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ロードレースの最後をしめくくる名古屋国際マラソンは、数ある国際マラソンのなかでもあまり陽の目の当たることのない、どちらかというと地味な大会である。ところが4年にいちど、きまって熱い視線に集まるようになった。オリンピックの最終選考レースに位置づけられているからである。 4年前は高橋尚子が大会新記録で圧勝、オリンピックの出場権をもぎとった。今年はその高橋尚子があえてこの最終便を見送った。いわば待機作戦で出場権獲得をめざしたのである。 結果は衆知のとおりである。あえてここでは詳説しないでおく。 名古屋国際はエドモントンの世界選手権2位の土佐礼子(三井住友海上)が、いちどは田中めぐみに置き去りにされながらも、終盤の驚異的な粘走で逆転優勝、そのままアテネへの道へとつながった。 かくして世界選手権2位の野口みずき、大阪国際マラソン優勝の坂本直子、それに土佐礼子の3人が当選、最終便を見送った高橋尚子は落選した。 選考の是非について論じるつもりなはい。選考基準そのものが、きわめてあいまいであり、今回の選考が妥当なものかどうかについて、あれこれ論じることすら不毛でしかないからである。 ただ、後の祭りにドタバタについてはちょっと一言! 翌日のスポーツ紙には「Qちゃん落選、意外な結果!」「……意外な結末」などという見出しが踊っていた。 意外……とはいったいどういうことなのか? 陸連の選考にイチャモンをつけるには、その根拠を理路整然としめさねばならない。見出しのフレーズだけでは何の説得力も持たない。そこらあたり記者の無知蒙昧さ、アホさかげん、志の低さは救いようもない。 第一に選ばれた3選手に失礼であろう。オリンピックに向かって、側面から代表に選ばれた選手を盛り立てるのもジャーナリズムの大きな役割である。ところが、代表選手を事もあろうにハナから沽券にするような紙面をつくっているのだから、あきれ果ててモノもいえないのである。 男子はパリ世界選手権5位の油谷繁、福岡国際マラソン優勝の国近友昭、2位の諏訪利成が代表に選ばれ、日本最高記録ホルダーの高岡寿成は落選した。奇しくも男女ともに日本最高記録保持者が落選したことになる。 男子の場合は世界レベルにほど遠く、誰が出場してもメダルは期待できそうにない。女子もこの2〜3年で世界に置いてゆかれている。そんななかで期待は日本最強ランナー・野口みずきなのだが、ひいき目に見て、まあ、銅メダルぐらいが妥当なところだろう。
実業団は男子と女子で明暗が分かれた。 男子のコニカミノルタは4連覇をめざしたのだが、サブテンのランナー5人をもつ中国電力に逆転をゆるした。女子は昨年3連覇にいどみ第一生命に足もとをすくわれた三井住友海上が、台頭いじるしい京セラと最後まではげしく競り合ったが、最後は地力で突き放し、王座を奪還した。 昨年、3連覇に挑んだ三井住友海上は負けるはずがないと思っていた。ところが第一生命に逆転されてあえなく屈した。今年はコニカミノルタがおなじ轍を踏んだ。4連覇をねらった男子のコニカミノルタ、負けるはずがないと思った中国電力にねじふせられてしまったのである。 ガソを欠いているとはいえ、分厚い布陣を誇るコニカミノルタの4連覇はゆるがないと思われた。前半重視のオーダーでのぞみ、2区の坪田智夫で予定通りトップに躍り出たときには勝負あったかに思われた。 ところが、今年の中国電力の粘りは驚異的だった。3区の尾方剛が松宮正隆に食らいついて離れず、4区でもベテランの内富恭介が区間賞で駆け抜けたS・ムツリにわずか8秒遅れにまとめた。 そして運命の第5区……。昨年は風邪で出場できなかった佐藤敦之が37秒差をあっさりひっくりかえして、悲願の初優勝への道をきりひらいたのである。コニカミノルタも出来が悪くはなかったが、今回は中国電力の気迫がまさったといえるだろう。 女子は戦力的にみて今回も三井住友海上が抜けた存在であった。昨年とおなじ轍を踏むまいと思ったが、実際のレースはそんなに生やさしいものではなかった。 