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最終6区……。 16秒差の2位でタスキを受けた福士加代子は1キロすぎで早くもトップをゆく旭化成の藤川亜希をとらえて、並ぶまもなく一気に抜き去った。そのとき福士の口もとに白い歯がこぼれていた。追い抜く者の顔に笑みがこぼれるとき、ふつうなら不敵な風貌に映るだろう。だが、福士にはそういう屈折した雰囲気がまるで感じられない。憎らしいほどの強さなのに、笑顔をふりまく姿をみると憎めない。憎まれ役として映らないのは彼女の人徳によるものだろう。 トップを独走する福士はときおり沿道に向かって笑顔をふりまいていた。それも楽しくてたならないという、いかにもあっけらかんとした笑顔なのである。 昨年は4区(4キロ)に登場、1分遅れの5位から一気にトップを奪うという区間新の快走で、レースの流れをワコールに引き寄せた。並び駈けることもなく、相手を一瞥することもない。適度の間隔を保ったまま、傍らをすりぬけていった姿は鮮烈だった。まさに搭載しているエンジンのパワーがちがうという感じであった。 その福士がまたひとまわり大きくなってロードにもどってきた。日本選手権では5千、1万を制覇、欧州GPシリーズでは五千で日本新記録を連発、アジア大会でも5千、1万で銀メダル、先の淡路駅伝でも区間1位……。駅伝2戦目にあたる今回は最終8キロ区間で、2位のエスタ・ワンジロを2分近くもぶっちぎる区間新記録である。 岐阜の全日本でも日本女子長距離ナンバーワンの走りに目が離せなくなった。
昨年はワコールとラ・ラ・ラが最後まできわどく競り合った。最終的にはトラック勝負でワコールが制したのだが、今年も奇しくも両チームのマッチレースとなった。今年からチームごと旭化成に移籍したラ・ラ・ラにとしてはリベンジで新しい出発を飾りたかっただろう。 今年は実業団ではワコール、旭化成のほか、初参加の資生堂、さらに淡路駅伝を制した天満屋なども圏内というわけで混戦が予想されていた。それだけに2番目に距離の長い第1区の動向が注目されたが、機先を制したのが昨年の覇者・ワコールだった。 ワコールは今回ルーキー3人を使ってきたが、ポイントの第1区に登場したのがそのうちの1人、野田頭美穂だった。レースは立命館宇治のエースだった池田恵美(立命館大A)が引っ張る展開で始まり、資生堂の高橋教子などがつづいてたんたんと進む。長身の野田頭もこのトップ集団につけていた。最後は実績のある高橋と新鋭・池田のマッチレースになるかと思われたが、勝負どころの5キロ半ばでスパートをかけたのは意外にも野田頭だった。 福士にかこがれて、やはり青森の五所河原工からワコールにはいったという野田頭のラストはみごと、171センチの長身の彼女の走りはいかにも荒削りで、完成されたフォームの池田とは好対照だったが、スケールの大きさを感じさせるものがある。期待のランナー・野田頭の快走がワコールに勢いをつけた。 ワコールの勝因の第1には野田頭の新人らしからぬ骨太な走りをあげておきたい。以降2区の片淵恭子は区間2位(1位と2秒差)、3区の中嶋絵美は区間4位(1位と13秒差)、4区の工藤由美は区間6位(1位とは20秒差)と堅実につなぎ、最後は福士にタスキが渡って、スーパーエースが止めを刺したのである。そういう意味では五所川原工の後輩と先輩が最初と最後をしめくくったレースであった。
前回2位のラ・ラ・ラは今回から「旭化成」としてワコールに挑んだが、結果的には大砲不在で今回もまた涙をのんだ。短い距離をつなぐ駅伝では絶対的なエースをもつチームがやはり強いよいうことなのだろう。 けれども中盤ではワコールをリードした戦いぶりには見るべきものがあり、もしアンカーにタスキが渡るまで2分以上の貯金があれば、いくら福士でもとどかなかったのではないか。戦力的にも有利な展開がのぞめる2〜5区で思ったほどの貯金がつくれなかった。それが旭化成の敗因であろう。逆にいえば、この区間でワコールが踏ん張って、マイナスを最小限にとどめたことが最後にものをいったのである。 内容的には旭化成も各区間ともバラツキがなく、6人のランナーはいずれも個性を発揮している。2区の大渡泰子、4区の清水麻衣、5区の八木真子の3人が区間第1位となり、3区の桐原三和も2位ながら、ほとんど区間賞にひとしい走りであった。最終6区の藤川亜希も区間3位だから悪くはないのだが、福士加代子があまりにも強すぎたのである。 3位の資生堂は1区の高橋教子が17秒差の4位と好位置につけながら、中盤で伸びを欠いてしまった。エスタ・ワンジロもいまだ本調子を欠いているようである。 淡路駅伝を制した天満屋は若いメンバー中心で出てきたが、1区で40秒差の8位と出遅れたのが大きかった。流れにのれないまま中位をさまよい、5位まであがってくるのがやっとというありさまだった。健闘したのはデンソーである。1区で50秒差の9位と大きく置かれながら、最終的にはいつのまにか天満屋を上回る4位まであがってきていた。 大学勢では今回も名城大と立命館大が上位争いにからんできた。名城大はアナのない布陣が売り物、立命館は池田恵美というエースを活かして勝負する。今年も大学選手権でそこそこ戦えるのではないか。 実業団では天満屋、資生堂に期待がかかる。岐阜の全日本で三井住友と互角に戦うにはエース2枚が必要になる。そういうモノサシで寸法を測ると、今回の出場チームのなかでは天満屋、資生堂ということになる。なかでも最近とくに勢いを感じる天満屋をストップ・ザ・三井住友の1番手にあげておこう。 ★開催日:2002年11月10日(日) ★天候:晴 気温11.0度 湿度67% 南の風1.8M ★ワコール(野田頭美穂、片淵恭子、中嶋絵美、工藤由美、片淵綾子、福士加代子)
区 間 最 高
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