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中国電力のアンカー・梅木蔵雄の顔に微笑みがにじんだ。 微笑み走法といえば、4区でコニカを逆転した佐藤敦之のトレードマークだが、あれは笑っているように見えるだけ……。 残り700m……。 後から追ってくるコニカの足音は聞こえない。 梅木の顔に浮かんだのは、勝利を確信したまぎれもない会心に笑みだった。 もう後はタスキをゴールまで運んでゆくだけ。時の経過が解決してくれる。そのとき梅木の脳裏を占めていたのは、初優勝のアンカーとしてゴールインするときのポーズだったろう。 梅木蔵雄は不思議なランナーである。元箱根ランナーで、早稲田の3年のときに1区で、4年のときには2区で区間賞を獲得している。タイム的にはいまひとつだが、勝負強さは天下一品! 評者の記憶にによれば、乱戦になればなるほど力を発揮するというイメージがある。たしか2区で区間賞を獲ったときも、強いアゲンストの風が吹き抜けていた。風の強い上州路といういみで梅木の7区起用は的を射ている。昨年も同じ7区で区間2位と実績を残している。 5区の佐藤と6区の木村がかせいだ2分45秒の貯金が大きかった。梅木はあえて無理をせずに楽々と逃げ切った。 ゴールの直前、空に向かって指を一本突き上げ、力強く両手をあげてテープを切った。 梅木は中国電力のかかえる5人のサブテン・ランナーのうちの一人だが、実業団に進んでからは、いまひとつ伸び悩んでいた。実力ある隠れたランナーに久しぶりにスポットが当たった。 華々しく脚光を浴びたのは箱根いらいのことだろう。眠れる獅子がこれをきっかけに目覚め、さらに勢い得て、東京国際マラソンで、衆目をアッといわせてほしい。
4連覇にいどんだコニカミノルタ、負けるはずがないと思っていた。 ガソがいなくても分厚い戦力を誇っている。まったく隙というものが見あたらないのである。 だが……。負けるときはきまって、そんな万全の態勢のときである。ほんの些細なほころびから勝利の女神がすりぬけてゆく。 もしも……。 コニカミノルタが負けるとすれば、相手はいったいどのチームなのか? あえて候補をあげらば、5人のサブテンランナーをもつ中国電力である。そのほかのチームが勝つケースはほとんどイメージできない。 それでは……。 いったい、どういう展開のときに中国電力に勝ち目はあるのか? コニカミノルタのオーダー編成はあきらかに前半重視である。少なくとも4区までに稼ぎに稼ぎ、中国電力に諦めさせてしまう戦法と読めた。前が見えないほど差が開いてしまえば、もはや中国電力に勝ち目はない。勝ち目があるとすれば後半まで勝負がもつれたときのみ……。5区の佐藤で差を詰めて、6区、7区まで併走するような状態にでもなれば、あるいは勝負師の梅木をアンカーに配した作戦が活きてくることがあるかもしれない……と、みていた。 それにしても……。 駅伝の勝負は判らないものである。だから、おもしろい。 レースの前半はコニカミノルターのペースですすんだ。 1区の外人区間では絶好調のM・マサシが快走、ヤクルトのD・ジェンガとつづき、3位には大塚製薬の細川道隆、4位にはくろしお通信の大森輝和がとびこんできた。細川と大森、この両人は大健闘である。 本命のコニカヤクルト(太田崇)は32秒遅れの5位、中国電力(尾崎輝人)は34秒差の7位、まずまずの位置をキープした。 2区では予想通りにコニカの坪田智夫と中国電力の油谷繁という両チームのエースが抜け出してきた。最後はコニカが17秒ほど先行してひとまずレースのイニシャティブを握った。 コニカと中国電力の秒差は3区では22秒、4区では37秒とじりじりと開き、一見したところ、コニカ勝利の流れが生まれたかにみえたが、結果的にみて4区終了時の37秒という差が今回のポイントになったようである。
観戦していて、興趣つきなかったのは今回もやはり最長区の2区であった。 1区が外人区間なら2区は外国人を占めだしての日本人だけの区間である。話は脇道にそれるが、あらゆる分野で規制撤廃が進む時世にあって、どうして外国人を閉め出す区間などつくるのか。日本人選手は逆立ちしてもケニア人には敵わないのだ……ということを暗に認めているようなものである。そのような度量では外国人の有能なランナーを受け入れても、何の進歩もない。陸上界も体質がきわめて古く、国際化といえども、それはうわべだけのようである。 それはともかく、2区の攻防はまるでオーケストラの奏でるシンフォニーのように、いくつものテーマが錯綜しながら進行、なかなかの見応えであった。 エース区間にふさわしく順位はめまぐるしく変動した。 1区でトップに立ったスズキの2区は中川拓郎、昨年の箱根2区で快走したシーンを思い浮かべていると、後ろから大塚製薬の岩佐敏弘と、くろしお通信の大島健太が追い上げてくる。 くろしお通信の大島健太といえば、現在もっとも注目のランナーである。