第55回 全日本実業団対抗駅伝競走大会



トヨタ自動車が初めての栄冠!

 第55回全日本実業団対抗駅伝競走大会(ニューイヤー駅伝)は1日、群馬県庁を発着点とする全長100キロ・全7区間のコースで開催され、トヨタ自動車が4時間51分56秒で初優勝を果たしました。2位には富士通が入り、連覇をねらった日清食品グループは3位に終わりました。
 レースは前々回大会と同じく、ゴール直前まで優勝争いがもつれる大激戦となりました。トヨタ自動車は安定感のある走りでつねに上位をキープ、最後はアンカーの熊本剛が富士通、日清食品グループの三つどもえの激戦に競り勝ち、初の栄冠にかがやきました。
 昨年の覇者・日清食品グループは1区で15位と出遅れましたが、エースの佐藤悠基が4区で区間賞の快走、2位に浮上、5区でいったんはトップに立ちましたが、最終区でのアンカー勝負に敗れ、惜しくも連覇を逃がしました。


◇ 日時 2011年 1月 1日(火=祝) 9時00分 スタート
◇ 気象 天気:晴れ 気温5.4 湿度35% 西南西2.1m
◇ コース:群馬県庁スタート〜高崎市役所〜伊勢崎市役所〜太田市尾島総合支所〜太田市役所〜桐生市役所〜JA赤堀町〜群馬県庁をゴールとする7区間100km
◇トヨタ自動車(宮脇千博、J・ツオー、高林祐介、尾田賢典、菅谷宗弘、松本賢太、熊本剛)

▽総合成績はこちら
http://www.tbs.co.jp/newyearekiden/


 アンカー決着で乱戦を断つ!
(2011.01.06)


▽みどころは最後の最後にやってきた!

 駅伝日本一をきめる大会である。
 7区間100qというのは、いかにもそれにふさわしい舞台なのだが、6区間85qを経過しても勝負の糸口はいぜんとしてむすぼれたまま。それで最終区の走者に決着がゆだけられるというのなら、それまでの6区間は、いったい何だったのか……ということになりはしないか。
 それもラストもラスト、残り1qからのスプリント勝負にもちこまれるというのであれば、1〜6区の区間賞も、ゴボウ抜きの記録すらもすべてが色あせたものになってしまう。本命不在、史上類をみない大混戦という実相のもたらした所産というべきか。観るレースとしてはおもしろい展開なのだが、いったいこれでいいのだろうか……と、いささか首をかしげてしまった。(笑)
 6区間をおわってトップをゆくのはなんと伏兵・安川電機、4秒遅れで富士通がつづき、そこから16秒遅れでトヨタ自動車、さらに3秒遅れで日清食品がつづき、トップから23秒差に4チームがしのぎをけずっていた。さらに日清食品から25秒遅れで旭化成がつけており、アンカーの出来次第ではいずれにもチャンスはあった。勝ちたい……という思いがまさる者に勝負の流れが一気になだれうつ。ガマン較べの様相となった。
 素早く反応したのは富士通の福井誠で、0.7qでトップをゆく安川電機の飛松誠の背後にピタとつけた。
 後ろからは日清食品の小野裕幸とトヨタ自動車の熊本剛が並走、競り合いながらトップ集団を追ってゆくという構図になった。
 福井と飛松が牽制し合い、3.7qあたりになって後続の小野と熊本が一気に迫ってくる。そして4,4qでは4チームが集団になってしまうのである。スピードランナーがそろうなかで、飛松には分の悪い展開、5qになって遅れはじめ、そのまま置いてゆかれて脱落してしまう。
 福井、小野、熊本は牽制し合いながら並走、後ろからは誰も追ってこない。こうなってしまえば容易に出られない。並走しながら様子をうかがうというかたち、ペースもそれほどあがらない。
 12qあたりで小野がペースをあげるが、あとの2人もはなれない。膠着状態がつづきペースがあがったのは14qあたりから。小野が14.8qでスパートをかけたが福井、熊本もついていった。
 そしてのこり500mになって、それまで小野と福井の背後で動かなかった熊本が猛然とスパートをかけトップに出た。虚をついたスパートというべきか。福井、小野も懸命に追ったが差はひらいた。だが、スピード自慢の福井がふたたび追ってきて、スプリント勝負になった。だが熊本の勝ちたいという思いがうわまわったというべきか。福井の猛追をふりきって、そのまま初優勝のゴールにとびこんでいった。


