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男子第54回・女子第15回 全国高校駅伝

女子は須磨学園、男子は仙台育英
西脇工、筑紫女学園の連覇ならず!


無冠の王者・須磨学園!
悲願の初優勝

 トップで競技場にもどってきた須磨学園のアンカー脇田茜、やや緊張した面持ちながら、軽快なピッチをきざんでゆく。ひたすら前をみつめてひた走る。後ろをいっさい振り返らない。そのひたむきな姿勢が実にすがすがしかった。
 表情がふと動いたのはゴールテープを目前にしたときだった。引き締まった顔に笑みがこぼれるとき、いかにも1年生らしいあどけない表情が浮かんだ。どこか恥ずかしそうに彼女が空に向かって腕を突き上げた瞬間に須磨学園の悲願は達成されたのである。
 須磨学園といえば、筑紫女学院、諫早、立命館宇治とならんで女子高校駅伝の4強を形成してきた。なかでも選手層の厚さでは文句なしにナンバー・ワンといわれてきた。だがいつも一歩のところで優勝に手がとどかなかった。昨年まで8年連続入賞を果たしながら優勝はいちどもないのである。
 無冠の強豪チームといわれ、力ある選手が目白押し……という状況のなかで、1年生でアンカーに起用された脇田茜は監督によほどの信頼が厚かったのだろう。5つの区間のなかで最終5区は1区に次いで距離が長い。いわば準エース区間なのである。
 4区を終わってトップをゆく須磨学園は27秒差のリードを保ってアンカーの脇田にタスキを託している。追ってくるのは諫早と立命館宇治であった。両校ともに優勝経験のあるチーム、2年生と3年生のランナーが追ってくるのだが、トップをゆく1年生ランナーは落ち着いていた。軽快に自分のペースでタスキを運び、終わってみれば2位の諫早を逆に7秒ほど突っ放していたのである。
 筑紫、立命館、諫早、筑紫……と続き、やっと須磨学園が頂点に立った。皮肉にも筑紫がひそかにねらっていたであろう連覇を阻んでの初優勝である。
 予選会の記録からみて今年は男子の西脇工、女子の筑紫に連覇の可能性が十分あった。 男子は仙台育英と西脇が抜けた存在で西脇の2連覇は、かなり濃厚とみていた。15回で記念大会にあたる女子は、須磨学園と県立西宮のほか立命館宇治、筑紫、諫早が上位を形成、1年生ながらスーパーエースといわれる野原優子をもつ筑紫が1区で抜け出して一気に突っ走る展開も想定されていた。
 だが皮肉にも男女両校ともに1区でつまずいて失速した。高校駅伝の場合、連覇は至難の業というべきか。


勝負のポイントはすべて1区にあり
男子・仙台育英が先手必勝!

 男女ともに今回は前半の1〜2区で勝負にゆくえが見えてしまった。観るレースとしての盛りあがりはいまひとつだったが、それはテレビ観戦者の身勝手な想いというものだろう。
 男子1区は今年も留学生がハナからぶっとんでいった。仙台育英のS・ワンジル、青森山田のJ・ムワンギ、滋賀学園のJ・カリウキ、山梨学院の仙台育英のM・モグス……。ケニア勢が引っ張る展開ではじまった。
 ケニア・カルテットについていったのが西脇工の北村聡と佐久長聖の上野裕一郎だった。両校の積極果敢な攻めは評価できるものの、その明暗はくっきりと別れてしまったようである。
 結果につながったのが佐久長聖である。上野はトップのワンジルに50秒遅れながら、4位でタスキを渡した。この上野の粘走が最終2位に食い込む足がかりをつくった。
 裏目に出たのが西脇工である。北村はケニア勢に競りつぶされた格好で後半は大幅にペースダウンしてしまった。ライバルの仙台育英に先にゆかれるのは仕方がないとしても、1分26秒の遅れは大誤算だったのではあるまいか。
 逆に仙台育英にしてみれば、西脇工とのタイム差が思いのほかひらいたことに気をよくして、2区以降はすっかりリズムに乗ってしまった。4区を終わって2分50秒という大差がついてしまっては、とても勝負にならない。6区の貝阪が区間賞の快走で追いあげたが、もう後の祭りでしかなかった。
 今回の仙台育英のメンバーは1年生と2年生とで構成されていた。いわば発展途上のチームなのだが、あっさりと大会新記録を更新してしまった。来年は2時間01分台が望めそうである。


