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横浜国際女子駅伝 前回(2000) 前々回(1999) ■プロローグ ■出雲大学駅伝 ■箱根駅伝予選会 ■東日本縦断駅伝 ■全日本大学駅伝 ■東日本実業団女子 ■東日本女子駅伝 ■国際千葉駅伝 ■全日本大学女子駅伝 ■全日本実業団女子 ■全国高校駅伝 ■全日本実業団駅伝 ■箱根駅伝 ■都道府県女子駅伝 ■都道府県男子駅伝 ■エピローグ
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横浜国際駅伝は今年も10カ国17チームが参加して行われた。世紀越えのシーズン最後の駅伝である。女子のロードは名古屋のマラソンを残しているが、今シーズンを振り返ると、女子の長距離界にとって歴史にのこる1年であったということができる。高橋尚子の金メダルにつづいて、秋には土佐礼子、渋井陽子というマラソンのニュー・スターがとびだしてきた。いずれも駅伝から育ち、世界で戦えるランナーに翔び立った。 昨年は思いがけずケニアに足もとをすくわれた日本は、いかにもシーズンをしめくくる大会らしく、豪華な顔ぶれをそろえてきた。上野理恵、高橋千恵美、吉田香織、川上優子、渋井陽子、福士加代子……。オリンピック選手2人、そしてあとはいずれも今シーズンの駅伝で活躍した選手たちばかりで、現状ではベストに近い顔ぶれである。 上げ底なし……。今年のJapanは正味の「全日本」チームが編成された。過去の歴史をふりかえってもこれほどスキのない布陣を組めた年はなかった。6連覇中のときよりも質的レベルからみても、はるかに強力なチーム編成である。万全を期して昨年のリベンジをねらったのだろうが、結果は勝ちにいって、負ける……という、なんとも皮肉な結果に終わってしまった。
勝負はあっけなかった。3区を終わった時点で、レースの大勢はほとんど決してしまい、最近の駅伝にしてはめずらしく大味で緊張感のとぼしいレースとなってしまった。その原因は日本、ルーマニア、中国という主力がそろって息切れしてしまったせいである。 旧ソ連時代もふくめて出場回数18回を数えるロシアが、2区でトップに立ち、区間新記録2つをふくめ、5区間で区間第1位を占めるという圧倒的な強さを発揮して、7年ぶり6度目の優勝を果たした。優勝タイムは2時間12分50秒……。日本が99年につくった大会記録2時間15分6秒を2分16秒も更新するというオマケつきである。 外国チームはノセると怖い。昨年はケニアが、今年はロシアが2区で「その気」になって、一気に最後まで行ってしまった。 ロシアをその気にさせたのが2区で伸びを欠いた日本と1区で大きく出遅れたルーマニアだろう。 冷静にみればロシアの優勝は実力どおりというべきだろう。個々の選手のトラックの記録だけでみれば、ロシアは日本を大きく上回っている。過去においてロシアは十分に優勝できる布陣でのぞみながら、大崩するケースが多かっただけに今回もマユにツバしてみる向きも多かった。ところが今年は誰ひとりブレーキすることもなく、各選手が持ちタイムどおりにきっちりと走った。文句なしの圧勝である。チームワークで勝負する日本といえども、つけいる隙がなかった。
ポイントは2区と3区にあった。1区では15秒遅れの6位だったロシアは2区のリュドミラ・ペトロワ(32)が一気に先頭に立った。3区のエレーナ・ザドロジュナヤ(23)は18分24秒という区間新の快走、ここで後続の日本に1分16秒もの大差をつけてしまう。3位中国とは1分39秒、4位ルーマニアとは2分12秒もの大差がついてしまい、ロシアの優位は不動のものになってしまったのである。 今年のロシアの選手たちの走りはいずれも安定していた。4区のタチアナ・トマチョワ(25)はシドニー五輪5000Mで13位の実績を持つ。堅実な走りで2位の日本との差をじりじりとひろげた。5区のリディア・グリゴリエワ(26)は雪混じりの雨が降るなか、途中何度も右脇腹を抑えるアクシデントに見舞わながらも、さすがはシドニー五輪10000M9位の実力者ぶりを発揮し、1分50秒まで差をひろげて、最終6区のオルガ・エゴロワ(28)にタスキを繋いだ。エゴロワはなんと15分04秒、区間新の快走でゴールに飛び込んだとときには2位日本との差は3分23秒までひろがっていた。 今回のロシア選手たち、中距離ランナーのように頭から突っ込んで、最後までバテなかった。堅実で力強い走りはみごとというほかない。
