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国際千葉駅伝 前回(1999) 前々回(1998) ■プロローグ ■出雲大学駅伝 ■箱根駅伝予選会 ■東日本縦断駅伝 ■全日本大学駅伝 ■東日本実業団女子 ■東日本女子駅伝 ■全日本大学女子駅伝 ■全日本実業団女子 ■全国高校駅伝 ■全日本実業団駅伝 ■箱根駅伝 ■都道府県女子駅伝 ■都道府県男子駅伝 ■横浜国際女子駅伝 ■エピローグ
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第12回を数える国際千葉駅伝は11月23日、千葉県総合運動場陸上競技場を発着点とする42.195キロのコース(男子は5区間、女子は6区間)で行われ、男子は18カ国19チーム、女子は15カ国16チームが参加、日本は男女とも1区からの首位を突っ走って3年連続のアベック優勝を果たした。 最近の駅伝は第1区の出来いかんが勝敗を左右するケースが多い。今回は奇しくもそういうスピード駅伝の潮流を象徴するレースになったといえる。 優勝した日本は男女ともに第1区のランナーがタイム差以上の強さで他チームを圧倒した。そして2区以降のランナーは、いちども首位を明け渡すこともなく、すいすいと逃げきってしまった。好スタートをきった1区のランナーのリズムまでもが、そっくりタスキとともに最後まで引き継がれていった感がある。たとえば女子は6区間のうち4区をのぞく5区間で区間第1位、男子は5区間のうちスタートの第1区と最終区の5区で区間第1位、他の3区間も第2位を占めている。2区以降のランナーは完全に1区の勢いに乗って、持てる実力をいかんなく発揮したのである。 良いかたちで先手をとったチームの強さをまざまざと見せつけられたレースだが、それは日本チームがそれだけ駅伝というものの戦いかたに通じているせいもある。
9連覇をめざす日本女子にとって、強敵はケニア、エチオピアのアフリカ勢、さらには顔ぶれからみてロシア、ルーマニアなどもがあなどれない存在になるだろうといわれていた。 1〜2区に駅伝というものを知りぬいている永山育美、小崎まりという歴戦の強者を配し、3区には岡本治子、4〜5区には新鋭の楠真美、福士加代子を投入、そして最後は日本のエース・田中めぐみでしめくくる。3〜4区に若干の不安があるものの2重、3重にリカバリーが効く盤石の布陣である。 日本は予定どおり1区の永山育美と2区の小崎まりで44秒のリードを奪ってしまい、それが最終的に大きくモノをいう結果になった。日本を追っていたのはエチオピアだった。3区から5区まではほぼ互角の形勢、最終区の田中めぐみにタスキがわたったときには35秒差だった。中盤はむしろエチオピアのほうが上回っている。逆にいうなら、3〜5区の岡本、楠、福士が2人のつくった流れに乗って粘ったから、アンカーの田中めぐみを気分的に楽にさせたというみかたもできる。そういう意味からも、1区、2区での44秒の貯金が日本の勝利を決めたといえる。 2位のエチオピアは1区で21秒差の4位と出遅れ、2区で2位まで押しあげてきたが、日本との差は44秒とひろがってしまい、追撃の流れがつくれなかったのが最大の敗因だったろう。もし2区で日本と互角に粘っていたら、中盤は好走しただけに、最終区ではきわどい勝負になっていたかもしれない。 3位のケニアも力のある選手がそろっていたが、勝負どころで「若さ」が出てしまったようである。 候補といわれたロシアは最後まで下位でもがいていた。その原因は1区のつまずきである。あのギスタグロアの大ブレーキ、最終的に9位までくるのがやっとというありさまであった、それにしても千葉選抜にまで負けてしまったのはちょっと意外、このあたりが駅伝の怖さというものだろうか。
女子の場合、いちばんの見どころをあげれば、やはり第1区だったろう。各チームともエース級の選手をぶつけてきたが、集団の指導権を支配していたのは永山育美だった。上下動のない走法はリズミカルで、実に小気味よかった。冷静に周囲をうかがうように走り、7・4キロ付近でいちど仕掛け、集団をバラして、相手をケニア、エチオピア、千葉選抜にしぼってしまう。そして8・7キロ付近でスパート最後は追いすがるケニアを突き放した。勝負どころを知りぬいた老獪なレースぶりはみごとというほかない。 2区の小崎まりの積極的な走りも光った。腕の振りでストライドをのばす走法は迫力満点だった。3年連続の区間第1位の走り、高橋健一は「ミスター・千葉駅伝」と呼ばれるのになぞらえて、彼女を「ミス・千葉駅伝」と呼ぶことにしよう。 3区の岡本治子が区間第1位と快走したのも、同僚の小崎から勢いをもらったからだろう。このように考えると永山にひとしく小崎も9連覇の原動力になったといえる。 今大会は高橋尚子の出場がメダマになっていたが、故障が癒えずに直前になって回避した。金メダリストの走りが見られなかったのは心残りだったが、駅伝レースならば高橋の代わりが務まる選手はいくらでもいる。それほど現在の女子長距離陣は選手層が分厚いのである。
