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2002-03 エピローグ

総合力が決め手になる
サバイバル時代が到来した


日本を代表する二人!
高岡と野口がシーズをしめくくった

 ロードレースのシーズン最後といえば名古屋国際マラソンだが、今年は山口ハーフも同日(3月9日)に行われ、テレビのチャンネルを慌ただしく切り替えながらの観戦となった。
 名古屋国際は世界選手権の出場権を賭けた最後の選考レース、そして山口ハーフはいまや日本の男子マラソンの頂点に立っている高岡寿成(カネボウ)が出場する。女子の部でも1月の大阪国際女子マラソンで圧勝、世界選手権代表をもぎとった野口みずき(グローバリー)が出場するというから、見逃せないのである。
 名古屋国際は比較的好記録が期待される大会である。折り返しから風に背中を押されることが多く、後半になってむしろペースアップがみこめるからである。かつて真木和が、高橋尚子が追い風にめぐまれて快走した。ここが勝負駈けの大南敬美は前半は大会記録を上回るペースで突っ走ったが、皮肉にも後半は追い風にならなかった。頼みの風向きにそっぽを向かれて25分台に終わってしまった。
 山口ハーフは男子の高岡寿成、女子は野口みずきが格のちがいを見せつけた。高岡は体調が万全ではないものの、前半はがまんして、後半になって一気に抜け出すというレース巧者ぶりをみせつけて圧勝した。
 女子は野口がダイナミックな走法でハナからトップに立って、最後まで誰にも抜かせなかった。ハーフの女王という名にふさわしい走りだった。高岡、野口の走りをみていて、ある意味で従来の日本人にはないタイプではないかと思った。
 高岡は日本人の長距離選手にしてはまれな長身である。勝負どころになると長身の利点をフルに活かすかのように、ストライドを伸ばして、後方から一気にトップを奪ってしまう。野口はどちらかというと女子ランナーのなかでも小柄なほうだが、大きなストライドで全身バネのように弾みながら跳走する。トップに立ったら誰にも譲らないという勝負根性も小気味が良い。奇しくも日本長距離の男女リーダーになった二人が、今シーズンを締めくくってくれたのである。


世界をめざす新しい貌
世界選手権の代表決まる!

 8月のパリ世界選手権の代表が決定した。男子は尾方剛、油谷繁(ともに中国電力)、藤原正和(中央大)、清水康次(NTT西日本)、佐藤敦史(中国電力)、女子は松岡理恵(天満屋)、野口みずき(グローバリー)、大南敬美(UFJ銀行)、千葉真子(豊田自動織機)、坂本直子(天満屋)である。
 男子は中国電力(全日本実業団駅伝3位)から3人、女子は天満屋(全日本実業団女子駅伝5位)から2人が選ばれている。このほか男子では藤原正和は中央大4年生にして初めて箱根の2区を走り、区間賞を獲得している。今シーズンの駅伝時評に登場した選手が10人中7人もいるののである。 「駅伝」を走り「マラソン」を走る。まさに日本長距離の「王道」から育ってきたということができるだろう。
 男子は藤原正和の2時間8分12秒が最高で、8分台が3人、9分台が2人という顔ぶれである。タイム的にみるかぎり4年前からほとど前進が見られない。世界のトップは5分台の争いになるだろうから、8分台ではとても太刀打ちできない。残念ながら今回の世界選手権に関するかぎり、大きな期待はできないだろう。油谷、尾方、清水、いまや中堅からベテランクラスというべきかれらに大きな期待するのは酷というもの。まだまだいくらか上積みが見込めそうな若い佐藤敦史、初マラソンで8分台をマークした藤原正和を先物買いしておきたい。
 日本女子のマラソンは、これまでの実績から判断するかぎり世界のトップクラスにあるといえるが、昨年をターニングポイントに、変化が兆している。ポスト・高橋尚子の呼び声が高かった渋井陽子がシカゴでラドクリス、ヌデレバに完敗、あらためて世界はひろいな、と知らしめられた。
 高橋尚子が年齢的、体力的に限界がみえ、渋井陽子にも翳りがみえてきた。渋井陽子が名古屋国際を欠場したのは故障のせいだが、そういう肉体的な問題よりも、シカゴでまったく歯が立たなかったショックが尾をひいているとみる。事実、今シーズンの駅伝ではまったく精彩がなかったのをみても、むしろ精神的ダメージの大きさが気になるのである。
 現状でみるかぎり、マラソンの女子は野口みずきを中心に回りはじめている。今年は駅伝を走っていないとはいえ、1月の大阪国際を走り、1カ月半そこそこで山口ハーフを走って圧勝した。ハーフの女王といわれてきたが、フルマラソンでも2戦2勝である。8月のパリ世界選手権のあと、ハーフでも世界一をめざすという。トップは誰にも譲らない……という走りさながらに、その積極的な姿勢を評価したい。現在もっとも勢いのあるランナーで、高橋尚子が台頭してきた状況とよく似ている。今年は小柄ながらダイナミックな走りをみせる野口みずきを注目してみまもりたい。


