2020年代の環境側面

21.02.01

ISO14001規格の意図は、「遵法と汚染の予防」である。
えっ、知らなかったですか? 環境負荷低減も社会貢献も自然保護よろしいが、まず最低限は法規制を守ること、そして事故を起こさないことである。法を守る、事故を起こさないなんて低レベルと笑うかもしれないが、社会貢献とか自然保護なんてしていても法違反とか事故が起きれば、それをしてない時よりも叩かれること必定である。ゆめゆめ忘るべからず。

そして「遵法と汚染の予防」を実現するためには、法規制をうける「もの(物やプロセス)」と環境に影響を与える「もの」を把握し、管理しなければならないということは自明の理である。
そうかな?なんて言われると困る。ISO14001の「リスク及び機会への取り組み」に書いてあることは、そういうことだ。

ISO14001ではそういう「もの」を「環境側面」と呼んでいる。私は過去四半世紀、なんで「側面」というのかと疑問に思っている。それは原文の「aspect」を、日本語に訳すとき単に「側面」を当てただけだ。訳語が不適当だと思うのは私だけではないと思う。
「aspect」が「側面」なのかということについて、私は過去何度も書いている。
英語の「aspect」には多様な意味があり、日本語の「側面」にも多様な意味があり、たまたま双方のひとつが合致したように思えたから「aspect」を「側面」に訳しただけだ。
私はアスペクトといえば飛行機の翼しか思い浮かばない。

aspectと側面

環境側面を理解するのに国語辞典で「環境」と「側面」を読んでも意味がない。「環境側面」を理解するには、ただただISO14001の定義を読むしかないのだが、実際には定義もワケワカランしろものだ。
環境側面を理解する方法はただ一つ、規格本文の中で、環境側面に関して記述している個所をひたすら読むしかない。答えを言えば「法規制を受けるもの、管理しなければならないもの、関係者に教育しなければならないもの、経営者が認識する必要があるもの」である。少し文字数があるが平明でわからないことはない。

さて、ISO審査で、特に初回審査では環境側面をどのように把握したのか、どのような方法で著しい環境側面の決定をしたのかが争点となる。まさに一国の興廃を決するワーテルローか関ケ原か日本海海戦かというところだ。

手手



昔は重い方が速く落ちると信じられていた

私が審査員とチャンチャンバラバラしていた1997年から2010年までは、点数方式という、天動説、重いものが軽いものより早く落ちる、宇宙空間はエーテルに満たされているという妄想がISO審査員や認証機関に蔓延していた。


ちょっと待て
こんな文章を読んでいるあなたはどこかの会社のISO担当者であるに違いない。あるいはISO審査員でしょうか?
あなたの会社ではどのような方法で、環境側面を決定し、著しい環境側面の決定をしているのでしょう?
認証開始時にコンサルに教えられて点数方式にしたのでしょうか? あるいはISO審査員とのチャンチャンバラバラに疲れ果て、言われるままに点数方式(スコアリング法)を採用したのかもしれません。
いやいや確固たる信念のもとほかの方法を採用し、審査員からの茶々を跳ね返してそれを維持しているかもしれませんね。
まあ今から10年前まで、点数方式にあらずば人にあらずという考えがはびこっていたのは事実でした。審査員は平家一族だったのかもしれません。まさに教条主義です。そして教条主義とは常に間違っているのですよね 笑

そうじゃないと反論したい方、特に審査員や認証機関幹部からの突込みがあればうれしい。でも単なる反論ではつまらない。点数方式が正しいという証拠、あるいは点数方式でなくても適合にしたというエビデンスの提出を求めます。エビデンスがなければISO審査では通用しませんよね?
おっと、私は過去にスコアリング法がいかにくだらないかを書いております。反論する前にまずそれをお読みください。そしてこの論に反駁できると自信のある方のみお便りください。

怒り許せん
ともかく過去はとんでもない時代だった。とんでもないとは、無知なる審査員が邪教を信じ込んでスコアリング法にあらずば不適合にし、それに反論するものを愚か者と一方的に有罪判決を乱発したのだ。
おっと反論禁止、
そうでないとおっしゃる方は、当時を知らないか、あるいはそういう間違いを犯したご本人に違いない。


さて今はどうかというのが私の知りたいことです。
残念ながら私は8年前に引退してしまった。更に悲しいことに私の元の同僚(戦友)たち、そして知り合いのライバル(審査員)も敵司令部(認証機関幹部)もどんどんと退役し、情報収集もままならなくなってきた。
では現在ISO14001の認証を受けている1万3千社はどんな方法で環境側面を決め、著しいものを決めているのだろう?
本日は世の中に広く流通している情報をできる方法で調べた。その報告である。



