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最近の駅伝は各チームの実力差が接近、伯仲のレースが多くなってきた。とくに今回の高校駅伝は男女とも圧倒的な戦力をもつチームが見あたらず、こうした時代の流れを象徴するかのようであった。 実力が伯仲しているから寸分のミスもゆるされない。ほんの少しのミスでも命取りになる。ミスをしなかったチームが勝つ。奇しくも今年の勝者は男女ともに、そういうククリで捉えることができるだろう。 有力校がフルイにかけられる第1関門は今回も第1区であった。 女子から見てみよう。予選の経過から見て、連覇をねらう諫早を筆頭にして、立命館宇治、須磨学園、筑紫女学園、神村学園あたりが優勝争いの軸になるものと思われていた。ところが第1区で対抗格の立命館宇治が、なんと 18位に沈んでしまった。トップから1分30秒遅れ、ライバルの1校である筑紫女学園からも約1分も遅れて、早くも圏外に去った。連覇をねらう諫早と神村学園はともにトップの青森山田から約50秒遅れ(7位、8位)、優勝した筑紫からは約17秒ぐらい遅れた。須磨学園はさらにそこから10秒遅れの10位と出遅れ、3校ともに秒差だけでみると首の皮一枚残っていたが、勝負のリズムにいくぶん紛れが出てきた。 男子は佐久長聖、大牟田、西脇工、白石、仙台育英あたりが有力とみていたが、やはり1区の攻防が明暗を分けた。留学生ワンジルで今年も先行逃げ切りをねらう仙台育英はトップを奪い、西脇工も手堅く5位につけたのは予定通りだったろう。ところが予選タイム1位の佐久長聖は約1分遅れの9位、白石も1分10秒前後遅れて16位、大牟田はさらに遅れて19位に沈んだ。3チームともに中盤から後半にかけて上位争いに加わってくるのだが、今一歩にといころでトップに肉薄できなかったのは、1区の誤算によるものとみる。
女子は第1区のL・ワゴイ(青森山田)が今年も驚異的なスピードで飛び出して、レースは幕を開けたが、2区で神村学園の前島香代が7位から一気にトップを奪ってしまう。筑紫女学園が6秒差の3位につけたが、連覇を狙う諫早は38秒遅れの6位、須磨学園は55秒差の9位と伸びを欠き、この時点で筑紫と神村の一騎打ちの様相がみえてきた。 両校は3区、4区と熾烈な闘いをくりひろげた。3区では筑紫の松田奈実が激しく追い上げ、5秒差、そして4区では浦田佳小里が逆転して、逆に6秒のリードを奪ってしまう。勝利を決定づけたのは2年生アンカー・稲富友香の走りである。追ってくる神村を結果的に10あまりも突き放した。その顔に似合わぬ豪快な走りにはみどころがあった。 筑紫女学園の勝因は1区で好位置につけてリズムと流れに乗ったこと。区間賞は4区の浦田佳小里だけだったが、他の4人も3位以内につけるというバランスの良さ、総合力が生きたというべきだろう。 それにしても今大会は九州勢の活躍が目立った。筑紫と神村が愁傷争いを演じ、連覇がならなかったが諫早が4位、5位にも千原台がとびこんだ。九州はまさに駅伝王国というべきか。
女子の諫早は連覇にいどんだが、あえなく4位に沈んだ。予選トップの記録をマーク、連覇の可能性も十分と思われたが、前述したように1区の遅れで流れにのれなかった。スピード化の進展と大激戦の時代になって、連覇はさらに至難になったようである。 1区で遅れた諫早はそれでも3区ではトップの神村に24秒差まで迫っている。だが4区で53秒と差をひろげられて万事休すとなった。アンカーは昨年優勝に貢献した牧島かおりで、期待十分だったが、いまひとつ伸びきれなかったのも、4区までの流れのせいというものだろう。 戦力十分にもかかわらず、ほんの些細なミスでのりきれなかった。それが駅伝というものなのだろうか。 須磨学園は後半追い上げて九州勢の一角を崩して3位にとびこんだ。諫早と千原台を交わして3位まで押し上げた勝又美咲の走りにはみどころがあっただけに、前半から中盤の不振が惜しまれるところである。 立命館宇治は今年も8位に終わった。昨年と同じように1区で大きく出遅れてはどうしようもない。同じ失敗を2年もつづけて繰り返すところにも、このチームの指導体制に致命的な欠陥があるとみた。さらにエース格の金指亜由美を故障で欠いていた。毎年のように主力選手が故障しているのも、偶然というだけではすませられないのではないか。少しきびしすぎるかもしれないが、わが郷里のチームだけに歯がゆいのである。 健闘したのは6位の山田(高知)、10位の由良育英(鳥取)だろう。由良育英は1区で3位につけ、て流れに乗ったようだ。中盤もしぶとく粘りこんでの6位はみごと。山田も1区で5位につけ、2区では今村かをりの粘走でトップ神村の前島香代に1秒差まで迫っている。四国大回の記録からみて、これくらいの成績は当然かもしれないが、記録や順位以上に、その戦いぶりにみるべきものがあった。
