|
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
|
|||
|
|
赤煉瓦の倉庫、左手にひろがる海、やがて山下公園にさしかかると氷川丸がゆっくりみえてくる……。 数ある駅伝コースになかでも、絵になる風景といういみでは文句なしにナンバー・ワンだろう。いかにも国際駅伝にふさわしいコースである。 横浜国際は女子駅伝のなかでも都道府県対抗とならんで歴史のある大会である。国際駅伝としては千葉駅伝よりも歴史がある。駅伝ブームに火をつけた大会でもある。 22回を迎える今回は出場チームが14チーム、そのうちナショナルチームはエチオピア、ロシア、ルーマニア、ウクライナ、中国、日本のわずか6チームである。14チームが出てきた国際千葉の半数にも満たない。 オリンピックの年のせいかもしれないが、昨年やってきたアメリカ、オーストラリアといったところも顔を見せず、いかにもお寒い大会となった。 なんとか面目を保てたのは、女子長距離において世界の3強(エチオピア、ケニア、ロシア)のうち、エチオピアとロシアがやってきて、世界のトップらしい走りをみせてくれたことであろう。 エチオピアはシドニーオリンピック、エドモントン世界選手権で1万m金メダリストのデラルツ・ツルをはじめ、昨秋の東京国際マラソンで高橋尚子を撃破したエレフィネシュ・アレム、さらにファツマ・ロバなど日本でもおなじみの選手がやってきた。国際千葉のメンバーにくらべると、どちらかというと国際親善メンバーである。 ロシアもエゴロワ、トマチェワを始めとしてトップクラスの顔をそろえ、連覇をねらったきた。 千葉国際で圧勝した世界最強のエチオピア、そしてロシアを相手に日本のナショナルチームが、いったいどこまで戦えるのか。千葉国際にくらべるとエチオピアは戦力的にひとまわり落ちる。ロシアも名前ほどの選手の状態はよくないというのであった。 橋本歩、宮井仁美、大越一恵といった発展途上のランナーが、どういう走りをみせてくれるのか。さらに日本チームの目玉的存在というべき坂本直子、マラソンのオリンピック代表をほぼ手中にしている新鋭の走りもみもののひとつだった。
ロシアが突っ走った。1区のグルナラ・サミトワ(3000mSC 世界記録保持者)が2分52秒というハイペースの入り、オーバーペース気味に併走していたカナダも途中で振り切られて独り旅、最少からスピードのちがいをまざまざと見せつける。 健闘したのは日本の橋本歩である。1k=3分あまりのペースをまもって、前半は無理をしなかったのが功を奏して、後半はじりじりと追いあげて、最後はロシアに8秒差まで迫ってきている。 ロシアは2区のアラ・ジリアエワもトップを堅持、2位の日本に29秒にその差をひろげて、この時点では連覇への足場をしっかり固めつつあるようにみえた。 日本の2区に起用されたのは18歳の宮井仁美、3000mのジュニア・チャンピオン、今年は丸亀ハーフ2位、千葉国際クロカンで3位、めきめきと頭角を現してきた新鋭ランナーである。 第2の福士加代子を思わせる伸び盛りの期待のランナー、いかにも軽快でたおやかなフォームが眼を惹いた。だが相手のジリアエワは世界レベルのランナー、いきなりのエース区間はやはり荷が重かったようである。 2強の一角、エチオピアは1区のゲネット・ゲタナーが47秒差の6位と出遅れたが、2区にはファツマ・ロバが登場、区間賞の走りで一気にトップのロシアとは39秒差、2位の日本とは10秒差の3位までやってきている。 33歳の大ベテランがエース区間に登場して、あっさりと区間賞をもぎとってしまう。そうかと思うと、とんでもない若手がとびだしてくる。 今回のエチオピアはベテラン3人と10代のランナー3人で構成されている。10代ランナのうち、1区のゲタナーは6位といまひとつだったが、4区に出てきたゼイチュナ・アレバは区間2位、最終6区に出てきたメスタワト・トゥファなどは、1km=2:49秒という超ハイペースで入り、オーバーペースが懸念されたが、そのまま最後まで押し切ってしまった。区間新の快走でなんとあのロシアのサドローツナヤをあっさり退けてしまったのである。
