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第35回 全日本大学駅伝対抗選手権大会

出雲につづいて、またしてもアンカー勝負!
東海大学が大混戦から抜け出して初制覇!


新しいエースの登場!
東海2年生ランナー・中井祥太が決めた!

 中井祥太というたランナーを知ったのは今年の箱根駅伝だった。大平台のヘアピンカーブにあらわれたとき、そのリズミカルでテンポのいい走りに、おや……と思わず眼をみはったのである。
 あまり印象のない東海大の1年生、まさか区間賞を取るなどとは思わなかった。事実、中井は1年生ながら、東海大の駅伝メンバーに名を連ねていたのだが、箱根まではランナーとしてほとんどめぼしい実績はない。あれからの成績をみると、あの箱根の山登りの一走がかれのランナーとしての人生を一変させたといってもいいだろう。
 1万メートルは29分をわずかに切る程度だが、20キロは1゚00'59、ハーフでは1゚02'14"だというから、なかなかのものである。日本インカレのハーフマラソンでも1位になるなど、距離の長いところでは、2年生ながら今や学生界でもトップクラスにある。箱根以降の成長には眼をみはるものがある。
 中井は先の出雲駅伝でも最終区の残り4キロまで、優勝した日大の藤井周一や今回も5区でトップを奪った大東文化大の柴田純一と最後まで熾烈なデッドヒートを演じている。4年生と2年生の貫禄のちがいというものか。最後は惜しくも日大の藤井に名をなさしめたが、強く印象に残る走りであった。
 最終までもつれた出雲の余韻がひきずるかのように、今大会もまたしてもアンカー勝負である。7区を終わってトップは東海大、8秒差で駒澤が追い、17秒差で大東文化大がつづいている。
 トップをゆく東海の中井祥太を駒澤の田中宏樹が追いかける。出雲とは攻守ところを変えて、まったく逆の展開である。大東大は出雲では柴田だったが、今大会は野宮章弘が相手である。3キロすぎで田中と野宮が追い上げてきて中井をとらえた。三つどもえの熾烈なバトル、だが中井は終始落ち着いていた。
 レースが動いたのは10キロすぎである。
 田中が遅れた一瞬をついて、中井がするすると前に出た。田中が赤らんだ顔を振りながら追っかけるが付いていけない。中井はそのままスパートして一気に2人を突っ放してしまった。出雲の経験が生きたのか。あのときは脇役に甘んじたが、今回は文句なしに主役の座を奪いとった。これぞエースの走り、その勝負カンは冴えていた。
 あふれる笑みを顔いっぱいにたたえ、右手の人差し指をそれに向かって突きだしてゴールする姿、まだどこかあどけなく、いかにも初優勝のゴールらしくて新鮮なものとして眼に映った。


連覇をねらう駒澤に
 待ったをかけたのは東海と大東文化大

 王者・駒澤の2連覇なるか。出雲を制した日大の力は本物なのか。眠れる獅子というべき山梨学院が悲願の初優勝を飾るのか。出雲で善戦した大東文化大、東海大がどのような戦いぶりをみせるのか。
 テレビ実況では、やたら「史上最高の戦国駅伝」と連呼していたが、史上最高であるかはともかく、勝負の流れが容易にみえてこないという意味で最後まで眼が離せない、凄まじいレースであった。
 第1区を制したのは第一工業大のアブドラ・バイ、駒澤は43秒遅れの4位、大東は47秒遅れの6位、山梨と東海は55秒遅れの9位、10位……、主力どころはまずまずのスタートであった。
 2区では駒澤の内田直将が区間賞快走でトップに立ったときには、駒澤がそのまま主導権を握るものとおもわれたが、出雲で意外なモロさを露呈したように、本大会でもいまひとつ勢いがなかった。3区では期待の1年生・高井が突っ込みすぎて、出雲で好走した東海の小出徹に足もとすくわれた。
 トップに立った東海も4区の一井裕介で駒澤に14秒、大東文化に44秒と差をひろげたときには一気に流れに乗るかと思われたが長くはつづかない。5区になると大東文化の柴田純一が一気に追い上げてきて流れは一変してしまう。ところが、その大東文化も流れに乗りそこない6区では東海にふたたびトップを奪われてしまう。優勝争いは3チームにしぼられたものの、いずれもいまひとつ主導権を握りきれない。かくして東海、大東文化、駒澤が20秒以内でしにぎをけずるという展開で、勝負は最終区に持ち込まれるのである。
 3校はほとんど互角の形勢だったが、最後に東海大が笑ったのは、中井という決め手あるコマを残していたせいだろう。


