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1分30秒までなら……。 アンカーに渋井陽子を配した東京はひっくりがえしてみせる……。陣営も渋井自身もそのように確信していた。 ところが……。 8区を終わった時点でトップをゆくのは埼玉、36秒遅れで2位は5連覇にのぞむ神奈川、3位は大健闘の茨城で54秒遅れ、4位には1分40秒差で宮城がつづき、注目の東京には1分40秒差の5位でタスキが渡った。かくして今大会最大の見せ場が幕開けたのである。 1分30秒を上回ること17秒……。なんとも微妙なタイム差である。そのとき果たして渋井自身はどのように状況をとらえていたのだろうか。 ランナーとしても崖っぷちに立っている渋井はなりふりかまわずに見えない埼玉を追った。まるで見えない壁に躯ごとぶつかってゆくかのように、前へ前へとつねに躯を運んでゆく。そこに渋井のランナーとしての非凡さがある。 トップをゆく埼玉のアンカー・高橋弥愛はひたすら逃げる。5q通過は高橋が16分23秒、渋井は15分33秒……。中間点で渋井は50秒も詰めている。両者が同じペースでゆくと仮定すれば……。ゴールでは1分40秒詰まる。東京は埼玉にわずか7秒差まで迫るという計算になるが、人間は機械なんかではないのだ。 渋井は5.7qで茨城をとらえ、ほどなく神奈川をとらまえて、予定通りに2位まであがってきた。残り4qで埼玉と東京のマッチレースになったのだが、埼玉の高橋弥愛はいがいにしぶとかった。この20歳のランナーは歳には似合わぬ強かさを発揮した。後ろからひたひたとしのびよる渋井の足音におびえることなく、ただひたすらゴールをめざした。 渋井もヒトの子である。さすがに最後はのびなかった。追撃をふりきった高橋はあふれる笑顔で上尾運動公園のゴールにとびこんだ。埼玉にとっては9年ぶり3度目の制覇である。 東京との差は20秒……、。 終わってみると、1分30秒が限界……とみていた東京陣営のヨミは、まさにドンピシャ……、さすがは専門家の目は確かだな……と驚嘆した。
レースはハナから波乱含みであった。 埼玉の馬目綾がひっぱるかっこうで幕開けた第1区、異変は1qすぎでおきた。 トップ集団のうしろにつけていた選手がふたり、足が絡んで相次いで転倒してしまった。ひとりは群馬、もうひとりは、なんと5連覇をねらうあの神奈川だったのである。 神奈川、群馬はともにトップ集団からこぼれ落ち、思いがけず後手を踏む結果になった。神奈川はこの1区で1分19秒遅れの11位、ターム差以上にレースの流れが悪くなってしまい、それが致命傷になったようである。 後方のアクシデントを尻目にレースの主導権をにぎったのが埼玉の馬目であった。3qすぎから東京、千葉、茨城、北海道、宮城、長野とともにトップ集団を形成、5.3qすぎになって、まるでねらい澄ましたようにスパート、追いすがる東京、宮城をあっさり振りきった。 2区にはいると北海道の健闘ぶりがひときわ眼を惹いた。北海道の2区のランナーはホクレンの細川好子、4位から宮城の小杉奈美をひきつれて埼玉の富岡美幸を急追、2.8qでは3チームがトップ集団となってしまった。主導権を握ったのが北海道である。細川は埼玉に3秒差つけて堂々のトップに躍り出したのである。 トップの北海道から10秒以内に埼玉、茨城、宮城とつづき、候補の一角・東京は21秒遅れの5位、神奈川は追いあげてはきたものの43秒遅れの7位、いぜんとして主力はモタついているというありさま。観戦するレースとしてはがぜんおもしろくなってきた。