女子の第1区に異変!
留学生トリオを退けたのは1年生ランナー

 女子の第1区もケニア留学生の顔がそろった。J・モンビ(青森山田)、M・カリウキ(仙台育英)、O・モラーフィレス(山梨学院)……。昨年とおなじように留学生トリオがすっ飛ばして幕あけるだろうとみていた。いずれも優勝争いとは縁のなさそうなチームであるだけに、1区では候補といわれるチームがどういうポジションを占めるかがみどころであった。
 とくに前半でリードを奪って逃げこみをねらう筑紫の出方が注目の的であった。筑紫の1区は野原優子である。世界ユース3位の彼女は1年生にして筑紫のエースである。留学生トリオに野原がどのように挑むかも見どころのひとつであった。
 ところが……。
 留学生トリオは待機作戦に出たのか。入りの1kは3:10、1〜2kは3:02、中間点は9:29と、それほどのペースではないのに、誰も飛び出そうとしない。
 集団を引っ張ったのは興譲館の1年生ランナー・新谷仁美であった。新谷が須磨学園の勝又美咲、筑紫の野原優子をしたがえる格好で進み、4キロで新谷がスパートすると、もう誰もついてゆけなかった。
 留学生トリオさえも振り切られ、筑紫の命運をになっていた野原優子は大きく遅れてしまった。
 候補の須磨学園は11秒差の4位、須磨から遅れること諫早は12秒、立命館宇治は19秒、筑紫はなんと23秒も置いてゆかれた。
 1区で絶好の位置をキープした須磨学園は、2区であっさりとトップを奪ってしまう。そして、もうゴールまでトップを譲ることはなかった。2区の藤本知佐が区間賞、3区の岸本明子が区間2位、4区の西山弥生が区間賞、5区の1年生・脇田茜でさえも準エース区間にもかかわらず、17秒遅れの区間5位と快走した。
 1区の3年生・勝又美咲の冷静沈着な走りが後続のランナーたちに勢いをつけ、チーム全体をを一気に流れに乗せてしまったようである。
 新谷仁美に代表されるように、女子の場合、今回は1年生の活躍が目だった。1区を制した新谷、3区では同じ興譲館の幸坂薫が区間3位、4区では諫早の高田鮎実が区間2位、立命館宇治の北川麻衣子が区間3位……。今回は振るわなかった筑紫の野原優子も大器の片鱗をみせた。次回は同じ1区でリベンジするだろう。


男子では佐久長聖
女子では地区代表の県立西宮、戸畑商が健闘


 女子は今回は記念大会で地区代表を含めて58チームが出場している。
 地区代表組では県立西宮が3位、戸畑商が6位に入賞した。いずれも予選タイムでは上位にランクされる実力校だが、これまで県立西宮には須磨学園、戸畑商には筑紫序女学園が分厚い壁となって前途を閉ざされてきた。
 3位と6位という入賞は当然の結果だが、力がありながら全国大会への道を阻まれてきた両校にしてみれば、格好のウサ晴らしになったことだろう。記念大会ゆえの特別出場が天敵を倒す起爆力になれば、地区代表というシステムも活きてくる。
 男子では2位の佐久長聖の健闘が光る。1区・上野がもたらした快走リズムを活かして、3区以降は2位から落ちることはなかった。とくに4区では佐藤悠基が区間新記録の快走、さらにチームに勢いをつけたようである。1区の遅れでリズムを崩して、もがき苦しむ西脇工とは対照的だった。予選記録では12位であるだけに、西脇工や大牟田を押さえての準優勝はみごとというほかない。
 そのほか4位の倉敷(予選タイムでは18位)、7位の田村(予選タイム34位)、12位の出雲工(予選タイム32位)なども、本戦で実力以上の戦いぶりをしめしている。
 西脇工は1区の出遅れが決定的な敗因だが、その悪しき流れにどっぷりはまって2区ではなんと区間35位と大きく失速、完全に流れにのりそこなってしまった。
 タイム的にみると男子では2時間10分を切ったのが33チーム、女子では13チームが1時間10分を切り、20位までが10分台をキープしている。
 高校駅伝もますますスピード化が進み、連覇はむずかしくなりそうな気配が濃厚なだけに、1年生、2年生チームで優勝した男子の仙台育英を注目してみまもりたい。


