経営に寄与する審査 09.01.25

どの認証機関も「経営に寄与する審査を行います」と語る。
おっと、全部というと語弊があるかもしれない。私は日本国内に存在するすべての認証機関の広告やウェブサイトを確認したわけではない。でも数多くの認証機関は「経営に役立つ」とか、「組織に役立つ」という言葉を宣伝広告に使っている。
具体例として気がついたところをABC順に示す。
 AUDIX 組織に役立つ審査(雑誌広告)
 DNV 企業価値向上のISO審査(雑誌広告)
 JACO 経営に役立つ審査を(ウェブサイトの下井社長談
 JCQA 経営に役立つ審査を行う(雑誌広告)
 JICQA お客様にお役に立つ審査(雑誌広告)
 JQA お客様組織の価値向上(ウェブサイト)
 JSA 組織に役立つ審査(雑誌広告)
 J-VAC 組織のビジネスに付加価値を与える(雑誌広告)
 MSA 経営に役立つ信頼のおける審査(雑誌広告)
 SAI 経営の改善に寄与する(ウェブサイト)

「経営に寄与する審査」なんて言葉は耳にたこができたというか聞きあきたという感じだ。しかし「経営に寄与する審査」といかなるものなのだろうか? 軽く聞き流せばなんということもないが、考えてみればすごいことである。本当を言えば、なんだかよくわからない。
本日は、久しぶりの休みである。(風邪をひいて休日出勤しないというのが本当であるが)経営に役立つという意味をかみしめたい・・
もっとも過去に同じテーマで何度も書いているが、私のウェブサイトがマイナーで誰もお読みにならないようなので、同じテーマでまた駄文をひねる。
審査の質第三者審査登録の改善策考理想の審査審査機関格付け審査所見

「経営とは何か?」といえば、一般的には「経営とは人、金、物、情報といった自社の経営資源を、どこに集中させ配分していくかを選択し、目標達成のためにもっとも適した手段を選択し実行すること。」と理解されているらしい。
もっとも「経営とは何か?」とそのへんの評論家・学者・経営者に問えば、それぞれが一家言あるはずであり、経営の定義の一致を見ることはなかろう。そして認証機関にも審査員にも、それぞれが思い描く経営というものがあるのだろう。すると経営に寄与するとは何を語っても誰かの定義の経営に寄与することになり、どうでもいいことなのだろうか?
ところで世の中には経営に寄与するアドバイスを専門とする人々いるし企業もある。最大手にはマッキンゼーとかボストンコンサルティングなんてのがある。ちなみにマッキンゼーの人たちは白いシャツに赤ネクタイだそうだが、私は今までそういうおしゃれな人に出会ったことはない。
そういう国際的な大手でなくても、あなたの街にも経営コンサルとか中小企業診断士とか看板をあげている人もいるし、税理士、弁護士、行政書士なども経営コンサルタントを行っているケースは多い。
私は大学には行かなかったが、工場管理とか生産性向上などの本を読んで自分の仕事に役に立てないか?活用できないか?ということを考えて実行して40年になる。もっとも自分の職階からいって正しくは経営というより管理というレベルに関心があった。
19世紀フランスにアンリ・フェイヨール(ファヨールとも)という人がいて、傾いた鉱山の社長になりリストラと管理方式を変えて立て直したという。フェイヨールは経営管理の礎クラスだろう。
フェイヨールだけでなく、偉大なフレデリック・テイラーなどによって、管理の仕組みや方法を変えて効率化し業績を上げることは過去より行われてきた。

パフォーマンス










会社を良くするという意味もさまざまであろうが、組織を変えたり、仕組みを変えたりすることによって、業績が伸びるということも確かにあるだろう。しかし企業が提供する製品やサービスを良くするにはいつも語っているように、仕組み改革だけではできない。
物事をなすには、固有技術、仕組み、関係者の意思、意欲がなければならないのだ。
ISO9001にしてもISO14001にしても、マネジメントシステムの規格と自称している。果たして、マネジメントシステムの規格はこの三つをカバーしてくれるのだろうか?

さて経営に寄与するということについてだが、上記の3つの観点においてISO審査はどのように経営に寄与することができるのだろうか?
ドラッカーが半世紀前に語ったように、企業の最終目的が継続することなら、時代に合わせて製品を変えていく、事業を変えていく、存在目的そのもの定款を変えていくということが必要である。
さて、ISO審査による経営に寄与するとはどの位置に当たるのだろうか?
 その守備範囲はどこにあるのか?
 経営コンサルができないところを補うものであるのか?
 経営コンサルと守備範囲を争うものなのか?
ところで、コンサルタントはIAF基準もJAB基準もISO規格も無縁である。法に関わることになると弁護士法との絡みはあるが、弁護士が経営コンサルを行うときはそれも問題にはならない。というかそれこそが弁護士の存在意義でもある。
つまり、経営に寄与する審査とは、企業の相談に乗らず、改善に協力しないことを言うのでしょうか?
それは経営に寄与するのでしょうか?

