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どんよりした空から雨がきたのは3区あたりからだった。 伊勢路に降りしきる雨、それは奇しくも路上でくりひろげられる熱気をはらんだ闘いを癒すかのように、時として激しくやってきた。 最終区のゴール前では、この季節にしてはひときわ激しくなり、まさに篠つく雨の様相である。雨しぶきに煙るなか、後ろからはもう誰もやってこない。こんなとき、トップを走るランナーの脳裏に去来するものは、いったい何なのだろうか。 宇治橋前に現れた日本大学のアンカー・下重正樹、まるで雨の帳を押しひらくかのように拳をにぎりしめ、歓喜の雄叫びに貌の表情をくずした。 日本大学、14年ぶり2度目の優勝! 終わってみれば2区にトップに立ってからは、いちども首位を明け渡すことはなかった。追いすがる第一工業大を余裕をもって振りきった。あの王者・駒澤にすら勝負にもちこませることもなかった。、その足音すら聞くことがないままゴールを突きぬけたのである。 2連覇している出雲では5位に沈みながら、本大会では大きな変わり身をみせた。危なげない勝ちかたである。 うがったみかたをすれば……。 今シーズンの日大は出雲を捨てて、ハナから箱根に通じる全日本に焦点を合わしていたのではないか。もし、そうだとするなら、箱根の王者・駒澤にとって、今年の日大はあなどれないものがある。 しのびよる東海の影を意識しながら、つまり見えない敵を相手にレースをしていたであろう駒澤にしてみれば、いわば眼下の敵に足もとをすくわれたということになる。
第一工業大が突っ走るのはいつもながらの展開というべきか。 今回はケニアからの留学生ディメット・キメリ、出雲では顔をみせなかっが、駅伝初見参ながら、あっさりと1区を制してしまった。 集団をひっぱるキメリにくらいついていったのが北村聡(日体大)である。留学生にあっさりと先にゆかせまい……とする姿勢は、なかなか見どころがある。積極性は高く評価しておこう。 5q=14:35といえば、それほどおどろくペースではないが、山梨学院(大越直哉)、順天堂(小野裕幸)は遅れはじめ、両校はここで早くも脱落していった。駒澤大(堺晃一)、中央大(田村航)、日本大(福井誠)といった主力どころは第2集団をキープ。ムリをしなかったといえば聞こえがいいが、ついてゆけなかったのだろう。 6.7qでは北村が遅れ始め、かわって専修の座間マボロ、広島経済大(S・ガンガ)が追走するものの、7qすぎの下り坂でキメリはペースアップ、後続はあっさり振り切られてしまう。 日本にやってきたばかりに1年生、駅伝のことなど何も知らないランナーに、北村聡などエースクラスがあっさりねじ伏せられてしまう。搭載しているエンジンのグレードがゼンゼンちがうという感じで、思わずためいきが出た。 1区で健闘したのは40秒そこそこで2位から4位につづいた東洋大(大西智也)、専修大(座間マボロ)、神奈川大(豊田崇)、いずれも2週間前に箱根予選会を走った連中である。主力を形成する日体大(北村聡)は5位、日大は58秒遅れの6位、中央大は1分24秒遅れの10位、連覇をねらう駒澤はなんと1分40秒遅れの12位である。 王者・駒澤にとっては、結果的にみて1区で後手を踏んだことがすべて……というレース展開になってしまった。
今回のみどころは第2区であった。 出雲では区間7位と、まるで信じられないような走りだった日大のD・サイモン、あれは死んだふりをしていたのか。まるで眠りから覚めたかのように、見違えるような走りで追いあげる。日本体育大、神奈川大、専修大、東洋大を一気に抜き去り、6.5qでは早くもトップをゆく第一工業大をとらえて先頭に躍り出した。 後ろからは中央大の上野裕一郎が10位から急追、サイモンに負けず劣らずの追いあげで12qの手前では2位をゆく第一工業大をとらえて2位までやってきた。8人抜きといえばためいきが出るが、それだけ1区が悪すぎたということの裏返しである。 注目すべきは駒澤大の動きの鈍さである。ライバルの日大がトップを奪い、中央大が50秒差の2位と順調に運んだのに、2区を終わってトップとは1分47秒遅れの8位にあえいでいた。順位こそあげたものの、逆に秒差をひろげられてしまってはいかんともしがたいものがある。駒澤連覇の夢はこの2区で費えたといっていい。 2区でトップに立った日大、流れに乗れない駒澤……。3区でも明暗をわけた。 日大の秀島隼人は駅伝初見参ながら快調な走りをみせた、雨が本降りになるなかキレのいいピッチをきざみ、2位との差を一気に1分37秒までひろげてしまうのである。駒澤の高井和治も悪かったわけではない。8位から猛追、区間1位の走りで4位まで順位をおしあげてくるのだが、首位との差はいぜん1分44秒、わずか3秒しか詰まらなかったのである。
