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全日本実業団女子駅伝でワコールが最後に優勝したのは5年前の第15回大会だった。東日本実業団女子駅伝を語るのに、ワコールの話など関係ないだろうという声なき声が聞こえてきそうだが、これが大いに関係があるのである。 第12回大会まで圧倒的な強さを誇っていたワコールは第13回大会でリクルートに敗れ、第14回大会は予選で勝ちながら、真木和らの故障で本戦を棄権している。そして翌年の第15回大会は満を持して出場、リクルートにリベンジして王座を奪還した。 復活ワコールのエース区間の3区を走ったのが、今大会で三井海上のアンカーをつとめた坂下奈穂美なのである。坂下は長江和美から1位でたすきをもらったが、リクルートの鈴木博美(現・積水化学)に抜かれ、区間5位の走りでひとつ順位を落としている。だがワコールは4区の萩永佳奈子がすぎに奪首、井幡和代、真木和とつないで、そのままゴールを駆けぬけた。 余談ながらシドニーのマラソンで優勝した高橋尚子のデビューもこの大会であった。高橋は4区(4.1キロ)に登場、区間2位の走りをみせたが、区間1位の萩永に抜かれて順位をひとつ落とし、そのままリクルートは敗れ去った。 大レースでの優勝経験のある坂下は安定したベテランの走りをみせ、若手の多い三井海上のなかで、まさにいぶし銀のような輝きを放っていた。
東日本実業団女子駅伝は西の淡路女子駅伝とならんで、12月10日の全日本実業団女子駅伝の予選という位置づけだが、今年は例年にまして盛りあがりを欠いていた。原因のひとつは参加チームの大幅な減少である。例年は20チームぐらいなのに、今年は16チームである。そのうちセイコーインスツルメントはA、Bの2チームを出しているから、実質は15チームである。そのうち14チームに本戦への出場権が与えられるのだから、有力チームは気合いが入っていない。調整の一環として出場してきただけで、最初から本気で戦う気などなかったようである。 酔っぱらいオジさん小出率いる積水軍団は、若手を試すレースという位置づけで、高橋尚子や鈴木博美はサポートに回っていた。NECも若手中心で模様ながめといったところであった。 志水見千子(リクルート)、弘山晴美(資生堂)、高橋千恵美(日本ケミコン)、田中めぐみ(あさひ銀行)ら、シドニー出場組も顔を見せてくれたが、志水をのぞいて他の3人は疲れのせいかいずれも精彩を欠いてきた。名前のある期待の選手の凡走がレースをよけいに冗長なものにしてしまったようである。
女子駅伝の幕開けとはいえ、まるで気のぬけたビールのようになりそうなだった大会を救ったのが三井海上の快走である。主力の渋井陽子、土佐礼子といえば、いままさに油の乗りきった、いわば旬の選手である。二人を軸にしてチームとしても完成されつつある。前評判にたがうことなく、三井海上は終始レースそのものを支配していた。最初から勝ちにきていたのは、このチームぐらいなものだろう。 まず1区に配したルーキーの山本波瑠子が流れをつくった。あの志水見千子に食いさがって、0.1秒差でたすきをつないだ。怯むことなく志水に挑みかかった走りは清々しいものがあった。2区も清水由香が快走、3.7キロという短い区間ながら、2位を30秒近くはなしてしまう。三井海上の独走態勢はつなぎの区間であるこの2区で築かれた。 3区の渋井陽子は1、2区の流れに乗って区間新の爆走、もはや相手は後続チームではなく大会記録だけになってしまったのである。4区のルーキ・大平美樹の走りもひたむきで清新、東京国際マラソンをめざす5区の土佐礼子は力強く迫力があった。昨年あたりからの注目されてきたが、底知れぬ潜在能力を感じさせるランナーである。 3区から6区まで区間賞を独占しただけでなく、3区の渋井と6区の坂下は区間新記録をマーク、まったく危なげがなかった。 3区を走り終えた渋井陽子は6区のサポートに回り、大声で競技場に向かう坂下を励ましていた。渋井のそうした態度そのものがチームがひとつになっていることの証左というべきだろう。
3年前の積水化学がつくった大会記録を1分36秒も更新する大会新記録というオマケつきで初優勝した三井海上は一枚抜けた存在、本戦でもかなり期待できそうである。ほかでは平均年齢20年という若いチームながら4位にきた第一生命がおもしろい存在になるかもしれない。3区のマロットの健闘があったとはいえ、最後まで2位をまもった松下通信も大健闘の部類か。昨年優勝のあさひ銀行は停滞気味で今年はチームに勢いがない。 積水化学は本戦では高橋尚子や鈴木博美を使うのだろうが、若手がいまひとつ育っていない、今回エース区間で試した吉田香織や渡辺芳子にしても伸び悩んでいるとみた。優勝争いにはまだひと味もふた味も不足している。頼みのは小出マジックだけというところ。あさひ銀行もいまひとつ決め手がない。そんなわけで本戦での期待は三井海上だけということになる。 西では東海銀行が今年も健在のようである。さらに沖電気宮崎も候補のひとつ。両雄に新鋭の三井海上が挑戦することになる。若さと勢いでどこまで迫るか。楽しみがひとつ増えた思いがする。 坂下の古巣・ワコールも復活、5年ぶりに岐阜の全日本への出場を決めた。現在のチームにはかっての面影はなく、全く新しく生まれ変わったチームというべきだが、駅伝チームのリストラがつづくなか、古豪の復活を温かくみまもりたい。 シドニー・オリンピックが終わって、いわば今シーズンは新しい節目に向かう踊り場ともいうべきであろう。そういう意味で12月10日の全日本では、21世紀の新しい潮流をつくる勢力の台頭を期待したい。 ☆2000年11月03日 曇り 気温16度 湿度71% 無風 浦和市・埼玉県庁発、上尾市・上尾運動公園着 6区間42.195キロ ☆三井海上(山本波瑠子、清水由香、渋井陽子、大平美樹。土佐礼子、坂下奈穂美)
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