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タスキを待ちながら、ちらと前をゆくランナーとの距離を測る千葉真子、その顔の表情はかつてと同じように凛と張りつめていた。 トップをゆく兵庫の小崎まりとの差は15秒……。7区を終わった時点で首位を走る兵庫と京都の差は30秒とひらいてしまい、勝負の流れは兵庫に傾いたと思われたが、8区の中学生区間で京都が15秒差まで詰めてきた。まさに帰ってきたエース・ランナーに絶好の見せ場を供しようと中学生が踏ん張ったのである。 わずか15秒差……。1万メートル・世界選手権3位、千葉本来の実力をもってすれば完全に射程距離にある。だが、帰ってきた千葉はもはやまったくの別人だった。追ってゆけなくて、差はひろがる一方だった。2K地点ではなんと40秒差となり、この時点で兵庫の初制覇が決した。 千葉は躰も固そうで、走りそのものが終始スムーズさを欠いていた。現在、日本の女子長距離界は選手層が厚い。分厚い選手層こそが高橋尚子に金メダルをもたらした。その高橋尚子でさえも、もはや過去の人といわせるほど消長が激しい世界である。故障で長くレースから遠ざかっていた者が復帰して、直ちに好成績をあげられるほど甘くはない。もはや名前だけでは通用しないのである。 旭化成を退社するという千葉は、選手生活からも退くと発表されていた。だが、千葉自身は旭化成側の引退発表を否定している。その微妙な温度差のちがいに、たとえ日本のトップランナーでも故障で走れなくなれば、いったい、どのような末路をたどるのかを垣間見ることができる。今回はそれゆえに千葉真子の走りに注目していたのだが……。 小崎まりといえば駅伝ではめっぽう強い。いまや油ののりきった選手である。区間25位に沈んだ千葉がかなう相手ではなかった。 千葉真子のほかにもうひとり、帰ってきたランナーがいた。鈴木博美である。独走態勢をつくった小崎まりがトップで西京極の競技場に飛びこんだとき、皮肉にも千葉はその鈴木に並ばれしまった。1分もあった差を詰められたのである。 近年は優勝から遠ざかっている京都の期待を背負って9区に起用された千葉真子だが、結果的に8区からの上昇機運に水をさしてしまった。完全復活にはかなりの時間がかかりそうである。それにしても……。千葉真子にとって競技者としての未来はあるのだろうか。
第19回全国都道府県対抗女子駅伝は、女子駅伝の21世紀をひらくレースにふさわしく、小雪の舞う都大路ではげしいトップ争いを演じた。結果的には実業団、高校生、中学生とかかえる選手団の実力レベルにバラツキがなかった兵庫が初制覇したが、めまぐるしく順位が変動して、なかなか見応えのあるレースであった。 「ふるさと選手制度」の規制条件が緩和されたせいもあって、今回は女子のトップクラスの選手の顔がほとんどそろった。オリンピック組の高橋千恵美、川上優子、田中めぐみなども元気な顔をみせてくれた。さらに福士加代子や吉田香織など今年になって台頭してきた新勢力も加わって、文字通り21世紀を占う大会となった。 トップクラスの顔がそろったせいだろう。昨年よりもレースは活性化され、順位がめまぐるしく入れ替わった。1区は青森、2区は京都、3区は長崎、5区は千葉、6区は兵庫がトップに立つというありさま。総体的にみて、序盤は京都、長崎、千葉、兵庫が激しく競り合い、中盤になって千葉、京都、兵庫にしぼられ、終盤は京都、兵庫のマッチレースの様相になった。 京都と兵庫の対決ムードとなったのは、暮れの全国高校駅伝で覇を争った立命館宇治と須磨学園の中心選手がともに3人も顔をならべているから……。当然といえば当然というべきか。
兵庫は1区に川島亜希子、2区に川島真喜子を配するという万全の体制で上位をキープしたのが中盤から進撃する布石となった。初優勝に貢献した立役者をあげれば、5区〜7区に配した須磨学園の3人、藤岡里奈、田顔朋美、坂本亜沙美であろう。5区の藤岡でトップに4秒差まで迫り、6区の田顔が京都から首位を奪って、逆に2位に26秒差をつけた。7区の坂本はさらに4秒差をひろげ30秒の貯金をつくった。 8区では京都に15秒差まで迫られたものの、3位の長崎までは53秒、4位の千葉までは1分20秒もの大差がついていた。そして京都・千葉真子と兵庫・小崎まりのアンカー勝負になるのである。 兵庫は毎年のように優勝候補にあげられながら、今ひとつ伸びきれずにいた。駅伝王国といわれながら今一歩のところで涙をのんできた。チームを率いてきた西川美代子監督の悔しさ、さらに今大会は選手それぞれがリベンジ精神に燃えていたのではないか。 川島亜希子、真喜子の姉妹は東海銀行の選手だが、今シーズンは全日本で6位と振るわなかった。小崎まりは全日本の関西地区予選でノーリツのアンカーとして優勝テープを切っている。ところが会社の製品事故のせいで出場を辞退しなければならなかった。小崎は同僚の岡本治子とともに走りたくても走れないという悔しさをかかえて本大会に出てきたのである。そして藤岡、田顔、坂本の須磨学園トリオには、暮れの高校駅伝で京都の立命館宇治ときわどく優勝を争って惜敗した悔しさがあった。 監督以下、主力選手たちが、いずれもそれぞれの悔しさをバネにして本大会にのぞんでいた。兵庫の強さはそこから沸き出していたのである。
