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アンカー決着で乱戦を断つ!
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(2011.01.06) |
▽みどころは最後の最後にやってきた!
駅伝日本一をきめる大会である。
7区間100qというのは、いかにもそれにふさわしい舞台なのだが、6区間85qを経過しても勝負の糸口はいぜんとしてむすぼれたまま。それで最終区の走者に決着がゆだけられるというのなら、それまでの6区間は、いったい何だったのか……ということになりはしないか。
それもラストもラスト、残り1qからのスプリント勝負にもちこまれるというのであれば、1〜6区の区間賞も、ゴボウ抜きの記録すらもすべてが色あせたものになってしまう。本命不在、史上類をみない大混戦という実相のもたらした所産というべきか。観るレースとしてはおもしろい展開なのだが、いったいこれでいいのだろうか……と、いささか首をかしげてしまった。(笑)
6区間をおわってトップをゆくのはなんと伏兵・安川電機、4秒遅れで富士通がつづき、そこから16秒遅れでトヨタ自動車、さらに3秒遅れで日清食品がつづき、トップから23秒差に4チームがしのぎをけずっていた。さらに日清食品から25秒遅れで旭化成がつけており、アンカーの出来次第ではいずれにもチャンスはあった。勝ちたい……という思いがまさる者に勝負の流れが一気になだれうつ。ガマン較べの様相となった。
素早く反応したのは富士通の福井誠で、0.7qでトップをゆく安川電機の飛松誠の背後にピタとつけた。
後ろからは日清食品の小野裕幸とトヨタ自動車の熊本剛が並走、競り合いながらトップ集団を追ってゆくという構図になった。
福井と飛松が牽制し合い、3.7qあたりになって後続の小野と熊本が一気に迫ってくる。そして4,4qでは4チームが集団になってしまうのである。スピードランナーがそろうなかで、飛松には分の悪い展開、5qになって遅れはじめ、そのまま置いてゆかれて脱落してしまう。
福井、小野、熊本は牽制し合いながら並走、後ろからは誰も追ってこない。こうなってしまえば容易に出られない。並走しながら様子をうかがうというかたち、ペースもそれほどあがらない。
12qあたりで小野がペースをあげるが、あとの2人もはなれない。膠着状態がつづきペースがあがったのは14qあたりから。小野が14.8qでスパートをかけたが福井、熊本もついていった。
そしてのこり500mになって、それまで小野と福井の背後で動かなかった熊本が猛然とスパートをかけトップに出た。虚をついたスパートというべきか。福井、小野も懸命に追ったが差はひらいた。だが、スピード自慢の福井がふたたび追ってきて、スプリント勝負になった。だが熊本の勝ちたいという思いがうわまわったというべきか。福井の猛追をふりきって、そのまま初優勝のゴールにとびこんでいった。
▽まさに大乱戦を象徴するようなレース展開
37チームが参加しての本大会、これほど主力選手の故障が相次いだのも例がないだろう。そんなこんなでレースはハナから波乱模様であった。
カネボウの木原真佐人が先頭集団を引っ張るかたちで幕あけたが、1q=2:57秒、5q=14:50というから超スローペースであった。
横広がりの大集団となり、トップが次つぎに入れかわる。3.5qでは東京電力グループの若松儀裕が先頭に立ち、愛三工業の舩越大輔らがつづいた。
5qになって候補の一角・コニカミノルタの山本浩之が集団のまえにほうにやってくるが、6qでは昨前回この1区を制したカネボウの木原が遅れ始め、レースは波乱含みとなる。7qでは警視庁・辻太樹が集団の先頭に顔を出し、日清食品グループの北村も9q手前では日清食品グループの北村聡がペースを上げ、先頭集団のトップに立つ。さらに9.5qすぎではプレス工業の橘明徳、日立電線の大和田匠らが代わる代わる先頭集団のトップにやってくる。11qになるとトヨタ紡織の中尾勇生、トヨタ自動車の宮脇千博らがトップをうかがうが、コニカミノルタの山本はここで集団からこぼれていった。
レースがうごいたのは残り1qあたらから。11.5qで東京電力グループの若松がスパート、さらにマツダの松岡紘司、旭化成の大西智也らもやってくる。最後は旭化成の大西と東電の若松の競り合いとなり、両者はほとんど差がなく中継所へとびこんでいった。
まさに混戦を象徴する現象というべきか。
1区は軸になるランナーがいなかったせいもあるのだろう。2区がインタナショナル区間になっており、ひとたび順位がぐしゃぐしゃになってしまい、3区から本当の意味でのレースがはじまるという、本大会の特徴をにらんでの戦略もからんでいるのだろう。とにかく1区から果敢に仕掛けてくるチームがなく、上位と下位、ほとんど差というものがうまれなかった。トップの旭化成と30位のコニカミノルタの差がわずか26秒というありさまなのである。
そんなありさまだから2区も順位は大きく変転した。
結果的には区間18位までをケニア人選手が占めることになるのだが、肌の黒い選手たちがどんどん上位にあがってくるさまは異様というほかない。
3.5qではHondaのイブラヒム、NTNのワウエル、安川電機のアレムの3人が先頭集団 を形成、5q手前でイブラヒムがぬけだして、その後も快走、SUBARUのクレメントが2位に浮上してくる。後続では小森コーポレーションのダビリがごぼうぬきの20人抜きを達成、2年連続区間賞の日清食品グループのゲディオンも4位にやってくる。
2区を終わってトップはHonda、2位はSUBARU、3位はNTN、4位には日清食品とつづき、富士通は33秒おくれの8位、コニカミノルタはトップから1分15秒おくれの18位という形成で3区からのリスタートにはいるのである。
▽大乱戦? 大混戦?
