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長距離王国エチオピアが活きのいい若手選手を送り込んできた。 男子は世界陸上10000m6位のG・ゲブレマリアム(19才)を筆頭に世界クロカンや世界ジュニアで上位を占めた連中ばかり。女子はもっとすごい。世界陸上10000mの覇者であるB・アデレ、2位のW・キダネ、5000m1位のT・ディババ、ほかにもE・ディババは世界陸上10000m9位、M・ディフォーや、E・クマも世界ジュニアや世界クロカンで活躍した選手たちである。 先ず、世界のトップレベルの選手たちが大挙してやってきてくれたことに感謝しなければならないだろう。世界最速軍団をモノサシにして日本の実力を診断する。本大会のみどころはその一点につきた。 エチオピアのほかに強敵をあげれば、男女ともケニアであった。今回のケニアは日本の実業団に在籍するメンバーで編成されたチーム、いわば日本の駅伝育ちのケニア軍団という異色のチームであった。 さらに女子ではマラソンの世界最高記録をもつP・ラドクリフがイギリスのメンバーとして1区(10k)に登場してくるとあって、女子の第1区もみどころのひとつとなった。 トラックの実績では1枚上でも、駅伝はまたちがう。5000mや10000Mの記録は劣っていても駅伝だったら勝負できるだろう。過去はそうであった。だが、そういう甘い期待感はあっけなく粉砕された。 世界のトップがいかにも最速集団にふさわしい走りで日本の選手たちを置き去りにしていった。まるで走りの次元がちがう。クルマにたとえれば搭載しているエンジンの力がちがうという感じであった。 エチオピアはライバルのケニアさえも寄せつけなかった。男女ともに1区から首位を譲ることなく終始一人旅、すべての区間賞を独占して、史上初のアベック完全優勝を果たした。
男子は早くも1区からエチオピア、ケニアの対決ムードで幕あけた。B・デジュネ(1万m 27:14)とケニアのM・マサシが引っ張る展開ではじまり、日本期待の新星・大島健太(くろしお通信 27:54)は、早くも3.7キロ地点で置いてゆかれた。1k=2:32秒というハイペース、まったく太刀打ちできなかった。レースのゆくえは1区でみえてしまったのである。 アフリカ勢はこのようなハイペースで突っ込んでいって、ラストではさらにペースアップしてしめくくる。 第1区でエチオピアとケニアが抜けて2区まではマッチレースの様相、3区でエチオピアが粘るケニアを突っ放して、あとはゴールまで一人旅である。だがエチオピアの各ランナーは独走になっても、いっさい気をぬかなかった。 3区のG・ゲブレマリアム、4区のM・ゲネッティ、5区のS・シヒーンも区間新記録で駈けぬけている。1区のB・デジュネと合わせて5区間のうち4つの区間新記録を樹立しているのである。 厳しいアップダウンがあってもまったく動じることもない。たとえば第5区のS・シヒーン、難コースといわれた坂道を軽快なフォームで実に楽しそうに走っていた。坂があろうとなかろうと、かれらにとってはまったく関係がないのようである。 アフリカ勢2強に置いてゆかれた日本チームは終始3位のまま終わった。2区の岩水嘉孝、3区の油谷繁が区間上位で走ったのだが、メンバー編成からみて日本チームと同格のはずのケニアにもあっさり負けてしまった。力の差は歴然としている。 駅伝なら勝てる……というは幻想にすぎなかった。長距離、マラソンともに世界との距離はさらにひろがっている。 唯一の救いをあげれば日本学生選抜がロシアにつづいて5位に食い込んだことぐらいだろう。
女子のみどころは何といっても第1区であった。 マラソンの女王P・ラドクリフが登場、世界陸上10000mの覇者B・アデレの対決、さらには日本のエース・福士加代子がどのような戦いを挑むのか。ロードならあるいは福士も肉薄できるかもしれない……という期待もあった。 ラドクリフはすでにして競技場からトップギアで突っ走った。競技場内の周回でタテ長になって、何人かがちぎられた。こんな駅伝はみたことがない。 ロッキング・フォームのラドクリフが引っ張り、アデレとケニアのL・ワゴイ、日本の福士が追って行く展開ではじまった。(岡崎誠さん撮影の写真が「駅伝BBS」57にあります) 超ハイペースに福士がどこまでついてゆけるのか。注目していたがが、ながつづきはしなかった。2K地点ではやくも遅れはじめ、そのまま日本チームはレースから脱落した。