男子も第1区が大きなポイントになった。日本のライバルとしては昨年最後まで優勝を争った南アフリカを筆頭に、ケニア、オーストラリアが候補にあげられたが、1、2区の戦いぶりと位置どりが最終的な決め手になった。 最終的に日本を追ってきたのは今年も南アフリカだったが、1区で36秒差をつけたのが大きくモノをいう結果になった。2〜4区においても、その差は詰まらなかった。南アフリカの敗因はそこにある。最後のタスキ渡しで44秒もの貯金があれば、駅伝巧者の日本選手なら負けるわけはないのである。 レースが終わってみれば、2位南ア、3位オーストラリア、4位ケニアと4強が上位を占めているが、内容的には日本の圧勝であった。ケニアは1区で7秒差と食いついていたが2区で失速して圏外に去った。オリンピック選手をそろえてきたというオーストラリアは2区で15秒差まで追いあげてきたが、3区で失速してしまっている。いずれも相手が見える位置まで迫りながら、結果的には競り負けてしまった。駅伝のペースというものが理解できていないようである。
男子の見どころもやはり第1区であった。先の出雲駅伝、全日本大学駅伝でともに区間新の快走をみせた永田宏一郎が出場、世界を相手に圧巻の走りを見せてくれた。学生ナンバーワンというよりも10000Mなら、今やシドニーで入賞した高岡よりも強いかもしれない永田の走りには早くも日本のエースらしい風格すら感じられた。 終始先頭をキープして、3キロ付近で積極的に飛び出して集団をばらした。5キロは13分58秒のハイペース、ケニア、南アフリカの2カ国に相手をしぼりこんだ。7キロでは揺さぶりをかけて、南アを競り落とした。そして残り500Mでスパーとしてケニアを振り切った。 最後まで自分がレースの主導権を握って、思い通りの結果を出したところに価値があると思う。27分40秒というタイムは、10月の日本選手権でマークした自己記録(28分03秒)を大きく上回っている。何よりも自分で仕掛けてゆく積極的な走りは魅力十分、久しぶりに日本人離れしたランナーを見る思いだった。 3年連続でアンカーをつとめた高橋健一の冷静沈着な走りもみごとであった。44秒の貯金をゴールでは、さらに1分も上積みして、着実にタスキを着実にゴールまで運んだ。昨年につづいて区間賞を獲得、いかにもミスター・千葉駅伝らしい走りであった。
最近の本大会は将来性のあるランナーの顔見せレースという側面もあるようだ。たとえば一昨年、アンカーとしてテープをきった山口衛里は昨年の東京国際女子マラソンで優勝、シドニー代表になった。昨年の大会で1区のエース区間に出場した土佐礼子は、今年の東京国際女子マラソンで圧勝している。土佐は当時まだそれほど知られていなかったが、この一年で大きく成長、まちがいなく来年の世界選手権の代表に選出されるだろう。 今回の好走組では、永山育美、小崎まり、男子では世界選手権代表をねらう永田宏一郎に大化けの素質があるとみた。永山、小崎はマラソンを視野においているというが、第2の高橋尚子をめざしてほしいものである。 社会人1年生の18歳でジャパンに選ばれた5区の福士加代子の区間賞も特筆ものである。積極性に加えて、明るくてものおじしない性格、大器の片鱗がのぞいている。最後に千葉選抜の1区に起用された吉田香織の快走ぶりも記録にとどめておこう。社会人1年生の19歳ながら、ナショナルチームの永山、ケニアのデンソーを向こうに回して最後まで食らいついた。最終的には区間3位となったが、トップからわずか12秒差、大健闘というべきだろう。有望な金の卵の出現で、12月10日の全日本実業団女子駅伝の楽しみが、またひとつ増えた。 ☆日本チーム男子 永田宏一郎、岩佐敏弘、手塚利明、池谷寛之、高橋健一 ☆日本チーム女子 永山育美、小崎まり、岡本治子、楠真美、福士加代子、田中めぐみ
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