★開催日:2002年12月21日(日) 京都市・西京極競技場発着 男子:宝ヶ池国際会議場前折り返し7区間49.195Km  女子:烏丸鞍馬口折り返し5区間 21.975Km

★天候:午前10時(女子)  晴れ 気温7.0度 湿度71%  南南西の風1.2m
         正午(男子)  晴れ 気温8.0度 湿度59%  東南東の風1.8m

★女子:須磨学園チーム
(勝又美咲、藤本知佐、岸本明子 西山弥生、脇田茜)
★男子:仙台育英チーム
(J・ワンジル、梁瀬隆史、伊藤一行、佐藤悠基、巻野修一、佐藤直樹、佐藤昭太)


女子 最 終 成 績
<順位 チーム名 記  録
須磨学園(兵庫) 1時間07分46秒
諫  早(長崎) 1時間08分29秒
県立西宮(近畿) 1時間08分32秒
立命館宇治(京都) 1時間08分41秒
筑紫女学園(福岡) 1時間08分45秒
戸 畑 商(北九州) 1時間08分50秒
興 譲 館(岡山) 1時間08分59秒
仙台育英(宮城) 1時間09分07秒
神村学園(鹿児島) 1時間09分28秒
10 中 津 商(岐阜) 1時間09分33秒
11 田  村(福島) 1時間09分37秒
12 大 分 西(大分) 1時間09分39秒
13 富 山 商(富山) 1時間09分49秒
14 西  京(山口) 1時間10分16秒
15 小  林(宮崎) 1時間10分12秒
16 常  磐(群馬) 1時間10分33秒
17 富  里(南関東) 1時間10分34秒
18 豊 川 工(愛知) 1時間10分37秒
19 山  田(高知) 1時間10分39秒
20 由良育英(鳥取) 1時間10分49秒
21 山形城北(山形) 1時間11分01秒
22 県立和歌山商(和歌山) 1時間11分01秒
23 斉  美(愛媛) 1時間11分09秒
24 熊本信愛(南九州) 1時間11分17秒
25 順  天(東京) 1時間11分18秒
26 市立前橋(北関東) 1時間11分30秒
27 青森山田(青森) 1時間11分31秒
28 大  塚(大阪) 1時間11分42秒
29 成  田(千葉) 1時間11分46秒
30 室蘭大谷(北海道) 1時間11分48秒
31 三  瓶(四国) 1時間11分48秒
32 埼 玉 栄(埼玉) 1時間11分56秒
33 浜 北 西(東海) 1時間11分58秒
34 熊本千原台(熊本) 1時間11分58秒
35 沼 津 西(静岡) 1時間11分58秒
36 東  北(東北) 1時間11分59秒
37 白 鵬 女(神奈川) 1時間12分07秒
38 中 村 女(中国) 1時間12分24秒
39 山梨学院大附(山梨) 1時間12分35秒
40 美  方(福井) 1時間12分48秒
41 西 条 農(広島) 1時間12分49秒
42 那須拓陽(栃木) 1時間13分14秒
43 神  戸(三重) 1時間13分41秒
44 花巻東(岩手) 1時間13分48秒
45 出 雲 商(島根) 1時間13分52秒
46 聖徳大附聖徳(茨城) 1時間14分19秒
47 白  石(佐賀) 1時間14分21秒
48 三 条 東(新潟) 1時間14分37秒
49 札幌静修(北海道) 1時間14分42秒
50 奈良育英(奈良) 1時間14分56秒
51 英  明(香川) 1時間15分24秒
52 長岡大手(北信越) 1時間15分25秒
53 遊 学 館(石川) 1時間15分42秒
54 鷹  巣(秋田) 1時間15分48秒
55 豊見城南(沖縄) 1時間15分56秒
56 八 幡 商(滋賀) 1時間16分35秒
57 長野日大(長野) 1時間16分53秒
58 富 岡 東(徳島) 1時間19分16秒


