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トップで競技場にもどってきた最終区のランナー、スタンドからはちまち歓声と拍手がわきあがる……。 後ろからは誰も追ってこない。 勝利を確信しながらのグラウンド一周、自分の力を出し切り、無事に役割を果たしたアンカーにとって、これほど至福を感じる時はないだろう。 兵庫のアンカー。川島亜希子はゴールの瞬間、右手の指を2本、空に向かって突きあげた。 満面の笑顔……。 トップでゴールテープを切る瞬時の笑顔、これほど美しい輝きはない。それは満足感と達成感がつつみきれずにこぼれているからだろう。 川島亜希子にとって今回の全国女子駅伝は現役のラストランであった。最後のレースで最長区のアンカーをつとめただけでなく、自ら優勝のテープをきってしめくくった。川島にとってはまさに最高のフィナーレ、終生この大会を忘れることがないだろう。 駅伝チームの強豪・東海銀行(現・UF銀行)の主力として活躍してきた川島亜希子は全国女子駅伝に8回も出場している。 須磨学園時代は13〜14回大会は兵庫からの出場である、高校時代は4区27位、1区30位と成績はいまひとつだった。東海銀行に入ってからは、15回、17〜20回と5回は愛知から出場、17回大会では9区で区間賞を獲得している。最後の今回は「ふるさと」選手として兵庫からの出場であった。 今回は自主トレーニングで大会にそなえてきたが、32:09というタイムで区間4位はみごとな走りである。17回大会区間1位のときの31:42にはおよばなかったが、ほとんどベストに近い走りといっていい。 2区の早狩実紀でトップに立ち、川島亜希子がしめくくった。女子駅伝を支えてきたベテランの走りが光りかがやいていた。 ラストランといえば、もうひとり……。 東京から出場した坂下奈穂美も今大会で現役生活を終えた。 坂下は不思議なランナーであった。マラソンはダメだったが駅伝になればめっぽう強い。まさに優勝請負人……。三井住友海上を女子駅伝のトップに押し上げたのは、ワコール時代から駅伝というものを知り尽くしている坂下なのである。駅伝に関するかぎり、渋井や土佐よりも坂下が果たした役割のほうがはるかに大きいのである。 坂下は13位でタスキをもらい5人ぬきでチームを一気に8位入賞まで押しあげて、最後をしめくくった。32:07で区間3位の走り……これもみごとなものである。 駅伝女のラストラン……、だが、ほとんど彼女には光があたっていない。テレビカメラはほとんど坂下を追っていないのである。きわめて残念であったが、誰も見ていないところでも、手を抜かずにただひたすら黙々と走り続ける……。いかにも彼女らしいラストランというべきであった。
最近の傾向として本大会は3区までにいいリズムをつくったチームがレースの主導権をにぎる。 昨年も兵庫が1区で好位置につけ、2区で早狩実紀がトップに肉薄、3区の中学生小林祐梨子でトップに立ち、そのままゴールまで突っ走った。 昨年の1区は奈良の山中美和子が最初からガンガンとばしたが、今年は向かい風が強いというせいもあってか、横ひろがりの大集団で進んだ。中間点では9:43というスローの展開で、野田頭美穂(青森)、大平美樹(愛媛)、尾崎好美(神奈川)、佐藤由美(山形)らが先頭をうかがう。そんななかで連覇を狙う兵庫(加納由理)と候補の京都(池田恵美)は手堅く好位をキープするという形勢であった。 残り1キロ集団を割ったのは羽鳥智子(東京)、青森の野田頭、京都の池田、三重の田中真知がつづいたが、10位の神奈川(尾崎好美)まではわずか10秒差であった。 ほとんど団子状態で2区に突入したが、観戦する立場からすれば、今回は2区が最も見応えがあった。 先頭を行く東京(吉田香織)と三重(里村桂)を京都の吉野恵が追っかけ、700mでとらえてしまう。背後から兵庫(早狩実紀)、山形(熊坂香織)がひたひたと追ってくる。 いかにも中距離ランナーらしい早狩の大きなストライドは迫力満点、2.8キロで5チームがひとかたまりになった。 京都がまず動き、兵庫が追っかける。こうなれば巧者・早狩のペースである。残り500mで満を持していた早狩が抜け出してトップに立った。兵庫にとっては予定通りの展開だったろうが、1区と2区で貯金がつくれなかった京都にとっては誤算だったろう。