▽まさに大乱戦を象徴するようなレース展開

 37チームが参加しての本大会、これほど主力選手の故障が相次いだのも例がないだろう。そんなこんなでレースはハナから波乱模様であった。
 カネボウの木原真佐人が先頭集団を引っ張るかたちで幕あけたが、1q=2:57秒、5q=14:50というから超スローペースであった。
 横広がりの大集団となり、トップが次つぎに入れかわる。3.5qでは東京電力グループの若松儀裕が先頭に立ち、愛三工業の舩越大輔らがつづいた。
 5qになって候補の一角・コニカミノルタの山本浩之が集団のまえにほうにやってくるが、6qでは昨前回この1区を制したカネボウの木原が遅れ始め、レースは波乱含みとなる。7qでは警視庁・辻太樹が集団の先頭に顔を出し、日清食品グループの北村も9q手前では日清食品グループの北村聡がペースを上げ、先頭集団のトップに立つ。さらに9.5qすぎではプレス工業の橘明徳、日立電線の大和田匠らが代わる代わる先頭集団のトップにやってくる。11qになるとトヨタ紡織の中尾勇生、トヨタ自動車の宮脇千博らがトップをうかがうが、コニカミノルタの山本はここで集団からこぼれていった。
 レースがうごいたのは残り1qあたらから。11.5qで東京電力グループの若松がスパート、さらにマツダの松岡紘司、旭化成の大西智也らもやってくる。最後は旭化成の大西と東電の若松の競り合いとなり、両者はほとんど差がなく中継所へとびこんでいった。
 まさに混戦を象徴する現象というべきか。
 1区は軸になるランナーがいなかったせいもあるのだろう。2区がインタナショナル区間になっており、ひとたび順位がぐしゃぐしゃになってしまい、3区から本当の意味でのレースがはじまるという、本大会の特徴をにらんでの戦略もからんでいるのだろう。とにかく1区から果敢に仕掛けてくるチームがなく、上位と下位、ほとんど差というものがうまれなかった。トップの旭化成と30位のコニカミノルタの差がわずか26秒というありさまなのである。 
 そんなありさまだから2区も順位は大きく変転した。
 結果的には区間18位までをケニア人選手が占めることになるのだが、肌の黒い選手たちがどんどん上位にあがってくるさまは異様というほかない。
 3.5qではHondaのイブラヒム、NTNのワウエル、安川電機のアレムの3人が先頭集団 を形成、5q手前でイブラヒムがぬけだして、その後も快走、SUBARUのクレメントが2位に浮上してくる。後続では小森コーポレーションのダビリがごぼうぬきの20人抜きを達成、2年連続区間賞の日清食品グループのゲディオンも4位にやってくる。
 2区を終わってトップはHonda、2位はSUBARU、3位はNTN、4位には日清食品とつづき、富士通は33秒おくれの8位、コニカミノルタはトップから1分15秒おくれの18位という形成で3区からのリスタートにはいるのである。


▽大乱戦? 大混戦? 

