[第26回全日本大学女子駅伝対抗選手権大会]



立命館大学が史上2校目の3連覇を達成!

 大学女子の駅伝日本一を競う「第26回全日本大学女子駅伝対抗選手権大会」は、10月26日(日)に仙台市でおこなわれ、昨年、一昨年と過去2連覇ている京都の立命館大学が危なげなく制覇、通算5度目、京都産業大学とならぶ史上2校目の3連覇を達成しました。
 舞台を大阪か仙台に移して4年目となり、すっかり「杜の都の駅伝」として定着した本大会、シード6校(立命大、名城大、佛教、京産大、城西大、玉川大)、そして今年の9〜10月にかけて全国8地区でおこなわれた予選を勝ち抜いた19校、さらにオープン参加の東北学連の選抜チームを加え、26チームが出場しました。

 3連覇をねらう立命館大は1区、2区で遅れをとったものの、3区に配したエースの小島一恵が区間新の快走で猛追、トップの佛教大にわずか1秒差とせまると、4区、5区の1年生がともに区間新の爆走、終わってみればぶっちぎりの圧勝でした。悲願の初優勝をもくろんだ佛教大は2位、名城大は今回も3位におわりました。



◇ 日時 10月26日(日)午後0時10分スタート
◇ 場所 宮城県仙台市
◇ コース 宮城野区・宮城陸上競技場をスタート、太白区・JR長町駅前、青葉区・宮城学院女子大前などを巡り、市役所前   市民広場にゴールする。6区間計38・6q。
◇ 天気:晴れ 気温:18.9度  湿度:57%  風:南西 3.0m
◇立命館大学(岩川真知子、竹中理沙、小島一恵、沼田未知、田中華絵、松永明子)


選手層の分厚さで圧倒! 立命館が怒濤の3連覇!
(2008.10.28)

明暗をわけたエース対決!

 2区を終わったとき、おもわずウム……と首をかしげた。トップをゆく佛教大と3連覇をもくろむ立命館との差は42秒……。距離にしておよそ200m、女子の駅伝とはいえ、10q以下の区間をつなぐ駅伝では「大差」である。
 トップをゆく佛教大の3区は西原加純、立命館は小島一恵、ともに優勝候補といわれるチームのエースランナーである。佛教大の西原は、なんと立命館のサポーターである「立命館大学秋田県校友会」のBlog(http://blog.goo.ne.jp/ritsuaki)の筆者でさえも「阿修羅西原」と形容し、「愛すべき」エースとエールをおくるほどの存在である。
 200mも離れれば追っかける側からはほとんど背中がみえないだろう。話すといかにも年齢相応の女子大学生という感じだが、タスキをかけて走り出すと「夜叉」の相貌になる小島一恵、駅伝では図ぬけた走りをみせるランナーとはいえ、42秒は苦しいだろう。
 立命館の3連覇は危うし!……。ふと、そんな思いが脳裡をかすめたのである。
 立命館は3年前の23回大会で3連覇にのぞんだが、3区で名城の当時1年生だった佐藤絵理に足もとをすくわれた。もしかしたら今回は佛教大が名城の役割を果たすのか? 気楽な観戦者としては興趣つきないものがあった。
 西原の入りは悪くなかった。3q=9:42、好ペースでトップをゆく。4位でタスキをうけた小島は1qが3分11秒の入りだったが、最初はいまひとつ迫力がないようにみえた。だが、じりじりとペースをあげ、城西国際の中村萌乃をひきつれて名城の野村沙世を追いはじめる。
 小島のエンジンがかかったのは3.5qすぎからだった。名城の野村をぬいて2位にあがると、前をゆく佛教・西原の姿が完全に視界にはいったのだろう。ギアアップした小島とは対照的に足が空回りするかのように西原はのたうちはじめたのだ。
 流れは一変した。42秒あったその差が中間点では28秒、5.8qでは16秒、6.6qではなんと10秒差までつまった。
 ここまでくれば、もう射程距離である。だが、西原もそこからねばりをみせた。そこから差がつまらない。1qあまりは膠着状態がつづいた。
 小島はそこでひとたび力をためていたというのか。7.5qすぎでレースはふたたび動き出した。7.7キロでは6秒差、8.4qでは4秒差、9q手前では2秒差と手のとどくところまでやってくるのである。
 西原にも意地があろう。木崎さと子にかわってチームを背負うエースの意地というべきか。抜かせることはなく、わずか1秒ながら小島に先んじた。
 だが……。レースの流れは一変、4区以降は主導権をにぎった立命館の分厚い布陣がモノをいう結果になってゆくのである。