前半で振り切られてはもはや勝負にはならない。 5000m=15:00というハイペースについていったのは、アデレとワゴイのアフリカ勢であった。10000mのベスト比較では互角だが、世界陸上の覇者・アデレにはメンツがある。自分こそが世界最速だと思っているだろうから、ラドクリフなどには負けなまい……と思っている。両者の火花散る対決はおもしろかった。 レースが動いたのは7.8キロ地点だった。揺さぶりをかけたのはケニアのL・ワゴイであった。アデレは敏感に反応したが、ラドクリフは前半のオーバーペースがこたえたのだろう。2人にあっさり置いてゆかれたが、彼女の積極的なレースぶりは高く評価しておきたい。 アデレとワゴイ、両者に力の比較では格がちがう。アデレは1000m=30:04、ワゴイは31:06だから1分もの差があるのである。ワゴイは力上位のラドクリフを退け、アデレにも5秒しか遅れをとらなかった。日本の駅伝育ちでロードに強いせいかもしれないが、その潜在能力はみるべきものがある。 2区以降はエチオピアの独演ショー、力強い走りに、ただただ驚嘆するばかりであった。 4位発進の日本チームは野田頭美穂(ワコール)、藤川亜希(旭化成)とつないで4区の田中めぐみ(しまむら)がようやくイギリスを捕らえた。6区の川島真喜子(UFJ銀行)が2位ケニアを急追、最終区の小崎まり(ノーリツ)がひとたびケニアを抜いたが、最後はトラック勝負で遅れをとった。期待の星・福士加代子でさえも、まったく歯が立たない。男子と同じく力不足は歴戦としていた。
世界ははるかに先を行っている。 日本の長距離は世界レベルからはるかに遠い。そういう現実をあらためて思い知らされたようである。 長距離にしてもマラソンにしても世界は想像以上に進化している。選手育成のシステム自体を一から考え直さなければ、ますます世界から置いてゆかれるだろう。 もしかしたら、高橋尚子は、そのことを最も熟知していたのではないだろうか。東京国際マラソンでのレースぶり、あれは暑さになかで無謀なペースアップしたせい……というのがおおかたのみかただが、それは周囲が納得する理由をみつけただけではないか。そういうきわめて初歩的なことは、レースをしている高橋たけでなく、関係者が知らないわけがないのである。 あのとき……。 彼女の相手はアデレを初めとする現実の出場選手ではなかった。無数のみえない世界のライバルを相手に孤独なレースをしていた。そのように考えると、彼女のあっけからんとしたレース後の態度が納得できるのである。彼女にしてみれば、トレーニングそのものからして、当面の東京国際マラソンなど眼中になく、2時間15分台の見えない相手を想定していたにちがいないのである。そして結果、あえなく討死したのである。 進化しつづける世界レベル、もはや昔の名前は通用しない。ロバもシモンも……。シドニーを制した高橋尚子ですらもはや過去の人である。世界の趨勢をみるとき、オリンピック2連覇など至難の業というほかはない。 陸上ファンとして、日本人離れしたエンジンを持つ高橋の走りは忘れられない。走りつづけてほしいと思う。だか陸連までもが、あえて高橋に過度の期待をかけ、なんとかアテネに送り出す道はないかと模索しているのは、まったくアナクロニズムというべきである。 かつてなりふりかまわず瀬古をロスに送り出して大失敗した例もある。高橋にバイパスを造れば、まちがいなしに同じ轍を踏むだろう。(2003/11/24) ▼駅伝写真家・岡崎誠さんがわが「駅伝BBS」の57〜58に迫力あるショットをUPしてくださいました。57は女子1区の攻防、ラドクリフをマークするアデレ、ワゴイ、福士の姿がくっきりとらえられており、臨場感、雰囲気にあふれています。58は男子3区の油谷繁の力走する姿です。 ★開催日:2002年11月24日(日) 千葉県総合スポーツセンター陸上競技場をスタート・フィニッシュとし、ポートタワー・千葉マリンスタジアム・幕張メッセ・幕張ベイタウンを通る日本陸連公認マラソンコース 男子5区間 女子6区間42.195km ★天候:曇り 気温12.2度 湿度68% 北の風2.8m(12時現在) ★日本チーム 男子(大島健太、岩水 嘉孝、油谷 繁、中村 悠希、野口 憲司) 女子(福士 加代子、野田頭 美穂、藤川亜希、田中 めぐみ、川島 真喜子、小崎 まり)
区 間 最 高
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