2区を終わって、トップは兵庫、2位は京都、3位の山形まで5秒差、4位三重、5位神奈川、6位東京までもわずか15秒差である。1分以内に19チームが入っている。 上位は僅差でひしめかっているがゆえに、中学生区間の3区は前半の重要なポイントになる。 兵庫は昨年もここでトップを奪った小林祐梨子、ライバルの京都を一気に突っ放しにかかるのだが、山形の高橋由衣が京都を交わして激しく追ってくる。残り600mでならんだ。両者のトップ争いで、後続との差はますますひろがった。 最後は小林がスパーしてトップをまもった。山形の高橋は区間新記録を更新したのは、両者の意地のぶつかりあいがもたらしたものだろう。山形にチームとしての弾みをつけたといういみで高橋の好走は大きかった。 3位に落ちた京都は神奈川にも交わされ、兵庫とは40秒差もついてしまった。中盤、後半に向かって流れをつかんだ兵庫、上位躍進の礎を築いた山形、神奈川とは対照的に、京都は3区の失速が最後までひびいた。 8区の中学生区間でも兵庫の高吉理恵は区間賞、山形の阿部有香里は区間4位と健闘、山形の最終4位を確かなものにしている。 最長の10区をのぞく、高校生、一般区間は実力接近で、上位を争うチームはほとんど差がつかなくなってきている。それゆえに3キロという短い区間だが、出入りのはげしい中学生区間が優勝のゆくえを左右する大きなポイントになりつつあるようだ。
3区でトップに立った兵庫は危なげなかった。4区からは高校駅伝で優勝した須磨学園高のランナーが突っ走った。6区で2位神奈川に52秒、ライバル京都には1分31秒、7区でも2位神奈川に1分17秒、京都には1分27秒……、そして中学生区間の8区では2位にあがってきた京都に1分34秒もの差をつけてしまった。 京都のアンカーは今回の目玉のひとつであった阿蘇品照美が欠場、かわって出てきた吉田佳菜は大きな大会で10kmを走ったこともないランナーである。後から追ってくるという恐怖はまったくあろうはずもなく、兵庫のアンカー・川島亜希子にとっては、きわめて楽な展開だった。 加納由理、早狩実紀という中堅、ベテランが足がかりをつくり、力ある中学生、高校生がのびのびと走り、最後はラストランの川島亜希子がしめくくった。兵庫にとってはまさに理想的な展開に終始したようである。 大健闘したのは2位の神奈川と4位の山形であろう。神奈川は1区で10位ながら、2区で5位、3区で3位まであがってきて、5区ではトップをゆく兵庫に29秒差まで肉薄している。とくに目立った選手はいないが、全員が堅実につないで最後は優勝候補の京都さえも食ってしまった。これぞ駅伝……という戦いぶりであった。 山形は1区と2区を実績ある実業団選手で上位を占め、3区の中学生高橋由衣がチームに勢いをつけた。中学生の快走が上位躍進のきっかけになった。4区以降はかなり落ちるだろうとみていたが、5区を終わっても5位と踏ん張り、最後までしぶとく粘りきった。 中学生、高校生がしっかりしていれば「ふるさと選手」でどうにかなる。地方のチームでも上位にやってこれる。山形の大活躍は同じ地方の他府県チームにも夢を希望を与えたといっていいだろう。
期待を裏切ったのは京都か。 京都チームは実業団駅伝2位の京セラ、大学女子駅伝で全国制覇した立命館の主力、全国高校駅伝4位の立命館宇治の主力で構成されていた。 10区を走る予定だった阿蘇品照美が走れなくなったのは痛かったろうが、代わりに走った吉田が区間7位だったから、それほど悪いわけではない。1区、2区の流れも悪くなかった。誰がブレーキしたという顕著なマイナス要素も見あたらない。それでいて最後は神奈川にまで交わされてしまったのは、リズムと流れが悪かったとしか考えられない。 あえていうならば3区の失速で、あとに続く立命館宇治の高校生3人が乗りきれなかったせいか。事実、古田をのぞいて他の3人は本来の力を発揮できなかったようである。 一昨年の記念大会で京都のアンカーとして出場、記念大会優勝のテープを切った福士加代子は今回、青森からふるさと選手として出場した。 福祉は42位でタスキを受けて12人抜きで30までチームの順位を押しあげた。その爆走りぶりは、まるでエンジンがちがうというふうで、ひときわ目を惹いた。 30分52秒……。 従来の区間記録を約30秒も更新した。1昨年の暮れの実業団駅伝で足を痛めてから福士は世界選手権に出場したものの、いまひとつ走りにキレがなく、今シーズンの駅伝の走りも精彩を欠いていた。今回の走りをみて、やっと本来の「かっとび娘・福士加代子」が帰ってきたように思う。 アテネ・オリンピックに向けて、さらにパワーアップしてもらいたいものである。 ★開催日:2004年01月11日(日) 京都市・西京極競技場発着 宝ヶ池国際会議場前折り返し9区間49.195Km ★天候:正午 曇り 気温9.5度 湿度50% 北北東の風3m ★兵庫チーム (加納由理、早狩実紀、小林 祐梨子、 勝又美咲、中村 友梨香、藤本知佐、岸本明子 高吉理恵、川島亜希子)
区 間 最 高
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