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今シーズンの全日本大学駅伝は、中心をなすべきチームがしかとみえてこないなか、いわば「見切り発車」という感じで当日を迎えてしまった。評者の私でさえも、展開がまったイメージできていなかった。出雲では山梨学院が一歩踏み出したものの、評者の私の眼には、いまひとつ不安が払拭できていなかった。 本命なき大混戦を象徴するかのように、1区はダンゴ状態で推移、20人近くが大集団を形成して進み、それが10キロあたりまで崩れなかった。中間点あたりから順天堂の中川拓郎、東海大の河野行、法政の黒田将由らが、かわるがわる引っ張ろうとしていたが、容易にイニシャティブをとりきれなかった。内田直将(駒澤)、高見澤勝(山梨)、中川拓郎(順天堂)、森村哲(早稲田)など、箱根シード校のエース級がそろうなかで、最後に混戦をぬけだしたのは意外や意外、東洋大の三行幸一であった。箱根予選会での好調さを持ち越しての快走というべきだが、まさに乱戦の予兆にふさわしい幕開けだった。 トップはめまぐるしく変転した。2区では16秒差7位でタスキを受けた山梨のカリウキが、スタートして1.8キロで、あっさり6人をぬいてトップに立ってしまう。カリウキの爆走で山梨は流れに乗ったかにみえた。事実3区、4区と山梨はトップを堅持したのだが、5区で日大の藤井周一に足もとをすくわれた。さらに一時は1分40秒ちかくリードしていた駒澤にも追いつかれてしまう。 伏兵ぶりをみせたその日大は6区で駒澤につかまってしまう。駒澤の塩川雄也は7.6キロで日大をとらえると、一気に47秒も突き放した。駒澤はさらに7区の北浦政史が区間賞、追ってくる日大に1分26秒、山梨には2分もの大差をつけてしまった。そしてエース松下龍治につなぎ、万全のビクトリーロードをひらいたのである。
今回のレースの特徴のひとつをあげれば、「箱根シード組」VS「予選会組」という戦いの構図がくっきりとしていたことである。 本大会には奇しくも箱根予選会で上位を占めた4強(東海、東洋、法政、日大)が出場している。シード組と予選会組の実力差はどれほどのものなのか。今大会はその寸法を測るにうってつけのレースだった。 1区の三行幸一(東洋大)に代表されるように、シード組に果敢な戦いを挑んだ4強は結果的にみて、箱根に向けてある種の手応えを感じたのではないか。日大と東洋はトップを奪い、法政も前半は上位をうかがう位置に付けていた。出遅れた東海も神奈川や帝京よりは上位に来ている。 予選会組の選手たちはいずれも2週間前に20キロを走っている。箱根をめざして目一杯のレースをしていきている。本大会に出場した予選会通過チームでは最下位の日大が、一時はトップを奪い、最終順位でも3位にもぐりこんだ。予選会2位の東洋大は5位、予選会4位の法政は7位にはいった。予選会を制した東海大は皮肉にも大きく崩れたが、シード組と他の3校はほとんど遜色のない結果を残している。 とくに予選会の個人成績で上位にきた選手たちは、今大会でも見せ場をつくった。東洋大の三行幸一をはじめ、日大を首位に押しあげる原動力となった清水将也、智也の兄弟、さらに法政の土井洋志、黒田将由……などなど。 疲労がのこっているであろう予選会組の健闘ぶりからみれば、あるいみでシード組の1部にはだらしがないというほかないチームが散見された。とくに12位の神奈川大、15位の帝京大学などの不振は、それなりに原因があるのだろうが、納得できないのである。