区 間 最 高
区間 距離 選手名 所属 タイム
06.0 新谷 仁美 興譲館  19:17
4.0975 藤本 知佐 須磨学園  13:08
03.0 樋口 紀子 立命館宇治  09:40
03.0 西山 弥生 須磨学園  09:19
05.0 稲富 友香 筑紫女学園  15:54



男子 最 終 成 績
<順位 チーム名 記  録
仙台育英(宮城) 2時間02分07秒◎
佐久長聖(長野) 2時間04分30秒
西 脇 工(兵庫) 2時間04分49秒
倉  敷(岡山) 2時間05分47秒
大 牟 田(福岡) 2時間05分47秒
東京農大二(群馬) 2時間05分47秒
田  村(福島) 2時間05分53秒
一関学院(岩手)) 2時間05分54秒
豊 川 工(愛知 2時間06分12秒
10 白  石(佐賀) 2時間06分32秒
11 洛  南(京都) 2時間06分32秒
12 出 雲 工(島根) 2時間06分39秒
13 西  京(山口) 2時間06分40秒
14 藤沢翔陵(神奈川) 2時間06分53秒
15 秋 田 工(秋田) 2時間07分10秒
16 小  林(宮崎) 2時間07分24秒
17 滋賀学園(滋賀) 2時間07分30秒
18 鎮  西(熊本) 2時間07分33秒
19 熊  野(広島) 2時間07分52秒
20 市銚子西(千葉) 2時間08分06秒
21 鹿児島実(鹿児島) 2時間08分12秒
22 那須拓陽(栃木) 2時間08分13秒
23 埼 玉 栄(埼玉) 2時間08分14秒
24 四日市工(三重) 2時間08分17秒
25 山梨学院大附(山梨) 2時間08分17秒
26 青森山田(青森) 2時間08分18秒
27 由良育英(鳥取) 2時間08分32秒
28 諫  早(長崎) 2時間08分47秒
29 大分東明(大分) 2時間08分50秒
30 尾 山 台(石川) 2時間08分56秒
31 中  越(新潟) 2時間08分57秒
32 恵 庭 南(北海道) 2時間09分18秒
33 美  方(福井) 2時間09分29秒
34 智辯学園(奈良) 2時間10分08秒
35 清  風(大阪) 2時間10分15秒
36 松 山 商(愛媛) 2時間10分27秒
37 山形中央(山形) 2時間10分58秒
38 益 田 南(岐阜) 2時間10分59秒
39 高岡向陵(富山) 2時間11分28秒
40 尽誠学園(香川) 2時間11分39秒
41 美 馬 商(徳島) 2時間11分49秒
42 藤枝明誠(静岡) 2時間12分03秒
43 土浦日大(茨城) 2時間12分13秒
44 東 京 実(東京) 2時間12分18秒
45 和歌山北(和歌山) 2時間13分54秒
46 北  山(沖縄) 2時間14分09秒
47 高 知 工(高知) 2時間14分31秒


区 間 最 高
区間 距離 選手名 所属 タイム
10.0 S・ワンジル 仙台育英  28:04
03.0 中満 勇太 小 林  08:20
8.1075 伊藤 一行 仙台育英  24:12
8.0875 佐藤 悠基 佐久長聖  22:44◎
03.0 高橋 靖 西 京  08:45
05.0 具阪 健 西脇工  14:28
05.0 佐藤 昭太 仙台育英  14:35


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