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男子第52回・女子第13回 全国高校駅伝

悔しさをバネにして、大輪を咲かせた!
男子は仙台育英、女子は諫早が都大路を制す


意外や意外! 第1区で大波乱!
男女ともに優勝候補が早くも圏外に去る

 京都の空はよく晴れ渡り、ほとんど無風状態……。毎年、この季節になると、国立国際会館のある宝ヶ池界隈は小雪が舞うことが多いのだが、今年はめずらしく濃い陽ざしがにめぐまれていた。そんな穏やかな天候とは裏腹に、レースのほうは幕開けから、思いがけない波乱が待ち受けていた。
 駅伝は走ってみなければわからない……。
 「あたりまえ」で陳腐なことこのうえもない警句が、スタートの第1区でぼくたち観戦者を力ずくでねじ伏せてしまったのである。
 立命館宇治の池田恵美といえば高校長距離界を代表する選手である。インターハイ1500Mで4分16秒74の高校新記録、3000Mではワボイの2位に甘んじたが、国体の3000Mでは9分03秒45の自己新記録で優勝している。日本人ランナーでケニア人留学生ワボイに対抗できるのは彼女ぐらいしかいない。
 連覇を狙う立命館宇治のエースとして、池田は昨年につづいて1区に起用された。だが、区間の中盤あたりから、早くも苦しげにあえぎはじめるとは思いもよらなかった。
 西京極競技場をとびだしたところで立命館宇治の池田と青森山田のワボイが集団をひっぱり始めたのは予想どおりだったが、2キロすぎでワボイがペースをあげたとき、池田はもう追ってゆけなかった。このときの反応の鈍さに、おやっ……と思ったが、4キロあたりから集団にのみこまれてしまったとき、もはや彼女になんらかの異変が起きていることが明らかになった。
 体調不安の予感はスタート時の表情にあらわれていた。スタートラインに立った池田はなぜか集中力がなかった。ときおり眼をふせて、まるで放心したかのような視線を足もとに落とす。不安げな表情がしつこく顔から消えなかったのである。
 4キロすぎではワボイの独走となり、池田は集団からもじりじりと遅れはじめる。苦しげに上半身をゆする姿、心なしか歯ぎしりするさまをみる思いだった。
 池田は50秒差の20位……。立命館宇治の連覇はこの瞬間に絶望となった。秒差以上にエースの遅れがチーム全体に暗い影を投げかけたにちがいないのである。
 最有力とみられていた立命館宇治、さらに須磨学園が第1区でつまずいたことにより、優勝争いは諫早、筑紫女学園、神村学園の九州勢を軸にしてくりひろげられていった。


男子は仙台育英が1区から独走
S.カビルが対抗勢力をすべて競りつぶした

 真っ赤なユニフォーム、ぜっけん番号40番……。まったく腕が振れていない。上体がぶれ、顔がゆがんでいる。何人ものランナーが追いすがり、信じられないという顔で一瞥して抜き去ってゆく。第1区の中間点にも達していないのに、大牟田の土橋啓太は46番目であえいでいた。
 険しい眉間にうっすらとにじむ汗。まるで身もだえするかのように 時おり太股をたたく。きっと思わぬ陥穽に愕然としながら、激しい悔恨に苛まれていたのだろう。
 女子の立命館宇治以上に優勝が堅いと思われた男子の大牟田も、また奇しくも第1区で圏外に去った。カビル(仙台育英)に弾き飛ばされたのである。大牟田の土橋啓太も埼玉栄の佐藤拓也もトップクラスのランナーなのだが、勇敢にもカビルに競りかけて、あえなく玉砕してしまった。
 土橋と佐藤は果敢にスタートからカビルに競りかけていった。1K=2分37秒というハイペースでゆくカビルを追ったのはいいのだが、力がはいりすぎていた。自分のリズムを失ってしまったのである。土橋は4キロ手前で急速に失速した。1分ぐらいの遅れならともかく、最終的には3分52秒の遅れてしまうのだから、これはハンパではない。
 埼玉栄の佐藤も粘っていたが、後半になって失速、最終的には1分52秒差の19位に沈んでしまった。二人ともカビルに競りつぶされたのである。
 大牟田と仙台育英のマッチレースというのが大方のみるところだったが、両雄の一角・大牟田が第1区で失地挽回ができないほど致命的なダメージを受けてしまった。京都洛南も第1区でなんと42位というありさま、九州学院も豊川工業、西脇工業も追ってこない。
 有力校が低迷するなかで、カビルのつくった54秒の貯金が大きくモノをいうことになる。昨年はわずか1秒差に泣いた仙台育英だが、今年は2区以降は独走態勢でゴールまでタスキを運んでいった。その路線をしっかり敷いたのが、大牟田を競りつぶした第1区カビルの爆走だったのである。