駒澤は1区の内田が2位につけたものの、2区の島村清孝が伸びず(区間12位)、さらに3区の太田貴之も区間6位で勢いがつかなかった。3区を終わってトップの山梨に1分40秒近くも置いて行かれたときには、「それまで……」かと思った。やはり松村拓希がぬけた穴の大きさを感じさせられたが、4区の田中宏樹が踏ん張った。区間2位の走りで、山梨を49秒差まだ追いあげ、これで追撃体制がととのった。今期の秘密兵器にもくろんでいた田中の起用がズバリ当たった。駒澤陣営としては笑いがとまらないだろう。 トップを奪ったのは6区の塩川雄也だったが、7区の北浦政史ともども、この2人がしっかり繋いだことが最大の勝因であろう。かれら2人がエースの松下龍治にタスキがわたるまでに、すでに勝負をきめてしまったのである。2分もの大差があれば、松下龍治ほどのランナーなら、誰が追ってきても、故障がさえなければ抜かれることはない。いくらモカンバでも出雲のような逆転劇をむずかしい。 出雲のときにくらべて、今回の駒澤の選手たちは妙に着いていた。前半の落ち込みを最小限に食い止め、中盤で建て直し、後半で一気に勝負に出た。チームとしてのまとまりにも一日の長があった。
本大会のエントリーリストをみたとき、今回こそ山梨だろうと思った。駒澤は松村が故障で出てこない。神奈川は吉村尚吾が故障で欠場するという。モカンバ、カリウキの留学生2枚と高見澤勝、橋ノ口滝一の2枚、山梨のほこるカルテットがフルに機能すれば必ず勝てる。出雲の勢いでそのまま突っ走るだろうと確信していた。 ところが……である。またしても足もとをすくわれ、万年2位の汚名を濯ぐことはできなかった。2区のカリウキがひさしぶりに快走した。まるで搭載しているエンジンがちがうというばかりに、駒澤の島村や早稲田の空山のかたわらをすりぬけていったとき、思わず眼をうばわれてしまった。最終アンカーのモカンバも区間1位で突っ走った。それでも勝てないというのは、いったいどういうことなのか? 敗因をあげれば駒澤とは対照的に繋ぎの区間で踏ん張れなかったことであろう。せっかく山梨に向かって流れ出したレースの流れを、5区の松田、6区の清家がブレーキをかけてしまった。選手個々の実力以前の問題として、山梨には駅伝チームとしての何かが欠けているように思える。 神奈川も今回は大きく期待を裏切った。吉村尚吾という主柱を欠いたために自己崩壊してしまったようである。第1区の竜田美幸が区間17i位と出遅れ、第2区では準エース格の下里和義が区間14位、これではどうしようもない。まとまりで勝負するチームだけに、箱根までにはきとんと建て直してほしいものである。 ほかでは帝京大も1区の中尾勇が第1区でなんと区間23位という大ブレーキ、これでは勝負にはならない。上位を争う1チームとみていた中央大も最終7位、序盤、中盤は低空飛行でみるべきものが何もなかった。
日本大学が久しぶりにレースをもりあげた。第1区こそ8位だったが、2区で清水将也が快調にすっ飛ばして、カリウキと同じく6人抜きで2位に押しあげ、これで弾みがついた。4区の清水智也がうまくつなぎ、5区の藤井周一が山梨をとらえた。日大の選手は全員が好調で、駒澤にトップを奪われてからもしぶとくねばった。最終3位という成績はみごとである。 第1区でトップに立った東洋大も最終5位にもぐりこんだ。日大と同じく、トップをゆずっても最後までくらいついた「粘走」にはみどころがある。箱根でも期待できる1校だろう。 シード組では古豪・大東文化大ががんばった。第1区では15位と出遅れ、ほぼ神奈川と同じ位置にいながら、2区、3区と少しづつ順位をあげ、4区ではいつのまにか4位まで追ってきていた。地味だが地力のあるチームに仕上がっている。中位に低迷してみるべきところがなかった早稲田や中央大よりもむしろ期待できるかもしれない。 本大会でみるかぎり、駒澤大、山梨学院が頭ひとつ抜けた存在、あとは横一線の様相である。予選会あがりのチームの今回の活躍ぶりからみて、今回の箱根はさらに大激戦必至の形勢にある。予選会あがりでも上位を食うケースも十分考えられる。題して下克上駅伝と予測しておこう。 ★開催日:2002年11月03日(日) ★天候:晴 気温5.45度 湿度72 風なし ★駒澤大学(内田直将、島村清孝、太田貴之、田中宏樹、佐藤慎吾、塩川雄也、北浦制政史、松下龍治)
区 間 最 高
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