うそ800 本日のまとめ

上記各調査項目ごとの星取表を作ってみると……

調査対象記載または推奨
スコアリング法アルゴリズム法
〇×法・ロジック法
a書籍
aISOコンサルのウェブ
a環境マニュアル
a認証機関
aウェブの決定方法解説a

認証機関は環境側面の決定方法を明確に例示しているところはなかった。
しかし日本自動車研究所認証センターは、「組織にお任せ」と明記しているから、審査でスコアリング法でなくても不適合とすることはないと考える。他の認証機関はそこを明言していないからスコアリング法以外は不適合となる恐れがありそうだ。
過去10数年、審査員とやりあってきた私としてはその懸念を払しょくできない。
コンサルはスコアリング法でなければならないと明言していないが、多くはスコアリング法を例示している。これは実際に環境側面の調査や決定をしたことがないからなのか、古式ゆかしい方法がセオリーと考えているせいか、あるいは審査でトラブルを恐れ保守的なのかわからない。
環境側面の決定方法をネットに公開している企業・大学の例をみると、古臭いスコアリング法に囚われていない組織のあることが心強く感じる。
今回の調査結果、スコアリング法でなければトラブルが起きることもあるのかなという印象を受けた。しかし〇×法とかアルゴリズム法と称するものを実践しているところが複数あることを見て心強く感じた。

ちなみに今から12年前、2008年におけるISO14001審査におけるナンセンスコールを除いた不適合の第2位14%は、環境側面の決定方法に関するものだった。
不適合どころではない、環境側面決定方法が点数法でないという理由で審査以前の門前払いも現実にあった。
12年という歳月はまさに隔世の感がある。今回の調査結果が実際であるならだが?


うそ800 本日のP.S.
今回の文字数はたったの4,500字、手抜きだ! なんて言わないでくださいな。ネットをググり、ヒットしたものをサルベージしたり、わざわざ八重洲ブックセンターまで行ったりと大変な手間だったのですよ。
そこまでしてこんな文章を書いているというのも馬鹿な話ですけど、





コマゴマ様からお便りを頂きました(2021.02.05)
ただいまISO14001の審査中です。
今回はなかなかいい審査員に遭遇しました。
私の審査でお互い幸せになれるような審査をしたいだとか、なかなかアクロバティックな規格解釈や、14001に関係ないことまで聞かれたり、御社のために!とありがたいアドバイス(笑)をしてくれたりとなかなか強者です。
件の審査員閻魔帳への記載をお願いしたいです(笑)

コマゴマ様 毎度ありがとうございます。
順調でなによりです。
でもね、いい審査員に遭遇って、喜んでいちゃダメでしょう。それって、めったにいないって意味じゃないですか!
コマゴマ様はお金を払って審査というサービスを買っているわけですよ。今日行った床屋はまともだなんて喜んではいけません。まともなのは当たり前。
床屋の腕がまともであっても、あいそが悪い、タバコ臭い、タメグチ、態度が大きい、そんなところがあれば即チェンジ!
もっともそんなこといったら床屋じゃなくて審査員ではだれもいなくなっちゃうか?


コマゴマ様からお便りを頂きました(2021.02.09)
審査終了!
ホントね。審査で幸せになってほしいとかコンサル的なのは求めてないですと釘も刺したし、それは審査に関係ないですよね、とわざわざ言わないと分からない審査員がまぁいますからね。
別にそんなん言わずとも分かって欲しいし、こういう事言われたなら次の審査では改めて欲しいですが、どうなることやら…。ありがたいことに個人でやってる会社のマニュアルまで頂いちゃいましたよ…
個人の問題もあるとして、認証機関でも教育というか色々やれることはあったと思うんですよね。それともそれ以前の問題なんですかね…

コマゴマ様 毎度ありがとうございます。
審査員にもいろいろあると思います。ほとんどが元大手企業で課長クラスだったでしょうから、指導する立場が身に付いちゃってるんでしょう。
だから教えたくて仕方がない、当然相手は部下同然、敬って聞くだろう、聞かない奴は査定を下げる ⇒ 不適合のひとつくらい出しちゃうぞ!
まあ、そんな人はいないかもしれませんが、私があいまみえた審査員の多くは御社を良くするために来ましたとか、指導するために来ましたとのたまいましたね。
呆れた!
まあ顔には出せず、笑うのを我慢して審査員のアドバイスを聞いてました。
自分がそれほどの者なら審査員でなくコンサルをしてください。コンサルなら堂々と指導できしかも成果によっては受け取る金額が違いますよ。
力量がないと蹴りだされますけど、


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