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横浜国際は女子駅伝をのシーズンをしめくくる大会である。 女子駅伝のなかでは全日本実業団女子、全国都道府県対抗とならんで歴史のある大会である。かつては世界のトップクラスが続々とやってきて、日本選手にとっては世界が身近に感じることの出来るとう意味で、きわめて意義深い大会のひとつであった。 今年も世界ブランドの「貌」だけはなんとかそろった。アトランタでマラソンを制したエチオピアのロバをはじめ、シドニー1万の覇者であるツル、ロシアのエゴロワ、中国の孫英傑、日本選手では世界選手権マラソン代表に内定している松岡理恵(天満屋)、クロカン、トラックではトップクラスの山中美和子、小鳥田貴子、ベテラン弘山晴美……。 だが今回に関していえば、世界ブランドのランナーたちのほとんどは、いずれも本来の力を発揮することなく、いわば顔見せ興行に終わってしまったようである。エチオピアのツルはなんとか区間1位で面目を保ったが、ロバは区間8位(第2区)、エゴロワは日本の若手・大山美樹や堀岡智子(近畿選抜)にも負けて3位、孫英傑にいたっては日本の切り札・福士加代子をまったく寄せ付けなかったアジア大会とはまるで別人のような凡走、大学1年の池田恵美にすら負けてしうという体たらくである。 いかにも世界のトップにふさわしい走りで感動させてくれたクリスチャンセンやモタなどにくらべると、なんともオソマツである。本調子でないのは一目で歴然としている。それなのになぜ出場するのか。いったい何のために出てきたのか。競技に対する姿勢を疑いたくなってしまうのである。 海外からの出場チームも前回につづいて6チームである。ナショナルチームは日本を含めてわずか7チームにすぎず、地域選抜で員数合わせして、かろうじて競技会の対面を保っているしまつである。これほど盛り上がりを欠いた大会は、近年まったく類がない。シーズン最後を飾るレースだけに大会関係者はもっともっとアタマを使って、それにふさわしいレースにしていただきたいと思うのだが、果たしていかがなものだろうか。
レース前半はまったく日本ペースであつた。2区でトップに立ち、2位ロシアには33秒差、懸念された3区も新鋭の勢いで押しきって43秒差、4区を終わって1分07秒差……と、後続の追撃をゆるさず、逆にどんどん差をひろげていった。明らかに主導権は日本にあった。 1区は昨年につづいて山中美和子、1K=2分54秒という飛び出しでトップに立ち、中国、エチオピアをしたがえて突っ走った。先の大阪国際マラソンでは捻挫で途中棄権した山中だが、その汚名を濯ぐかのような快走ぶりを観るにつけ、なんどか首をかしげた。なぜに故障上がりのランナーをあえて使うのか……と、いう疑問から自由になれなかったのである。故障が回復したから出場に踏み切ったのだろうが、まだまだ万全ではないはずである。将来のあるランナーをムリして使うことなんかないのである。 本来なら後半になって2段スパートする山中が中継所を目前にして、エチオピアの名前も聞いたことのない若い選手にあっけなく交わされた。それは、やはり本調子ではなかったからだろうと思う。 2区はエース区間だが、名のあるランナーがいずれも本調子ではなかった。そのために、なんともピリッとしない展開に終始してしまった。 トップのエチオピアのロバはタスキを受けてすぐに小鳥田貴子の交わされて、まったくピッチがあがらない。小鳥田貴子は1K=3:00というスピードに乗った走りで、まったく後続をよせつけなかった。年齢的にも実力的にもエースにふさわしい走りで一気に流れを引き寄せた走り、さすがと思わせるものがあった。これで横浜は4回走って3回が区間賞である。 アジアで敵なしといわしめた中国の孫英傑も注目の選手だったが、ロバと同じく「あれよ、あれよ」の展開、1.3キロでエチオピアのロバを交わして追撃体勢にはいるかと思われたが、3キロあたりからにわかに失速、後方から追い上げてきたロシアのシリアエワ、さらに近畿選抜の池田恵美にも抜かれるというありさまで、あきらかに精彩を欠いていた。彼女自身もこんな走りでは不本意だったろう。 .
