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最終区の残り1.5km……。 ひたすら逃げる長野の帯刀秀幸、10秒差で兵庫の上岡宏次がひたひたと迫ってくる。背後には熊本の松下龍治、福岡の有隅剛志が折り重なってみえている。 最終区にもかかわらず、1号車のカメラで4チームまでがくっきりと捉まえられる。最近の駅伝をみわたして、これほど優勝のゆくえが最後までもつれたケースはない。 6区を終わってトップは長野、15秒差で福岡、2秒遅れて熊本がつづき、熊本から8秒遅れで兵庫が襷を受けている。 最長(13km)の7区は一般のランナー区間である。トップを争う4人はいずれも先の全日本実業団駅伝で走った連中である。要するにお祭りの後のレースで、あと一押しがきくかどうかがポイントになる。 4人のなかでは実業団駅伝2区で20人抜きした上岡宏次がもっとも勢いがあり、本人みずからが、「30秒差以内なら、逆転できる」と豪語していただけに、興味はもっぱら兵庫の動きにしぼられた。 長野の帯刀は後ろを振り返らずにひたすら逃げる。活路は逃げて逃げてにげまくるほかなにもない。1Km=2:44秒、いかにも気合いの入った出だしであった。兵庫上岡は前半は自重して中盤から追い上げ、残り3キロで前をゆく福岡、熊本をとらえ、のこり2キロではっきりとトップを射程にとらえたのである。 口を少し開いてあえぎながらも、けんめいに逃げる帯刀、リズミカルな腕の回転で前をみつめる上岡、だが10秒まで迫ったところでさすがの上岡の脚色もいっぱいいっぱいになってしまった。 最終的に兵庫の上岡は5秒差まで肉薄するのだが、トップでタスキをもらったがゆえに、長野の帯刀は良い意味での緊張感を持続できたのだろう。「ここまできたら、なんとしても勝たねば……」という思いが強くはたらき、最後のひと押しが利いたらしい。かろうじて激しく迫る上岡を振りきって、初優勝のゴールにとびこんだ。
1区の高校生区間は今回も高校駅伝の有力選手の顔がそろった。兵庫(西脇工)の北村聡、福岡(大牟田)の伊達秀晃、京都(洛南)の松岡佑起はいずれも5000m=13分台の記録ホルダー、長野(佐久長聖)佐藤悠基は暮れの全国高校駅伝4区で区間新をマークしている。昨年もこの区に登場、区間新記録をマークしている京都の松岡は2年連続の区間賞をねらっての登場である。 出だしの1〜2kmは2:52〜53といくぶんスローの展開で3キロあたりでも、30人あまりがトップ集団を形成するというありさま、北村、伊達が引っ張ったが、4キロをすぎて松岡がペースアップ、集団はばらけ16〜17人ぐらいになった。 5km=14:32というのはまずまずのペースか。北村が引っ張りはじめ、後の主力どころ3人も前に出てくる。6kmでは長野の佐藤がスパートぎみに前に出たが、後の3人も追いすがる。最後はつねに好位につけていた京都の松岡がねらいすましたようにスパート、松岡のスプリント力がわずかに勝った、 優勝をねらう兵庫は4秒遅れの3位、福岡は16秒遅れの6位とまずまず好位につけた。1区で目をひいたのは石川である。尾山台の室塚健太が宮城につづいてトップから15秒遅れの5位、大健闘である。 有力どころでは広島がおよそ50秒遅れの24位、早くも圏外に去った。 2区の中学生区間では兵庫の坂田拓也が実績では上位の長野の永田慎介にくらいつき、700m付近で早くも京都の藤井勘太をとらえマッチレースとなった。最後は兵庫のスパートが勝ったが、長野は1区〜2区の快走ですっかりリズムに乗ってしまった。逆に連覇をねらう福岡は30秒遅れの5位と低迷、結果的にみてこのあたりでの伸びを欠いたのが誤算だったかもしれない。
本大会は1〜3区、4〜5区を1ブロックとみる。それぞれを第1、第2ステージと位置づける。6区はつなぎ、最終7区を第3ステージとみたてて、レースの流れを判断するとおもしろい。 第1ステージの最終ともいうべき3区も観戦者のサイドからいえば、なかなか見応えがあった。遅ればせながら連覇をねらう福岡が息を吹き返してきた。 トップを争うは兵庫と長野……。藤井周一と太田貴之といえば、駒沢と日大の対決だが、そこへ福岡が割り込んでくる。福岡の三津谷祐といえば今季売り出し中のランナー、高校を出たばかりの彼にしてみれば、箱根組なんかに負けるものか……という思いがあるだろう。駅伝のおもしろさのひとつをあげれば、激しいせめぎあいのなかから、そういう人間臭さがこぼれてくることである。 4.4km地点で三津谷は京都(清水智也)と長野(太田貴之)をとらえて、2位にあがり、トップの兵庫を追いかけるかたちになる。そして5.9キロではトップをゆく兵庫の藤井周一を一気に交わしてしまうのである。25秒差を一気に詰めて逆転でトップに立った走りは若さにあふれていて清々しかった。 第1ステージを終わって、トップは福岡、11秒遅れで兵庫、3位には一井祐介(東海大)の健闘で熊本が6位からあがってきた。さらに愛知も昨年は福岡から出場して優勝のテープを切った尾田賢典の好走で8位から4位にあがってきている。長野は5位、京都は6位に順位を落としたが、36秒差のここまでが圏内というところ。 連覇をめざす福岡がトップに立ったものの、やっとトップに出たという感じで、ここでわずか11秒しか貯金がつくれなかったのが5区で逆転を許す伏線になってしまった。
