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駅伝を今日の人気スポーツに押しあげたのは女子駅伝である。華やかな女子選手たちがテレビに登場して、駅伝ブームをもたらしたのである。ところが、その女子駅伝に異変がおこっている。 全日本実業団対抗女子駅伝の東日本予選会ともいうべき第12回東日本実業団対抗女子駅伝は11月3日に行われたが、エントリーしたのは、なんとわずか13チームだった。関東地区の出場枠は15だから、完全に「枠割れ」現象になってしまったのである。ひところ20チームをこえていたのに一昨年あたりから、まるで刃がこぼれるように撤退するチームが出現、とうとう出場枠にも届かなくなってしまったのである。今年からはかつての王者・リクルートの姿もなく、駅伝ブームにも翳りがみえてきた観がある。 関東地区の枠割れとは裏腹に、関西地区では最近になって実力上昇中のチームが目白押しである。淡路島駅伝では4つ出場枠をめぐってワコール、ダイハツ、ノーリツ、グローバリー、日本生命、四国電力、京セラなどが紙一重で熾烈な闘いをくりひろげた。 完走さえすれば出場権が得られる関東にくらべて、今年の関西地区は出場ワク5つから4つになった(昨年、ノーリツが出場を辞退したため……)ために、近年まれにみる大激戦になってしまったのである。こうした跛行現象をみるとき、関東地区にきわめて手厚い出場枠はきわめて公平さを欠き、もはや現状にそぐわなくなっているといわねばならないだろう。
関東地区予選とはいうものの、戦うまえから全チーム当選の無風レースだけに、ハナから緊張感を欠いていたが、弛緩した雰囲気を救ったのは昨年につづき2連覇を達成した三井住友海上だった。 1区の山本瑠璃子で秒差の3位につけ、2区の清水由香は5位に落ちたが、3区の渋井陽子にタスキが渡ったとき、トップとの差はわずか20秒でしかなかった。スーパーエースが登場するには願ってもないお膳立てというものである。 三井住友海上はエース区間に昨年と同じく、渋井陽子、土佐礼子という2枚看板を配してレースにのぞんできた。全チーム当選の予選だというのに11月18日の東京国際マラソンに出場する坂下奈穂子まで使ってきた。まさに正攻法でレースにのぞみ、3区以降は独走という圧倒的な力を、あえてみせつけた。12月の全日本をみすえての布石、いわば予定の行動だったのだろう。 昨年もそうだったが三井住友海上は個々の選手の実力もさることながら、チームとしてのまとまりが抜群で、不思議なオーラを感じる。駅伝チームとしては、かってのワコール(真木和、藤原恵らがいたころ)とならぶ史上最強の状態にあるとみた。
積水の高橋尚子が出場しないこの大会、注目はエドモントンで一躍トップランナーの仲間入りを果たした三井住友海上の渋井陽子と土佐礼子の走りであった。 3区に登場した渋井は昨年よりさらにひとまわり大きくなっていた。上半身がひきしまり、脚の筋肉が柔軟に伸縮する。独特の前傾姿勢で、速く、たおやかに疾走する。1キロ=3分を切るというハイペースで突っ込み、タスキを受けてから1キロの地点で、速くもトップをゆく第一生命をとらえ、あっさりと勝負を決めてしまった。5キロはなんと15分30秒である。けれども、それほど速いと思えない。桁外れのスケールというべきであろう。 あさひ銀行の田中めぐみは、終始背中もみえない渋井を追っていた。あさひ銀行は1区で12位と大きく出遅れて2区を終わってもいぜん順位は変わらず、田中は12位から懸命に追いあげてきた。8人抜きで一気に4位まで押し上げたのはさすがと思わせるが、田中をそこまで熱くさせたのは、渋井の存在があったからだろ。 走法からして好対照な二人が競り合う展開なら、さらに面白かっただろうが、それは無いモノねだりかもしれない。
5区の最長区間では弘山晴美と土佐礼子が競り合う展開を期待したが、これもまた肩すかしに終わった。 土佐も渋井と同じように、いかにも長距離ランナーらしい体に仕上がっていた。上下動のないフォームで、流れるようにリズミカルにピッチをきざんでゆく。力感あふれた弘山晴美の走りとは好対照をなすだけに、二人が併走したとき、どちらがどのようにリズムを乱すのか。その一点に興味があっただけに、ちょっと残念であった。 弘山はさすがにベテランらしい落ち着いた走りだった。6位から一気に2位まで追いあげてきた。昨年から今年にかけて長く低迷していた弘山が久しぶりに快走して、いまなお健在であることを証明してみせた。まさに復活の区間賞である。 資生堂はこの弘山の快走もあって最終的に三井住友海上から、およそ3分遅れの2位にとびこんだ。第1区からつねに上位をキープした戦いぶりからみて、チーム力は確実に上昇している。高橋教子、加納由理、佐藤由美など若い新勢力の台頭がみられ、さらにあのワンジロが加わればかなり強力な布陣ができあがる。l今年は全日本でもかなり期待できそうである。 高橋尚子を欠く積水化学は4位に終わった。岐阜の本戦では出場予定だというが、積水が優勝するにはもう一枚駒が足りないだろう。
関西、中国、中部、北陸の予選をかねる淡路島駅伝では野口みずきのグローバリーが初出場で初優勝を果たした。関西からは優勝したグローバリー、2位のワコール、日本生命、ノーリツ。中部からは東海銀行、スズキ、デンソー、小島プレス、中国からはデオデオ、天満屋、北陸は北國銀行がそれぞれ代表の座を獲得した。サニックス、沖電気宮崎、九電工、ラララ、十八銀行の九州代表を含めて29チームが岐阜で覇を競うことになるが、果たして三井住友海上の足もとを掬うチームはあるだろうか。 現状では三井住友が一枚抜けた存在、二位以下は大混戦だろう。候補としては日立にいたエスタ・ワンジロが加わる資生堂、高橋尚子と上野理恵が帰ってくる積水化学、岡本治子と川上優子をもつ沖電気宮崎などがあげられる。本来ならば東海銀行も当然候補にをあげるべきだが、川島姉妹といい、大南姉妹といい、最近は低迷状態を脱しきれていないので、今年はかなり苦しいとみる。 ほかではデオデオ、ノーリツ、天満屋、スズキなども実績があるだけに軽視できないが、今年はそれよりむしろグローバリー、ワコールなど激戦の淡路駅伝で上位を占めた上り調子のチームに注目すべきかもしれない。 東海銀行、沖電気宮崎という一時代をきずいた勢力(旧勢力)、昨年の覇者・三井住友海上(現王者)に、グローバリー、ワコールというニューフェース(新興勢力)が絡んで、いったいどのような戦いの構図が展開されるのか。旧勢力の返り咲きがあるのか、現王者の防衛が成功するのか。新興勢力が一角をくずせるのか。とくに今年は見どころいっぱいの大会になりそうである。 ☆三井住友海上(山本波瑠子、清水 由香、渋井 陽子、市河麻由美、土佐 礼子、坂下奈穂美)
区 間 最 高
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