勝負の流れは3区で大きく動いた。 逃げるロシアはエースのエゴロワ、追いかける日本は坂本直子、急追してきたエチオピアはデラルツ・ツル、各チームの切り札的存在の選手が奇しくも3区に出そろったのであれる。 エゴロワは1km=2分59秒で入るが、ツルはそれを上回る2分50秒、スピードでは太刀打ちできない坂本直子は、世界の壁を思い知ることになる。 ツルは1キロ手前で早くも坂本直子をとらえ、お先に……といわんばかりに肩をポンと叩いて置き去りにしていった。日本のオリンピック代表もナメられたものである。 ツルは5キロでトップをゆくエゴロワをもとらえてしまう。エゴロワは昨年一年はほとんどレースらしいレースをしていない。完調ではなかったとはいえ、およそ210mあった差を逆転したツルの走りは圧巻であった。これぞ世界……といわしめる走り、トラックの長距離ではとうていかなわない。 ロシアの4区・トマチュワといえば、シドニー、エドモントンの5000m代表である。5000のベストが14:39秒である。パリに世界選手権では1500mで金メダルを獲得している。エチオピアのゼイチュナ・アレバは18歳のランナーで5000のベストは15:42秒である。3区を終わった段階でトップのエチオピアとロシアの差はわずか10秒だから、誰しもロシアの逆転を信じて疑わなかっただろう。 ところが……。 駅伝というものは走ってみなければわからない。18歳の無名のランナーがなんとパリ世界選手権の金メダリストの追従をゆるさず、逆に4秒もかせいでしまったのである。こういうランナーがとつぜん出てくるのだから、世界はひろい。優勝の行方はこの4区でエチオピアに大きく傾いたようである。
もうひとつのエース区間である5区はエチオピアのエレフィネシュ・アレムが快走した。先の東京国際マラソンでは高橋尚子を逆転した好調さはいまもなお健在だった。ロシア期待のグリゴリエワを逆に39秒も突きはなす激走ぶり、区間新記録で堂々と押し切ってしまった。アレムはエチオピアの優勝をほとんど決定ずけてしまったといっていいだろう。 ロバ、ツル、アレムというベテラン、ゲタナ、アレバ、ドゥファという10代の若いランナーがうまく噛み合って、エチオピアは千葉国際につづいて、今回もあっさりと優勝をもぎとった。選手層の厚さといい、スピード力といい、世界最強の片鱗をみせてくれた。 ロシアはエゴロワをはじめとして、名前だけはそろえてきたが、それぞれ調子はいまひとつだったようである。 そのロシアにも大きくおいてゆかれた日本は今年も王座奪還はならなかった。初めて全日本入りした橋本歩は区間2位、藤岡里奈は区間3位、宮井仁美は区間4位、まずまずといったところである。そのほか大越一恵区間3位、大阪国際を走った坂本直子はツルにこそあしらわれたが区間2位でエゴロワを押さえている。選手それぞれの力からすれば、まあ、こんなところだろう。 それにしても……。 東京国際で勝ったアレム、大阪国際で勝った坂本直子が顔をみせてことで、だんだん尻すぼみになるつつある本大会はなんとか格好がついた。大レースの覇者だけに勢いが感じられる。 マラソンの日本代表をみすえていえば、内定している野口みずきは青梅マラソンに出場、30キロの日本記録を更新している。今や日本の女子マラソンは野口が潜在能力ではトップにあるたとみていい。 勢いのある上り坂の選手は積極的にレースに出てくる。おなじナオコでも高橋尚子の場合は、やはり選手としての灼熱の季節が終わったとみなければなるまい。攻めの姿勢を欠き、ひたすら守りの姿勢にはいった高橋、たとえオリンピックに出場する機会にめぐまれたとしても、世界と戦う力はもはやないだろう。 高橋は偉大なマラソンランナーだが、世界のトップでいられる時間はもはやつきている。彼女にこれ以上を期待するのは無理というものである。前回のときは名古屋国際で圧勝してオリンピックにのりこんだ。今回は名古屋に出ればオリンピックで満足に走れないから、エスケープするという。かつてベルリンで世界最高をマーク、直後のシカゴマラソンも出場するという姿勢をみせた。勢いみなぎっていたかつての高橋とひたすら黙り込んで何かを待っている現在の高橋はまるで別人である。 3月の名古屋国際マラソンでロード季節は終わり、あとはオリンピック一色になるだろうが、いまはとりあえず女子マラソンの選考のなりゆきを注目してみまもりたい。(2004/02/23) ★開催日:2004年2月22日(日) 神奈川・みなとみらい21「横浜赤レンガ倉庫」発着 42.195Km ★天候:午後1時 晴れ 気温20.0度 湿度51% 南西の風9.3m ★ エチオピア(ゲタナー、ロバ、ツル、アレバ、アレム、トゥファ )
区 間 最 高
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
![]() |
|
| Home | 駅伝Home | 駅伝ひとくちメモ |駅伝BBS | 駅伝オフ時評 |
|
Copyright(c) 2002 Takehisa Fukumoto All rights reserved. . |
|