総合力が生きた東海大
地力強化の大東文化大、駒澤に一抹の不安

 東海大は創部45年目にして学生駅伝初制覇である。
 勝因は8人のメンバーがムラなく走ったことにある。区間賞はひとつもないのだが、1区の生井をのぞいて、ほかの7人はいずれも区間2位〜4位にはいっている。勝負は最終区の中井が決めたといえるが、メンバーそれぞれが自分の役割をきっちり果たして、エースを生かせるお膳立てをつくりあげた。チームワークの勝利、出雲の上位争いはフロックではなかったのである。
 出雲2位の大東文化大は今回も2位にとびこんだ。距離がのびても大きく崩れることはない。確実に地力強化されているとみた。今大会でもエースの柴田純一と1年生の宮地章弘が区間賞を獲得、かなりバランスのいいチームに仕上がっている。
 4位の駒澤大は最終的に出雲よりさらに順位をひとつ落とした。出雲でもそうだったが今大会でもアンカー勝負で競り負けている。田中宏樹の出来がいま一歩なのか、ここいちばんで踏ん張れない。本大会でも一時はトップにきわどく肉薄しながら、勝負どころで失速してしまった。トップをきわどく争って、たとえばモカンバや藤井周一クラスに負けるのならしかたがないが、中井や野宮クラスに負けるようでは、ちょっと心細くなる。戦略的にもどこかチグハグで、チームのまとまりもいまひとつの感がある。
 健闘したのは5位の日本体育大である。出雲でも最終9位ながらも、中盤までは上位に食らいついていた。今回は距離が伸びてさらに順位をあげてきた。日大、中央学院を競り落としての5位は大きく評価できる。1、2年せい中心のチームだが、素質のある有望なランナーがそろっている。6区で区間賞をとった上野飛偉楼をはじめ、鷲見知彦、稲垣晃二、保科光作など1年生たちがいずれも堅実な結果を残している。今回も終始8位をキープするなど、きわめて安定感があった。
 6位の中央学院大も中盤から5位〜6位をキープ、7区では4位にまで押し上げてきている。出雲優勝の日大を上回ってのシード権獲得は価値がある。


安定性を欠いた日大
またしても同じ轍を踏んだ山梨

 強いのか弱いのか、いまひとつ判然としないのが日大である。出雲では圧倒的な強さを発揮しながら、今回はとうとう最後まで優勝争いには絡んでこれなかった。
 1区の下重の19位という出遅れで流れにのれなかったのか。2区の藤井周一で6位まで上がってきたときには、さすがと思わせたが、今回はそこまであった。中盤以降はいまひとつ伸びきれなかった。潜在的な戦力はかなりのものだが、強さとモロさが相半ばするチームのようである。日体大とは対照的に安定性という意味では疑問符がつく。
 流れに乗れないといえば、毎回のように優勝候補にあげられ、本大会のシルバーメダルコレクター・山梨学院も自己呪縛から脱することができなかった。最終的に3位にきたものの、つねに優勝圏外でもがいていた。
 1区に準エースクラスの森本直人、2区にエース高見澤勝をもってきながら、2区を終わって7位、繋ぎの3区では11位まで落ちた。だが4区の橋ノ口滝一が踏ん張った。駅伝初めての区間賞で5位まで押し上げてきて、トップから1分差まできたときには、一気に流れに乗るかと思われたが、繋ぎの5区、6区で失速して、頼みのモカンバにタスキがわたるときにはなんと、3分あまりも差がついていた。さすがのモカンバも、これでは戦いようがない。
 出雲のときもそうだったが、個々の選手たちの潜在能力は高いのだが、それがチームとしての力に結実しない。1+1が3になっている東海大や日体大にくらべて、山梨の場合は1どころが0に落ちている。いつもいつも同じ轍を踏んで失敗している。力のあるチームだけによけい歯がゆいのである。選手にももちろん問題があるだろうが、むしろ指導者に問題がある。こんなことを書くと内政干渉になるかもしれないが、そろそろ監督以下全員を総入れ替えして、新しい体制で再出発すべきである。


