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第21回 全日本大学女子駅伝対抗選手権大会

抜群の安定感。総合力で決めた!
立命館大が初優勝!


駅伝のおもしろさが凝縮!
最終6区の攻防

 立命館の1年生ランナー・小中由起子はあくまでも冷静だった。終始3分20秒台のペースをキープ、上下動のないファームで小気味よくピッチを刻んでゆく。
 タスキをもらったとき、追ってくる名城大の川口仁美との差は52秒であった。2人の力量から判断すれば、かなり微妙な差である。5000mのタイムを基準に考えれば、あるいはg逆転とまではいかなくても、きわどく迫る可能性もあった。川口は昨年の本大会では4区(7,5キロ)に登場、1年生ながら区間賞を獲得している。名城大2位躍進の立役者のひとりである。今年は満を持して最長区間の6区に登場してきた。名城にしてみれば、5区までに多少遅れをとってたとしても、準エースというべきこの川口で逆転できると踏んでいたにちがいない。ましてや相手は1年生である。
 ところが単純計算で測れないのが駅伝である。
 もうひとつ、川口を小中の寸法をはかるデータがある。2人は11月9日の北陸女子駅伝にも出場、偶然にも最終6区(8キロ)で顔を合わせている。結果は川口仁美が27:25で区間11位、小中由起子は27:24で区間10位であった。トラック成績では5000mで約30秒もの差があるのだが、直前の北陸女子駅伝に関するかぎり逆に小中のほうが上回っているのである。
 小中のあの落ち着いた対応ぶり、余裕たっぷりな走りをもたらしたのは、きっと北陸女子駅伝の結果が念頭にあったからだろう。52秒もの差があれば、追われるはずがない……という自信が、距離を走るほどにだんだん確信にかわっていったにちがいない。
 薄く微笑んでいた小中の顔が、ゴールテープを切る直前にゆがみ、ゴールした瞬間には涙でくしゃくしゃになった。14年連続14回目の出場にして初制覇の瞬間である。小中の流した涙は、14年間タスキをつないできた関係者すべての涙なのだろうと思った。


明暗をわけた第1区
候補・名城は出遅れ、佛教大は圏外に脱落

 過去5年間、本大会は筑波・城西が激しく覇を競ってきた。1昨年、昨年と筑波大が制覇、今年は3連覇がかかっていたが、名城大、立命館、佛教大などが台頭してきて、今年はまれにみる大混戦というみかたであった。
 さらに3連覇をねらう筑波大のエース・藤永佳子が故障で欠場、優勝のゆくえはますます混沌としてしまった。昨年2位の名城大のほか、関西予選を制した立命館大、さらに佛教大学、京都産業大学、関東では城西大学、日本体育大学などが候補としてうかびあがってきた。
 そんななかで優勝候補の筆頭に浮かび上がってきたのが名城大である。名城と立命館、京産はともに11月9日の北陸女子駅伝に出場している。3チームのなかで抜群の戦いぶりをみせたのが名城であった。
 ワコールや九電工など全日本クラスの実業団にまじって、名城は終盤までしぶとく上位をキープしていた。1区の田中真知がトップから11秒遅れの区間3位と快走、以降も区間2〜5位と堅実に走った。最終区では7位まで順位を落としたものの、終始2位〜4位につけていた。実業団チームと互角に戦った地力、さらに立命館、京産にくらべても安定感があり、総合力では文句なしに本大会のナンバーワン候補であった。
 ライバルの筑波が戦力低下、立命館、京産を前哨戦で退け、優勝の最短距離にいた名城が、なんと最終成績では立命だけでなく京産にまで先をこされてしまったのだから、駅伝はおもしろい。
 波乱は第1区であった。
 近年は最長区間の9区よりも1区(6.3)と2区(7.5)に各チームは準エースをぶつけてくる。今年も名前のあるランナーずらりとそろっていた。
 中距離ランナーの桑城(筑波)がひっぱり、立命館、名城、京産、日体、東農などがつづく展開ではじまり、中盤までは集団ですすんだが、最後は3連覇をねらう筑波が抜け出した。立命館は丸毛静香を起用して手堅く8秒差の2位、城西は14秒差の3位、京産は23秒差の4位と、それぞれ上々の滑り出しをみせた。
 ところが候補ナンバー・ワンの名城は41秒差の8位と出遅れた。名城大にとっては、この1区の遅れが最後までひびき、終始後手を踏む結果になったようである。もうひとつ、候補の一角だった佛教大は13位に沈んで、この段階で早くも圏外に去ってしまった。