名のあるランナーが本調子を欠いて凡走するなかで、救いは若手の活躍であった。 1区では中国四国選抜の藤井裕美が区間3位と大健闘、そして長丁場の2区では近畿選抜の池田恵美(立命館大)が快走した。9位でタスキを受けた池田は上下動のない独特のフォームでロシアとともに急追、エチオピアのロバをとらえ、7.8キロではとうとう中国の孫英傑まであっさり抜き去ってしまう。6人抜きでなんと3位まであがってきたのである。区間賞の小鳥田貴子から22秒遅れの区間3位、32分03秒というタイムも評価できる。ロバを抜き、本調子でなかったとはいえ、あの孫英傑を置き去りにした走りは特筆ものである。来シーズンに向けて大きな自信になるだろう。最後のレースを気分よくしめくくった彼女に大化けの予感あり。 池田に勢いをもらったせいだろう。3区でも近畿選抜の堀岡智子が、世界のエゴロワを10秒あまりも上回る区間2位と快走した。相手がエゴロワだけに、これも大きな自信になるだろう。 日本チームの不安の種は3区と4区だった。3区は何といっても世界のエゴロワ(ロシア)がひかえていている。大平美樹は伸び盛りだとはいえ格がちがう。4区の加納由理も未知数である。2区までによほどのリードがないと、中盤でひっくりかえされるというのが、大方の観るところであった。 だが、そのエゴロワも本調子ではなかった。前半こそスピードに乗った走りをみせてくれたが、後半はまったくのびてこなかった。終わってみれば大平美樹が区間賞を奪い、ここでロシアをさらに10秒も引き離してしまった。4区の加納由理も区間2位の快走でライバルのロシアをさらに23秒も突っ放した。この時点では、完全に日本ペースであった。不安視されていた3区、4区を予想を上回る結果で乗り切ったのだから、この時点ではっきりと連覇のゴールががみえてきた。 ところが……。 5区で思わぬ陥穽が待ち受けていたのである。
5区のランナーにタスキがわたった時点で、トップの日本と2位ロシアに差は1分07秒、3位のエチオピアまでは1分43秒であった。中盤をうまく乗りきった展開からみて、日本の有利は動かないところだったが、駅伝は走ってみなければ判らない。皮肉にもそういうあたりまえの「警句」を身にしみて感じたのは、駅伝本家の日本チームだったのである。 日本の5区を走る松岡恵理は先の東京国際マラソンで世界選手権代表の座を獲得した。今回は日本チームの「貌」というべき存在であった。結果的にみて、だからこそ松岡にとって、きわめて残酷なレースになってしまった。 松岡の入りは1K=3分31秒というから、これではもうハナからレースにはならない。高校生以下のレベルである。ロシアのボゴモロワとエチオピアのツルが猛追、松岡は早くも4キロでボゴモロワに並ぶまもなく置き去りにされた。5キロではツルにあっさり交わされてしまう。その後もピッチがあがらず、7区へタスキが渡ったときにはなんと2分07秒もの大差をつけられてしまった。 かくしてロシアは2年ぶり7回目の優勝、区間賞がひとつもないが、全員が安定した力を発揮した。1区のベリヤコワをのぞいて、あとの6人は区間2位〜4位をキープしていた。エースのエゴロワが不調でも、あっさり勝ってしまうところにロシアの層の厚さと底力を感じる。 ロシアと対照的に2位のエチオピアは6区間のうち4区間で区間賞をとっている。それでも勝てなかったのは2区・ロバのブレーキ(区間8位)のせいである。ロバの失速がなかったら、ロシアをぶっちぎっていただろう。このチームの若い力にはあなどりがたいものがある。 松岡理恵は1月に左足を痛め、2月にはいってからも風邪にやられていたという。疑問に思うのはそういう選手をどうして起用したか……である。現在の日本には、松岡のかわりがつとまるレベルの選手は、ほかにもいくらでもいる。故障と病で調子落ちの選手を、判っていてあえて出場させた真意は何なのか。たとえ本人が出場すると言い張っても、やめさせるべきではないか。世界選手権の日本代表に内定したがゆえに、日本チームのカオとして、どうしても出場させたかったというのか。それならば、結果的に松岡のプライドをスタスタにしまった落とし前をどのようにつけるつもりなのか。 山中美和子はともかく、まともに走れる状態ではないことを承知のうえで、松岡理恵をあえて出場させた大会関係者の配慮のなさに、女子長距離、女子マラソン、駅伝ブームの限界がほのみえる。 ★開催日:2003年2月23日(日) 神奈川・みなとみらい21「横浜赤レンガ倉庫」発着 42.195Km ★天候:出発時 曇り 気温7.1度 湿度65% 東北東の風2.8m ★ ロシア(ベリヤコワ、ジリアエワ、エゴロワ、トマチュワ、ボゴモロワ、サモクワロア )
区 間 最 高
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