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駅伝ひとくちメモ

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第18回 全日本大学女子駅伝対抗選手権大会

▼ 3年連続で駅伝女王が交代 ▼
▼ 城西大が2年ぶり2度目の優勝! ▼


若さと勢いで首位をまもり通した!
城西は6人のうち5人までが1、2年生

 顎があがり、その歪んだ顔からは、あえぎ声がもれてくるようだった。城西大のアンカー・畑山裕美にとって9キロはきわめて長く感じられただろう。立命館大の大山美樹が背後からじりじりと追いあげていた。足音が聞こえるまでには至らなかったが、長居競技場を目前にして、なんども振り返ったのは、タスキをもらってから、背負いつづけてきた重圧のせいだろう。
 追われる者の内面が、まだあどけなさの残る顔に、包みきれずにこぼれていて、面白かった。競技者として相手や周囲にいっさい見せてはならない動揺や緊張を、あれだけ曝しながら、それでも最終的には押しきってしまう。事実、45秒あった貯金がゴール時点では18秒になってしまっていたが、畑山はとうとう首位をまもりぬいた。
 城西大の2年ぶり2度目の制覇は、ひとえに若さあふれる勢いによるものであったということができる。今年の城西は1区の赤羽をのぞいて、5人のランナーはいずれも1、2年生という布陣でのぞんだ。若いランナーたちはいずれもタスキをもらってからの最初の1キロを3分10秒前後のハイペースで飛び出していった。当然のように中盤から後半は大幅にペースダウンした。たとえば4区では後半へばって40秒もあった差を一気に13秒まで詰められている。それでいて一度もトップをゆずることなく粘りぬいたのは、怖いもの知らずの勢いに乗ったというほかはない。


筑波大の連覇を阻んだのは?
やはり駅伝は走ってみなければわからない

 第18回の全日本大学女子駅伝は11月26日(日)、全国の地区代表25校が出場、大阪・長居競技場発着39キロ6区間で争われた。雨が降るといわれていた予報は大きく外れた。からっと晴れあがり、気温は20度をこえ、湿度56%でほとんど無風状態だったというから、ランナーにとっては、絶好の駅伝日和というにはほど遠い天候だったろう。
 筑波大の連覇なるか、城西大の巻き返しはあるのか、それとも最近になって急速に力をつけてきた立命館大があっといわせるか。ほかではかつての王者・京都産業大、進境いちじるしい名城大の一角崩しがあるか。いずれにしてもレースは筑波を中心にして展開されるだろうと見ていた。
 昨年の強い勝ちっぷりからみて、当分は筑波の時代がつづくのではないか。今年は藤永佳子という日本代表クラスの選手が加わった。昨年以上に盤石の体制ができあがったのではないか。1区から突っ走るだろう。筑波の圧勝を予想していたが、駅伝というのものは、やはり走ってみなければ分からない。思いがけない波乱を呼びこんだのは、季節はずれの高温だったのかもしれない。


勝負の流れを決した第1区の攻防
赤羽と藤永のレース観が明暗をわける

 最大のポイントはやはり第1区であった。近年は各チームともに8.5キロと2番目に距離の長い第1区にエースを投入してくる。筑波・藤永佳子、城西・赤羽有紀子、立命館・加納由理といえば学生長距離界の3強である。昨年も赤羽と加納は1区で首位を争ったが、今年は大砲ともいうべき藤永が加わっている。3強対決はレースのゆくえともども最大のみどころであった。
 長居競技場から周回道路に出てところで、早くも3強のサバイバル競争という展開になった。藤永が引っ張るかたちで、1キロ3分6〜7秒、3キロは9分37秒のハイペースで後続をちぎってしまう。
 もっぱらの興味は3強の心理的な闘いにしぼられたが、結果的に勝負どころの読みちがいが明暗をわけた。3キロぐらいまでの赤羽は、故障あがりゆえに自分の調子を探る感じで走っていたはずである。3キロすぎだったと思うが、赤羽がほんの一瞬だが遅れかげんになったときがある。藤永はそのときに躊躇せずに突っ走るべきだった。
 藤永は駆け引きというものを知らないというよりも出来ないランナーである。自己のペースでひたすら先行するほかないのに、ペースダウンして赤羽の追走を許してしまったところに、波乱の目が生じる余地があった。故障あがりゆえに赤羽をハナからナメていたふしもある。
 逆に5.3キロ付近になって赤羽がスパートをかける。立命館の加納はここで振り切られた。藤永は追いすがったが、主導権はすでにして赤羽に手中にあり、6キロ付近からじりじりと差をひろげられてしまった。
 赤羽の快走を生んだのは精神的な強さだろう。今シーズンは故障でほとんど走れなかった。その悔しさが今年いちばんの大レースで生きたのだと思う。


好対照をなす1年生の働き!