連覇に挑んだ王者の明暗!
男子・コニカと女子・三井住友海上

j 実業団では男子はコニカ、女子は三井住友海上が3連覇をめざした。男子は予選にあたる東日本実業団を制した日清食品がかなりのところまで肉薄するのではないか。女子の三井住友海上にくらべて、コニカ3連覇は黄信号が点滅していたが、フタをあけてみれば、皮肉な結果になった。確勝と思われた三井住友海上が第一生命に足もとをすくわれ、コニカは危なげなく勝利を収めたのである。
 コニカは松宮兄弟にくわえて、坪田智夫に代表されるように、油ののりきった選手たちが顔をそろえ、選手層がきわめて厚い。そこえ昨年は故障で出場できなかったガソがもどってきたのだから強かった。
 東日本大会を制した日清食品は、5区に予定した徳本が熱発で、やむなく6区に配するというアクシデント、中国電力も風邪で佐藤敦之が使えなかった。対抗チームに思わぬ紛れがあったとはいえ、3分もぶっちぎったコニカは強かった。新戦力も着実に育っており、4連覇、5連覇も視野にはいってきた。
 昨年4位のトヨタ自動車は今年は5位と順位を落としたが、まずまずの成績といえるが、5位の富士通はどうしたことか。トップ争いにからむことなく、終始t中位以下を低空飛行、最終的に9位と落ちてカネボウや旭化成をも下回ってしまった。コニカ、中国電力、日清食品とともに4強の一角をなしていただけに急激な凋落ぶりは、いったいどういうことなのか。
 女子は負けるはずのない三井住友海上、史上初の三連覇に挑んだのだが、思いがけなく涙をのんだ。それも負けるはずのない相手に敗れたのである。全日本の予選にあたる東日本実業団で、三井住友海上は1区からトップに立って、そのままゴールまで突っ走った。6区間のうち5区間まで区間賞をもぎとって、まったく危なげがなかった。2位の第一生命とはタイム差以上の力のちがいがあり、三井住友海上を負かすチームがあるとすれば、淡路組だろうとみていた。ところが本番ではその第一生命に敗れてしまったのである。
 結果的にみて渋井、坂下が本調子を欠いていたのが敗因、第一生命の勝因は若さとチームワーク、全員がベストに近いタイムで走ったこと。区間賞が一つもない優勝がそれをものがたっている。
 女子は初優勝した第一生命、惜しくも連覇をのがした三井住友海上、3位のダイハツ、4位資生堂、5位の天満屋までは戦力が充実しており、ますます混戦になりそうな気配である。


駒澤時代の到来!
山梨を振り切って2冠を制す  

 箱根駅伝は今年から出樹チームが5チーム増えて、20チームになった。各大学の戦力が着実に底上げされているだけに今年も見応えのあるレースとなった。
 今年の大学駅伝はまず山梨が出雲を制したが、中心をなすチームがなかなかみえてこなかった。全日本でも東海、山梨、日大などが首位を争うという大混戦の様相、最後は本命の駒澤が出てきて乱戦を断ったが、2位以下は山梨、日大、大東、東海……と僅差でつづいていた。箱根はこの段階で駒澤が一歩リード、山梨、日大、中央などが有力視されていた。なかでも留学生2人をふくめて4枚のエースをもつ山学院のカードの切り方が注目の的だった。
 直前の戦力からみて、駒澤の対抗馬は山梨とみられていたが、今年も往路は大混戦となった。1区では駒澤が内田直将でトップに立ったが、2区では中央大の藤原正和が奪首に成功、中央は4区までトップにをまもったが、4区半ばで山梨のカリウキが逆転して、そのまま往路を制してしまう。往路は逃げる山梨と追う駒澤のマッチレースになったが、往路でエース4枚をすべて使い切ってしまった山梨にくらべ、分厚い戦力をもつ駒澤が9区で逆転に成功、連覇を達成した。
 3位の日大、4位の大東文化は大健闘、5位の中央大は往路では後半に大きく崩れて12位ながら復路2位と地力を発揮して 総5位まで押し上げてきたのは、さすがというべきだろう。
 意外だったのは神奈川と早稲田である。ともにエースの故障というアクシデントがあったとしてもあまりにもだらしがない。早稲田はなんと15位でシード落ち、神奈川も後半競り負けて11位でシー落ちしてしまった。
 出場チームの増加でシード権争いがますます熾烈になりそうである。加えて実力の接近で、今回は予選会を勝ち上がってきた日大、東洋大、東海大、日体大、中央学院の5校がシード権を獲得した。
 今回から出場チームが20チームになり、目新しいところでは学連選抜チームが加わっている。あくまでオープン参加のかたちで、タイムは計時されるが順位争いの蚊帳の外にいる。1チームだけが浮き上がっているかのようで、これでは出場する側も意気があがらないだろう。選抜チームというかたちにいったいどれほどの意義があるのだろうか。 わけのわからない選抜チームなど止めにして、それならば予選会からもう1チーム昇格させたほうがいい。