先手をとったのは佛教大だが……

 前回の25回大会は立命館の1年生・大沼香織があれよあれよと逃げて、1区が勝負のわかれめになったが、今回の1区は主力どころが好位置をうばいあう展開となった。
 とびだしたのは初出場・関西大学の松山祥子である。1q=3:16だから、それほど早くはないが、松山が20人ぐらいの先頭集団をひっぱってゆく。
 3q手前では松山が完全に抜けだした。後続は佛教、京産、立命館、名城、城西国際、白鴎というかたち。主力は2位集団につけて周囲をうかがっていた。
 トップの松山は3q=9:25で前回をうわまわるハイペース。4q=12:39で2位集団を100mあまりぶっちぎった。5q通過も区間新のペースである。
 優勝をねらう後続集団に動きがあったのは4.6qあたりだったろうか。佛教大学の石橋麻衣がいかにもチャレンジャーらしく果敢にしかけて、集団からとびだした。
 松山のスピードはその後もゆるぎはなく、区間新記録こそのがしたが、2位以下に13秒差をつけて堂々の区間賞でタスキを渡した。
 2位は13秒差で佛教大、3位に城西国際大が17秒差でつづいた。名城は25秒差で5位、そして候補の筆頭・立命館34秒差の7位にあまんじた。
 今回も2区はいかにも2区らしく、めまぐるしく順位が変動した。
 1q手前で、4位でタスキをうけた京都産業大(賀元あすか)が関西大学(片平悠水)をとらえてトップに立つが、後ろから佛教大の森唯我と城西国際の高橋千都が追ってくる。うしろからやってくる立命館の竹中理沙は1q=3:18となんとなく重い。
 2qではトップはまさにダンゴ状態……。京都産業大、城西国際大、佛教大にくわえて名城大の西川生夏が急追してやってきた。候補はみんなやってきたが立命館だけがとりのこされていた。後方からは日大の後藤麻衣が果敢に攻めて10人抜きで6位まで押しあげてくる。
 トップ集団を割ったのは佛教と名城であった。4.2qで森唯我と西川生夏がぬけだしてマッチレースとなった。両者がたがいにゆずらなかった。ラストスパートではわずかに佛教の0森がうわまわったが、なかなかみどころがあった。
 立命館の竹中も中盤から後半にかけて追いあげ4位まで順位をおしあげてきたが、トップとは42秒差と逆に8秒も離されてしまった。
 トップをゆく佛教と名城のラストスパートのをあおりをくって、ラストだけで一気に大差をつけられてしまったのである。競っていたらこうはならなかっただろうが、このあたりも駅伝のおもしろさというべきだろう。


1年生が区間記録で独走態勢!

 かくして冒頭にのべたエース区間の3区をむえたというわけだが、さすがは立命館の大黒柱である。小島一恵はみずからの区間記録をあっさりと更新してしまった。
 立命館の強さは、そこからであった。4区に配したのは沼田未知、1年生ながらインカレ10000m優勝の実績を持つ。4区、5区といえば、いわば繋ぎの区間だが、そんなところにインカレ・チャンピオンを配してくるのだから、選手層の厚さたるや、まったく類がない。
 沼田未知は昨年の全国高校駅伝では3区に登場、区間5位の成績で豊川にはげしく追いあげられていた。メンバーになかではいまひとつキレがなかったが、今回はその汚名をそそいだというべきか。
 沼田がタスキをもらってまもなく、500mもゆかないうちに、佛教大の出田千鶴をかわしてトップに立った。沼田は軽快な足どり、快調なピッチにゆるぎなく、2qではじりじりと出田をひきはなしてしまうのである。
 後続との差をひろげて独走態勢、沼田のペースは最後までおとろえることなく、なんと2位佛教とのあいだには39秒もの大差がついていた。3区の小島につづいて区間新記録である。
 3位の名城は1分49秒、4位の京産までは2分あまりの大差がついてしまい、これで立命館の3連覇はくっきりとみえてきた。
 とどめを刺したのが5区の田中華絵というべきか。やはり1年生の田中はアゲンストの風をものとめせずに、あのアップダウンははげしいコースを、いかにも力つよい走りで押しきってしまった。13分07秒は先輩の後藤麻衣の記録を0秒1更新する堂々の区間新記録である。
 5区を終わって立命館と2位の佛教との差は1分18秒……。6区の立命館アンカーは4年生の松永明子である。昨年もアンカーでゴールテープを切った松永にしてみれば、あとはタスキをゴールにはこんでゆくだけ。もはや、うしろからは誰も追ってはこない。かすかに色づいた欅並木を走るのは、さぞ心地よかったことだろう。


底知れぬ立命館のチーム力

 かくして立命館は史上2校目となる3連覇を達成、史上最多となる5度目の制覇である。のこる記録は京都産業大のもつ4連覇のみとなった。
 立命館の勝因はやはりたよりになるエースの存在にくわえて、圧倒的な選手層の厚さというものだろう。今回は1年生を4人も起用してきた。昨年の優勝メンバーだった大沼香織、山本菜美子、境田遙といったところが故障のせいもあるがメンバーから外れるというありさまである。
 さすがに1区、2区に起用した岩川真知子、竹中理沙が彼女たちの実力からすればブレーキ気味だったが、終わってみれば圧勝である。たとえ主力に故障があってもかわりはいくらでもいる。
 学生駅伝、とくに選手寿命の消長のはげしい女子の場合は連覇は至難だといわれているが、立命館の場合はまさに別格、4連覇、5連覇もそれほどむずかしくないとみた。
 佛教大は今回も2位にあまんじた。過去において1区で致命的な出遅れをするチームだったが、今回は2位と好発進したのもかかわらず、またしても立命館に敗れた。とくに今回は力負けしたという感がつよい。
 名城もいまひとつ決め手を欠いた。前半の滑り出しはよかったのだが、中盤の3区と4区でおおきき置いてゆかれてしまった。
 最終区では佐藤絵理が区間賞の快走で佛教大を追いあげた。1年生で華々しくデビューしながら、2年、3年のときはいまひとつ精彩がなかった。4年生の最後で意地をみせたのはみごと。卒業後は三井住友海上にゆくそうだが華があるだけに、人気をあつめる選手になるだろう。
 今回のレースをみるかぎりビッグ3といえども、立命館と佛教、名城との間にはかなりの差があるようにみうけられた。