史上最高の戦国駅伝になるのか?
箱根路のゆくえは、混沌の闇

 箱根予選会出場組では突破校の法政と早稲田の2校、落選組では拓殖と国学院が出場した。結果は法政の8位が最高で、拓殖が11位、国学院が13位である。
 早稲田は4区で思わぬアクシデントにみまわれて途中棄権となった。3区までは4位とトップをうかがえるところまで上がってきていただけに惜しまれる。
 最終的に予選会トップの法政は8位、これをみるとシード組と少し差があるとみなくてはなるまい。予選会組では期待できるのは神奈川大か。あとは今回途中棄権ながら好調な滑り出しをして期待を抱かせた早稲田も潜在能力はかなりあるとみるのだが、はたして……。
 今年は出雲。全日本の結果と箱根がほとんど結びつかないだろう。ただ、はっきりしていることは、メディアが「史上最高の戦国駅伝」というように、各チームの力は例年以上に拮抗している。
 大会当日のコンディション次第で、優勝を争うとみられる主力チームでも、シード落ちの危機に瀕するケースも考えられる。箱根路のゆくえは本大会が終わっても、まったくみえてこない。むしろ混沌の闇はさらに深くなった
 それを前提にして、あえて箱根のゆくえを占ってみると、駒澤、山梨の常連組にくわえて、今年は大東文化、東海、日大、日本体育大、中央、神奈川あたりまでがきわどくからんできる可能性があるとみる。
 出雲、全日本で後手を踏んだが、やはり一番手には駒澤をあげておきたい。今年はスーパーエース的な存在を欠いているが、潜在能力のある選手が多く、何よりも選手層が分厚い。混戦になると、そういう総合力が最後に生きてくるケースが多いのである。(2003/11/03)

★開催日:2003年11月02日(日) 熱田神宮西門前→伊勢神宮内宮宇治橋前 8区間 106.8キロ 
★天候:出発時 晴 気温14.2度 湿度85%  北の風1.8m
★東海大学(生井怜、越川秀宣、小出徹、一井裕介、村上智、根立友樹、宮本和哉、中井祥太)


最 終 成 績
<順位 チーム名 記  録
東海大学 5時間21分06秒
大東文化大 5時間22分23秒
山梨学院大学 5時間22分59秒
駒澤大学 5時間23分12秒
日本体育大学 5時間26分25秒
中央学院大学 5時間26分52秒
日本大学 5時間27分25秒
法政大学 5時間27分52秒
東洋大学 5時間28分50秒
10 京都産業大学 5時間30分56秒
11 拓殖大学 5時間31分18秒
12 立命館大大学 5時間32分03秒
13 國學院大学 5時間33分58秒
14 徳山大学 5時間37分20秒
15 広島経済大学 5時間39分29秒
16 第一工業大学 5時間40分02秒
17 大阪体育大学 5時間41分39秒
18 東北福祉大学 5時間42分23秒
19 福岡大学 5時間43分14秒
20 四日市大学 5時間44分10秒
21 愛知工業大学 5時間45分15秒
22 高岡法科大学 5時間49分11秒
23 北海道教育大学 5時間49分32秒
24 鹿屋体育大学 5時間50分05秒
25 早稲田大学 途中棄権



区 間 最 高
区間 距離 選手名 所属 タイム
15.6 A・バイ 第一工業大  43:49
13.2 内田 直将 駒澤大  38:29
09.5 宮地 章弘 大東文化大  27:55
14.0 橋ノ口滝一 山梨学院大  41:18
11.6 柴田 純一 大東文化大  34:31
12.3 齋藤 弘幸 駒澤大  36:49
11.9 上野飛偉楼 日本体育大  35:40
19.7 O・モカンバ 山梨学院大  58:16



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