ISOとはなんぞや? 10.01.11

ところで会社の経営というものを考えた時、そのような個々の技術的な分野だけで構成されているはずはありません。それどころか品質とか環境というカテゴリーだけしかないわけでもありません。
当然ですよね。会社の経営と言った場合、真っ先に品質や環境が思い浮かぶはずがありません。会社あるいは組織は目的を持って設立され、その目的を達成するために行動します。会社の目的は品質方針とか環境方針には書いてありません。定款です。
会社はその目的を実現するためにさまざまな構成要素を備えなければなりません。通常会社の管理項目として、まず財務、技術、マーケティング、製造、遵法、安全などなどたくさんあります。もちろん品質も環境もCSRも人権もあります。
さてそんなことを考えると会社の管理項目の関係はどうなっているのでしょうか?

ゼネラルマネジメントシステム


どう考えても、ISO9001が会社経営の要諦であったり、それをもとにゼネラルマネジメントを構築できるはずがない。

ISO9001じゃなくISO9004になったところで、品質関係の守備範囲が広くなったにすぎません。
資材はどうなのか? 総務はどうなのかと・・・一目瞭然です

おっと、品質の分野ならISO9001がカバーしているのでしょうか?
まさかあなた・・
品質管理体系図
品質と言っても、一般的に品質経営(あるいは広義の品質管理)とは、狭義の品質管理、品質保証、品質改善からなると言われています。もっともこれは20年も前のことですから、最近の考えは違うかもしれません。
いずれにしてもISO9001なんて品質保証とほんのすこしの品質マネジメントシステムなのですから品質全般をカバーしているわけではありません
ところで私は品質マネジメントシステムなるものが存在するとも思えない。組織が具備するものはゼネラルマネジメントシステムだけだと思います。俗に品質マネジメントシステムと呼んでいるものは、ゼネラルマネジメントシステムの一側面を呼んでいるにすぎません。品質マネジメントシステムと呼ぼうと、それは包括的なゼネラルマネジメントシステムから分割もできず、切り取ることもできないのです。
ISOを活用する、ISOを経営に役立てる、ISOを・・・
いろいろな説があり論があっても良いと思います。しかし、ISO規格の守備範囲は経営という観点から見たらほんの一部だし、その位置づけは経営全般から考えると階層は低いのだと認識すべきだと思います。
それはISO規格を貶めるものでもなんでもないのです。だって「財務管理は品質管理を進めることはできない」といったところで、財務とか経理を貶めることではありません。
言いたいことは、品質とか環境、あるいはISO規格というものは、会社経営からみたら一分野に限られた思想であり手法であるということを認識しなければならないということです。そんなことを以前も書きました
包括的な経営から考えなくては、ISOの位置づけを誤ってしまいます。

本日の解説
なんだ、今回は新しいアイデアがないじゃないか!
そんなことおっしゃらないでください。私はインフルエンザよりも感染しやすくHIVよりも危険なISO菌に感染してしまった人を救うために同じテーマをいろいろな表現で書いているのです。これで解毒され目が覚めることを期待しております。


名古屋鶏様からお便りを頂きました(10.02.09)
佐為様 まいどの名古屋鶏です。
先日のうそ800ブログ版で、「ISO9001は経営の規格ではない」という話が出ていましたが。
普通に考えて経営というものが規格化できるハズがないので、その時点でFAなんですが、ネットの自動翻訳でも「経営」と入力すると「Management」と出てくるので「マネジメントとはどういう意味か」と、私も昔から気になっていました。
ところで最近、アメリカに長年在住している方と知り合いになる機会がありました。そこで、これ幸いとその方に意味を伺ってみたのです。
回答を要約すると、こういうことになります。
・Managementを日本語訳すれば「管理」である。
・日本語の「経営」は「管理」プラス「事業の方向性を考える」というニュアンスなので、1対1で翻訳できる言葉がない。
・経営者が雇用者を管理する(使いこなす)ことが会社の「経営」であるという考え方から、「経営」という日本語を英語に翻訳するにあたって、 Managementという訳語を当てている
・「事業の方向性を考える」のはleadershipという。
・英語においてManagementとは、単に「管理する = 物事をコンロールする」という意味で使われる。
だそうです。
つまり、「経営 = Management = 管理」という可逆性のある等式の方程式ではなく、「Managementを日本語にすると 管理」で「経営を英語にすると Management」という「一方通行の対訳」しか存在しないので、「Managementと書いてあるので、これは経営なのだ」とは言えないのだそうです。
ちなみに、その方によると「management system」とは「管理する、管理の仕方によって物事を円滑に進めることができるシステム」という意味だそうです。
よって、ISO14001を「management system規格」と言っても詐称ではないようです。もっとも9001の場合は、「保証」から「管理」の規格になったわけですから・・・パワーアップというよりも、格下げ、というか宗旨変えをしたという事になりますでしょうか。

