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全国レベルの大学女子の駅伝といえば、いままで大阪でひらかれる全日本大学女子駅伝が唯一の大会だった。出雲、全日本、箱根……と、それぞれタイプの異なる駅伝大会がある男子にくらべて、女子はわずか1レースしかなかったのである。 今年からはじまった本大会(全日本大学女子選抜駅伝)の目的には、大学女子のレベル向上……とある。いかにも紋切り型……と、などと笑ってはいけない。女子長距離の選手育成システムに変化が兆してきていることがよみとれるのである。 女子の長距離に関していえば、保守本流はこれまで中学→高校→実業団というコースであった。ところが……。実業団システムが崩壊しつつあるなかで、大学にも有望な選手が集まりはじめている。組織的な育成強化があらためて必要になってきている。 女子の大学陸上(長距離)にも陽の目があたるようになり、いまや傍流ではなくなりつつある。本大会はそういう背景から生まれたのだろう。 それはともかく……。 駅伝レースは増えることはファンとしては、たいへん喜ばしい。 選抜駅伝というスタイルで、出場チームは昨年の全日本大会の上位12チームと地域の学連選抜8チーム、合計20チームである。コースを大阪から埼玉に移し、6区間30kmと距離的には9キロ短縮されたが、全日本で敗れた関東勢にとっては、地元でリベンジのチャンスにめぐまれた。 見どころの第1は先の全日本で初めて頂点に立った立命館がどのような戦いを見せてくれるか。第2は全日本の直前までは優勝した立命館よりも、むしろ世評高かった名城大が立命館を蹴落とすか。関東勢では城西大が地元の利を生かせるか。ほかにも京都産業大、佛教大にも上位の期待がかけられていた。 いずれにしても今年は大混戦といわれてきただけに、トップに立った立命館にとってはまさに真価を問われる大会であった。
名城大が第1区で勝負に出てきた。 エース・田中真知の起用は、全日本のとき1区で42秒も出遅れた失敗を繰り返すまいという思いからだったろう。 それに加えて……。 ライバル立命館はエースの池田恵美が万全ではない。1区で機先を制して一気の逃げ切り作戦に出てきたのである。勝ちたいというなみなみならぬ意欲がみなぎっていた。 田中真知はすっ飛ばした。風速7mの逆風をついて、1km=3:06というハイピッチ、誰もついてこない。 軽快なピッチ、力強く、躍動するようなフォーム……。1.5キロ地点で早くも独り旅になった。 堀岡智子(大体大)も平田裕美(日本体育大)もついてゆけない。注目はライバルの立命館にどれほどのリードが奪えるか……であった。 立命館の第1区は全日本のときと同じく丸毛静香である。5000mの持ちタイムにして両者の差は30秒である。田中にしてみれば最低でも30秒〜40秒のリードはほしい。 だが……。 丸毛は強くはないが崩れない堅実なランナーである。ここでもトップの名城・田中から遅れること25秒で2区につないだ。結果的にみて名城は1区で思ったほど貯金できなかったことが、中盤で逆転を許す伏線になってしまう。 5強のうち名城をのぞいて、好位置をキープしたのは立命館ただ1チームである。トップから25秒遅れの5位、ところが城西大、京都産業大、佛教大はこぞって出遅れた。城西は41秒遅れの6位、京産は50秒遅れの7位、佛教大はなんと1分10秒遅れの12位と大きく失速して、全日本と同じ失敗を繰り返している。 このほか全日本では7位の筑波大は藤永佳子や桑城奈苗など主力を欠いていたとはいえ17位と大きく出遅れている。 かくして、飯島希望、越智純子という大砲を持つ佛教大が第1区で圏外に去り、レースは早くも名城大と立命館を中心に動きはじめたのである。
勝負のポイントは2区と3区にあった。 先行策をとった名城は西川深雪を起用して一気に逃げこみをもくろんだ。3年生・西川の5000m持ちタイムはチームで3番目にあたる。ライバル立命館は1年生の才所裕紀奈である。才所は駅伝初登場、昨年の関西女子、全日本でも選手登録すらされていない。5000mの持ちタイムでも西川に11秒ほど遅れをとっている。 数字のうえでは西川が突っ放しにかかるだろうと思われたが、駅伝はデーターではない。才所が日体、関西選抜、大体を交わして猛追してきたのである。さらに後方からは全日本でも快走した城西の大谷木霞が追い上げてくる。才所は終わってみれば、なんと区間1位、これは立命館にとって嬉しい誤算だったろう。2区でトップを射程圏内におさめて、後の戦いがきわめて楽になった。 3キロという短い区間ながら、大きく順位は変動、立命館が2位、城西が3位までやってきた。 2区を終わって、トップの名城と立命館の差は14秒詰まって、わずか11秒になってしまった。かくして貯金をつくるはずの区間で逆に追撃を許してしまったツケが3区にまわってくるのである。 それにしても……。 関西女子にも全日本にもエントリーされていなかった1年生ランナーがいきなり区間賞をもぎとってしまう。立命館の選手層の厚さにあらためて目をみはらされた。 出遅れた主力のうち城西は大谷木霞で38秒差の3位まであがってきたが、京産は56秒差の5位と低迷、佛教大も1分25秒差の11位と、この時点でもまだ下位に沈んでもがき苦しんでいた。
