩がなかった。4年生の最後で意地をみせたのはみごと。卒業後は三井住友海上にゆくそうだが華があるだけに、人気をあつめる選手になるだろう。
今回のレースをみるかぎりビッグ3といえども、立命館と佛教、名城との間にはかなりの差があるようにみうけられた。
東京農大が初めてシード権獲得!
立命、佛教、名城のビッグスリーが上位を占めたのは順当なところか。4位以降は東京農大、玉川大、京都産業大とつづき、ここまでがシード権を獲得した。
なかでも健闘したのは東京農大か。関東勢ではトップの4位入賞、はじめてのシード権獲得である。それほど図ぬけた選手はいないのだが、3区以降は5位から落ちることはなかった。持てる実力をフルに発揮しての入賞だといえる。
玉川大は前半は10位前後にいたが、後半からじりじりと上位にやってきた。粘りが活きたというわけか。
京都産業大学もかんばったほうだろう。終始4位〜6位をキープしておおきくくずれることはなかった。伝統の力というべきか。
期待を裏切ったのは城西と日大だろう。城西は1区(15位)と2区の出遅れがすべてだった。かっての候補チームだけに9位というのは、ちょっとさみしい気がする。
日大は2区の後藤奈津子が区間タイ記録で快走、ひとり気を吐いたが、たのみの留学生二人がまるで動かなかった。主力ランナーが区間13位と11位ではどうしようもなかろう。 12月の選抜までに各チームはどのように建て直してくるか。立命館、佛教、名城の3強にゆるぎはなさそうだが、日大あたりに一角くずしを期待したいとおもうのだが……。果たしていかがなものだろうか。
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関 連 サ イ ト |
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