本日の仮説
どう考えても、経営コンサルに比べて審査が経営に寄与するとは思えません。
ひょっとして、経営に寄与する審査とは、審査に付ける枕詞なのでしょうか?
../kita.gif 驚くことはありません。例をあげますと、朝鮮民主主義人民共和国、俗に北朝鮮と呼ばれている国があります。あの国は民主主義でもなく共和国でもありません。民主主義も共和国も単なる枕詞のようです。
経営に寄与するということも、それと同じという可能性もあります。

本日の懸念
「環境にやさしい」という言葉は企業宣伝では禁句
「マネジメント」という言葉も形容詞をつけないと禁句(cf.ISO9000 3.2.6)
「経営に寄与する」と言う言葉も誇大広告では?
不当景品類及び不当表示防止法
第4条 第1項
事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号に掲げる表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示すことにより、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示



ぶらっくたいがぁ様からお便りを頂きました(09.01.25)
ほとんどの場合、「経営に寄与する審査」というのは単なる宣伝文句であろうと思います。「あなたの声と受信料で公共放送」とほざきながら、実際には正当な視聴者の声を一切聞き入れようとしない某放送局のようなものです。
もしホンキで経営に寄与すると考えているなら、「方針に『一般に公開する』という文言がありません」などとアホみたいなことを真顔で指摘するような審査員がいるはずがないですし、そんなアホな審査報告書を承認する判定委員会も存在するはずがありません。
そんなキャッチコピーを書かないと、新規のお客の気を引くことができないのですから、いたしかたないと思います。
しかし、問題は既存のお客です。「長い間、おたくで審査してもらっているけど、一向に経営的なメリットが出てこないのはなぜでしょうか?」と受審組織から詰問された場合、その認証機関はどう答えるのでしょうかね?
興味シンシンです。
その場合、組織は認証機関の評価、すなわち“供給者の評価”をどのようにしているのでしょうか?
また、認証機関はその評価の結果をどのように判定するのでしょうか?
え? それは審査の対象外? それはないでしょう。

たいがぁ様
早速の突っ込みありがとうございます。
おっしゃるとおりですね
仮定の話ではありません
長い間、おたくで審査してもらっているけど、一向に経営的なメリットが出てこないのはなぜでしょうか?
私も不思議です。
答えは経営に寄与しないからなのでしょうねえ〜

ということは経営に寄与するとは誇大広告なのかウソだったのか?
消費者保護法は関係ないとしても、詐欺罪では訴えることができるのでしょうか?
まあ、めんどくさいことせずに認証機関を変えるか、辞退するのが最適解でしょうか?

ぶらっくたいがぁ様からお便りを頂きました(09.01.25)
おばQ様 レスありがとうございます。
まあ、めんどくさいことせずに認証機関を変えるか、辞退するのが最適解でしょうか?
自己宣言にするには時期尚早ということであれば、認証機関を代えるしか選択肢はありません。
その場合、どこも金太郎飴のように「経営に寄与する審査」をキャッチコピーにしていますから、その真贋というか、いかに自社のニーズにマッチした審査をしてもらえるかを見抜く眼力が組織側には必要になります。
たいていの商品は、試供品の提供やサンプル出荷、あるいは気に入らなければ返品といったトライの方法があるわけですが、こと認証サービスに限ってそれがないのは不思議な話です。有償か無償かを問わず、模擬審査をしてくれる認証機関を私は1社を除いて他に知りません。
認証サービスほど、その企業にとって管理技術の行く末を左右する重大な購買品は他にはないと思うのですがね。
「経営に寄与する審査」を標榜するのであれば、それを実証するための方法を示して欲しいものです。

「眼力」などと大層なことを言わずとも、カンタンに見抜く方法を思いつきました。
認証機関がセールスあるいは契約に来た際に「経営に寄与する審査とは具体的にどういうことか?」と質問すればよいのです。おそらく、あいまいな返事をするでしょうから、「では、どういう状態が“経営に寄与する”ことになるのか、定量的に示してください。そして、それを保証できるのなら契約しましょう」と申し入れるのです。
これに満足のいく答えのできる認証機関はホンモノでしょう。

たいがぁ様
もう我々二人で経営に寄与する審査とは何かという結論を出してしまったようです。
そのうち、認証機関の関係者とか審査員から突っ込みがあるでしょうから、それまで寝て待ちましょうか


