シャモニー編
恐怖のエギュ・ド・ミディからの大滑走。
あれは本当に天気の良い、とある1月のとある日のこと。
ガイドブックなどで読んでいて、出来れば挑戦してみたかった「氷河スキー」。でも本には「雪の多い2月や3月にしかほとんど催行されない」と書いてあったので半分以上あきらめていた。それが運がいいやら悪いやら、その年は予想外の大雪で催行されることになり、自分の足前も省みずチャレンジすることになったのである。 しかしいざ行けるとなるとそれはそれで前の夜は大騒ぎ。やれバックパックがないだの、板とストックはどうやってくっつけるのだの、お昼ご飯には何を持っていくだの、そもそも私なんかが行っていいのだの。 と言うのも、そもそも私はオフピステなんかで滑った経験なんてほとんどなく、圧雪車にしっかり固められたバーンが大好きな私。今回のスキー初日にそのきれいなバーンでクラス分けが行われ、私は難なく上級者クラスへ。ちょっと天狗になる。がしかしこれが不幸の始まりだったのだ。ガイドのピエールは「良かれ」と思い、私達を新雪たんまりのオフピステへバンバン案内するのだ。 ぎょえぇ〜 何だこの雪、何だこの斜面! 遅れる、遅れる。
シャモニーの町から一本のケーブルでつながれている(途中に鉄柱が一本もないのにはほんとビックリ)エギュ・ド・ミディ という展望台へ一気にあがる。そこは標高3000Mの世界。なんとなく空気が薄い。 この展望台からの景色は絶品で、目の前にはフワフワした モンブラン が見える。ケーキのモンブランとこの目の前にあるモンブランとは似ても似つかないなあ、など思いつつ、この日はのんびり景色を楽しんでいる場合ではない。ガイドの指示に従って、体にグループ全員(約7名くらい)が運命共同体となる命綱を結ぶ。そして左手にスキーとストックを持ち、滑走可能なところまで展望台から下って行くのだが、これがこの日の中で一番の恐怖!なのである。何故かって? |
|
狭い尾根のような所をおりて行くので左右とも、とても絶壁。 |
|
かなり急な坂で、もちろん雪が積もっているので足場が悪いし、足元はスキーブーツなので余計歩きにくい。 |
|
ころんでしまうとそのままサヨナラ?!左右どちらかの絶壁へ落ちる。そしてロープでつながれた他の仲間も道連れにしてしまうのだ。 |
|
うかうかしているとガイドのピエールが「GO!GO!(早く行け!)」と大声で鬼のように怒鳴る。
ゆっくりしているとスキーを持っている左手が凍傷になってしまうらしい。そんな事言ったって。 私は後半ほとんどお尻で滑って降りたのだった。 |
ごめんなさい。...私はとても臆病者なのでかなり大袈裟にに書いてしまいました。チャレンジしようと思っておられるそこの貴方、貴方なら大丈夫。
さて、板をはけるところまで到着したら、一安心。みんな今自分がロープにつながれ歩いて降りてきた所を見て、生きていて良かったと喜びを分かち合う。
とにかく、今までに目にしたことのない美しい山と雪と氷河とそして静寂の世界がそこにあるのだ。本当に行って良かったぜ! ちなみに今回のスキーは私のスキーに対する姿勢を大きく変えました。バックパックを背負って滑るようになったのこの時からです。また、どこへ行っても新雪があればそこへ突入して雪まみれになり、足のすくむような急斜面にも落ちてゆき、コブ、悪雪を積極的に滑るようになりました。それはひとえに「何処へ行ってもどんな所でも楽しく滑りたい」と言う思いからです。 |
![]()
そして、上へ上がったらあまり動き回らないこと。息が苦しくなって、ヒドイ人は気分が悪くなってしまいます。 |