エースのそろった花の2区!
光る池田恵美の巧走

 レースの最大のポイントになる2区は各チームのエースの顔がそろった。池田恵美(立命館)、田中真知(名城)、飯島希望(佛教大)、平田裕美(日体)、堀岡智子(大体)などなど……。
 1区〜2区でうまく流れをつくったチームがレースを支配することになるといういみで2区は最も重要な区間である。有力候補のうち。ここで一歩先んじたのが立命館である。昨年1年生ながら、この2区でデビューした池田恵美の印象は鮮烈である。あの藤永佳子さえも一蹴して、区間賞を奪ってしまった。だが、今年の池田恵美の走りは本調子を欠いている。先の北陸駅伝では1区(6k)に出てきたが、名城の田中真知に27秒も置いてゆかれている。昨年は実業団の一流選手とも互角の戦いができたが、今年はまったくキレがなかった。
 だが、さすがは高校駅伝はエースである。駅伝の走りを知っているがゆえに、大学生レベルでは一日の長がある。1.5キロで筑波をとらえ、じりじりと離しにかかり、あとは一人旅、8位から2位にあがってきた田中真知に1秒差で区間賞を奪われたものの、立命館初制覇の道筋をしっかりきりひらいた。
 名城大は田中の奮闘で2位に浮上したが立命館との差は31秒、苦しい立場に追い込まれた。後続では佛教大の飯島希望が8人抜きで5位まで押し上げてきた走りに見るべきものがあった。だがいぜんトップとの差は1分03秒という大差、飯島、越智というスーパー・エースを持っているだけに、1区の出遅れは痛手であった。


大勢が決したのは第4区!
繋ぎの区間を制した立命館に流れは傾く

 2区で立命館がトップに立ったものの、勝負のゆくえはいぜんとして混沌としていた。3区を終わったところで首位の立命館に名城が23秒差に迫り、3位の京産も46秒遅れでつづいていたのである。さらに1分08秒遅れて4位の城西、1分24秒遅れの筑波あたりまでは圏内というみかたもできた。
 急追する名城と京産にとどめを差したのが、立命館4区の後藤麻友(1年)である。1年生ながら6区に次いで距離のながい4区(7k)に起用されただけあって、堅実に走りきり、終わってみると、当面のライバル2位の名城に再び39秒とふたたび差ひろげてしまったのである。
 名城のこの区のランナーは同じ1年生の相川友香、北陸女子駅伝では4区(4k)に出場して実業団選手を退け、区間2位と快走しているだけに、追い上げが期待されたが、追い切れなかった。その原因は思わぬ伏兵の出現である。京産の陶山春日は相川より13秒遅れでタスキを受けているが、1キロでその差を一気に詰めて、相川に競りかける恰好になった。以降は併走状態がつづき、相川ににとっては息の入らない展開になった。
 相川は力のあるランナーであるが、しょせんはまだ1年生、予想外の展開なって、ペースを狂わされてしまったのではないか。もし、その通りならば、京産の陶山が立命館の初制覇をアシストしたかたちになる。
 ともかく4区で勝負の流れは立命館に大きく傾いたのである。立命館はさらに5区では3年生ながら駅伝初出場の徳田紀子が区間賞の力走、繋ぎの区間できっちりと自分の役割を果たして、初制覇への道を確かなものにした。
 立命館は前半に日本学生対抗で上位を占めた3枚を前半に投入したのが功を奏した。エースの池田は調子がいまひとつながらも、エースらしい仕事をした。メンバーのひとりひとりが自分の役割をきっちり果たしたのが勝因だろう。区間賞は5区の徳田ひとりだけだが、全員が区間1〜4位に入るなど、安定感で他を圧していた。