ヤマダン様からお便りを頂きました(09.01.26)
経営に寄与する審査について
認証機関の「経営に役立つ」とか、「組織に役立つ」という言葉の誇大広告に対して、なぜ、公正取引委員会は動かないのでしょうか。
“経営に役立ってはいない”が、“大きな損害は与えていない”からでしょうか。(無意味な指摘の処理のために無駄な経費はかかるでしょうけど。)
会社は、大きな損害を与えられそうならば、他の認証機関に登録移転するか、ISO9001、ISO14001そのものを止めれば良いと考えるから、公正取引委員会に直訴しないのでしょう。

ヤマダン様 毎度ありがとうございます。
結局被害者がいないというか、告訴する人がいないからでしょうね。
そもそも、第三者認証というものの水準というかレベルがどのくらいなのか?を知っている人はまずいないでしょう。といいますのは、二つ以上の認証機関の審査を同時に受ける人はまずいません。認証機関を切り替えても時間的、場所的に違いますので1対1の比較ができません。
だから、この審査がお金の価値があるか・ないかを判断できません。ですからこれが経営に寄与すると言われて、この程度かと思えばそれまでです。
それと一般的に認証をいただくというイメージが強く、審査を受ける側が一段低いと思われていることもあるでしょう。製品を買ったとき不良品だというのは普通ですが、偉い人に見てもらっているという認識では文句を言いにくいのではないでしょうか?
もちろんそれがあるべき姿ではないことは間違いありません。
これから経済も厳しくなり、費用対効果を求めるようになれば、否が応でも他の認証機関に登録移転するか、ISO9001、ISO14001そのものを止めれば良いと考え実行するようになるでしょう。
まあ、身から出た錆でしょう。

あらま様からお便りを頂きました(09.01.26)
経営に寄与する審査
佐為さま あらまです
寝てお待ちになっている間に失礼します。
「経営に寄与する審査」というキャッチコピーは、それはそれでいいと思います。
「審査」を商品として捉えてみれば分かりやすいと思います。
たとえば、先日、小生は自動車のタイヤ交換をしたのですが、製品を選ぶときに「燃費」というキャッチフレーズに惹かれました。
つまり、「燃費に寄与するタイヤ」ということで、そのタイヤを選んだわけです。
しかし、それではそのタイヤに履き替えたから、絶対に燃費がよくなるかは、そのタイヤに期待していません。
期待しているのは、そのタイヤを使いこなして、実際に燃費を向上させる自分の「力量」にです。
つまり、そのタイヤの特性を理解して、燃費を向上させるように努力する義務が購買者に課せられたと考えます。
普通でしたら、今までと同じような運転の仕方でも、そのタイヤに履き替えることで燃費が向上すると考えるでしょう。
しかし、実際に「転がりやすい」タイヤに交換すると、ついアクセルを踏んだり、急ブレーキをかけたくなるものだと思います。
つまり、性能のよい車に乗り換えたのと同じ気分になるのです。
そうなると、エコ運転から離れた乱暴な運転になり、かえって燃費が悪くなるものです。
そういった心理は、人間は誰しもが持っていると思います。
男なら、美人を前に心が震えると同じことでしょうか ?
そういうことで、「経営に寄与する審査」も、その結果がよいか悪いかは、そのサービスを受けた経営者に責任があると思います。

あらま様 毎度ありがとうございます。
うーん、哲学的というか、深謀遠慮というべきか??
うっちゃりというわけではありませんが、質問です。
すべてのタイヤが「燃費に寄与するタイヤ」と称して売られていたらどうしましょう?
なにしろ今現在、経営に寄与する認証機関ばかりなので・・・


あらま様からお便りを頂きました(09.01.28)
燃費に寄与するタイヤ
佐為さま あらまです
全ての新しいタイヤのキャッチコピーが「燃費に寄与するタイヤ」としても、それはウソではないと思います。
新しいタイヤはグリップがシッカリしている、つまり空回りが少ないので、伝動率が高いわけですね。ですから、燃費向上に期待が持てます。
さて、「転がり係数」の低い エコタイヤ ですが、小生は軽自動車のオートマチック車をエコタイヤに替えてもそんなに意味がないと思います。
よく転がる・・・ということは「慣性運転」に効果があると言うことだと思います。
つまり、ギアをニュートラルに入れて走行したときに「よく転がる」わけです。
さらに、重たい車を「慣性運転」させれば、さらにその効果があるでしょう。
ですから、燃料が高騰したとき、トラック業界の中では、多少高くてもエコタイヤに履き替えた会社もあったそうです。
そんなわけで、普通車のオートマチック車をエコタイヤにしても、そのエコタイヤの特性は活かされないと思います。
このように、エコタイヤと称しても、その特性を理解していないと、せっかくの効果を得ることができないと思います。
『審査』についても、同様なことが言えると思います。