東京農大が初めてシード権獲得!

 立命、佛教、名城のビッグスリーが上位を占めたのは順当なところか。4位以降は東京農大、玉川大、京都産業大とつづき、ここまでがシード権を獲得した。
 なかでも健闘したのは東京農大か。関東勢ではトップの4位入賞、はじめてのシード権獲得である。それほど図ぬけた選手はいないのだが、3区以降は5位から落ちることはなかった。持てる実力をフルに発揮しての入賞だといえる。
 玉川大は前半は10位前後にいたが、後半からじりじりと上位にやってきた。粘りが活きたというわけか。
 京都産業大学もかんばったほうだろう。終始4位〜6位をキープしておおきくくずれることはなかった。伝統の力というべきか。
 期待を裏切ったのは城西と日大だろう。城西は1区(15位)と2区の出遅れがすべてだった。かっての候補チームだけに9位というのは、ちょっとさみしい気がする。
 日大は2区の後藤奈津子が区間タイ記録で快走、ひとり気を吐いたが、たのみの留学生二人がまるで動かなかった。主力ランナーが区間13位と11位ではどうしようもなかろう。 12月の選抜までに各チームはどのように建て直してくるか。立命館、佛教、名城の3強にゆるぎはなさそうだが、日大あたりに一角くずしを期待したいとおもうのだが……。果たしていかがなものだろうか。


出場チーム&過去の記録

出場チーム

東北福祉大学陸上競技部
福島大学陸上競技部
城西国際大学女子駅伝部
玉川大学女子駅伝チーム
東京農業大学陸上競技部
名城大学陸上競技部
名古屋大学陸上競技部
仏教大学陸上競技部
大阪体育大学陸上競技部
美作大学陸上競技部
立命館アジア太平洋大学






関 連 サ イ ト

讀賣新聞
日本テレビ
日本学生陸上競技連盟
東北学生陸上競技連盟




駅伝TOP
駅伝ひとくちメモ
駅伝BBS





最 終 成 績
順位 チーム名 記  録
立命館大学 2時間06分53秒
佛教大学 時間08分08秒
名城大学 時間08分47秒
東京農業大学 時間09分01秒
玉川大学 時間10分05秒
京都産業大学 時間10分20秒
城西国際大学 時間10分41秒
日本体育大学 時間10分50秒
城西大学 時間11分00秒
10 白鴎大学 時間11分23秒
11 日本大学 時間11分53秒
12 順天堂大学 時間12分20秒
13 大阪体育大学 時間12分49秒
14 立命館アジア太平洋大学時間13分12秒
15 関西大学 時間15分14秒
16 鹿屋体育大学 時間15分56秒
17 大阪人間科学大学 時間16分38秒
18 松山大学 時間17分13秒
19 京都光華大学 時間18分23秒
20 中京大学 時間19分43秒
21 福島大学 時間20分35秒
22 東北福祉大学 時間21分36秒
23 高岡法科大学 時間25分20秒
24 信州大学 時間29分04秒
25 北海道教育大学 時間29分55秒
OP 東北学連選抜 時間26分53秒



区 間 最 高
区間 距離 選手名 所属 タイム
6.0 松山 祥子 関西大学  19:14
6.6 後藤奈津子 日本大学  21:16
9.1 小島 一恵 立命館大学  ◎29:35
4.9 沼田 未知 立命館大学  ◎15:19
4.0 田中 華絵 立命館大学 ◎13:07
8.0 佐藤 絵理 名城大学  26:53

成績の詳細についてはこちら


バックナンバー
2008-2009 駅伝時評プロローグ
第20回 出雲全日本大学選抜駅伝
第85回 箱根駅伝予選会
第26回 全日本大学女子駅伝
第19回 東日本実業団女子駅伝
第40回 全日本大学駅伝
第24回 東日本女子駅伝
第24回 北陸女子駅伝
第20回 国際千葉駅伝
第28回 全日本実業団女子駅伝
男子59回・女子第20回高校駅伝
第53回 全日本実業団駅伝
第85回 箱根駅伝
第27回 都道府県対抗女子駅伝
第14回 都道府県対抗男子駅伝
第6回全日本大学女子選抜
第27回 横浜国際女子駅伝
2008-09駅伝時評 エピロローグ







Copyright (c) 2006 FUKUMOTO TAKEHISA. All Rights Reserved.