トップはめまぐるしく変転、1区は三井住友、2区では資生堂、3区ではパナソニックモバイル……。そして4区で三井住友と京セラが抜け出してマッチレースとなるのだが、主導権はむしろ京セラがにぎっていた。5区は両者とも一歩も退かない展開で終始、アンカー勝負に持ち込まれ、最後は三井住友のアンカー・大山美樹が勝負強さを発揮、粘る京セラの小川清美をねじふせた。 2位の京セラは大健闘、福士加代子のワコールも6位に躍進、トップをねらえる位置まであがってきた。3位の資生堂、4位の天満屋も健闘した部類だろう。昨年優勝の第一生命は7位と今回はいまひとつ流れに乗れなかったようである。
大学駅伝の今シーズンは「史上最高の戦国駅伝」といわれ、シーズン最初のころ、箱根3連覇をねらう駒澤もかならずしも安泰とはいえなかった。 事実、出雲は日大、全日本は東海……と、伏兵が優勝をかっさらい、本命の駒澤は出雲では3位、全日本では4位と出遅れていた。 だが、フタをあけてみれば、駒澤の強さばかりが際立つ大会となった。往路でなんと2位の東海に3分26秒もの大差をつけてしまい、復路もゆうゆうの独走、2位東海およそ6分もの大差をつけ、80回の記念大会を堂々の3連覇で制してのである。史上最高の戦国駅伝、けれども実態は「1強18弱」というありさまであった。 駒澤をのぞけば2位以下は、まさに団子状態……。 そんななかで予選会あがりのチームが大健闘した。まず第一は亜細亜大である。エースランナーはいないのだが、往路は3位にくいこみ、復路はひとたび7位に落ちたものの、後半驚異の粘りをみせて3位を奪還している。続いては予選会1位の法政である。往路5位に食いこみ、復路も粘りを発揮して4位をまもりぬいた。チームとしてのまとまりもよかった。予選会あがりでは、東洋大が6位、神奈川大は8位にとびこみ4チームがシード権をもぎとった。 ほかでは5位の順天堂もみるべきものがあった。往路は12位だったが、復路は2位と大健闘、「復路の順天堂」の本領を発揮した。1〜2年生中心のチームだけに、同じく下級生に力あるランナーをそろえている日本体育大とともに次回が楽しみである。 今回は例年のように9〜10区での熾烈なシード権争いはなかったが、3位から10位までがまったくの団子状態で、順位が猫の目のごとくめまぐるしく変動した……というのが大きな特徴であった。 そんななかで、早稲田、大東文化大、山梨学院が不振をきわめ、あえなくシード落ちしてしまった。とくに大東文化大、山梨学院は優勝候補の一角といわれていただかに意外な結果というほかはない。 女子の大学駅伝もこのところ観るレースとしておもしろくなってきている。ひとつは高校駅伝のスターが大学に進学するケースが増えたからである。最近ではたとえば藤永佳子や池田恵美などの例にみられるように大学への進学も選択肢のひとつになってきている。マラソンで活躍している選手は大学陸上の出身者が多い。古くは山下佐知子、弘山晴美、有森裕子や高橋尚子、土佐礼子……。今シーズンから「全日本大学女子選抜駅伝」が新しくもうけられたのも、そういう背景からだろう。 最近の5年間、女子の大学駅伝筑波大と城西大が引っ張ってきたが、近年は立命館大、名城大、仏教大などの台頭が著しく、さらに復活傾向の京都産業大も加わって、まさに大激戦の様相であった。 筑波大学は全日本3連覇がかかっていたが、主力選手の故障で圏外に去り、レースは名城大と立命館大、京都産業大、城西大、日本体育大学などの争いとなった。抜け出したのは立命館大であった。エースの池田恵美は本調子を欠いていたが、全員が区間1〜4位で走るという抜群の安定感で初制覇を果たした。 2月の選抜大会でも立命館大は故障をかかえる池田をエース区間に使えなかったにもかかわらず、3区でトップに立ち、ライバル名城大の猛追をしのいで2冠を達成した。 立命館、名城、京産、城西……4強ともに主力は2年生と1年生である。今年の大学女子駅伝は立命館を頂点にした4強、さらには佛教大を加えた5強を軸にして回ってゆくだろう。