名古屋鶏様 毎度ありがとうございます。
そうなんですか!?
私は決まった手順で運用するのがコントロールで、もっと高度なものがマネジメントかと思ってました。
英英辞典を引いてもニュアンスは分かりませんね
  • Compact Oxford English Dictionary
    1. the process of managing. 2 the managers of an organization.
  • American Heritage Dictionary of the English Language
    1. The act, manner, or practice of managing; handling, supervision, or control: management of a crisis; management of factory workers.
    2. The person or persons who control or direct a business or other enterprise.
    3. Skill in managing; executive ability.
ただ、経営というような大局的なものとも思えないようです。
そのうちYoshさんがコメントしてくれるでしょう。


Yosh師匠からコメントを頂きました(10.02.11)
名古屋鶏様のお便りに私が何も口を挟む処はないやうであります。
とうた様はご理解為されてると思いますが、英語の詞を付して述べますと。
先ず経営のことを話す場合に、“起業する”ことを言ふことから知つて頂くことが必要ではないでせうか。
日本語で“起業する”となると英語でOrganize(創立する)、Promote (発起する)、Start an enterprise(企業を始める)などとするのであります
商売を起こして(Start a business)持ち主(Business Owner)となり経営して(Conduct business)管理する(Managing business)となる訳です。
一人で全てをする事業は可也の小規模だけでありますから。
殆どの事業の場合には管理する(Managing business)人を雇ふことをして事業の管理(Management)を任せて、事業主は其の事業を経営(Conduct business)できるのであります。
大企業になりますと、持ち主(Business Owner)が専門の人を雇ふて経営(Conduct business)させて居りますが、殆どが役員(Officer)の地位でありませう。
ただ役員(Officer)以外の管理する(Managing business)立場にある人が其の事業を経営して(Conduct business)ることにはならんのではないでせうか。
各会社組織に於いて同じ管理職の名称でも其の地位と職責が同じとは言へぬやうでありますから経営もManagementとしてるのではないでせうか。
また事業がどんなものかで“経営する”も英語ではCary, Conduct, Keep, Manage, Operate, Run, とかWorkの詞を使い分けてるやうであります。
Yosh

Yosh様 ありがとうございます。
以前話題になりました計画とplanあるいはprogramとの関係と同じく、日本語と英語の対応は1対1ではなく少しづつニュアンスが違うようですね。それを無理やり一つの日本語に当てはめて、その当てはめた言葉の意味で解釈しようとするからトンデモナイことになってしまうようです。
要するに日本語になったJIS規格を読むのではなく、英語のISO規格を読み、分からなかったらネイティブに聞くしかないということなのでしょうか?
困りました。


Yosh様からお便りを頂きました(10.02.12)
とうた様、
要するに日本語になったJIS規格を読むのではなく、英語のISO規格を読み、分からなかったらネイティブに聞くしかないということなのでしょうか?

日本語の文章でも英語の文章でも其の文章で著者の言はんとすることを理解するのは可也の知識と能力を要するやうであります。
同じことを言ひたいのでも日本語でも色んな言ひ方があるでせう。英語でも同じやうであります。
各詞の意味を知るには単に1筋の文章でなく其処に述べられた全体の文章を総合的に判断せねば単に一つの詞でも違ふた意味に取れます。

例へば、”経営”の日本語での意味も1)事業を営むこと、2)土地を測量し土台をすへて建築すること、3)計画や基礎を立て、工夫をこらして物事を行なふこと、4)色々と手を尽して集めたもの、5)いそぐ、と私の持つてる辞書にはあります。

日本語を英語にするにも其の詞がどのやうな意味ので其の文章では使用されてるかは其の一筋の文章でなくて全体の文章を理解せぬと全く違ふた文章に訳されることになります。

若し其の規格が訳されたもので理解出来なければ又は訳されたものがおかしなものだとなれば、訳されたものを捻くり廻さずに、元のものを読むことで理解するのが最善でありませう。

でも、解からぬ時に、ネイティブに聞くにしても、如何にネイティブでも其れに関する知識がなければ無駄な結果にもなるし、また原語に於ける意味が其の文章でどんな意味を持つかを知ればネイティブに聞かずとも理解は出来るでありませう。

英語のISOの規格を日本語翻訳して其れを日本のISOの規格と為された、其の経緯を知りたくなつてきました。

Yosh

Yosh師匠 ご教示ありがとうございます。
正直言いまして、測量、急ぐなどという意味を知りませんでした。今、大字泉を引き、そのような意味があることを初めて知りました。
おっしゃること、厳しく受け止めます。
私自身、経営とか管理とか上ずったことを語っていたことを恥じます。
まして経営とマネジメント更にはmanagementが同じか否かなど論じるには不勉強であるとしかと悟りました。
ありがとうございました。


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