男子の第1区はこのところ毎年のように留学生ランナーが突っ走る。今年は仙台育英のJ・ワンジル、山梨学院のJ・モグス、青森山田のJ・ムワンギによる3人の競演になった。3人は競技場を出るまでにはやくも先頭に踊り出していた。 エース級のそろった第1区は日本人の好ランナーがそろい、5000M=13分台の選手が4〜5人いるのだが、誰も留学生についてゆかない。果敢に追っかけて玉砕した大牟田の土橋の例が教訓になっているのだろう。1キロ=2分40秒そこそこのスピードについてゆくのは、無謀かも知れないが、やすやすとワンジル(仙台育英)ごときに独走を許すのはいかがなものか。土橋に再度のチャレンジを期待したが、今年は集団のなかで自重のかまえ、がっかりした。 女子同様に男子も有力校は第1区の関門ででフルイにかけられた。初優勝をねらっていた佐久長聖、大牟田、白石は後手を踏み、前半はトップ仙台育英と好位をキープの西脇工が鍔迫り合いを演じ、4区からは後方から急追してきた白石と西脇工のマッチレースになってゆく。 男子の最大のみどころは第3区だった。2区を終わっ時点でトップは仙台育英、28秒差で西脇工業、32秒差で青森山田、約40秒遅れで洛南、佐久長聖がつづく。ここで猛追してきたのは佐久長聖の佐藤悠基だった。西脇工の稲垣晃二、洛南の奧野貴裕と2位グループをなして追い上げ、中間点ではトップとの差は15秒まで迫ってくる。熾烈な争いがつづくなか、洛南が最初に脱落、西脇と佐久長聖がならんで追い上げ、とうとう5.8キロで先頭をゆく仙台育英を一気に置き去りにしてしまう。二人はたがいに顔色をみながらスパートのタイミングをはかろうとする。跨線橋のあたりからの息づまる心理的な戦いがおもしろかった。
3区でトップを奪った西脇工を白石は4区で10秒差まで追いすがった。白石の高井和治は9位から2位に押し上げる快走、フォームはバラバラだが、全身みなぎる気迫、力感あふれる走りに眼を奪われた。今回出場したランナーのなかで、走ることで最も自己表現したのは高井をおいてほかにはない。 西脇工、白石の一歩も譲らぬマッチレースに動きが出てきたのは5区である。2区と同じく最短の3キロ区間だが、西脇の田中文昭がハナからすっ飛ばして、白石との差を一気に27秒までひろげてしまったのである。追いすがられた直後に突っ放した。最終的に西脇はこの5区の貯金で6区、7区の急追をしのいだのである。 5区は3キロと短かい。いわばつなぎの区間とみられてきたが、1区あるいは4区や5区という長井距離の区間ではなく、今回は皮肉にも最短の区間で勝敗が決したのである。スピード駅伝になると、むしろ短い区間がポイントになるという証左かもしれない。 とにかく西脇工は全員がそれぞれの役割をきちっとまもりきったのが勝因だろう。区間賞はひとつもなしというのが、エース中心の時代ではなく、総合力で勝負する駅伝時代の到来を象徴しているように思われる。
大牟田がまたしても1区でつまずいた。昨年は1区の土橋啓太が仙台育英のカビルと激しく先行争いを演じてぶっつぶれた。 昨年に懲りたのか。今年は終始集団のなかにいて、自重していたが、それが最終的にウラ目に出た。勝負どころで伸びきれず、終わってみればなんと19位である。2区から徐々に追いあげて、最終的には3位まで来ているのをみると、やはり1区が大誤算だった。優勝争いにからめなかった3位など、4位の洛南や7位の佐久長聖よりも評価は落として見るべきだろう。 土橋は昨年より力をつけているのだから、今年こそ留学生トリオに競りかけていってもよかったのではないか。勝負にこだわった消極的な姿勢が、かえって思わぬ凡走を呼び込んでしまった。 仙台育英は第1区でトップに立ったまでは予定通りだったのだろうが、2区以降が伸びきれず、t得意の逃げ切り態勢にもちこめなかった。 惜しかったのは2位の白石だろう。4区以降であれだけ西脇を苦しめながら、今一歩のところで決められなかった。繰り返しになるが、その原因は1区である。事実1区の遅れがなかったら圧勝しても不思議ではないほどの実力をこのチームは秘めていた。 健闘したのは京都の洛南である。3区では18秒差の3位までやってきて、その後も粘りに粘って最終4位をキープした。やはり第1区と2区のランナーが好位置につけたのが好走に結びついたようである。 高校駅伝も男女ともにますますスピード化が顕著になってきた。戦力がとび抜けたチームが見あたらなくなり、大激戦時代に突入した観がある。とくに短い距離の区間をつなぐ高校駅伝は、駅伝というよりも長距離リレーという様相が強く、わずかなミスが勝負を大きく左右する。そういう世知辛い駅伝になりつつある。今回のレースがそのことをよくものがたっている。 ★開催日:2002年12月22日(日) 京都市・西京極競技場発着 男子:宝ヶ池国際会議場前折り返し49.195Km 女子:烏丸鞍馬口折り返し 21.975Km ★天候:午前10時(女子) 晴れ 気温11.0度 湿度76% 北東の風0.7m 正午(男子) 晴れ 気温14.0度 湿度65% 北東の風1.2m ★西脇工(北村聡 西川耕平 稲垣晃二 藤原章生 田中文昭 尾籠浩考 阿江匠) ★筑紫女学園(長尾暁子 平嶋奈緒美 松田奈実 浦田佳小里 稲富友香)
区 間 最 高
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