10000mならトップクラスである。日本を代表するスピードランナー・坪田智夫、マラソンの世界選手権代表・油谷繁との対決となれば、これは眼を離せない。 レースは前半から大きく動いた。主導権をにぎる坪田と油谷の仕掛けが早く、4キロ過ぎで早くも大島、岩佐に追いつき、集団となってトップを追っかけるかたちとなり、6.6 キロでトップの中川拓郎をとらえてしまった。 そうなると興味はもっぱら大島健太が駅伝の強者というべき坪田、油谷にどこまで戦えるか……にあった。 トップをめぐる攻防のほか、後ろでも地殻変動が起こっていた。1区で23位と出遅れた日産の上岡宏次、同じく25位と大グレーキの旭化成は小島忠幸で下位からゴボウ抜きで順位をあげてきたのである。 トップ集団に変動があったのは11キロ過ぎであった。仕掛けたのはやはり坪田と油谷である。優勝を争う両エースが飛び出すと、やはりロードの経験の差というべきなのか、さすがの大島健太ももうついてはゆけなかった。 マッチレースとなった坪田と油谷、最後は坪田のスピード力に軍配があがったが、その差はわずか17秒、むしろ油谷の健闘をたたえるべきだろう。 後続の主役をつとめた日産の上岡と旭化成の小島忠はともに20人抜きと快走、順位をそれぞれ3位、5位へと押しあげた。
コニカミノルタの3区・松宮隆行も出来は悪くなかった。この区間も外人組が大挙して出場、J・マイナ(アラコ)、J.ギタヒ(日清食品)、S.カビル(ホンダ)、J.シーブラー(富士通)、J.カーニー(トヨタ自動車)……と、区間上位5位までを外国人が占めている。松宮は6位である。ところがライバルの中国電力・尾方剛も粘りに粘った。松宮に遅れることわずか8秒であった。 4区でもコニカミノルタのS.ムツリは区間賞で駆け抜けたが、中国電力の内富恭則がわずか8秒遅れの区間2位と信じられない粘りを発揮した。 そして……。 5区を迎えるのである。 逃げるコニカミノルタは松宮祐行、追っかける中国電力の佐藤敦之、37秒という秒差なら背中は見えるだろう。あるいは50秒か1分ぐらいったら、背中はみえないだろうから、逆転劇はなかったかもしれない。 昨年は風邪で出場できなかった佐藤敦之にとっては、背中がみえる状態でタスキを受けたのはきわめて幸運だったのではないか。昨年の汚名を濯ぐまたとないチャンスである。 佐藤の勝負も早かった。 8.6キロでは松宮をとらえ、ほとんど併走することもなく一気に突き放した。交わされた松宮のほうは粘りがなく意外にモロかった。最終的に50秒も置いてゆかれては流れは一変する。 続く6区でも中国電力の木村康二が区間賞の快走、コニカミノルタを2分45秒も突き放した。 コニカミノルタの敗因をあげれば、区間15位に終わった6区の磯松大輔の起用えはないか。磯松が悪いというのではなく、磯松を起用しなければならなかったチーム事情に問題があったとみる。
中国電力の勝因は、やはりサブテンランナー5人を持つという選手層の厚さだろう。マラソンの延長に駅伝がある……という箴言を実証して見せたといっていいだろう。 4連覇をねらったコニカミノルタも出来は悪くはなかった。ただし、今回は中国電力の気迫に敗れたというべきだろう。 優勝争いは中国電力とコニカミノルタで展開され、ほとんど他のチームが入り込む余地がなかった。最終的に3位になった日清食品、本来なら優勝争いに顔を出してもよかったと思うが、1区の北田初男が13位と出遅れたうえに、2区の諏訪利也が区間21位という大ブレーキで優勝圏外に去った。 3区以降はJ.ギタヒ、池谷寛之、徳本一善、奈良修、板山学よいずれも区間2〜4位と好走していただけに前半の遅れさえなければ、きわどく優勝争いにからんでいただろう。勢いのある選手が多いだけに次回は期待できそうである。 旭化成の4位も評価できる。こちらは2区の小島忠幸、5区の佐藤智之というベテランの走りが光った。 9位のカネボウも戦力ダウンの様相、8位の富士通もいまひとつ勢いのある若手が育っていないようである。 あとは5位のトヨタ、6位のホンダあたりに期待をかけたいと思うが、トップを形成する中国電力、コニカミノルタとの間には、まだかなりおおきな実力ギャップがありそうである。トヨタ、ホンダといえば世界の冠たる日本の自動車産業である。いかにも日本らしく横並びの発想、不況産業のまねをして、補強費をケチらないでほしい。目先にとらわれることなく、10年先、20年先の日本の陸上界をみすえて、先行投資していただきたいものである。(2004/01/02) ★開催日:2003年01月01日(日) 前橋・群馬県庁発着 7区間100km ★天候: 晴れ 気温8.3度 湿度46% 北北西の風4.6m ★中国電力チーム(尾崎輝人、油谷繁、尾方剛、内富恭則、佐藤敦之、木村康二、梅木蔵雄)
区 間 最 高
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