ISO第3世代 12.ISO審査準備2

22.08.29

*この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在するものと一切関係ありません。
但し引用文献や書籍名はすべて実在のものです。


ISO 3Gとは

今日は朝一から打ち合わせだ。テーマは二つあり、ひとつはアメリアの研修計画で、もうひとつは今年のISO更新審査の準備である。
たぶん出席者は大内参与とアメリアだけだろうが、鈴木課長にも出てもらう必要がある。多くの戦いで、指揮者とか指揮系統がはっきりしないことが敗因になっている。磯原は指揮系統があいまいのまま進んで、最終的に責任を取らされるのは避けたい。
現実は、山内は磯原を私兵と思っているようだし、鈴木課長はなるべく磯原にタッチしたくない雰囲気である。職制上 磯原の上司は鈴木課長だから、彼に負荷や進捗を理解してもらわないと困る。もちろん責任も取ってもらいたい。

予定時刻より数分前に山内とアメリアが会議室に入るのを見て、磯原は鈴木課長に顔を出してほしいと拝み倒して会議室に連れてきた。

山内参与 「おお、鈴木君も顔を出してくれたか、よかった、よかった」

磯原はまた余計なことを言ってと、心中 山内参与を恨む。

鈴木課長 「負荷工数のこともありますし、課のメンバーの仕事の状況把握は義務でしょう」

磯原 「それでは始めてよろしいでしょうか」

アメリアの研修計画の説明は特に異議もなく終わった……と思ったら山内参与から要求がある。

山内参与 「アメリアの研修は大金がかかっていることで、うちの大川常務も内容と進捗を気にしている。また向こうのサステナビリティセクションのマネジャー……ディビスだったか、そこに毎月報告を出してほしい」

アメリア 「私は以前から週報を出していますが」

山内参与 「受け入れた方としても定期報告をしておいてくれ」

鈴木課長 「私は先方と面識もありませんが、私の名前で発信しても良いのでしょうか? 」

山内参与 「常務も気にしているから…私に送ってくれ、常務の確認を受けて向こうに送ることにしよう」

鈴木課長 「英語ですか?」

山内参与 「もちろんだ、簡単なものでいいよ。毎月A4 1ページでよい」

磯原 「承知しました。課長、私のほうで毎月末に報告書案を作り上申します。
ええと、次はISO更新審査の件です。過去の審査の状況を調べまして、これから実施すべきことと日程を簡単にWBSにまとめてみました」

山内参与 「簡単ねえ〜、これを見ると件名というか行数が100はあるぞ、」

磯原 「まあやることはたくさんあるということです。
ところで初めに申し上げておきますが、準備作業といってもどのような考え方で更新審査を受けるかを決めないと、一歩も進めないのです。
皆さんご覧の1ページ目は第1案で、その下に他のふたつの案があります」


みなは一枚目をめくり、二枚目をめくって眺める。

山内参与
山内参与

🖋
アメリアアメリア
鈴木課長鈴木課長
 
磯原磯原

鈴木課長 「昨年もISO審査があっただろう。磯原君はいなかったけど、昨年のものを調べてそれと同じ方法でシャンシャンと進めてほしい。あんなものに手間暇をかけないでくれ」

山内参与 「まあ、まずは磯原君の話を聞こう」

磯原 「本社は人の出入りが激しくて、本社がISO14001認証を受けたとき…それはもう16年も前になるのですが…当時の目的とか事情などをご存じの方はいないと思います。
ISO認証をするにはいろいろな方法があります。要するに上面を整えてそれを審査で見せるのもあり、会社の実態をあるがまま見せるのもあり。
また認証範囲を広くも狭くもできます。本社が認証したときは、本社の業務を含めていたのではなく、本社の家屋管理だけで認証していました」

鈴木課長 「家屋管理とはなんだ?」

磯原 「本社の仕事は何かといえば、アドミニストレーションでしょう。特に我が社では事業本部制をとっておりまして、新製品開発とか営業戦略などはほとんど社内カンパニーともいえる事業本部が実権を握っています。
本社はグループ全体の方向付けとか新事業への進出の検討とかがメインとなっていて、機能として財務、統制、共通事項の支援、複数の事業本部が関わるビジネスの調整などでしょう。