2位の千葉は1区、2区で出遅れながらも、3区の中学生・渡辺樹里で弾みをつけ、5区の上野理恵でひとたびは首位に立った。そこまでは筋書きどおりだったろうが、6区〜8区で踏ん張れなかったのが敗因だった。 3位の京都は2区・田村育子の快走で早くもトップに立ち、4区の阪田直子も区間賞の走りでつないだ。前半の戦いは予定通りに進んだが、この時点で兵庫にわずか14秒しか上回れなかった。そして今回も最終9区で踏ん張りきれずに泣きをみた。そのかぎりにおいて今回も同じパターンで負けたといえる。 千葉真子は区間25位、当面の相手である兵庫の小崎に1分以上も差をつけられてはどうしようもない。1万メートルを走れる状態ではなかったのである。陣営の起用ミスというほかない。ほかに1万を走れるランナーがいなかったのなら納得できるが、今回はそうではなかった。たとえば6区を走った加納由理である。今シーズン実績のある加納を起用する手はあったのではないか。 昨年の覇者・長崎も前半3区で首位に立ち、8区を終わった時点で3位をキープしていたが、9区で5位に沈んでしまった。実業団を持たないため、やはり1万を走れるコマが1枚足りかったようである。 健闘したのは広島である。4位まで押し上げてきたのは最終区の小鳥田貴子の快走によるものだが、長い区間で軸になる実業団がしっかりしていることろは強い。ほかにも6位の埼玉、7位の宮崎、8位の福岡、いずれも全国大会に出場するような実業団チームが中核をしめている。
最近の駅伝の最大のみどころといえば1区のポジション争いだが、今大会でもエース級のランナーが顔をそろえていた。オリンピック帰りの高橋千恵美、川上優子、川島亜希子など実業団の主力、藤永佳子、赤羽有紀子など大学駅伝のスターたち。 久しぶりに1区に出てきた高橋千恵美がいつもながらの軽快なピッチでひっぱる展開、そして川上優子らがつづいてゆく。そのなかで不気味な余裕をみせていたのは青森から出場したワコールの福士加代子であった。 福士は終始トップをうかがうポジションをキープして、新鋭ながらすでにして駅伝を熟知しているようなレース巧者ぶりを発揮した。千葉国際で区間賞をとり、暮れの全日本実業団でも三井海上の坂下とはげしく第1区の区間賞を争う快走ぶりをみせたが、今大会もまさに絶好調だった。 残り1Kで満を持していた川上優子がスパートしたが、福士はあわてずに追走、そして残り350Mで臆せずにスパート、オリンピック選手をあっさりとちぎってしまった。高校時代はまるで無名だったが、今シーズンにわかに頭角を現した19歳の新鋭・福士加代子、そして9区で埼玉を6位まで押しあげてきた吉田香織などは、きっと新世紀の女子長距離界を背負う一人になるだろう。 実業団選手や大学生と走りながら区間賞をもぎとった4区の阪田直子(京都)、6区の田顔朋美(兵庫)などは高校生ながら、もはや全日本のいユニフォームを着てもおかしくないランナーに育ってきている。高校生でありながら実業団や大学生のトップと一緒に走れるのは、この大会をおいてほかにはない。あこがれのトップランナーに胸を借りる格好のレースとしても貴重な大会である。 実業団のトップクラスではテレビにあまり映らなかったが、2区で16人抜きを演じた埼玉の田中めぐみ、さすがはオリンピック代表という走りだった。そのほかでは5区で千葉をトップに押しあげた上野理恵の力感あふれた走り、10区で広島を4位までもってきた小鳥田貴子の走りもみごとだった。 昨年、この時評で新しく導入された「ふるさと選手制度」なるものが「ファン無視」の規制そのものであると酷評したが、そのせいではないだろうが今回からは多少とも条件が緩和されて、レースそのものの活性化につながったようである。大会がさらに盛りあがるよう、次回からは回数制限も撤廃してほしいと思う。 ☆気候:正午現在 気温6.9度 湿度63% ☆兵庫(川島亜希子、川島真喜子、岸本明子、岡本治子、藤岡里奈、田顔朋美、坂本亜沙美、林さなえ、小崎まり)
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