関東勢いがいで健闘したのは、やはり第一工業大だろう。 今回は留学生3人を配して、関東の有力校にも驚異の視線をそそがれる存在であった。前半から中盤にかけてはトップを突っ走るだろうという……というみかたもあった。 事実3区ではトップから2分13秒差の6位まで順位を落としたが、戦力的にそこで終わらないのが今シーズンの第一工業大である。 4区では先の出雲の1区を制したキプコエッチが登場、たちまち中央をとらえ、駒澤のエースといわれる佐藤慎悟さえもとらえ、10qすぎでは一気に突き放してしまった。トップをゆく日大とは37秒差の2位とふたたび盛り返してきたのである。5区も留学生のひとりを起用、いっときは首位をゆく日大の武者由幸を追いあげ、わずか20秒差まで迫まるという勢いをみせた。 6区でも粘りをみせて3位、7区は6位まで順位を落としたものの、いぜんシード権争いを演じていたが、長丁場の最終区ではさすがに失速、最終的には10位に終わったが、レースの見せ場をつくった点は高く評価すべきだろう。留学生を起爆剤にしてチーム力をつけて、やがては本気でトップを狙う存在になる。今回のレースで第2の山梨学院大になる土壌はできあがったようである。 それにしても今回は8区のうち4区まで、留学生に区間1位をさらわれている。日本人ランナーは誰一人として、モグスやサイモンには太刀打ちできない。それが現実だと知りつつも、なんとかならないものか……と、ついつい愚痴のひとつも言いたくなるのはぼくだけだろうか。
日大の勝因としてはサイモンの快走をあげなくてはなるまいが、全員が区間6位以内にはいるという安定した走り。さらに5区でトップを死守したキャプテン・武者由幸の踏ん張り、59秒まで追いすがった駒澤を一気に突き放した7区の阿久津尚二の走りもまたみごとであった。 2位の中央大は1区で出遅れながらも、2区の上野の快走で挽回、そこからは伸びなかったものの。大きく崩れることのない堅実な走りぶり、優勝争いには加われなかったものの最終区では駒澤を交わして溜飲をさげた。 駒澤は3位に終わったが、それでも1区をのぞけばまずまずの結果、区間賞を2つ獲るなど潜在能力をみせつけた。戦力を試したということで、それなりの成果があったというべきか。誤算は1区のみで、戦力にどっしりとした厚みが感じられる。箱根では中央とともに上位を争うやはり安定勢力となろう。 4位の山梨学院大は同じ箱根予選会組の東洋、専修などが上位にからむなかで1区で16位と大きく出遅れた。7区を終わっても7分51秒遅れの15位と、いぜん低空低空していたが、アンカーのモグスがこのレースでも快走した。度会橋をわたったところで3分30秒あった差を一気につめて、6位にあがるという驚異的なスピードで13qすぎで中央学院、ゴール間近では日本体育大をとらえて、なんと4位まであがってきたのである。 山梨はモグスの快走のみでシード権を確保したものの、それは大砲の存在が活きるレースならばこそ……であろう。
いまにとつ食い足りなかったのが5位に甘んじた日本体育大である。 1区では58秒差の5位と駒澤、日大、中央の上位につけながら、その後は伸びなかった。中盤ではつねに7位前後を行き来して、最後は山梨にまで交わされる始末である。いまだあるショックがよほど強烈に作用しているらしく、どうやら今年も大きな期待をかけるのはムリのようだ。 順天堂はいまだ戦力がととのわないようだ。それよりはまだしも、最後は6位にもぐりこんでシード権をうばった大東文化大、7位の神奈川大のほうが、はるかに期待できるかもしれない。 法政と亜細亜については現在のところ、箱根でもあまり期待できそうにない。シード落ちの崖っぷちにあるとみておこう。 箱根をみすえて、全日本の結果から戦力をみるかぎり、東海、日大、駒澤、中央が抜けた存在とみる。4強といえども総合力ではほとんど遜色がない。 駒澤には昨年ほどの優位さはなく、5連覇はかなり苦しそうだ。山梨は本戦では確かに4位にきたが、しょせんはモグス一人のチーム、総合力が生きてくる箱根では、いかにも非力である。今回も予選落ち必至の形勢である。 いずれにしても上位4強は実力伯仲! 実力互角ならば駒澤よりも、むしろ決め手のある東海、日大に大いにチャンスあり……ということになるのだが……。 ★開催日:2005年11月06日(日) 熱田神宮西門前→伊勢神宮内宮宇治橋前 8区間 106.8キロ ★天候:出発時 晴 気温13.7度 湿度72% 北西の風1.8m ★日本大学(福井誠、D・サイモン、秀島隼人、土橋啓太、武者由幸、吉岡玲、阿久津尚二、下重正樹)
区 間 最 高
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