3区以降もトップはめまぐるしく変転した。
2q手前ではSUBARUの古川茂がHondaの池上誠悟は抜いてトップに立つも、5qあたりから安川電機の北島寿典が2位に浮上、5.5qではトヨタ自動車の高林祐介が日清食品グループの保科作、Hondaの池上をとらえ3位までやってきた。
6qではトップはSUBARU、安川電機とトヨタ自動車が2位グループをなし、4位グループとしてHonda、日清食品グループ、NTN、富士通が続くというありさまになる。
勢いがあったのはトヨタ自動車の高林である。9qすぎで安川電機の北島をひきつれて、先頭のSUBARU・古川を吸収してしまうのである。
そして11qすぎからは高林と北島がはげしくトップを争う。12.6qで北島がスパートをかけるも、高林がついてゆく。決着がついたのは12.8qであった。高林が渾身のスパート、差は一気にひろがった。本命といわれていたトヨタはここでようやくトップに立つのである。区間記録を12秒も更新するというルーキー・高林の快走で、トヨタは勝利への道筋をひらいたかにみえてが、初優勝はそんなになまやさしい道のりではなかった。
10秒遅れで安川電機、富士通が46秒おくれの4位に浮上、Hondaは脱落したが日清食品グループが1分13秒遅れながら7位につけていた。
最長距離の4区(22q)になって、その日清食品が台頭してくるのである。トップをゆくトヨタの尾田賢典は悠然とトップをゆく、背後で日清食品の佐藤悠基がやってくる。3qでSUBARUをとらえ、3.5qではNTNを、5.5qでは富士通の藤田敦史をとらえて3位まであがってくる。
佐藤は驚異の追い上げで、12.6qでは安川電機の中本健太郎に追いついてしまう。佐藤の勢いはなおもとまらない。対照的にトップをゆく尾田は16.6qあたりから苦しくなり、佐藤が追い上げてその差は10秒、18qではとうとう背後にくらいついた。だが尾田もそこから粘って、ふたたび引き離しにかかる。19qではその差が10mとひろがった。そこに安川電機の中本も迫ってくる。
20qではトップ・トヨタ自動車の尾田、数メートルで日清食品グループの佐藤が2位、10秒遅れで安川電機が迫ってきた。
21qで尾田がスパート、佐藤が遅れ、逆にひとたび遅れた中本が差し返して10秒遅れの2位に浮上するのであるが、なんとも起伏、濃淡ゆたかで見ごたえがあった。
5区もトヨタ自動車、安川電機、日清食品の三つどもえの主導権争いがつづいた。
トヨタ自動車は菅谷宗弘、2位グループの安川電機は黒木文太、日清食品は治郎丸健一 である。
3qすぎでトップのトヨタ自動車・菅谷に2位グループが追いつき、安川電機の黒木、日清食品グループの治郎丸の3人の集団になってしまう。3人は激しくスパート合戦をくりひろげ、トップはめまぐるしく変転したが、最後は治郎丸と黒木がほとんど同時にタスキリレー、3秒遅れで菅谷がつづいた。
6区になっても上位3チームのつばぜり合いはつづいた。
ここからは日清食品とトヨタ自動車の争いになると思いきや、主導権をにぎったのは安川電機の小畑昌之だった。2.5qで早くも日清食品グループ・板山学をとらえてしまうのである。さらにトヨタ自動車の高卒ルーキー・松本賢太も追ってきた。3.7qで遅れ始めたのはなんと板山、小畑、松本においていかれてしまった。
トップ争いに決着がついたのは7qすぎ、小畑がスパート松本との差はどんどんひろがっていった。後ろからは富士通の阿久津尚二がやってきて、10q手前では板山をとらえ、11qでは松本をとらえて、一気に2位まで浮上したのである。
かくして勝負の流れを混沌としたまま安川電機、富士通、トヨタ自動車、日清食品の4チームでアンカー勝負にもちこまれたのである。
▽安川電機が大健闘
トヨタ自動車は32回目の出場にして初優勝である。中部地方代表が制覇したのも初めてのケースでないか。中盤からトヨタの流れになっていたが、いまひとつ抜け出せなかったものの、アンカーの熊本剛がみごとに決着をつけた。富士通、日清食品の両チームよりも勝ちたいという思いがまさっていたからだろう。
なんといっても勢いをもたらしたのは高林祐介の快走だが、宮脇、松本という新戦力もチームに活力をもたらしたようである。区間賞2つながら、2区をのぞいて、全員が区間7位までの名を連ねるという堅実さも光っている。
富士通もさすがに元・王者らしい粘りをみせてくれた。日清食品を押さえての2位は評価できるだろう。
前回の覇者・日清食品はコマが1枚足りなかったようであるが、今回はいなひとつチームに勢いというものがなかった。
大健闘は安川電機である。2区で5位に浮上、3区以降は優勝争いにからんでいた。中盤以降の展開で優勝したトヨタ自動車を最も苦しめたのはこの安川電機であった。最終区で沈んだのは惜しまれるが、みごとな戦いぶりであった。
終わってみれば旭化成は5位、中国電力は6位に来ている。さすが強豪チームだけのことはあるが、今回は優勝争いにからめなかった点でやや不満がのこった。
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出場チーム&過去の記録 |
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関 連 サ イ ト |
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