逃げ切りをもくろんだ名城、2区で早くも足音が聞こえるほど追われてくると、心理的にも苦しくなる。勝負のヤマ場は早くも3区にやってきた。 名城の加来美咲(1年)、立命館の澤田佳恵(3年)、実力的にはまったく互角なのだが、追う者と追われる者のちがいがはっきり出てしまった。あるいは3年生と1年生の差が出てしまったというべきか。 立命館の澤田は冷静な走りで、じりじりと差を詰めた。そして3.6Kmで並ぶまもなく、あっさりと名城を抜き去って、逆に20秒もの大差を付けてしまったのである。 立命館は3区で奪首したものの、不安がないわけではなかった。4区の出てきた池田恵美は故障あがりで万全ではなかった。池田の出来いかんでは、まだまだ名城につけいる隙がないわけではなかった。 立命館陣営にひとしく、観戦する者たちも、大学ナンバーワンの池田の走りを注目してみまもった。 立命館陣営は1km=3:15秒ぐらいのペースで行ってくれれば、いいと思っていたらしいが、強烈な向かい風のなかで、入りの1kmはなんと3:05……。とても故障上がりの選手のペースではない。後続との差は一気にひろがった。 体調が万全ではないといいながらも、レースではちゃんとソロバンを合わせる。さすがはエースの走りである。池田は強風にときどき揺らぎながらも耐え抜いた。 後半はさすがに痛めた足をかばう走りになって、ひとたび50秒ぐらいまでひろがった差も、最終的には38秒差でタスキを渡した。 たすきをもらってハイペースで突っ込んだのは、故障の不安をかかえているので、むしろ並ばれたほうが危ないと思ったのだろう。最初に突っ放しておいて、追い上げをあきらめさせる。駅伝を知りぬいたランナーならではの高等戦術がそこにある。 さすがはエースといわせる池田の巧走、最終的には18秒かせいで、終わってみれば区間1位である。 チームの精神的支柱でもある池田がこれだけの快走ぶりをみせれば、もう立命館には怖いものはない。 5区ではさらに10秒かせいで48秒もの貯金をつくり、全日本のときとおなじように、アンカーの小中由紀子がやすやすと逃げきってしまった。
大学女子駅伝は、戦国模様といわれていたが、本大会をみるかぎり、立命館の強さが際だっていた。今回はとくにエース池田が故障をかかえ出場さえも危ぶまれていた。そういう危機感がプラスに働いて、チームがひとつになったようである。エースを欠いて信じれらないほど大きく崩れた筑波大とはきわめて好対照である。 2位の名城はまたしても立命館に屈したが、今回は力負けしてしまったという感じである。積極的に勝負を仕掛けたチャレンジ精神は高く評価しておきたい。 3位には京都産業大、4位は城西大……終わってみれば全日本の4強がそのまま今回も4強に名をつらねている。 関東勢では城西大、地元ゆえに期待がかけられていたが、4位ならまずまずといったところだろう。エース不在のなかで上位に食い込んでくる総合力はあなどれないものがある。 そのほかでは全日本で7位だった玉川大が佛教大、日本体育大学を押さえて5位にとびこんできた。これも健闘した部類だろう。 佛教大は今回も1区の出遅れがすべてである。3区の飯島希望の8人抜きでようやく上位をうかがえるところまできたが、そこまでくるのがやっとだった。優勝を争えるほど力のあるチームだが、同じ失敗を繰り返して敗れた。 立命館、名城、京産、城西……4強ともに主力は2年生と1年生である。ほとんどのメンバーがそっくり残ることになる。立命館の池田恵美、名城の田中真知、佛教大の飯島希望といった大砲はいずれも2年生である。さらに今回最長区間の7区で区間賞をもぎとった京都産業大の伊藤舞のような有望な1年生もたくさんいる。 今年の大学女子駅伝は立命館を頂点にした4強、さらには佛教大を加えた5強を軸にして回ってゆくだろう。(2004/02/16) ★開催日:2004年02月15日(日) スタート・埼玉県庁前→ゴール・上尾運動公園陸上競技場 6区間30Km ★天候:晴 気温10.5度 北の風7m ★立命館大学(丸毛静香、才所裕紀奈、澤田佳恵、池田恵美、、後藤麻友、小中由起子)
区 間 最 高
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