京産大が復活!
京都の3強と名城大、城西大の5強時代へ

 本命の名城は最後まで流れに乗れなかった。2区の田中真知はますまずだったが、最終区の川口仁美は立命館を追い切れず、最後は京産大にも交わされてしまった。チームとしての調整に狂いがあったのだろう。今年は立命館に名をなさしめたが、立命と名城のトップ争いは当分つづくだろう。
 大健闘したのは京都産業大学である。名城や立命館のようにスーパーエースはいないが1〜2年生が確実につないで、終始上位をキープしていた。戦力的に見て、まだ1〜2枚足りない状態で、名城を競り落とした粘りはみごとというほかない。かっての王者に大健闘というのはそぐわないが、「強い京産大」復活の兆しをみた。
 4位にねばりこんだ城西大も、さすがとおもわせるレースぶりであった。3区の大谷木霞が区間新記録の快走、1年生を中心にした新しい戦力が確実に台頭してきている。
 佛教大も最終区の越智純子が4人抜きで5位にとびこんできて、なんとかシード権をまもって帳尻を合わせた。立命、京産、佛教の京都勢力が西の3強を形勢、関東の城西大、中部の名城大が加わって、来年は5強による優勝争いがくりひろげられるだろう。
 日体大の5位も健闘の部類か。筑波大が最後の最後に7位に落ちてシード権を逃したが藤永佳子がいないから、これはしかたがないところ。
 最近の女子の大学駅伝は観るレースとしても面白くなった。ひとつは高校駅伝のスターが大学に進学するケースが増えたからである。かつてバブルの時代には高校駅伝のスター選手はほとんど実業団にいってしまった。高校駅伝のスーパースターは実業団で華々しくデビューするのだが、多くは2〜3年で消えていった。バブルに咲いた徒花のごとく、あっけなかった。
 最近ではたとえば藤永佳子や池田恵美などの例にみられるように大学への進学も選択肢のひとつになってきたようである。マラソンで活躍している選手は大学陸上の出身者が多い。古くは山下佐知子、弘山晴美、有森裕子や高橋尚子、土佐礼子……。息長く競技をつづけ、日本のマラソンを支えてゆく選手たちを育む。大学駅伝はそういう役割を担う重要な競技会になるのかもしれない。(2003/11/23)

★開催日:2002年11月23日(日) 長居陸上競技場:発・着 6区間39Km
★天候:晴 気温12.5度 湿度50%  北の風2m

★立命館大学(丸毛静香、池田恵美、澤田佳恵、後藤麻友、徳田紀子、小中由起子)


最 終 成 績
<順位 チーム名 記  録
立命館大学 2時間09分41秒
京都産業大学 時間10分50秒
名城大学 時間11分01秒
城西大学 時間12分03秒
日本体育大学 時間12分21秒
佛教大学 時間12分24秒
筑波大学 時間13分03秒
東京農業大学 時間13分09秒
玉川大学 時間13分18秒
10 大阪体育大学 時間14分31秒
11 神戸学院大学 時間14分41秒
12 白鴎大学 時間14分54秒
13 城西国際大学 時間15分11秒
14 順天堂大学 時間17分28秒
15 高岡法科大学 時間17分43秒
16 福岡大学 時間18分48秒
17 立命館APU 時間19分28秒
18 東亜大学 時間19分49秒
19 中京大学 時間20分10秒
20 中央大学 時間20分33秒
21 日本女子体育大学 時間21分07秒
22 国士舘大学 時間22分33秒
23 東北学院大学 時間23分15秒
24 新潟大学 時間26分02秒
25 北海道教育大学 時間27分39秒



区 間 最 高
区間 距離 選手名 所属 タイム
6.3 桑城 奈苗 筑波大学  20:15
8.3 田中 真知 名城大学  27:22
3.8 大谷木 霞 城西大学  12:31◎
7.5 粟井 一恵 筑波大学  25:14
4.0 徳田 紀子 立命館大学  12:50
9.1 越智 純子 佛教大学  30:02



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