充実した戦力で千載一遇のチャンスを活かす
諫早がダークホースぶりを発揮

 女子では立命館宇治が圏外に去ったあと2区、3区は神村学園、仙台育英、諫早、筑紫女学園の主導権争いになった。勝負の流れがどのように傾くのか。固唾をのんでみまもる大混戦の血路をひらいたのが、諫早の牧島さおりだった。タスキをつなぐ直前で一気に神村学園を抜き去った彼女の力強い走りが、チームに活力をそそぎこんだ。ここでトップに立った諫早は4区で加来美咲、5区では松元美香が区間賞の快走ぶりをみせてゴールにとびこんだのである。そういう意味で3区の牧島の走りが諫早優勝のポイントになったということができる。
 昨年のメンバー5人がそっくり残り、有力な新勢力が台頭するなど、諫早はここにきて戦力が充実してきていた。そういう層の厚さが本戦で活きて、3年連続3位の汚名を濯いだのである。藤永佳子のいた時代は優勝候補の筆頭にあげられながら、いつもいま一歩およばなかった。ところが今年は藤永のように絶対のエースがいないのに、あっさり勝ってしまう。そのあたりも駅伝のおもしろさだろう。
 筑紫女学園は1区で10位ながら2区から追いあげて、4区1年生の浦田佳小里がトップに10秒差まで追いすがった。きっちりと2位まで追ってきたあたりは伝統の強さというものだろう。
 神村学園は力がありながら毎年、第1区でつまずいて失敗している。今年は第1区で3位につけ2区片渕綾子の区間賞で、ひとたびはトップに立った。終始優勝をうかがうポジションをキープしての最終3位は大健闘である。
 須磨学園はいまひとつ伸びを欠いた。筑紫女学園、立命館宇治、諫早とならんで須磨学園は4強に数えられる強豪である。筑紫、宇治はすでに優勝経験がある。順番からすれば、今年は須磨学園が諫早のどちらか……という見方もあった。優勝するに十分の戦力がありながら、今年も4位に甘んじてしまったのは、やはりエースの田顔朋美を欠いたショックが尾を引いていたせいだろうと思う。
 立命館宇治は3区金指亜由美の快走で一気に6位まであがったきたが、最終的には8位にとどまった。駅伝はタスキをもらう環境や条件が、各ランナーの心理をも微妙に支配してしまう。今年の立命館宇治は総じて池田ショックから立ちあがれなかったようである。
 それにしても……。立命館宇治はつねにエースが故障している。今年の池田も体調を崩していたようである。近年まずまずの状態でレースに臨めたのは、初優勝した昨年だけである。なんども優勝候補にあげられながら、たった1回しか勝てていないのは、エースがいつも故障しているからである。今年も池田が万全なら、連覇はそれほど困難ではなかったはずである。諫早に名をなさしめたのは、はっきりいえば宇治が自滅したからである。かくも同じ失敗を繰り返すのは、監督・コーチ陣の指導体制に問題があるからである。