 流れが城西大に傾いたのは第2区である。1区を終わって城西大を17秒差で筑波が追いかけ、そこから4秒差で立命館がつづいていた。2区は1年生対決で、城西は平山めぐみ、筑波は吉田郁子、立命館は桝本絵美という顔ぶれであった。
 ほとんど力の差はないのだが、ここで平山が積極は走りで、2位の筑波に46秒、立命館には1分14秒もの大差をつけてしまった。平山の快走は1区の赤羽の勢いにそのまま乗っていった結果というべきか。そういう意味では赤羽有紀子と平山めぐみが優勝の原動力になったということができる。
 城西は46秒あった1〜2区の貯金を4区では、わずか13秒に減らしてしまったが、ここで5区の1年生・村山恵美がまたまた快走、再び45秒とリードをひろげて、立命館、筑波の追撃を断ちきってしまった。
 城西大は2区と5区の勝負どころに起用した2人の1年生がともに区間第1位の走りをみせた。初出場の選手にこれほど気楽に走られては、筑波も立命館も勝目はあろうはずがないのである。


いま一歩足りなかった立命館大
安定した力で上位をおびやかした名城大

 3位に沈んだ筑波は第1区の藤永佳子が誤算だった。藤永で大逃げを打つはずだったのだろうが、逆に16秒も遅れた。秒差はともかく、思いがけない作戦のくるいが、2区以降のランナーに微妙な影響をおよぼした。
 3区・菅野勝子、4区・山嵜麻子、5区・田上麻衣、6区・山中美和子は昨年の優勝メンバーだが、いずれも今回は凡走に終わった。菅野だけはなんとか区間1位をまもったが、わずか6秒しか差を詰められなかった。彼女の実力をもってすれば凡走である。筑波の主力は自分のイメージしたレース展開ではなかったために、とまどってしまい、城西大の1、2年生にさえ負けてしまったのである。
 筑波は学生長距離界ナンバー・ワンを持つゆえに、断然の候補にあげられていたが、皮肉にもその切り札をもつがゆえに敗れ去ったのである。
 2位・立命館の敗因をあげれば、城西とは逆に2区、3区を走った1年生がブレーキになったこと。3区が終わった時点で1分48秒も差をつけられていたものの、4区高橋、最終区の大山の区間賞で最後は18秒差まで追いあげてきている。2区、3区さえうまく乗りきっていれば、おそらく圧勝していただろうと思われる。
 4位の名城大は今年も大健闘である。誰も区間第1位をとったわけではないが、終始2位〜3位をキープしていた。4区ではトップの城西に13秒差と迫り、ゴールでもわずか27秒差である。地味ながら総合力にはあなどれないものがある。


大学女子の長距離界も
競争激化で着実にレベルアップ

 大学女子の駅伝は、高校駅伝と実業団駅伝の谷間に位置していて、いまひとつ精彩を欠いていたが、この2年ばかりは面白くなってきた。4連覇の京産大をめぐって城西大、筑波大が台頭してきて、飛躍的にレベルがあがってきている。
 ひとつは昨今の経済環境のせいである。かつてバブルで浮かれていたころは、企業はやたらと女子陸上チームを持ちたがった。高校生の有望選手はみんな実業団に入った。ところが昨今では重荷になって、リストラの嵐がやってきた。そんななかで高校駅伝のエースクラスでも、卒業後の進路は実業団だけでなく、大学進学も選択肢のひとつになってきた。たとえば藤永佳子のような日本のトップレベルの選手でも、実業団に背を向けて、大学に進む時代になったのである。
 さらにマラソンでは高校陸上よりも大学陸上の選手が大成しているという事実も無視できない。有森祐子にはじまり、シドニーで金メダリストになった高橋尚子、今年の東京国際を制した土佐礼子、ほかにも弘山晴美などなど……。大学陸上から出てきたランナーはいずれも選手生命が長い。わずか24歳にして競技生活を終えた千葉真子とは好対照というべきだろう。
 大学女子の長距離が見直されるという時代の趨勢、高校陸上界にあってトップクラスの選手流入があいまって、にわかに大学女子の駅伝界も競い合って活性化される兆しが現れてきたようである。

☆城西大学
  赤羽有紀子、平山めぐみ、内田早紀、清水圭子、村山恵美、畑山裕美

☆大阪・長居競技場発着の6区間39キロ。(スタート時の天候は晴れ、気温19.6度、湿度56%、南南西の風0.1メートル)


総合成績
順位
チーム名
記 録
1 城西大 2:10:07
2 立命大 2:10:25
3 筑波大 2:11:05
4 名城大 2:11:26
5 京産大 2:12:03
6 東農大 2:13:13
7 順天堂大 2:15:31
8 玉川大 2:15:57
9 福岡大 2:17:46
10 中央大 2:18:39
11 白鴎大 2:18:42
12 名商大 2:18:53
13 亜細亜大 2:19:05
14 日体大 2:20:15
15 福島大 2:20:52
16 佛教大 2:22:32
17 高岡法大 2:22:37
18 中京大 2:22:39
19 大院大 2:22:39
20 大教大 2:22:47
21 薫英女短大 2:23:38
22 神院大 2:25:34
23 鹿児島大 2:29:53
24 美作女大 2:31:11
25 北海道教大 2:32:53


区 間 第 1 位
区間 距離 チーム名 選手名 記録
第1区 08.5 城西大 赤羽有紀子 27:02
第2区 06.2 城西大 平山めぐみ 21:02
第3区 03.8 筑波大 菅野 勝子 12:33
第4区 07.5 立命大 高橋ゆかり 25:00
第5区 04.0 城西大 村山 恵美 13:05
第6区 09.0 立命大 大山 美樹 29:41
      

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