日本は1区の上野理恵が残り1キロでスパート、近畿選抜と中国を一気に置き去りにした闘志あふれる走りで流れに乗るかと思われたが、2区の高橋千恵美で失速してしまった。ロシアのペトロワに負けたのはしかたがないが、近畿選抜の西村みゆきにまで交わされたのは誤算というほうかないだろう。同じ高橋でも千恵美のほうは今シーズン不調だったが、とうとう最後まで本来の力を発揮できなかったようである。 ロシアと日本、中国、ルーマニア……。2区のエースランナーの出来、不出来が最終的に明暗を分けた。ルーマニアも2区のランナーが不調で順位こそ4位まで上げてきたが、タイム的には逆にトップからの差を4秒もひろげられ、優勝争いから脱落した。中国も鄭桂霞が伸びきれなかった。ここで1分近くもマイナスの貯金をかかえてしまい、早くも圏外に去っている。優勝候補の3強はいずれも32歳のママさんランナー・ペトロアに粉砕されたのである。
敗れはしたが、日本チームもタイム的にみれば、まずまずの成績である。ロシアが強すぎたのである。個々のランナーはそれなりによく戦っている。特に注目すべきは1ヶ月前に大阪国際マラソンで初マラソン世界最高をマークした渋井陽子が出場してきたことである。 土佐礼子はともかく、渋井はメンバー登録されてくるが、おそらく出てこないだろう……とみていた。大阪国際からわずか1カ月しか経っていないからである。日本選手の場合、総じて目標とするレースに一発勝負をかけてくる傾向がある。ぎりぎりまで体も心もしぼりこんで文字通り渾身のパワーにすべてをゆだねる。だから、かりに勝ったとしても、心身ともにダメージが大きい。一発にすべてをかけ、たとえ好成績をあげても、それで選手生命を終えてしまうケースすらある。たとえば真木和、小鴨由水のように……。 外国選手の場合はちがう。オリンピックのマラソンで勝っても、ほとんど間をおかずにレースに出てくる。日本人はそんな芸当は出来ないのである。たとえば走るのが好きでたまらない高橋尚子でさえも、暮れの実業団駅伝には出場できるコンディションを保持できなかった。日本人離れしたタフさをもつ彼女でさえも、ランナーとして肉体的にも精神的にも回復していなかったのである。 2時間23分11秒……。渋井はとてつもないタイムで初マラソンを制しながら、1カ月後の今大会にケロッとした顔で出てきた。10キロ=32分37秒(区間3位)は平凡なタイムだが、まずまずというところ。若さの勢いといえばそれまでだが、渋井には従来の日本人ランナーには欠けていた骨太さというものを感じる。 渋井・大ブレイクの伏線は昨年の札幌国際ハーフマラソン(7月2日)にあるとみた。同大会はあの高橋尚子がボルダーからわざわざ帰国して出場したが、渋井も出場しているのである。レースはオリンピックを目前にした高橋尚子の圧勝に終わっている。そこから高橋はシドニーに翔び、頂点までかけぬけた。 札幌国際ハーフの前半から中盤にかけて、注目のランナー・高橋に執拗に食らいついていたランナーがひとりいた。それが渋井陽子なのである。最終的には3分ほど置いてゆかれたが、渋井はただひとり高橋に果敢に勝負を挑んでいた。 あの札幌国際で渋井は高橋尚子と走って、ランナーとして眼をひらかれた。渋井の現在にいたる道筋は、そこから始まったのではないかと思う。 両者がこんど顔を合わせるときが楽しみである。金メダリストといえども、もはや気をぬけないほど実力は拮抗しているだろう。 ☆ロシア(クレムレワ、ペトロワ、ザドロジュナヤ、トマチョワ、グリゴリエワ、エゴロワ)
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