いちだんとスピード化が進み
高校駅伝も過酷な大激戦時代に突入

 仙台育英にあれほどやすやすと優勝をさせた責任は大牟田のていたらくにある。大牟田はなぜ第1区に大津聖をもってこなかったのか。正攻法でレースにのぞむなら、やはり第1区にはチームのなかで最も信頼のあるエースを配するべきである。
 今年の大牟田は相手を甘く見たのか。うがったみかたをすれば奇策におぼれたという側面もある。監督・コーチ陣の戦略上の失敗が土橋啓太のブレーキにつながったというみかたもできる。奇策は当たれば、「思いきった作戦……」などと、賞賛をあびる。だが、失敗すれば、これほど激しい悔恨に苛まれることはない。
 大牟田は2区を終わった時点でもトップ仙台育英とは4分4秒差の43位、まさに地獄の底に落ちた名門校を救ったのが、皮肉にも第1区から第3区にまわったエースの大津聖だった。大津は気迫の走りで17人抜きの区間賞、チームを28位まで押しあげた。4区の中村和哉も9人抜き、5区の近藤隆太は4人抜き、6区の黒木文太、7区の村上孝一も区間賞を獲得するな快走ぶりで、最終的に順位を7位まで順位を押しあげてきた。全コース7区のうち3区間で区間賞を獲得して、「さすがは大牟田」と思わせたが、肝心要の勝負に敗れてはどうしょうもないのである。
 第1区で早くも仙台育英の独走態勢ができあがって、レースに対する興味は半減してしまったが、観戦者をして最後までテレビの前から立たせなかったのは九州学院の追撃である。3区を終わったとき、トップをゆく仙台育英との差は1分17秒、ところが4区では47秒、5区では42秒まで詰め、6区からアンカーにタスキが渡ったときには30秒差まで迫っていた。最後は15秒差までくるのがやっとだったが、あきらめずに前をみつめてひた走る姿勢に好感がもてた。
 ほかではエースの熊本剛を欠きながらも3位まで追ってきた西脇工業、予選タイム14位ながら4位にとびこんだ田村、6位の諫早も予選タイム20位だったから、大健闘というべきだろう。諫早は多分に優勝した女子の勢いをもらった観がある。
 高校駅伝もスピード化がすすみ、全体のレベルが底上げされている。男子でみると出場47チームのうち37チームが2時間10分を切った。ほんの些細なミスでも致命的になる。優勝候補といわれるチームでもコンディション作りに失敗したり、作戦上のミスがあれば、下位に沈んでのたうつことになる。21世紀になって高校駅伝も過酷な大激戦時代に突入した。

☆2001年12月23日 京都市西京極陸上競技場発着 男子・マラソンコース 女子・ハーフマラソンコース
☆諫早(大渡泰子、福田千尋、牧島さおり、加来美咲、松元美香)
☆仙台育英(S.カビル、内海優作、清野純一、村上歩、佐藤影洋、山田勇樹、佐藤和也)


女子 最 終 成 績
<順位 チーム名 記  録
諫 早(長崎) 1時間08分10秒
筑紫女学園(福岡) 1時間08分35秒
神村学園(鹿児島) 1時間08分43秒
須磨学園(兵庫) 1時間08分54秒
市立船橋(千葉) 1時間09分42秒
仙台育英(宮城) 1時間09分46秒
埼 玉 栄(埼玉) 1時間09分49秒
立命館宇治(京都) 1時間09分51秒
田  村(福島) 1時間10分18秒
10 白 鵬 女(神奈川) 1時間10分20秒
11 興 譲 館(岡山) 1時間10分23秒
12 中京大中京(愛知) 1時間10分40秒
13 熊本千原台(熊本) 1時間10分53秒
14 由良育英(鳥取) 1時間11分14秒
15 順  天(東京) 1時間11分17秒
16 山形城北女(山形) 1時間11分19秒
17 県立和歌山商(和歌山) 1時間11分20秒
18 青森山田(青森) 1時間11分32秒
19 大分女(大分) 1時間11分36秒
20 小  林(宮崎) 1時間11分39秒
21 西  京(山口) 1時間11分43秒
22 水 口 東(滋賀) 1時間11分47秒
23 如 水 館(広島) 1時間11分52秒
24 那須拓陽(栃木) 1時間11分59秒
25 富 山 商(富山) 1時間12分15秒
26 常  磐(群馬) 1時間12分17秒
27 英  明(香川) 1時間13分00秒
28 山  田(高知) 1時間13分17秒
29 四條畷学園(大阪) 1時間13分19秒
30 茨城キリスト(茨城) 1時間13分41秒
31 宇治山田商(三重) 1時間13分42秒
32 富 岡 東(徳島) 1時間14分09秒
33 新潟第一(新潟) 1時間14分12秒
34 室蘭大谷(北海道) 1時間14分16秒
35 中 津 商(岐阜) 1時間14分24秒
36 出 雲 商(島根) 1時間14分29秒
37 松 山 商(愛媛) 1時間14分37秒
38 添  上(奈良) 1時間14分38秒
39 鹿 島 実(佐賀) 1時間14分55秒
40 美  方(福井) 1時間15分29秒
41 遊 学 館(石川) 1時間15分45秒
42 浜 北 西(静岡) 1時間15分52秒
43 花 巻 東(岩手) 1時間17分07秒
44 名  護(沖縄) 1時間17分30秒
45 山梨学院大附(山梨) 1時間17分48秒
46 松商学園(長野) 1時間18分50秒
47 鷹  巣(秋田) 1時間21分26秒


