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北海道から静岡まで都道府県18チームが出場する本大会は、明日の長距離界を担う若いランナーたちの大会である。全日本の予選を走り終えた実業団、大学、高校生、中学の選手たちが、その余韻さめやらぬままに本大会に登場してくる。 とくに将来性のある高校生、中学生ランナーの活躍が、本大会を活気あふれるものにしているようである。実業団選手よりもむしろ主役は中・高校生である。 中・高校生がしっかりしていて、10キロを堅実に走りきれる実業団ランナーを持つチームが優位に立つ大会である。 実業団チームの主力をもつのは東京、千葉、神奈川、埼玉の首都圏チームで、過去18回のうち15回まで、首都圏4チームが制覇している。首都圏いがいでは茨城、群馬、宮城がそれぞれ1回づつ……であるが、最近の5年間は首都圏チームが回り持ち優勝、他府県の食い込む余地はほとんどなくなってきている。 中・高校生では互角に戦えても、軸になる一般(大学生、実業団)が手薄であるために、最後は息切れしてしまうようである。 宮城をのぞいて、他のチームは実業団チームがない。ふるさと選手という制度があるものの、出場回数に制限があるから、それほどアテにもできない。かくして首都圏チームの優勝争い、そこに宮城、山形、茨城、栃木あたりが、どのようにからんでくるか。見どころといえば、まあ、そこらあたりになる。 前回の覇者・神奈川が連覇を狙ってやってきた。昨年の優勝メンバー9人のうち、なんと6人までが残り、さらに力のある実業団選手を加えてきたのである。
昨年は神奈川の高校生・高山典子(相洋高校)がスタートから突っ走って、一気に勝負をきめてしまったが、今年は千葉の安藤千歩(サミー)、東京の尾崎朱美(資生堂)茨城の鬼島怜美(日立)、神奈川の杉原加代(パナソニック・モバイル)らが主力を形成した第1区は、なんと3キロ=9分55秒と超スローの展開ではじまった。 4.5キロ過ぎでようやく千葉の安藤と東京の尾崎がとびだして、中継点では千葉がトップ、3秒差で東京、14秒差で神奈川がつづいた。 レースのポイントとなったのは2区であった。4キロと短い区間だが、昨年は1区で神奈川優勝の足がかりをつくった高山典子が今年は2区に登場してきた。高山は昨年と同じように積極的に前に出て、2キロ地点で早くもトップの千葉・尾西美咲をつかまえてしまった。高山は区間新記録の快走、7秒差で東京がつづいたが、3位の茨城に22秒、4位の宮城には23秒、5位の千葉には33秒と大差をつけてしまった。 2区でレースの主導権をにぎった神奈川は、その後いちどもトップを譲ることなくゴールまで突っ走るのだが、流れをつくったのは今年も高校生の高山典子であった。 3区を終わって、神奈川のライバルは8秒差でつづく東京、戦力的に見ても東京と神奈川とのマッチレースという様相であった。 東京との秒差は4区を終わって20秒、5区では23秒とじりじりひろがり、替わって2位にあがってきた埼玉が13秒差まで追いあげてきている。だが、他チームの追撃はそこまでだった。
神奈川連覇の立役者をもうひとりあげれば、6区に登場してきた藤岡里奈(パナソニックモバイル)であろう。2位にあがってきた埼玉に13秒差まで詰められたが、冷静な走りで一気に後続をひきはなした。山形をひきつれてに再び2位まで上がってきた東京になんと42秒もの大差をつけてしまったのである。この時点で神奈川の連覇はほぼ確実なものとなった。トップに立った2区も後続を突き放した6区も、ともに4キロ区間である。今年の神奈川は、いわば繋ぎの区間で優勝をきめたといえるだろう。 7区では33秒差まで詰められるのだが、8区ではふたたび40秒差となり、最終区のアンカー対決になるのである。東京のアンカーは加納由理(資生堂)、神奈川は高橋富士子(パナソニック・モバイル)である。実力の比較からすると、逆転できない秒差ではなかったが、好リズムでタスキをつないできた神奈川の勢いが勝り、東京の追撃をゆるさなかった。 2区以降はつねに神奈川のイニシャティブでレースは流れ、ライバル東京との闘いという構図ができあがっていた。最終区のランナーにタスキがわたるまでに、神奈川がいくら貯金をつくれるかが最大の焦点になっていた。 だがその一方において、5区では埼玉が13秒差、中学生区間の8区では山形が20秒差まで追い上げてくるなど、レースのアヤがいくつもあって、最後まで観るレースとしても興味深いものがあった。
東京、神奈川、千葉の首都圏3強の一角をくずしたのは宮城である。宮城は茨城や群馬とともに本大会で首都圏チームを破って優勝したこともあるチームだから、これくらいの成績は当然といえる。日本ケミコンを母体にして、仙台育英など高校駅伝の強豪チームを傘下におさめている。日本ケミコンは最近かなり地盤沈下しているが、高校生ランナーが踏ん張った。 5位にはいった地元・福島もいつも高校生の活躍で上位にやってくるが、実業団を持たないために、いつも今一歩のところで優勝に手がとどかない。 むしろ大健闘したのは山形である。3区を終わった時点でトップ神奈川から50秒も遅れていながら、中学生区間の4区で22秒差の3位まで押し上げ、上位をキープしつづけ、やはり中学生区間の8区で神奈川に20秒差まで肉薄している。 3区の高橋由衣(飛鳥中)、8区の阿部夕香里(飛鳥中)はともに区間賞を獲得、2人の中学生の快走で2位までやってきたが、一般選手の走る最終区で順位を大きく落としたのは、ひとえに核になる実業団選手にめぐまれないから……。地方チームの悲しさであろう。 本大会2度の優勝経験のある埼玉は近年ふるわない。原因は明白である。最近はきまって本大会と高校駅伝の予選が重なるからである。高校生の主力がいないのだから、まともに戦えるはずがない。実業団では「しまむら」(=あさい銀行)という全国レベルのチームをもち、中学生もレベルが高い。けれども高校生で順位を落としてしまうのである。 事実ことしも5区では小塚文乃(しまむら)が強風のなかを疾走、トップから13秒差の2位まであがってきた。8区では中学生の山崎里奈(高麗川中)が区間賞を獲得したが、高校生の区間でのマイナスをカバーすることができなかった。それでも最終6位だから、今年は健闘したといっていい。 東京と神奈川、首位を争った両チームは実力的に互角だったが、連覇をはっきり意識して、勝ちにやってきた神奈川、その気迫の差が勝敗の分かれ道になったようである。(2003/11/10) ★開催日:2002年11月09日(日) 福島市信夫ヶ丘競技場→フルーツライン折り返し 9区間42.195キロ ★天候:晴 気温11.0度 湿度87% 南西の風1.0M ★神奈川(杉原加代、高山典子、横山智映、青山瑠衣、加藤咲子、藤岡里奈、高橋瞳、関戸友美、高橋富士子)
区 間 最 高
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