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今年で20回をかぞえる全日本実業団女子駅伝は、文字通り女子駅伝の日本一を競う大会である。今年も全国の地区代表31チームのランナーたちが師走の美濃路に終結した。高橋尚子は直前になって出場回避したが、シドニー組の川上優子、高橋千恵美、弘山晴美、田中めぐみ、志水見千子、山口衛里、ワンジロ……、日本女子長距離界のトップクラスがほとんど出場、豪華な顔ぶれとなった。 20年まえといえば1981年である。ちょうどそのころ、佐々木七重や増田明美が出場したあのロサンゼルス五輪の正式種目に女子マラソンが決まり、女子長距離の強化・育成に女子駅伝がつくられたのである。 伊勢路でひらかれた第1回大会のころは実業団チームもなかった。地区ブロック対抗でおこなわれ、出場チームもわずか4チームであった。わずか16.3キロの距離を4区間にわけていたから、現在でいうなら中学生のレースにひとしい。当時はマラソンランナーはもちろん世界に通用する長距離ランナーなどほとんどいなかったのである。 それからわずか20年……。シドニーオリンピックで高橋尚子が日本女子としてマラソンで初の金メダルを獲得、いまや女子マラソンに関しては世界のトップクラスにある。高橋尚子は駅伝出身のランナーであり、岐阜の全日本女子を頂点とする駅伝が日本の女子長距離を世界のトップにまで成長させたということができる。 女子駅伝のビッグ・レースであり、20回という記念すべき大会であるだけに、それにふさわしい仕掛けが何かあってもよさそうなものだが、陸連も毎日新聞もTBSも素知らぬ顔をしているのは、いったい、どういうことなのだろうか。毎日新聞のホームページに特集ぐらいあってもいいと思うのだが、いかがなものだろうか。
今年の焦点はずばり王者の交代……。歴史をふりかえると、本大会は3期にわけて考えることができる。第8回大会までは京セラ時代、15回大会まではワコール、リクルートの時代、そして最近の4年間は沖電気宮崎、東海銀行時代である。 昨年、アンカーの逆転勝利で3度目の制覇を果たした沖電気は、今年の地区予選では新鋭のサニックスにまさかの敗戦、一昨年の覇者・東海銀行は淡路を制したものの、主力の故障が十分に回復していない。両チームとも万全ではない。 主力が不安をかかかえるなかで優勝候補の筆頭に浮上してきたのが三井海上であった。東日本大会を圧倒的な強さで制した三井海上には若さと勢いがある。何よりも2門の大砲が今シーズンは絶好調である。 昨年から台頭してきた渋井陽子はハーフマラソンまでなら、現在いちばん強いかもしれない。土佐礼子は先の東京国際で好タイムで優勝、新しい日本のエースに育ちつつある。かくして優勝争いは「沖電気・東海銀行VS三井海上」、つまり新・旧のせめぎあいという構図になった。積水化学は高橋尚子が出てくれば、一角にからんでくると思われたが、欠場が明らかになった段階で、戦わずして圏外に去った。
岐阜地方は雨、気温8.2度……。今年は寒風ではなく、寒雨のレースとなった。レースは第1区から意外な展開で幕あけた。台風の目ともいうべき三井海上がハナから突っ走った。坂下奈穂美といえば元ワコールに所属して、メンバーのうちでただ一人優勝経験のあるランナーだが、1・3キロ付近で早くも勝負に出た。3キロ=9分40秒という果敢なと飛び出しで、4キロでは早くも独走態勢をきずいてしまった。 最近の駅伝では1区で思いきってハナに立つ選手が少ないだけに、坂下の意表をつく作戦にあの志水見千子でさえも競りつぶされてしまった。あまりのも早い時期のスパートに東海銀行も沖電気も翻弄されてしまったのか。沖電気は12位、東海は13位、ともにトップから40秒も遅れ、早くも優勝圏外に置いてゆかれた。ベテランらしい坂下の勝負観が三井海上初制覇の原動力になったとみていいだろう。 ポイントになる第1区で好発進した三井海上は2区では第一生命にトップを譲ったものの3区渋井陽子が区間1位の走りで2弾発射すると、ゴールまでいちどもトップをゆずらなかった。4区はルーキーの大平美樹、5区の最長区間は土佐礼子と手堅くつなぎ、アンカーにもルーキーの内藤由嘉を使って、やすやすと逃げきってしまった。 渋井、土佐という力のあるエースを中心にベテラン、新人がそれぞれ自分の役割をきちっと果たした。とくに絶好調の渋井は今大会でも勝負どころの3区に登場、追ってくるシドニー組をまったく問題にしない力強い走りで、後続をぶっちぎり、独走初Vを確実なものにした。やや前傾姿勢ぎみに前へ前へと躰をぶつけてゆくような独特の走りは力感あふれていた。 21世紀を目前にして新旧交代、終わってみると新しい王者となった三井海上の強さだけが際立った大会であった。
