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勝負が決したのは残り200Mの攻防であった。昨年につづいてトラック勝負にもつれこんだ男子は、連覇をねらう仙台育英と大牟田が息づまるような熱闘をくりひろげた。マッチレースの様相で、4区から3区間にわたって秒差のせめぎあいをつづけ、アンカーにタスキがわたった段階で、その差はわずか5秒であった。 仙台育英は昨年と同じように各ランナーともに驚異的な粘りを発揮した。追いつかれても抜かせないという二枚腰、三枚腰の強かさで、最後の最後までトップを死守しつづけた。残酷にも勝負はアンカーの一年生対決にゆだねられた。実力的には互角の両者、明暗を分けたのはひとえに「逃げる者」と「追う者」との精神的なプレッシャーだったのではあるまいか。 ゴール前の200Mで一気にスパートした大牟田の土橋啓太、仙台育英の清野純一にはもう追いすがる走力は残っていなかった。大牟田の土橋はゴールの瞬間、まるで8年間の鬱憤をぶっとばすかのように拳を天空に突きあげた。最後まで相手に肉薄しながらいま一歩およばなかった仙台育英の清野はゴールするなり顔を覆って泣きじゃくった。49.195キロのうち最後の200Mまでレースを支配しながら、一瞬にして天国から地獄に堕ちたメンバー7人の悔しさを見る思いがした。 毎年のように優勝候補の筆頭にあげられながら、8年も勝てなかった大牟田が20世紀の最後でやっと念願を果たした。 女子も京都の立命館宇治が初制覇を果たした。高校女子の駅伝ははじまってから12年連続で出場、毎年のように優勝候補にあげられながら、いつもエースの故障に泣いてきた。大牟田と同じように本番に弱かった宇治がやっと勝ったのである。 「阪田とともにこの場に立てるのが最高の喜びだ」と目を潤ませ、しみじみと喜びをかみしめていた荻野由信監督の姿をみると、なんとも微笑ましくなってしまった。 大牟田、立命館宇治ともに苦杯をなめつづけてきただけに、両校にとって今回の制覇はまさに「悲願の」優勝というにふさわしい。
女子は予選タイムでトップの諫早、昨年2位の須磨学園、地元の立命館宇治が3強にあげられていた。3強の第1区における位置どりが勝敗の分かれ目になったようである。好スタートをきったのは立命館宇治だった。宇治の2枚看板のひとり、池田恵美が落ち着いたレース運びで終始主導権をにぎっていた。最後はワゴイ(青森山田)、ワンジル(仙台育英)という留学生に先にゆかれたが、トップから7秒差の3位、ライバルの諫早に9秒、須磨学園には24秒もの大差をつけてしまった。 宇治は2区でも北野有紀が快走した。昨年と同じようにダイナミックな走法でぶっとばし、タスキをもらって1キロで仙台育英、青森山田をとらえ、中継点では諫早に20秒、最大のライバル須磨学園には35秒と差をひろげてしまう。この時点での35秒という貯金が最終的にモノをいうかたちになったみる。3区、4区では須磨学園に追われたが、アンカーの阪田直子にタスキがわたるとき、まだ18秒、つまり100M近いリードを保持していた。故障あがりで不安を抱える阪田が余裕を持ってスタートできたことが、区間1位の快走につながったとみる。 初制覇の立役者をあげれば勝利の流れを呼び込んだ2区の北野有紀だろうが、もうひとり隠れたヒローインを探すと、4区の石橋美幸である。3区、4区は宇治のウイークポイントといわれ、3千の持ちタイムも補欠の1年生より悪い。だが、さすがに3年生、区間2位というのは大健闘である。須磨・千本翔子の追撃を断ち切った快走はいぶし銀のように光っている。
2年連続で2位の須磨学園は1区・藤岡里奈の出遅れがやはり大きかった。エースだけにトップから31秒遅れの8位というのは大誤算だったろう。立命館宇治の池田朋美の積極的な走りにくらべ、今回の藤岡は走りにキレがなく、いかにも精彩を欠いていた。もし最後まで競り合うかたちになっていたら、アンカーに田顔朋美を配した作戦があるいは生きていたかもしれない。 3年連続3位の諫早は終始20秒以内にくらいつき、宇治を射程距離におさめていた。最後に力負けしたのは絶対的なエースがいなかったせいだろう。 昨年優勝の筑紫学園は1区でなんと1分11秒遅れの22位と出遅れた。それでも最終的に7位まで浮上してきたのはさすがというべきか。大健闘は中京大中京であえる。初出場ながら第1区から10位以内につけ、最終的に6位入賞を果たした。 今年はまれにみる混戦模様といわれていたが、フタをあけてみると、昨年のようにトラック勝負にもならなかった。結果的に立命館宇治が2区からいちどもトップをゆずらなかったが、3強による見えないところでの駆け引き熾烈をきわめ、それはそれで見応えがあった。
