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東日本実業団駅伝は今年で13回目だが、いままで3連覇したチームはない。おそらく女子の場合は選手の消長がはげしいからだろう。今回史上初の3連覇に挑んだのが、三井住友海上である。 全日本3連覇という前人未踏の快挙を視野において始動した今年の三井住友海上にすれば、、その予選にあたる東日本大会は、圧勝して勢いをつけたいところ。どのチームが勝つかということよりも、もっぱらの興味は三井住友がどのような戦いぶりで、どのように勝つのか、の一点にあった。 勝負はあっけなかった。三井海上が1区に起用した高校出のルーキー・橋本歩が、レースが始まってわずか7分足らずであっけなく勝利を決定づけてしまったのである。スタートからトップ集団をひっぱった橋本歩は長身を活かした大きな走りで、2キロすぐからペースアップ、3キロでは独走態勢をかためてしまった。積極的なけれんみのない走りは、いかにも新人らしく清々しいものがあった。 1区トップに立った三井海上は、いちどもトップをゆずることなく、楽々とゴールまでタスキを運んでいった。あまりにも強すぎて、観るレースとしては盛りあがりを欠き、きわめて平板、単調というほかなく、いわば時評子泣かせのレースであった。今回もし、シカゴマラソン帰りの渋井陽子が出てこなかったら、おろらくテレビ局側は観戦の目玉がなくて、困り果てていただろうと思う。
終わってみれば三井住友海上は2区をのぞく5区間で区間第1位を占めていた。1区・橋本歩、3区・渋井陽子、4区・山本波瑠子、5区・坂下奈穂美、6区・大山美樹……。故障の土佐礼子を欠いても、まったく戦力に影響がないほど陣容は充実している。 1区の橋本歩、6区の大山美樹はともに今年の新戦力である。スタートとゴールを期待の新人でしめくくったあたり、陣営は今年だけでなく、きっと4連覇、5連覇への布石をもくろんでいるからなのだろう。そういう意味で予選とはいえ、オーダー編成に創造性が感じられ、鈴木監督の戦略を垣間見る思いがした。 新人ふたりに刺激されたというわけでもないだろうが、ベテランの坂下奈穂美、大平美樹や山本波瑠子などの中堅どころ、さらにいまや世界レベルのマラソンランナーとなった渋井陽子もきっちりと自分の役割を果たした。バランスのよいチーム構成で、勝つべくして勝ったといえる。 12月8日の全日本では、右足首ねんざの土佐礼子も復帰するという。両エースのそろい踏みで3年連続日本一をめざす三井海上を、いったいどのチームがストップをかけるのか。
今回の出場チームは昨年とおなじく13チームだった。ピーク時は21チームを数えたが、この数年をみるかぎり、人気スポーツの女子駅伝も企業スポーツの撤退ムードと無縁ではないようである。昨年は関東地区の全日本大会出場割り当て枠15に対して、出場チームは13というワク割れ現象が生じ、出場13チームがすべて出場権を得た。今回から関東の出場枠は9つになり、13チームで9つの椅子を争った。 三井住友海上、につづいて、第一生命、資生堂、あさひ銀行、積水化学、エスアイアイ、松下通信、ホクレン、みずほ銀行が出場権を獲得したが、かつて優勝したこともある日立、さらには全日本の大会でも上位を争った日本ケミコンが落選した。 三井住友のほかでは、近年台頭してきた第一生命、資生堂、あさひ銀行あたりに期待がかかる。とくに第一生命は若いチームで、記録的にみても力をつけている。2区で区間賞をとった森春菜や3区で渋井陽子と渡りあった羽鳥智子などが着実に育ってきている。だが、現状に関するかぎり、全日本ではかなり苦しいだろう。ほかでは弘山晴美の資生堂も高橋教子や加納由理などが力をつけているが、いまひとつ勢いがない。田中めぐみのあさひ銀行、積水化学あたりでは、勢いのある関西、中四国、九州勢に太刀打ちできないだろう。地盤沈下のいちじるしい関東勢は、王者の三井海上そのぞいて、かなり苦しいだだろうとみている。 とにかく三井住友海上の独走レースになったせいで、後続の選手たちにスポットが当たらなかったのは残念である。めまぐるしい順位の変動があれば、テレビカメラはもっと多くの選手たちに向けられただろうと思うのだが……。13チームで9つの席を争うレースで、多くを望むのはしょせん無理な話なのかもしれない。