ISO14001の認証範囲といっても色々な意味がありますが、物理的には本社と支社と営業所などであり、組織的な意味では認証する部門を本社所属者と本社駐在者その他本社の業務を委託された関連会社などの、どこまでにするかということです。
ええとご質問されたことですが、本社ではいろいろな業務をしているわけですが、どこまで認証範囲に含むかもあるわけで、認証当時の範囲は、先ほどの物理的な範囲内の建屋の管理に限定されていました」

鈴木課長 「あれ、そうだっけ? 昨年の審査ではスラッシュ電機の環境ビジョンとか環境報告書なども審査されたが……」

磯原 「まだ話の途中です……2004年に初回認証されたときは家屋の管理だけでした。つまり紙ごみ電気と言われるものを決められた通り使っているかどうかの基本的なことでした。だから営業に言っても経理に言っても、質問されたのは紙の使い方、ごみの分別、電気の使い方だけだったわけです。営業で環境配慮しているかとか、経理が環境の観点で予算を見ているかなんてことはなかったわけです。

ISO審査は初回認証されると毎年維持審査というものが行われますが、これは審査時間も短く規格の全項目を見るのではありません。初回から3回目は、改めて全項目を審査する更新審査となります。
今から3年前の2013年は3度目の更新審査でした。そのとき家屋の管理だけではまずいと考えたようで、本社機能を審査の範囲に取り込んだのです」

鈴木課長 「余計なことをしたものだ」

磯原 「いやいや、そうではありません。家屋の管理だけというのは本当はまずいのです。ISO認証は環境保護が目的ですから、単にそこで発生する紙・ごみ・電気だけでは、まっとうな取り組みではありません。
本社なら先ほど言ったアドミニストレーションにおいて、環境配慮をすることが重要なわけですよ。であれば認証範囲にそれを含むのは当然です」

山内参与 「なるほど、そういう流れだったのか。本来業務を盛り込んだのは前進だろうな」

磯原 「ともかく3年前の前回の更新審査の際に紙ごみ電気を脱却して、本社業務を審査対象にしたわけです。ではそれが最終形態なのかというと、実はまだ未完成なのです」

山内参与 「どういうことかな?」

磯原 「山内さん、以前のことですが工場でISO審査の際に見せていた省エネ計画が当社グループの環境計画に基づくものでなく、ISO審査用に数字を取り繕っていたという問題がありましたね(第5話参照)」

山内参与 「うむ」

磯原 「あれと同じことが本社でも行われているということです」

山内参与 「本社でも? 省エネ計画が?」

磯原 「いえ、工場ではありませんから、省エネのプライオリティは低いです。問題とするのは、例えばマネジメントレビューとか、内部環境監査とか」

アメリア 「そうそう、本社ビルのエアコン温度設定基準とか廃棄物分別要領などもありましたね」

山内参与 「俺にも分かるようにSVOCで説明してくれ」

磯原 「まずISO規格にshallで書かれているものを要求事項といい、審査とはその要求事項を実施しているかどうか点検することです。
ところでISO規格の本文の後ろにアネックスというものが付いています。アネックスってホテルの別館とかの意味ですが、文書では付属書でしょうか……そこに「この規格では、組織の環境マネジメントシステムの文書にこの規格の箇条の構造又は用語を適用することは要求していない。組織が用いる用語をこの規格で用いている用語に置き換えることも要求していない(Annex A.2)」とあります

鈴木課長 「言っていることが分からん」

山内参与 「待ってくれよ……うーん、それを聞いて俺が思いつくのは、規格適合とは規格に書いてある通りの文書の構成とかタイトルではなく、意図していることをすれば良いということかな?」

磯原 「その通りです。マネジメントレビューというのは、経営者が種々の情報を受けてマネジメントシステムとか目標を見直すことです。でもその行為、つまり会議とか決裁をマネジメントレビューという名前で呼ばなくても良いわけです。
例えば執行役会議において環境担当役員である大川常務が報告して、それを受けて執行役会議で審議して必要なことを行えば良いわけです」