最近の駅伝は中盤まで混戦のケースが多いが、今大会に関するかぎり、第1区で優勝のゆくえがほとんど見えてしまった。とくに候補の沖電気と東海が1区で大きく遅れてしまっただけに、もっぱらの興味はオリンピック・ランナーの走りと2位以降の順位争いにしぼられてしまった。 2位にきたスズキは大健闘というべきだろう。10位から一気に4位まで押しあげた3区松岡範子の冷静な走り、5区では50秒差の2位まで迫った鄭桂霞の力強い走りが印象的であった。 あさひ銀行の4位も最後まで昨年の覇者・沖電気と競り合っての結果だけに高く評価できるだろう。オリンピック帰りの田中めぐみの華麗な走りが光った。たすきをもらってすぐに資生堂の弘山をわけなく交わし、サニックス、ワコール、第一生命をとらえ、7キロ付近で積水の吉田香織、沖電気の川上優子、スズキの松岡範子にとらえられたが、9キロで突っ放した粘りはさすがであった。 5位にきたデオデオも予選上位の天満屋を上回っただけに健闘の部類にはいる。原動力は5区の小鳥田貴子である。土佐礼子や山口衛里を上回る区間1位の快走で10位から5位まで押しあげて順位をかせいだ。
期待はずれはやはり沖電気と東海銀行であろうか。最終的には3位と6位まであがってきて帳尻を合わせたが、優勝にはいちども絡んでこなかっただけに物足りなさが残るのである。ともに1区の出遅れがすべてだったというべきか。とくに東海銀行は2区を終わっても15位という下位に低迷、ここで1分もハンディがあってはどうしようもない。 沖電気も1、2区で流れにのりそこなったのか、3区の川上優子も5区の岡本幸子もいまひとつキレがなかったようでである。 東日本の予選で2位に入った松下通信も第1区で19位と大きく出遅れたのがひびいたのだろう。九州地区予選で沖電気を破ったサニックスともどもいまひとつ精彩がなかった。 毎年のように注目される積水化学は最終的に7位に終わった。このチームは力はあるが何かひとつ足りないという印象は今年も変わらない。2区は短い区間だが、那須川瑞恵が14位から7位まで順位をあげ、3区の吉田香織、4区の渡辺芳子という若手ががんばって4区を終わった時点でトップと35秒差の2位まで上がってきた。ところが5区の小出正子がブレーキで水を差し、一気に7位まで順位を落としてしまった。結果的に今年もコマが一枚不足していたのである。 もし高橋尚子が出場していたらどうだったか。それでもきっと現在の土佐礼子には勝てなかっただろう。そういう意味で出場を回避した高橋の選択は正解だった。
優勝した三井海上のメンバーにルーキーが2人も含まれているように、今大会はルーキーの健闘が目立った。 筆頭は復活ワコールを引っ張る福士加代子である。福士は先の国際千葉で全日本に選ばれ、5区で区間1位となる快走で日本の9連覇に貢献したが、今大会でもその好調さを保っていた。ワコール全盛期の一員であった坂下奈穂美を懸命に追いかけ、志水見千子や尾崎佐知恵などをぶっちぎった走りはすがすがしかった。物怖じしない積極的な走りに若さを感じた。 かってワコールを背負った坂下を現在のワコールを背負う福士が追い、それを中継車のなかで真木和が「怖いモノ知らずの走り」と解説をくわえているさまがおもしろかった。 積水化学の吉田香織も国際千葉では千葉選抜の一員として快走したが、3区のエース区間に起用され、弘山晴美をあっさり振りきり、川上優子や田中めぐみと互角に渡り合った走りはみごと。走るたびに力をつけている。ごく近い将来、福士や吉田は日本を背負うランナーになるだろう。 高橋尚子の欠場は、やはりレースで走れる体調がつくれなかったからだろう。シドニーから帰国後、すっかり人気タレントになってしまった。あれだけマスコミ取材やイベントが集中しては、練習にも集中などできるわけがない。有名税とあきらめてもらうほうかないが、この状況はいつまでもつづくだろう。国内ではほとんど練習に集中できなくなるのが必至で、今後は競技者としてもかなりの制約が出てくるのではないか。本大会のような駅伝には出場することなく、たとえば有森のように一発勝負のマラソンが中心になるとみる。 今大会はレース展開そのものが単調なうえに、超目玉の高橋尚子のドタキャンして、気勢がそがれた観があったが、新勢力の台頭があり、またちがった意味で観どころの多い大会であった。 ☆岐阜・長良川競技場・発着 6区間42.195キロ ☆天候 雨 気温8.2度 湿度93% 北北東の風2.2メートル ☆三井海上 坂下奈穂美、清水由香、渋井陽子、大平美樹、土佐礼子、内藤由嘉
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