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トップで競技場にもどってきた須磨学園のアンカー脇田茜、やや緊張した面持ちながら、軽快なピッチをきざんでゆく。ひたすら前をみつめてひた走る。後ろをいっさい振り返らない。そのひたむきな姿勢が実にすがすがしかった。 表情がふと動いたのはゴールテープを目前にしたときだった。引き締まった顔に笑みがこぼれるとき、いかにも1年生らしいあどけない表情が浮かんだ。どこか恥ずかしそうに彼女が空に向かって腕を突き上げた瞬間に須磨学園の悲願は達成されたのである。 須磨学園といえば、筑紫女学院、諫早、立命館宇治とならんで女子高校駅伝の4強を形成してきた。なかでも選手層の厚さでは文句なしにナンバー・ワンといわれてきた。だがいつも一歩のところで優勝に手がとどかなかった。昨年まで8年連続入賞を果たしながら優勝はいちどもないのである。 無冠の強豪チームといわれ、力ある選手が目白押し……という状況のなかで、1年生でアンカーに起用された脇田茜は監督によほどの信頼が厚かったのだろう。5つの区間のなかで最終5区は1区に次いで距離が長い。いわば準エース区間なのである。 4区を終わってトップをゆく須磨学園は27秒差のリードを保ってアンカーの脇田にタスキを託している。追ってくるのは諫早と立命館宇治であった。両校ともに優勝経験のあるチーム、2年生と3年生のランナーが追ってくるのだが、トップをゆく1年生ランナーは落ち着いていた。軽快に自分のペースでタスキを運び、終わってみれば2位の諫早を逆に7秒ほど突っ放していたのである。 筑紫、立命館、諫早、筑紫……と続き、やっと須磨学園が頂点に立った。皮肉にも筑紫がひそかにねらっていたであろう連覇を阻んでの初優勝である。 予選会の記録からみて今年は男子の西脇工、女子の筑紫に連覇の可能性が十分あった。 男子は仙台育英と西脇が抜けた存在で西脇の2連覇は、かなり濃厚とみていた。15回で記念大会にあたる女子は、須磨学園と県立西宮のほか立命館宇治、筑紫、諫早が上位を形成、1年生ながらスーパーエースといわれる野原優子をもつ筑紫が1区で抜け出して一気に突っ走る展開も想定されていた。 だが皮肉にも男女両校ともに1区でつまずいて失速した。高校駅伝の場合、連覇は至難の業というべきか。
男女ともに今回は前半の1〜2区で勝負にゆくえが見えてしまった。観るレースとしての盛りあがりはいまひとつだったが、それはテレビ観戦者の身勝手な想いというものだろう。 男子1区は今年も留学生がハナからぶっとんでいった。仙台育英のS・ワンジル、青森山田のJ・ムワンギ、滋賀学園のJ・カリウキ、山梨学院の仙台育英のM・モグス……。ケニア勢が引っ張る展開ではじまった。 ケニア・カルテットについていったのが西脇工の北村聡と佐久長聖の上野裕一郎だった。両校の積極果敢な攻めは評価できるものの、その明暗はくっきりと別れてしまったようである。 結果につながったのが佐久長聖である。上野はトップのワンジルに50秒遅れながら、4位でタスキを渡した。この上野の粘走が最終2位に食い込む足がかりをつくった。 裏目に出たのが西脇工である。北村はケニア勢に競りつぶされた格好で後半は大幅にペースダウンしてしまった。ライバルの仙台育英に先にゆかれるのは仕方がないとしても、1分26秒の遅れは大誤算だったのではあるまいか。 逆に仙台育英にしてみれば、西脇工とのタイム差が思いのほかひらいたことに気をよくして、2区以降はすっかりリズムに乗ってしまった。4区を終わって2分50秒という大差がついてしまっては、とても勝負にならない。6区の貝阪が区間賞の快走で追いあげたが、もう後の祭りでしかなかった。 今回の仙台育英のメンバーは1年生と2年生とで構成されていた。いわば発展途上のチームなのだが、あっさりと大会新記録を更新してしまった。来年は2時間01分台が望めそうである。