区 間 最 高
区間 距離 選手名 所属 タイム
06.0 L・ワゴイ 青森山田  19:29
4.0975 片渕 綾子 神村学園  13:08
03.0 金指亜由美 立命館宇治  09:40
03.0 加來 美咲 諫 早  09:20
05.0 松元 美香 諫 早  15:57



男子 最 終 成 績
<順位 チーム名 記  録
仙台育英(宮城) 2時間03分46秒
九州学院(熊本) 2時間04分01秒
西 脇 工(兵庫) 2時間04分57秒
田  村(福島) 2時間05分03秒
佐久長聖(長野) 2時間05分14秒
諫  早(長崎) 2時間05分36秒
大 牟 田(福岡) 2時間06分07秒
豊 川 工(愛知) 2時間06分10秒
東京農大二(群馬) 2時間06分16秒
10 藤沢翔陵(神奈川) 2時間06分20秒
11 一関学院(岩手) 2時間06分33秒
12 土 岐 商(岐阜) 2時間06分45秒
13 埼 玉 栄(埼玉) 2時間06分49秒
14 由良育英(鳥取) 2時間06分50秒
15 倉  敷(岡山) 2時間07分14秒
16 市立船橋(千葉) 2時間07分26秒
17 山梨学院大附(山梨) 2時間07分51秒
18 秋 田 工(秋田) 2時間07分54秒
19 小  林(宮崎) 2時間07分55秒
20 洛  南(京都) 2時間08分06秒
21 鹿児島実(鹿児島) 2時間08分15秒
22 富 山 商(富山) 2時間08分20秒
23 大 田 原(栃木) 2時間08分24秒
24 稲  生(三重) 2時間08分30秒
25 青森山田(青森) 2時間08分32秒
26 國學院久我山(東京) 2時間08分49秒
27 西  京(山口) 2時間08分52秒
28 清  風(大阪) 2時間09分02秒
29 鳥 栖 工(佐賀) 2時間09分13秒
30 今 治 北(愛媛) 2時間09分25秒
31 美 馬 商(徳島) 2時間09分29秒
32 智辯学園(奈良) 2時間09分33秒
33 出 雲 工(島根) 2時間09分35秒
34 高 知 工(高知) 2時間09分39秒
35 藤枝明誠(静岡) 2時間09分40秒
36 如 水 館(広島) 2時間09分42秒
37 大分東明(大分) 2時間09分50秒
38 中  越(新潟) 2時間10分05秒
39 尽誠学園(香川) 2時間10分32秒
40 東海大山形(山形) 2時間11分04秒
41 恵 庭 南(北海道) 2時間11分20秒
42 水 口 東(滋賀) 2時間11分29秒
43 尾 山 台(石川) 2時間11分58秒
44 美  方(福井) 2時間12分55秒
45 和歌山北(和歌山) 2時間14分08秒
46 水  城(茨城) 2時間15分34秒
47 沖 縄 工(沖縄) 2時間20分07秒


区 間 最 高
区間 距離 選手名 所属 タイム
10.0 S・カビル 仙台育英  28:27
03.0 上野裕一郎 佐久長聖  08:16
8.1075 一井 裕介
大津  聖
九州学院
大牟田
 24:00
8.0875 山口 祐也
小陣 良太
諫 早
九州学院
 23:40
03.0 北村  聡 西脇工  08:42
05.0 黒木 文太 大牟田  14:35
05.0 村上 孝一 大牟田  14:06



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