山内参与 「そうか…マネジメントレビューとは<マネジメントレビューという会議をすることでなく>マネジメントレビューの項に書いてあることをすることなのだな……当たり前のことで笑ってしまうな。
前も言ったが俺は管理責任者なので、昨年環境マニュアルなるものを熟読したよ。ええと、今のマニュアルでは管理責任者が半年毎に会議を開催してそこで経営者である環境担当役員に報告し、指示を受けて云々とある。
ところで今磯原君が言った方法では、大川常務が管理責任者で社長が経営者でないとまずいのか? 先日磯原君とアメリアと話し合ったとき、誰が経営者か、誰が管理責任者かというのは決着がついてなかったな」

磯原 「結論は出てませんでしたが、それは誰でも問題なく、山内さんが管理責任者としても、同じことが言えます。
つまり例えばですが、半期ごとに管理責任者は環境活動について定期報告をする。その内容は…規格で決めたことを報告することにして、経営者である環境担当執行役から指示を受けて…とすれば同じです。
ここで大事なのは経営者とか管理責任者がだれかということではなく、マネジメントレビューに何を充てるかということが論点です」

山内参与 「分かった、分かった。規格に書いてある文言とおりでなくても、することをすれば良いのだな」

磯原 「おっしゃる通り。今までISO審査で見せていたのは規格の書かれた通りの文書名や会議名のもので説明していたわけで、会社の実際の動きとは違っていたということです」

アメリア 「ゴミ箱にA4サイズのコピーした紙が貼ってありますよね。あれはビル管理会社が作って、構内に置いてあるゴミ箱には全部貼ってあるそうです。あれを見て分別はわかりますよね。省エネも部屋ごとに注意事項が掲示してあります。
でもISO対応として総務が作成した本社規則に「本社における廃棄物の分別基準」なんてのがあるのです。2ページもので1ページには分別が大事なことが麗々しく書いてありまして、2ページ目はビル管理会社がゴミ箱に貼っているものと同じです。
省エネも全く同じです」

鈴木課長 「つまりそんな規則を作るのは無駄ということか?」

アメリア 「無駄でしょうねえ〜、屋上屋を架すというか、暇なのかと思ってしまいます。
それに、会社規則というものはもっと上位概念ではないのでしょうか。各管理者の決裁権限を定めるなど、施行令や省規則ではなく法律のようなものと思います。ゴミの捨て方とかエアコンの設定温度を決めるレベルではないと考えます」

山内参与 「すまん、今の話をを一般化するとどういうことかな?」

磯原 「実態と異なる説明をしているものや、わざわざISOのためにしている会議などのイベントや文書があるということです」

山内参与 「なるほど、それをどうしたいのか?」

磯原 「どうしたいのかといえば、現実をあるがままに見せて審査を受けるべきと考えます。現実を見せるのが理想であることは間違いありません。しかしそうせずに、審査員から見て分かりやすい名称で分かりやすい書類を作って見せる、つまりそういうのが求められた、あるいは求められていると考えたから無用なものを作ったのでしょうね。

もちろんどちらであっても、メリット・デメリットがあります。ただいずれにしても二重帳簿はあるべき姿ではないでしょう。
いずれにしても冒頭に申し上げたように、どのような考え方で更新審査を受けるかを決めないと、準備に取り掛かれません」

山内参与 「つまり昨年までと同じく二重帳簿を見せるか、泥臭いものを見せるかということだな?」

磯原 「さようです」

鈴木課長 「今ここには昨年までどころか、ISO認証を担当したことがある者がいない。昨年の資料を日付だけ変えて審査を受ければ、一番手間がかからないぞ」

磯原 「課長のおっしゃる通りです。ただ一時的ならともかく、その二重帳簿をいつまでも続けるのでしょうか? 来年以降もですか?」

山内参与 「マネジメントレビューその他の会議を開いたり、必要もない資料をたくさん作るというと人聞きが悪いが、そうした時の弊害はなんだ?」

磯原 「無駄だからです。その費用たるや、ウェージを考えると年間100万以上はいくでしょう。
そしてそれを是とするなら工場に対してスラッシュ電機グループの環境計画を尊重せよと言えなくなります。それはつまり我が社のシステムの形骸化そのものです。
本社はグループに対して、ISO認証は、いやISO関係なく会社の運営はこうあるべきと範を垂れるべきでしょう。

言い方を変えれば、我が社はISO14001ができる以前から、まっとうな環境管理をしていたはずです。従来からしていたことでISO14001を満たしているとは考えられませんか。だとすると過去からしていた会議とか報告とか点検で規格適合のはずです」