本大会の勝負どころをあげれば、渋井の追いかける展開になった最終区よりもむしろ中盤の3区〜5区の攻防だったろう。いずれも距離の短い区間ながら、ここで優勝への道筋が、かすかにほのみえてきたからである。 2区でトップを奪われたものの、今回の埼玉はしぶとかった。3区では小原悠がタスキをもらって0.8qで北海道を交わしてしまう。2位の宮城には15秒差、3位には長野があがってくる。4位の北海道までは24秒差である。東京と神奈川はじりじりと追ってくるが、いぜん40秒以上の差、追撃のピッチはあがってこない。4区も形勢はほとんど動かない。レースは埼玉を中心にしてまわりはじめた。 神奈川と東京にようやく動きがみえはじめたのは5区であった。 神奈川の杉原加代が猛追、宮城、北海道、長野をかわして2位にあがり、トップをゆく埼玉に3秒差まで迫った。東京もトップから39秒さの4位まで押しあげてきた。5連覇をめざす神奈川にしてみれば、トップに手がとどくところまできたのだが、追撃もそこまでだった。結果的にそこまでくるのに力のすべてを費やしてしまったかのように、7区以降は、じりじりと失速してゆくのである。 東京にいたっては6区で1分28秒、7区では1分35秒、8区では1分47秒……と、埼玉に置いてゆかれてしまう。 埼玉の勝因をあげれば、まずメンバー全員が持てる力を最大限発揮したことであろう。まさに総合力の勝利である。そのなかであえて殊勲者をあげれば、繋ぎの区間というべき6区(4,1075)と7区(4q)の走者、中代唯と砂子愛である。 6区の中代唯は神奈川に3秒差まで追いあげられ、まさにシリに火がついた状態でタスキをうけたのだが、あわてなかった。まさに最大の踏ん張りどころで、神奈川の鴨井夕子との差を25秒にまでひろげてしまう。自らも区間賞の快走で、相手の勢いをここで削いでしまったのである。 7区の砂子愛はさらに2位神奈川との差を34秒までひろげた。かくして埼玉は優勝への足どりをしっかり固めたのである。 神奈川はやはり1区の転倒による出遅れがひびいたようである。5区で杉原加代が埼玉に3秒差まで肉薄しているだけに、前半の遅れがなければ、きわどく優勝争いにからんでいたかもしれないのである。 東京の敗因はやはり6区から8区だったろう。ここでトップとの差を1分内外に保っていれば、最終区の渋井であっさり逆転というシーンも想定されたからである。昨年のようにトラック勝負になっていたかもしれないのである。
今回、健闘したのは宮城、北海道、長野の3チームだろう。 宮城は前回14位から4位へ。1区で3位と好発進、3区では15秒差の2位まであがってきている。 北海道は前回17位から8位へ。最終的には8位に終わったものの、前半は4位以内をキープ、2区ではトップ立つほどの勢いをしめした。ホクレン勢の好調さがチーム全体に勢いをつけたようである。 長野も前回15位から9位までやってきた。やはり前半の戦いぶりがみごと。4区ではトップの埼玉に18秒差と迫っている。 3位の茨城はむしろ後半の戦いぶりが光っていた。4区までは9位に甘んじていたが、7区では5区から追撃、7区では41秒差の3位まであがってきている。地力のあるチームであった。 群馬は最終的に7位に終わったものの1区のアクシデントを考えれば、かなり健闘したとみていいだろう。区間賞を2つも獲るなどみるべきものがり、もし1区の転倒がなkればと惜しまれる。 逆に期待はずれに終わったのは前回2位におわったものの最後まで優勝争いを演じた福島、今回はつねに中位を低空飛行、6位にあがってくるのがやっとというありさまだった。過去に優勝経験もある千葉は近年いまひとつだが、今回も精彩を欠き、前回の順位をさらに3つも落として10位に落ちてしまった。 埼玉は3度目の優勝! だが、実に9年ぶりである。実業団の強豪(埼玉銀行、しまむら)を持ち、高校駅伝の強豪(埼玉栄)をもち、中学生もそこそこ強い。にもかかわらず、どうして9年ぶりなのか? 理由は大会日程にあった。埼玉に関するかぎり、本大会当日がいつも高校駅伝の予選日とバッティングしていたのである。チームの主力となる高校生に主力を投入できなかった。ゆえに勝てるはずがなかったのである。 埼玉が復活、宮城、北海道、長野といった首都圏以外のチームが台頭してきた。来年は今年よりさらに激戦になりそうである。 ★開催日:2002年11月13日(日) 福島市信夫ヶ丘競技場→フルーツライン折り返し 9区間42.195キロ ★天候:曇り 気温14.3度 湿度46% 南南西の風2m ★埼玉(馬目綾、富岡美幸、小原悠、相川千里子、大谷木霞、中代唯、砂子愛、櫻井夏美、高橋弥愛)
区 間 最 高
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