ISO用語の見直し(2)

20.08.31

だいぶ前に「ISO用語の見直し(1)」を書いたが、既に半年が過ぎた。あのときはすぐに続編、続々編を書くつもりでいたのだが、忘れてしまった(他人ひとごとのようですまん)。

「用語の見直し」といっても、私がISO規格を仕切っているわけでありませんので、改定しますとは言えません。おかしいぞ! 間違っているぞ! と叫ぶだけでございます。
そもそも「見直し」とは「再検討する」という意味であって、「改定すること」とは違います。
それから今回の中には、過去におかしいぞ!、改定しないとまずいぞ! と取り上げたものもあります。困ったことに改善の兆しがありませんから再度取り上げました。
えっ! ISOTC委員はこんなウェブサイトはご覧になりませんか? 悲しいです。

ともかく第2回目、行ってみましょう、


書いていると、納得できないことが止まらず、更にどんどん怒りが湧き出てくる。現役時代は対面の審査員にカッカしていたが、規格をまともに読むとISOTC委員にカッカしてしまう。
ISO認証なんて、真面目に取り組むことはなかったのかもしれない。
当時は飯のタネだったから真剣に仕事をしていたのだが。


うそ800 本日の熟考
引退して早7年、もうISO認証とか規格解釈なぞ忘れて遊び惚けて良いのだが……今も日々規格を読み直し、英英辞典を引き、ネットで調べている。
すると日々新たな発見があって面白い。新しいことを知るって素晴らしいことだと思う。
せめて現役時代、今の知識があり機転がきけば、審査員とのチャンチャンバラバラが優位に進められたのにと残念だ。いや、そうではなくそれが7年間の進歩なのだろう。

考え中
それにつけても不勉強な審査員の責任は大きい。規格翻訳の問題は大きいが、それが変だと気付かなければ、審査員たる資格がない。およそ審査でオマンマを食べているなら、規格の理解を深めよう、コミュニケーション能力を向上しようと励まなければならん。

当然、審査員の雇い主である認証機関は、それを要求しそのための配慮と支援をすべきだろう。
また審査員研修機関はまともな教育を供せねばならない。有益な環境側面などを2020年の現在でも教えているところがあるとは驚きだ。
審査員登録機関は要件を満たさない審査員はリジェクトする能力を持たねばならない。私の考えでは、3割は力量不足で登録/更新してはいけない。

そして認定機関はそうできない認証機関や審査員登録機関を認定してはいけないのだ。
おお、ISO認証制度の問題はすべてそれに尽きるか……熟考するまでもなかった。




外資社員様からお便りを頂きました(2020.08.31)
おばQさま いつも参考になるお話し、有難うございます。
いつも乍らの部分ツッコミで申し訳ありません、今回のコメントは「Management representative」
私は、国内の法令で要求される「管理者」があるので、それと同様に誤解しておりましたが、ISOですから本来は無関係。 多分、日本国内の多くの人も、法的要求にある「**管理者」と同様に誤解していた人が多かったのだと思います。
弁解じみますが、一時期 堂々たる一部上場会社の株主総会資料やWEBでも、「品質担当役員」「環境担当役員」とか、「環境管理責任者」なる役員がいた時期があります。そういう会社は、立派な「環境経営白書」などのカラー刷りの資料もあって、事業所にはビオトープがあったり。とある役員さんが、「これからはISOも勉強もしないと」とカモ発言。
その時代は良かったというか、企業にも余裕があったのでしょう(遠い眼)

今は「環境担当役員」なんて流石にみないですね。
それよりも、会計不祥事を受けて「外部監査役員」(税理士や弁護士)が増えました。こういう役員の肩書も「はやりすたり」がありますね。
まさに、ご指摘の通りで「Management representative」は、役員である必要もなく、部長くらいで丁度。兼任もあって当然。品質担当役員だの環境担当役員だのは、会社として必要と思えば任命するのであって、間違ってもISO審査で言われたからなんてありえませんよね(いつの間にか消えているから、そういう会社は今頃 黒歴史なのか?)
経営の立場から言えば、役員が環境や品質を重視しても、それが社是ならば全く問題ありません。役員が、その確認の為にISO審査を、ものさしの一つとして使うのも有効だと思います。
但し、ISOが全てでは無いし、ましてやISO審査では役員の参加が必須というのは下剋上で本末転倒。ISO監査は経営の物差しの一つでしかなくて、それ以外の評価基準や判断条件をもっていない経営はあり得ません。
この辺りの事を勘違いしている審査機関は、「ISO審査は経営の役に立つ」とか平気で言えるのでしょうね。それが本当ならば、役員さんがすぐに判るExecutive Summaryを作って見せて提示すれば良いだけ。そういう審査機関とか、審査員は稀で、役員を出席させた場でご高説を垂れてみたり。そういう勘違いが、「すたり」の原因になったのでしょう。

外資社員様 毎度ご教示ありがとうございます。
「管理責任者」という言葉は法律でもあまり使われていません。私の第一の疑問は、法律でも、当然会社でもあまり見たことも聞いたこともない「管理責任者」という語を、なぜ「Management representative」に充てたのかということがひとつ。
日本語訳からは何をする人なのか? どんな責任を負うのか? わかりません。
次に「与えられている他の責任とかかわりなく、管理責任者を任命しなければならない」というフレーズです。
この文章は、ISO9001の管理責任者は検査部門を持つ管理者ではまずいと解されました。合否判定をする人が任命されてはいけないというのです。
例えば検査係があり、その上に品質管理課があり、更にその上に品質保証部という職階だとすると、検査係が合否判定をするから、そのライン上にある品質管理課長もその上の品質保証部長も管理責任者になれないことになります。もちろんISO14001では環境管理部門のラインに沿った管理者はだめとなります。
それで多くの企業は、営業部長とか総務部長などを管理責任者に任じました。そういう職掌の方は品質も公害もわかりませんから、形だけです。意味がありません。
これについては英語に明るい外資社員様なら、関係ないと解釈されたのでしょうけど、実際には審査員も企業側もダメですねとなりました。
もうひとつ不思議なことですが、ISO9001では管理責任者が内部監査責任者になれました。というかそれがデフォルトでした。ところがISO14001では管理責任者は内部監査責任者になれないとなりました。理由は明確ではなかったのですが、責任者が監査をするのでは内部牽制がきかないという理由で、どの認証機関も足並みをそろえていました。ところがその認証機関がISO9001を審査するときは問題がないという不思議?
子供っぽいですが「管理責任者とはこういうものだ!控えおろう」というようなアプローチではなく、「management representativeはこういう仕事をしなければならない、その人の権限と実行責任はこうですよと説明すれば混乱がなかったのではないかと思います。当然、そのときに根拠なり理屈を説明できなければ、その権限と実行責任は間違っていると平易な言葉で議論できたのではないかと思います。
現実はそうではなく、認証機関は「兼務はダメだー、検査部門を職掌としている管理者はダメだー、監査責任者にはなれない」と一方的に押してきたので、そういうものだと定着したんですね。
2015年改定では規格文言に大変革があったわけですが、認証機関は過去のことはハンフリーボガードの真似で知らんぷりで逃げ切りです。過去は誤りだったとか考えが変わったとか釈明くらいしろよと思います。


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