 3区以降もトップはめまぐるしく変転した。
 2q手前ではSUBARUの古川茂がHondaの池上誠悟は抜いてトップに立つも、5qあたりから安川電機の北島寿典が2位に浮上、5.5qではトヨタ自動車の高林祐介が日清食品グループの保科作、Hondaの池上をとらえ3位までやってきた。
 6qではトップはSUBARU、安川電機とトヨタ自動車が2位グループをなし、4位グループとしてHonda、日清食品グループ、NTN、富士通が続くというありさまになる。
 勢いがあったのはトヨタ自動車の高林である。9qすぎで安川電機の北島をひきつれて、先頭のSUBARU・古川を吸収してしまうのである。
 そして11qすぎからは高林と北島がはげしくトップを争う。12.6qで北島がスパートをかけるも、高林がついてゆく。決着がついたのは12.8qであった。高林が渾身のスパート、差は一気にひろがった。本命といわれていたトヨタはここでようやくトップに立つのである。区間記録を12秒も更新するというルーキー・高林の快走で、トヨタは勝利への道筋をひらいたかにみえてが、初優勝はそんなになまやさしい道のりではなかった。
 10秒遅れで安川電機、富士通が46秒おくれの4位に浮上、Hondaは脱落したが日清食品グループが1分13秒遅れながら7位につけていた。
 最長距離の4区(22q)になって、その日清食品が台頭してくるのである。トップをゆくトヨタの尾田賢典は悠然とトップをゆく、背後で日清食品の佐藤悠基がやってくる。3qでSUBARUをとらえ、3.5qではNTNを、5.5qでは富士通の藤田敦史をとらえて3位まであがってくる。
 佐藤は驚異の追い上げで、12.6qでは安川電機の中本健太郎に追いついてしまう。佐藤の勢いはなおもとまらない。対照的にトップをゆく尾田は16.6qあたりから苦しくなり、佐藤が追い上げてその差は10秒、18qではとうとう背後にくらいついた。だが尾田もそこから粘って、ふたたび引き離しにかかる。19qではその差が10mとひろがった。そこに安川電機の中本も迫ってくる。
 20qではトップ・トヨタ自動車の尾田、数メートルで日清食品グループの佐藤が2位、10秒遅れで安川電機が迫ってきた。
 21qで尾田がスパート、佐藤が遅れ、逆にひとたび遅れた中本が差し返して10秒遅れの2位に浮上するのであるが、なんとも起伏、濃淡ゆたかで見ごたえがあった。
 5区もトヨタ自動車、安川電機、日清食品の三つどもえの主導権争いがつづいた。
 トヨタ自動車は菅谷宗弘、2位グループの安川電機は黒木文太、日清食品は治郎丸健一 である。
 3qすぎでトップのトヨタ自動車・菅谷に2位グループが追いつき、安川電機の黒木、日清食品グループの治郎丸の3人の集団になってしまう。3人は激しくスパート合戦をくりひろげ、トップはめまぐるしく変転したが、最後は治郎丸と黒木がほとんど同時にタスキリレー、3秒遅れで菅谷がつづいた。
 6区になっても上位3チームのつばぜり合いはつづいた。
 ここからは日清食品とトヨタ自動車の争いになると思いきや、主導権をにぎったのは安川電機の小畑昌之だった。2.5qで早くも日清食品グループ・板山学をとらえてしまうのである。さらにトヨタ自動車の高卒ルーキー・松本賢太も追ってきた。3.7qで遅れ始めたのはなんと板山、小畑、松本においていかれてしまった。
 トップ争いに決着がついたのは7qすぎ、小畑がスパート松本との差はどんどんひろがっていった。後ろからは富士通の阿久津尚二がやってきて、10q手前では板山をとらえ、11qでは松本をとらえて、一気に2位まで浮上したのである。
 かくして勝負の流れを混沌としたまま安川電機、富士通、トヨタ自動車、日清食品の4チームでアンカー勝負にもちこまれたのである。


▽安川電機が大健闘

 トヨタ自動車は32回目の出場にして初優勝である。中部地方代表が制覇したのも初めてのケースでないか。中盤からトヨタの流れになっていたが、いまひとつ抜け出せなかったものの、アンカーの熊本剛がみごとに決着をつけた。富士通、日清食品の両チームよりも勝ちたいという思いがまさっていたからだろう。
 なんといっても勢いをもたらしたのは高林祐介の快走だが、宮脇、松本という新戦力もチームに活力をもたらしたようである。区間賞2つながら、2区をのぞいて、全員が区間7位までの名を連ねるという堅実さも光っている。
 富士通もさすがに元・王者らしい粘りをみせてくれた。日清食品を押さえての2位は評価できるだろう。
 前回の覇者・日清食品はコマが1枚足りなかったようであるが、今回はいなひとつチームに勢いというものがなかった。
 大健闘は安川電機である。2区で5位に浮上、3区以降は優勝争いにからんでいた。中盤以降の展開で優勝したトヨタ自動車を最も苦しめたのはこの安川電機であった。最終区で沈んだのは惜しまれるが、みごとな戦いぶりであった。
 終わってみれば旭化成は5位、中国電力は6位に来ている。さすが強豪チームだけのことはあるが、今回は優勝争いにからめなかった点でやや不満がのこった。



