ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
ゼア・ウィル・ビー・ブラッドの試写会に行ってきた。うーむ、落ちのすごさに圧倒されたまま席を立つことになった。
映像美はリアリズムに貫かれていて、2時間半以上の長尺でも飽きることはなかった。構成も見事。主役のダニエル・デイ=ルイスはもちろん、脇役達の演技もすばらしい。正直2時間を回ったところで、どうやって落ちを付けるのか想像できなかったのだが、衝撃のラストが待っていた。これがブラックユーモアあふれるひどいもので、おいおい、こんな終わりではとてもじゃないけど感動は出来ないよ、と苦笑した。ひどい、ってのは褒め言葉ね。しかし人に勧めづらい映画だなあ。面白いのは間違いないけど、勧めちゃうと人間性を疑われそう。
しかし主人公の複雑な性格は表現するのが難しい。こういう奴らがいたから、アメリカの石油業が発展したのだ、というのは分かるけど、だったらそれは良いことだったのか?と言う疑問には何も答えない。答えなくて良いんだけど、歴史に整合性を求めるのは間違い、と言うことを思い知らされる。こういう人物が田舎のコミュニティで軋轢を起こす様が表現されているのもすごいなあ。
パンフレットに書かれている、「欲望」というキーワードは当たらない。むしろ「人間不信」や「人間嫌い」という方がぴったりくるような主人公である。映画にほとんど女性は出てこない。主人公は立派な屋敷に住むようになるが、それを追い求めていた気配はない。女に惑溺する偽の弟には軽蔑を感じていたようでもある。ひたすら酔いつぶれていたようだが、頭は覚醒している。成功を収めても幸福感は得られない。むしろ人とのつながりを拒否している。人物背景についてはわずかしか語られないので、なぜ彼がこのような価値観を持つに至ったかは想像するしかない。
美しく、かつ荒涼とした油田地帯である。
ラベル: 映画
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