高校駅伝では男子の西脇工、女子の筑紫女学園が連覇をめざしてやってきた。事実、両校には連覇の可能性が十分あった。予選会の記録からみて男子は仙台育英と西脇が抜けた存在で西脇の2連覇は濃厚とみていた。 女子は15回の記念大会にあたり、今回は地区代表が加わって58チームが覇を競った。須磨学園、県立西宮、立命館宇治、筑紫女学園、諫早などが候補にあげられ、一年生にしてスーパーエースの野原優子をもつ筑紫女学園が一区でぬけ出せば、そのまま連覇のテープを切る可能性も想定されていた。 ところが……。連覇をねらう男女両校はともに皮肉にも、1区でつまずいて、あえなく失速した。高校駅伝の連覇はまさに至難の業というべきである。 男子は1区の留学生でトップに立ち、そのままゴールまで突っ走った。1、2年生中心のメンバーながら、大会新記録で駆け抜けてしまった。 女子は1区で好位をキープした須磨学園が2区でトップを奪い、そのままゴールまで突きぬけた。 須磨学園は奇妙なチームである。筑紫女学院、諫早、立命館宇治とならんで女子高校駅伝の4強を形成してきた。なかでも選手層の厚さでは文句なしにナンバー・ワンといわれてきた。だがいつも一歩のところで優勝に手がとどいていない。昨年まで8年連続入賞を果たしながら優勝はいちどもなかったのである。 この4年間……。筑紫、立命館、諫早、筑紫……と、優勝校が続いたが、やっとのことで須磨学園が頂点に立ったのである。皮肉にも筑紫がひそかにねらっていたであろう連覇を阻んで初優勝を遂げたのである 地区代表組では県立西宮が3位、戸畑商が6位に入賞した。いずれも予選タイムでは上位にランクされる実力校だが、これまで県立西宮には須磨学園、戸畑商には筑紫序女学園が分厚い壁となって前途を閉ざされてきた。3位と6位という入賞は当然の結果ではあるが、力がありながら全国大会への道を阻まれてきた両校にとって、それが天敵を倒す起爆力になれば、地区代表というシステムも活きてくる。
数ある駅伝のなかで、やはり箱根駅伝の注目度が突出しているようである。今年は天候にもめぐまれたせいもあるが、往路、復路ともに沿道は駆けつけたファンであふれかえっていた。 近年はとみに若い女性のファンが急増しているようである。 東海大の中井祥太くんといえば、昨年の5区山登りで彗星のように現れた箱根のニュー・ヒーローだが、とくに中・高校生の女性ファンに圧倒的な支持をうけている。 当サイトの「駅伝BBS」には、熱狂的な中井ファンのカキコで盛りあがり、彼女たちはいつしか、「中井さんLove同盟」なるものを結成してしまった。 現在2年生にして東海大のエースに成長した中井祥太は、箱根をあと2回も走るチャンスがある。箱根のスターであることに満足することなく、目標レベルを高く掲げてほしいものである。 最近、長距離の大学生ランナーのレベルは低下傾向にある。箱根のスター選手でも、実業団選手には太刀打ちできない。卒業して実業団に進んだとしても、頭角を現してくるのはほんの一握りの選手たちだけである。箱根のスターは全日本レベルにはないことの証左である。 かつては大学生でも実業団と互角に戦っていた時代がある。たとえば瀬古利彦なんかは箱根のエースであるとともに日本長距離界のエースでもあった。男子に関するかぎり、大学生がパワーアップしないかぎり、日本の長距離の進歩はない。世界で戦えるレベルには達しないであろう。中井祥太には、大学生のレベルそのものを底上げするという意味で、リーダー的な役割を担ってほしいと思っている。 ともかくもアテネオリンピックのマラソン代表の6人は、いずれも駅伝でもおなじみの顔ぶれである。女子の野口みずきもこの両年こそ駅伝には顔をみせていないが、1昨年はグローバリーの一員として駅伝を走っている。 女子の場合はトラックの長距離でも駅伝ランナーたちが何人か選ばれるだろう。福士加代子や渋井陽子あたりも代表になってほしいものである。 |
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