あらま様 毎度ありがとうございます。
車については乳母車とスポーツカーの区別もつきませんので、あらま様のおっしゃる通りだろうと思います。
ただ、『審査』についても、同様なことが言えると思います。とは?
前文に代入すると、
このように、経営に寄与する審査と称しても、その特性を理解していないと、せっかくの効果を得ることができないと思います。
つまり企業側で、経営に寄与するだろう!そのはずだ、そうに違いない、間違いない!と信じることが必要だということでしょうか?
やはり、いまいち納得しがたいです。


ヤマダン様からお便りを頂きました(09.01.30)
燃費に寄与するタイヤ
私の車はオートマチック車です。
昨年10月に系列会社が経営するガソリンスタンドで4本のタイヤをエコタイヤに変えました。(テレビのCMで転がるタイヤと宣伝しているやつです。)
するとどうでしょう。ガソリンスタンドから公道に出てみると、ハンドルは軽いし、アクセルもそんなに踏み込まなくてもスピードが上がるし・・・
エコタイヤで燃費が上がるのは、嘘ではなさそうですよ。
認証機関の誇大広告とは少し違うと思います。

ヤマダン様 毎度ありがとうございます。
つまり、すべての会社が『当社は良い』といってもそれは正しいこともあるということですね。
おっしゃるとおり、顧客がそのように感じたり、実測値でそれが裏付けられたなら、それは真実であるということが立証できると思います。
しかし『経営に寄与する』といいながら、顧客がそれを認識できない場合は、1社だけが語ろうと、すべての会社が語ろうと、それは事実ではないということでしょうか?
うん、なるほどそうですね
考えてみれば、はじめから他社に比べてとか比較広告ではありませんから、絶対値がどのくらいかというだけですね。
反省!

あらま様からお便りを頂きました(09.01.30)
佐為さま あらまです
このように、経営に寄与する審査と称しても、その特性を理解していないと、せっかくの効果を得ることができないと思います。
つまり企業側で、経営に寄与するだろう!そのはずだ、そうに違いない、間違いない!と信じることが必要だということでしょうか?

そのとおりです。・・・といいますか、それが悲しい実情だと思います。
弊社のような零細企業は、元請の大企業の言いなりで、経営についても元請企業が指定したコンサルを受け入れざるを得ません。
これにはお付き合いがある以上、選択の余地がないわけです。
そのためには「信ずるものは救われる・・・」と、自身に言い聞かせるしかないわけです。
そして、実際に誤った指導を受けて損害が生じても、仕方ないと泣き寝入りするのか零細企業の実態ではないでしょうか。
それから、弊社のような不良企業は、審査員とかコンサルタントの言うことを真剣に聞かないものです。
実情に合わない・・・とか、外部の人間に何が分かるか・・・などと、最初から決めてかかる傾向が企業側とか社員の中にあると思います。
しかし、後日、審査員の言うとおりだった・・・ということが多々あります。
それは、信頼関係が構築されていない証拠で、その原因は、自社が選んだ審査ではない・・・という気持ちがあるからだと思います。
こうした傾向は、職人肌と言いますか、頑固者が占めている零細企業によく見られるのではないでしょうか。
こんなだから、弊社のような零細企業は世間様の進化速度についていけないと思います。
ところが、同じような規模の零細企業なかでも、不良でない素直な企業は、審査に従順で、成長しているところがあります。
それは、上手に審査内容を理解して改善しているからだと思います。
そういうことで、小生の反省の意味を込めて、もっと素直であったなら、今頃、こんな苦労はしないのに・・・なんて思います。

あらま様 毎度ありがとうございます。
うーん、なにか身につまされます。
何事においてもコミュニケーションとそれによる相互理解、そして相互信頼は必要ですね。
信頼なくて期待がなく、期待なくて成果なしか・・・悲しいことです。
とはいえ、生まれ育ちがまったく違う人が任せるということも決断がつけにくいところです。
まあ、占い師が信用を得るには、まず占いが当たることが必要です。経営に寄与するというなら、少しでも改善してみせるということは必要でしょうね。
私が現場にいたとき、外注指導なんていけば、まず私自身の腕前をみせて、早く良い仕事ができるというところを見せないと、指導してもらうことはないから帰れと言われました。
経営に寄与する、信頼しなさいと言う前に、周りを感心させるくらいしないとだめでしょうね


うそ800の目次にもどる