女子の第1区もケニア留学生の顔がそろった。J・モンビ(青森山田)、M・カリウキ(仙台育英)、O・モラーフィレス(山梨学院)……。昨年とおなじように留学生トリオがすっ飛ばして幕あけるだろうとみていた。いずれも優勝争いとは縁のなさそうなチームであるだけに、1区では候補といわれるチームがどういうポジションを占めるかがみどころであった。 とくに前半でリードを奪って逃げこみをねらう筑紫の出方が注目の的であった。筑紫の1区は野原優子である。世界ユース3位の彼女は1年生にして筑紫のエースである。留学生トリオに野原がどのように挑むかも見どころのひとつであった。 ところが……。 留学生トリオは待機作戦に出たのか。入りの1kは3:10、1〜2kは3:02、中間点は9:29と、それほどのペースではないのに、誰も飛び出そうとしない。 集団を引っ張ったのは興譲館の1年生ランナー・新谷仁美であった。新谷が須磨学園の勝又美咲、筑紫の野原優子をしたがえる格好で進み、4キロで新谷がスパートすると、もう誰もついてゆけなかった。 留学生トリオさえも振り切られ、筑紫の命運をになっていた野原優子は大きく遅れてしまった。 候補の須磨学園は11秒差の4位、須磨から遅れること諫早は12秒、立命館宇治は19秒、筑紫はなんと23秒も置いてゆかれた。 1区で絶好の位置をキープした須磨学園は、2区であっさりとトップを奪ってしまう。そして、もうゴールまでトップを譲ることはなかった。2区の藤本知佐が区間賞、3区の岸本明子が区間2位、4区の西山弥生が区間賞、5区の1年生・脇田茜でさえも準エース区間にもかかわらず、17秒遅れの区間5位と快走した。 1区の3年生・勝又美咲の冷静沈着な走りが後続のランナーたちに勢いをつけ、チーム全体をを一気に流れに乗せてしまったようである。 新谷仁美に代表されるように、女子の場合、今回は1年生の活躍が目だった。1区を制した新谷、3区では同じ興譲館の幸坂薫が区間3位、4区では諫早の高田鮎実が区間2位、立命館宇治の北川麻衣子が区間3位……。今回は振るわなかった筑紫の野原優子も大器の片鱗をみせた。次回は同じ1区でリベンジするだろう。
女子は今回は記念大会で地区代表を含めて58チームが出場している。 地区代表組では県立西宮が3位、戸畑商が6位に入賞した。いずれも予選タイムでは上位にランクされる実力校だが、これまで県立西宮には須磨学園、戸畑商には筑紫序女学園が分厚い壁となって前途を閉ざされてきた。 3位と6位という入賞は当然の結果だが、力がありながら全国大会への道を阻まれてきた両校にしてみれば、格好のウサ晴らしになったことだろう。記念大会ゆえの特別出場が天敵を倒す起爆力になれば、地区代表というシステムも活きてくる。 男子では2位の佐久長聖の健闘が光る。1区・上野がもたらした快走リズムを活かして、3区以降は2位から落ちることはなかった。とくに4区では佐藤悠基が区間新記録の快走、さらにチームに勢いをつけたようである。1区の遅れでリズムを崩して、もがき苦しむ西脇工とは対照的だった。予選記録では12位であるだけに、西脇工や大牟田を押さえての準優勝はみごとというほかない。 そのほか4位の倉敷(予選タイムでは18位)、7位の田村(予選タイム34位)、12位の出雲工(予選タイム32位)なども、本戦で実力以上の戦いぶりをしめしている。 西脇工は1区の出遅れが決定的な敗因だが、その悪しき流れにどっぷりはまって2区ではなんと区間35位と大きく失速、完全に流れにのりそこなってしまった。 タイム的にみると男子では2時間10分を切ったのが33チーム、女子では13チームが1時間10分を切り、20位までが10分台をキープしている。 高校駅伝もますますスピード化が進み、連覇はむずかしくなりそうな気配が濃厚なだけに、1年生、2年生チームで優勝した男子の仙台育英を注目してみまもりたい。 ★開催日:2002年12月21日(日) 京都市・西京極競技場発着 男子:宝ヶ池国際会議場前折り返し7区間49.195Km 女子:烏丸鞍馬口折り返し5区間 21.975Km ★天候:午前10時(女子) 晴れ 気温7.0度 湿度71% 南南西の風1.2m 正午(男子) 晴れ 気温8.0度 湿度59% 東南東の風1.8m ★女子:須磨学園チーム (勝又美咲、藤本知佐、岸本明子 西山弥生、脇田茜) ★男子:仙台育英チーム (J・ワンジル、梁瀬隆史、伊藤一行、佐藤悠基、巻野修一、佐藤直樹、佐藤昭太)
区 間 最 高
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