実力伯仲
わずかなミスが勝負を左右する!

 最近の駅伝は各チームの実力差が接近、伯仲のレースが多くなってきたが、今回の高校駅伝はまさにこうした時代を象徴するかのようであった。男女とも圧倒的な戦力をもつチームが見あたらず、大混戦となった。
 実力が伯仲しているからこそ寸分のミスもゆるされない。ほんの些細なミスでも命取りになる。ミスをしなかったチームが勝つ。奇しくも今年の勝者は男女ともに、そういうククリで捉えることができるだろう。
 男子は西脇工業と白石とで4区からマッチレースとなったが、駅伝巧者の最後は西脇が抜け出した。区間賞がひとつもなしで優勝、それはエース中心ではなく、総合力で勝負する時代の到来を象徴している。女子は筑紫女学園と神村学園が熾烈な闘いをくりひろげた。最後に笑った筑紫の場合も区間賞は4区の浦田佳小里だけである。絶対的なエースはいなかったが、全員が3位以内につけるというバランスの良さ、総合力がモノをいった。
 ミスが許されない過酷な駅伝、ときに短い距離の区間をつなぐ高校駅伝は、駅伝というよりも長距離リレーという様相が強く、わずかなミスが勝負を大きく左右する。そういう世知辛い駅伝になりつつある。今回のレースがそのことをよくものがたっている。


駅伝のヒローイン
福士加代子が今年も快走!

 福士の勢いは誰も停められない。笑顔をふりまきながら走る「かっとび娘」は今シーズンも健在だった。最も印象に残ったランナーを一人あげろといわれれば、やはり今シーズンも福士加代子をあげなければならないだろう。
 ひとまわり大きくなってロードのもどってきた福士はまず北陸女子駅伝で6区(8キロ)に登場して区間新記録でワコールを連覇に導いた。千葉国際では2区(10キロ)を担当、5位でタスキを受けると千葉選抜、ルーマニア、中国、エチオピアを一気に抜き去り、こここでも区間賞の爆走で首位を奪った。淡路駅伝では2区(8キロ)、そして12月の全日本では3区(10キロ)でも転倒するというアクシデントがありながらも区間1位を占めた。第一生命の羽鳥と足がからむというアクシデントがなかったら、まちがいなしに区間新記録をマークしていただろう。
 男子では正月のニューイヤー駅伝の2区(22キロ)での高岡寿成と松宮隆行との息づまる熱闘をあげておこう。
 高岡寿成は反応がにぶく、動きがいまひとつ。本調子ではないようだったが、それでも悪ければ悪いなりに帳尻を合わせるところに、ランナーとしての非凡さがある。2区はまさにダンゴ状態で、ようやくレースが動き出したのは19キロ付近から。コニカの松宮隆行と中国電力の油谷繁、そしてカネボウ高岡の3人が抜け出した。スピードの切れ味で勝負する高岡、粘りが身上の油谷、がむしゃらに闘志をむきだしにする松宮、個性あふれる3人のスパート合戦は、今シーズンの駅伝レースでもベスト3にはいる見どころだった。
 松宮が出ると高岡が追いすがり、油谷がかわして先頭に立つ。21キロ地点で高岡がスパートしたが、抜群の反応をみせる松宮がロングスパート、そのまま中継点にとびこんでいった。なりふりかまわず闘志をむき出しにする松宮の走りが、区間賞をとった高岡にひとしく印象深かった。
 箱根では傑出したランナーは見あたらなかったが、あえてひとりあげれば、中央の藤原正和だろう。4年生にして初めて2区に起用された藤原は冷静沈着だった。山梨のモカンバ、駒澤の松下龍治との死闘、興趣つきないものがあった。最後は坂に強い藤原が権太坂で笑った。最初で最後に走った花の2区で区間賞、藤原のとっては最高のレースだったのではあるまいか。
 藤原はその余勢を駆って、3月の琵琶湖で世界選手権代表を手中にした。箱根から一足飛びに世界が見えるところまで登ってきた若い力のゆくすえを注目してみまもりたいと思う。


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