鈴木課長 「磯原君、そう考えるのは君がISOに詳しくないからだ。私が工場で初めてISO14001の審査を受けたときは、文書も記録も会議も内部監査も、規格の文言通りでないために不適合が続出して、審査がやり直しになったよ。

それに会社の会議でも規則でも、環境以外のこと、例えば費用とか諸手続きとかも書いてあるわけで、審査員がそれを見て適否の判断ができないと最終的に不適合になるだろう。例えば執行役会議の議事録を見せてマネジメントレビューをしているといえるか? もちろん環境についても審議するだろうけど、品質問題とかセクハラとか株価対策とかもあるだろう。
そもそも執行役会議の議事録など社外の人に見せられないぞ」

山内参与 「なるほど、社外秘どころか極秘とかあるからなあ〜」

磯原 「細かいことになりますが、議事録の必要な個所だけ見せるということはできないでしょうか?」

アメリア 「守秘契約とかしてないのですか?」

磯原 「認証機関との審査契約に認証機関は守秘義務を負うとありますが、過去のものを見ると審査員個人とはしていないようです。もっとも秘密が漏れたら、契約違反といっても取り返しがつきませんけど。
株価に関わるようなことが漏れたらインサイダーで刑事事件、更には社会問題になりますか…」

山内参与 「そういう情報であれば、審査のときまで何か月か経過しているから重要性は薄れるだろうけどな。
まあ執行役会議くらいは協議すればいいや。つまり我々が今しなければならないことは、どの方式で行くか決めることだな。そのためにはそれぞれの準備時間がいかほどかかるかの見積もりと、メリット・デメリットをまとめることか。
他にもあるか?」

磯原 「はい、認証機関の力量ということもあるかと思います」

山内参与 「認証機関の力量?」

磯原 「覚えてらっしゃるでしょうか。4月末に認証機関を集めて、工場の審査で出されたものを見るだけでなく、工場の上位組織である本社が対外広報しているグループの環境計画との整合性を見てほしいと要請しましたね(第7話参照)」

山内参与 「ああ、あれか……」

鈴木課長 「そんなことをしていたとは知りませんでした」

磯原 「あのとき認証機関を呼んで話をしましたが、認証機関によってだいぶ温度差があったのを覚えていらっしゃいますか?」

山内参与 「温度差というか、認証機関の力量というのかレベル差は確かに大きかったな。
(山内は手帳を取り出して開く)
ふんふん、4社の内一番良いと思えたのがジキルQAで、次が真実QA、大日本認証までは可のレベルか。品質環境センターは不可だね」

磯原 「ご存知と思いますが、本社の認証はその品質環境センターです」

山内参与 「なるほど、昨年の審査員の質問を思い出すとなるほどと……
となると磯原君の言う認証機関の力量という言葉は理解できる。あるがままに実際を見せて、審査できる認証機関とできない認証機関があるということか」

磯原 「そこまでは言いません。しかしジキルQAならともかく、品質環境センターとなれば事前に我が社の考え方を変えることを説明して、それに対応できるか確認する必要があると考えます」

鈴木課長 「そんな面倒なことをするより、現状で素早く形をそろえたほうが良いと思うぞ」

山内参与 「アメリア、君の国なら表裏ある制度を運用できるか?」

アメリア 「アメリカ人は日本人ほど、本音とたてまえの使分けが器用じゃありません」

山内参与 「それは不器用ではなく正直というのだよ。アメリアこそダブルスピークが得意だ」

鈴木課長 「山内さん、発想としてはいろいろあるでしょう。しかし時間もありませんし、改革することによるメリットも大きくないように思えます。このさいサッサと処理したほうがよろしいではないですか」

山内参与 「磯原君、本社の認証機関をジキルQAに切り替えることはできるのか?」

磯原 「切り替えることは可能です。切り替える手間がかかることもないです。審査費用は認証機関によって違いますね。
審査費用は審査工数かける1日1人の審査単価です。審査工数は認証範囲の人数と業種によって決まりますが、認証機関によって多少幅があり認証機関によって2割くらい違うと聞いています。
審査単価は審査員1人1日の費用で、認証機関によって異なり安ければ7万とか高ければ14万とか。もちろん料金の値引き交渉はできます。まあ、話をして見積もりを取らないと正確なところはわかりません。