渋井陽子はタフな選手である。ほんの3週間まえにシカゴマラソンを走ったばかりだというのに、憑かれたそぶりもみせずに大会に出場してきた。チャンピオンシップのかかった全日本ならともかく、予選会というべき本大会にちゃんと出てきた。三井住友海上のチーム力からみて、予選ならばたとえ渋井を欠いても、やすやすと突破できる。渋井と土佐、いわば飛車角落ちでも勝ってしまうかもしれない。 シカゴで燃えつきているのに、あえて出場に踏み切った渋井の姿勢を高く評価しておきたい。10キロ区間をを31分25秒でカバーして3年連続の区間賞、自己の区間記録にわずか16秒足りなかっただけである。まだ疲労がぬけきっていないはずなのに、きっちり仕事をするあたりは渋井陽子の真骨頂というべきか。 世界レベルの選手になったら、もう駅伝には出てこない。たとえば有森裕子、高橋尚子もオリンピックのメダリストになってから、いちども駅伝を走っていない。駅伝などもう卒業したということなのだろう。そして、ぎりぎりのところまで躯をしぼって、目標とするマラソンにのみ一発勝負をかける。 渋井はとくに有森や高橋にくらべて年齢的に若いからだろうか。ちょっとタイプがちがうランナーのようである。シカゴマラソンを走ったあとのインタビューにこたえて、「次は駅伝……」などと発言していた。 マラソンを走っていたかと思うと、もう駅伝レースにもちゃんと顔を出している。外国人のマラソンランナーの場合は、オリンピックや世界選手権のような大レースを走ったあとも、それほど間をおかずに、平気な顔をして各地のマラソンレースに出場してくる。渋井は精神的にも肉体的にも外国人なみのタフさを持っているようである。超大物の予感あり、渋井のさらに大きく育ってほしいものである。
東日本実業団駅伝の翌日(11/04)、淡路島駅伝が行われ、中國四国・近畿・東海、北陸の代表チームが決まった。平穏な予選というべき関東にくらべて、今年から出場枠が増えたものの、むしろこちらのほうを注目していた。 レース経過の詳しいことは分からないが、最終的に天満屋、UFJ銀行、ダイハツ、四国電力、ワコール、スズキ、デオデオ、京セラ、デンソー、小島プレス、ユタカ技研、関西電力、北国銀行の13チームが出場家を獲得した。 意外だったのは小崎まり、岡本治子のいるノーリツが14位で落選したことである。昨年初出場ながら優勝戦線に顔を出したグローバリーは予選に出てこれなかったようである。可能性を秘めたチームだけに、きわめて残念である。 淡路の1位て天満屋から5位のワコールまでは、関東の2位以下にくらべて、かなり強力そうである。そのなかでも三井住友を脅かすチームをあげるとすれば、天満屋、UFJ,ダイハツあたりになるだろう。 ☆本大会にも駅伝カメラマンの岡崎誠さんは現場に出動されています。サングラスをかけて力走する三井住友海上の坂下奈穂子の姿を始め、迫力ある作品が氏のサイト(ekidenn@photos)に掲げられております。必見! ★開催日:2002年11月03日(日) ★コース:さいたま市。埼玉県庁前から上尾市・上尾運動公園陸上競技場まで。49.195K ★天候:晴 気温8.0度 湿度69% 無風 ★三井住友海上(橋本歩、大平美樹、渋井陽子、山本波瑠子、坂下奈穂美、大山美樹)
区 間 最 高
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