5年連続で予選ランキングトップの大牟田が今年こそ悲願の制覇を果たすか。ケニアからの留学生カビルのスピードを活かして、仙台育英が昨年と同じように逃げ切るか。そのほか予選タイムからみて小林、佐久長聖、埼玉栄などがどのように絡んでくるか。覇権争いはそのあたりに絞られていた。 結果的に3区から大牟田、仙台育英のマッチレースになったが、それぞれに持ち味を活かした闘いで最後まで予断を許さない好レースとなった。 1区は予想どうりに仙台育英のカビルが飛び出した。3位の大牟田に54秒もの差をつけて断然のトップ、2区が終わった段階でも4位の大牟田には52秒もの大差をつけていた。流れは仙台育英かと思われたが、アップダウンの激しい3区が勝負のポイントになった。ここで大牟田は谷合紘季が一気に10秒差の2位まで肉薄してきている。大牟田にしてみれば起死回生、仙台育英にしてみればこの区に配した村上歩が大きな誤算だった。
仙台育英はそれでも粘り強かった。昨年、西脇工と競り合ったのと同じように、大牟田を引きつけては離し、また引きつけては離す。やすやすとは先にゆかせない。あの西脇工はまんまとその術中に落ちて敗れ去った。今年の大牟田も3区で追いついたものの最後まで仙台育英の得意の戦術にほんろうされていた。3区から最終7区までの息づまるようなせめぎあいがいちばんの見どころであった。 勝負はどちらに転んでも不思議はない様相だったが、最後は勝利に対する執念の差が出たというべきだろう。大牟田は区間賞はひとつもとれなかったが、それぞれが堅実に走って勝機ををつかんだ。チームワークの勝利ということができる。 仙台育英も3区をのぞいて、全員がほぼ実力どおりの走りをみせていた。得意のカタチに持ち込んでいただけに悔しさがつのるだろう。両校の対決は来年もあるだろうから、その悔しさをエネルギーにして、こんどは大牟田の連覇に待ったをかけてほしい。 男子で健闘したのは3位にきた鹿児島実、4区から終始3位を追走、安定した力を見せつけた。意外だったのは3位候補でもあった西脇工である。1区で約2分遅れの20位と大きく出遅れて早くもこの時点で圏外に去った。埼玉栄も前半は1区の佐藤拓也の快走で2位〜3位をキープしていたが、最終的に9位に沈んだ。前半重視のオーダーだったにせよ、ちょっと後半の崩れが大きすぎる。
個人的に注目したのは、帰ってきた阪田直子である。立命館宇治の勝利は1年間を耐えぬいた阪田の執念が実ったとみる。昨年はケガで出場も出来なかった。今年も順調ではなかった。またしても昨年の股関節痛が再発、予選は欠場している。その悔しさ本番で生きたのだろう。走っている阪田の表情はいかにも清々しかった。 走っているときの阪田はつねにポーカーフェース、落ち着いた表情でたんたんとピッチをきざんでゆく。力強いフォーム、まるで歴戦の強者のような風貌になる。だが、レースを終えると、たちまちどこにでもいるふつうの高校生の顔つきになる。そのギャップこそが大物の証だろう。宇治の出身者といえば、千葉真子の例があるから心配だが、なんとか大きく育ってほしいものである。 20世紀を締めくくる最後の駅伝は奇しくもイブの12月24日に行われ、男女ともに見応えのある好レース、駅伝ファンには贅沢なクリスマスプレゼントとなった。 ☆大牟田(大津聖、鐘ヶ江善行、谷合紘季、中村和哉、木村政光、本田智之、土橋啓太) ☆立命館宇治(池田恵美、北野有紀、金指亜由美、石橋美幸、阪田直子) ☆気象 女子=晴れ 気温13・88度 東の風0・5メートル 男子=晴れ 気温12・5度 北北東の風0・8メートル
女子・総合成績
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