それよりも山内さん、一番の問題は業界設立だということがあります。当社から出向者を出しているとか、株主であることとかいろいろしがらみがあります」


参考までに: 審査費用の中身はいろいろあるが、交通費や旅費は大体予想がつく。一番気になるのは審査工数と審査単価だろう。
審査工数は「IAF MD 5:2019品質、環境及び労働安全衛生マネジメント システム審査工数決定のための IAF基準文書」に定めているが、この表は人数と組織の複雑さのマトリックスとなっている。だが複雑さの判断は認証機関によるらしく、同じ会社が認証機関を切り替えたことで審査工数がそのままということはまずなく、3割位違うのは普通にある。
審査単価(1人1日)の金額は認証機関の公表値は、ほとんど10〜15万であるが、ネットでは実際はその7掛けとか言われる。
なお、価格表を公開している認証機関もあるし、公開していないところもある。情報公開してほしいところだ。

山内参与 「えっ、品質環境センターって、うちの入っている業界設立か?
となるとまずすることは、まっとうな審査ができるかどうかを聞くことか……あのレベルではしょうがないねえ〜
待てよ、あのとき我が社の工場で認証が品質環境センターでないものも結構あったね?」

磯原 「はい、30工場の内、品質環境センターが16工場で、大日本が8工場、ジキルQAが3工場、真実QAが3工場でした。
私も興味を持ちましていきさつを知る人を探して聞きました。いろいろ事情というか経緯がありました。
まず日本でISO認証が始まったのは、EU統合の直前、1992年でした。そのとき業界設立の品質環境センターはまだありません。すぐにISO認証するとなると、業務をしている日系の認証機関は、それまで計測器の校正やULや輸出のための試験をしていた大日本認証でした。多くはそこに依頼しました。

しかし原子力関係は大日本は認定を受けておらず、そのカテゴリーの認定を受けていた外資系のジキルQAとか真実QAに審査を依頼したのです。一旦認証を受ければ特段問題なく価格が高くなければ変更しませんし、ISO9001の認証を受けたところに、その後登場したISO14001も依頼するのは自然な流れです。
もちろん業界設立の認証機関ができてからは、そこに依頼するようにと本社が通知を出しております。しかし命令ではありませんし、客先が認証機関を指定することもあり、統一することは難しいです」

山内参与 「うちで原子力関連製品を扱っていたか?」

磯原 「原子力発電所の指定区域内で使われるものは、すべて原子力関係になるそうです。例えば監視カメラとか構内放送設備や非常用発電機とか…」

山内参与 「なるほどな〜。人に歴史あり、何事にも歴史はあるか……
ところでいきさつを知る人って誰だ?」

磯原 「生産技術部の小山内さんです(第6話参照)」

山内参与 「小山内さん アハハハ、いや、俺が入社したときに文書管理を教えてくれた人だ。彼こそまさに文書管理の主だね」

磯原 「まもなく定年とおっしゃっていました」

山内参与 「そうか、一度飲まないとならないな」


山内はしばし沈黙する。アメリアは立ち上がり部屋を出る。

山内参与 「磯原君、アメリアはどうかね?」

磯原 「優秀ですね。修士とはいえ、入社1年目で彼女ほど会社の仕組みを知って動けるとは思えないです。しかもここに来てまだ4か月ですよ」

鈴木課長 「彼女は昨年入社だから2年目だよ」

磯原 「日本ならそうですが、アメリアから昨年6月卒業で、9月入社だと聞きました」

山内参与 「アメリカのマスターなら、アメリアのような者ばかりなのかな? それとも彼女が特別なのか」

磯原 「アメリアも聖人君子ではありませんよ。ちょいといないと思うと、ユミちゃんとオアゾ行ってお茶してたりしますからね」

ペットボトルのお茶
アメリアがお茶のペットボトルを4本載せたトレイを持って戻ってきた。

アメリア 「私の噂してたでしょう」

山内参与 「アメリアは優秀だと話していた。
ではせっかくだから、お茶を飲んでまとめに入るか」


うそ800 本日の警告

日中、エアコンをかけずにキーボードを叩いていたら、卓球から帰ってきた家内に「老人は熱中症になりやすいからエアコンをかけろ」と言われた。
金曜日は千葉でも32℃だった。


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