出場チーム&過去の記録

出場チーム
日清食品陸上競技部
HONDA
コニカミノルタ陸上競技部
カネボウ陸上競技部
小森コーポレーション陸上部
SUBARU陸上競技部
日立電線マラソン部
富士通陸上競技部
JALグランドサービス陸上競技部
JR東日本ランニングチーム
日産自動車陸上競技部
東京電力長距離・駅伝チーム
トヨタ紡織陸上部
NTN陸上競技部
トヨタ自動車陸上長距離部
愛知製鋼陸上競技部
愛三工業長距離チーム
YKK陸上長距離部
山陽特殊製鋼陸上競技部
佐川急便陸上競技部
大塚製薬陸上競技部
四国電力陸上部
中国電力陸上競技部
JFEスチール競走部
マツダ陸上競技部
九電工陸上競技部
安川電機陸上部
旭化成陸上部
SUMCO TECHXIV陸上競技部
西鉄駅伝部
黒崎播磨陸上競技部





関 連 サ イ ト

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 最 終 成 績
<順位 チーム名 記  録
トヨタ自動車(愛知) 4時間51分56秒
富士通(千葉) 4時間51分57秒
日清食品グループ(東京) 4時間52分05秒
安川電機(福岡) 4時間52分49秒
旭化成(宮崎) 4時間54分15秒
中国電力(広島) 4時間54分31
Honda(埼玉) 4時間54分38秒
トヨタ自動車九州(福岡) 4時間54分39秒
コ ニ カミノルタ(東京) 4時間54分44秒
10 トヨタ紡織(愛知) 4時間56分35秒
11 カネボウ(東京) 4時間56分50秒
12 YKK(富山) 4時間56分56秒
13 NTN(三重) 4時間57分10秒
14 九電工(福岡) 4時間58分26秒
15 小森コーポレーション(茨城) 4時間58分28秒
16 マツダ(広島) 5時間58分35秒
17 SUBARU(群馬) 4時間58分44秒
18 ヤクルト(東京) 4時間59分15秒
19 愛知製鋼(愛知) 4時間59分17秒
20 佐川急便(京都) 4時間59分21秒
21 東京電力グループ(東京) 4時間59分30秒
22 JFEスチール(広島) 5時間00分00秒
23 トーエネック(愛知) 5時間00分52秒
24 自衛隊体育学校(埼玉) 5時間00分53秒
25 日立電線(茨城) 5時間00分54秒
26 三菱重工長崎(長崎) 5時間00分55秒
27 西鉄(福岡) 5時間01分46秒
28 四国電力(香川) 5時間01分46秒
29 JR東日本(東京) 5時間01分48秒
30 大阪府警(大阪) 5間間01分50秒
31 愛三工業(愛知) 5時間02分28秒
32 中電工(広島) 5時間03分19秒
33 NTT西日本(広島) 5時間04分17秒
34 八千代工業(三重) 5時間06分05秒
35 重川材木店(新潟) 5時間06分16秒
36 プレス工業(神奈川) 5時間08分03秒
37 警視庁(東京) 5時間10分49秒


区 間 最 高
区間 距離 選手名 所属 タイム
12.3 大西 智也 旭化成  36:01
08.3 I.ジェイラン Honda  22:14
13.7 高林 祐介 トヨタ自動車  ◎38:02
22.3 佐藤 悠基 日清食品グループ  63:25
15.9 秋葉 啓太 小森コーポレーション  46:41
11.8 阿久津尚二 富士通  36:45
15.7 熊本  剛 トヨタ自動車  45:55



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