第2ステージの4区と5区は高校生区間である。 4区では福岡、兵庫、熊本の順位は変わらず、4位には京都があがり、優勝争いは5位の長野34秒差、6位の愛知までの38秒差にしぼりこまれた。 高校生の最長区間(8.5km)の5区もおもしろかった。 順位はめまぐるしく変転した。トップ福岡(石橋洋三)を兵庫(藤原章生)が激しく追い上げ、熊本がつづき、長野が追ってくる。長野は期待のエース・上野裕一郎である。1000mで28:27.39という高校日本最高を持つ上野は先の全国高校駅伝でも1区に登場、日本人ランナーとして初めて29分を切っている。 3.3kmで兵庫が奪首に成功したが、熊本、福岡が差なくつづき、後ろからは上野がやってくる。上野は4kmで3位にあがり、4.8kmでは一気に兵庫、福岡と交わしてトップに立ってしまった。 前半から突っ込んだ分だけ、最後はオツリがない走りになっていたが、兵庫に17秒、福岡には18秒の差をつけ、ここで長野が一躍、優勝争いのトップに立ったのである。上野を1区に配さずに、5区を勝負どことみた長野陣営の読みはみごと的中というべきか。 トップに立った長野にとっても、2位の兵庫、3位の福岡にとっても、アンカーの実力から測って、マークすべき相手は兵庫だったろう。兵庫のアンカー・上岡宏次は元旦の全日本実業団駅伝では20人抜きを演じているのである。8区を終わった段階で兵庫のポジションが気になるところである。 8区の中学生区間で踏ん張ったのは長野(高野寛基)である。2位の福岡、3位の熊本には15〜16秒差と詰められたが、当面のライバル兵庫には逆に25秒差と8秒も稼いだのである。25秒差なら上岡に一気に来られることもない秒差である。かくして、ここで長野の初優勝の可能性がはっきり見えてきたのである。
長野の優勝はなんといっても第2ステージでの上野裕一郎の快走につきるが、最大の勝因は、やはり1区、2区で好位置につけられたからだろう。アンカーの帯刀に不安はあったが、最後はトップ効果でしのぎきったようである。 兵庫はわずかにおよばなかったが、最後まではげしく優勝を争ったチーム力は、さすが駅伝王国である。駅伝王国といえば、もう一方の雄・福岡の粘りもさすがと思わせられた。 優勝候補の一角・京都は最終7位に終わった。昨年同様に1区で好発進しながら、後続に粘りがなく、いわば「じり貧」というありさま、女子の場合もそうだったが、そこそこの戦力を持ちながら、チーム力としての上積みがない。 健闘したのは6位・広島と8位・埼玉だろう。 優勝経験のある広島の6位を健闘と称えるのは、いかがなものか……という気がしないでもないが、1区で24位と大きく出遅れ、4区を終わっても、トップから1分24秒遅れの18位と低空飛行がつづいていた。ところが5区の平本昌樹が長野の上野に次ぐ区間2位の快走で一気に7位まで押し上げてきたのである。 埼玉もつねに10位内外をキープして入賞を果たした。今回は平田英規(3区=自衛隊体育学校)と神田哲広(7区=埼玉陸協)という一般の部のランナーがそれぞれ区間4位、10位とみごとな走りをみせてくれた。実業団のトップクラスが名を連ねるなかでの快走ぶりには目をみはるものがあった。 テレビにはあまり映らなかったが、高知から出場した「くろしお通信」の2枚看板、大森輝和、大島健太も今回は爆走、一般区間(3区、7区)区間賞を独占してしまった。しかも2人とも区間新記録である。 正月の全日本実業団駅伝では、大試合での経験不足を露呈して、後半は大きく失速してしまったが、今回の走りでリベンジを果たしたようである。失敗の体験を生かして、すかさずプラスに転じるあたり、この2人の非凡さがある。 大島健太の陰にかくれてしまったが、7区では東京から出場した坪田智夫(コニカミノルタ)も区間新記録をマークしている。23位から13人抜きで東京チームを10位まで押し上げてきた坪田の走りも次につながるだろう。 ともかく……。 競技者からみれば、胃の痛くなるような大会だったろうが、観戦者の目からみれば、最後まで眼のはなせい白熱のレースだった。 ★開催日:2004年1月18日(日) 広島・平和記念公園発着/中電大野研修所、7区間=48Km ★天候:出発時 晴れ 気温11.0度 湿度52% 北の風0.6m ★長野(佐藤悠基、永田慎介、太田貴之、森田稔、上野裕一郎、高野寛基、帯刀秀幸
区 間 最 高
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