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駅伝シーズンの最後を飾る「2000横浜国際女子駅伝」は2月28日(日)、今年も地域選抜7チームを含む17チームで6区間(42.195キロ)を争った。横浜女子といえば、何年かまえの雪のなかのレースが強く印象に残っている。今年はよく晴れわたり、気温11度、湿度38%、北東の風0.6メートルという絶好の条件にめぐまれ、最初からスピードレースの様相であった。 総合タイムこそ大会新記録を下回ったが、2区、3区、4区、6区で総計7つの区間新記録が出ている。風もなくスピードの生きる展開となって、それが各チームの胸算用を微妙に狂わせる結果になったようである。 オーダー編成からみるかぎり、優勝候補の筆頭は馬軍団3人を擁する中国、日本とルーマニアが追うというような形勢だろうとみていた。ところが1区で中国が1分04秒遅れの13位に沈んで圏外に去り、ケニア、日本、ルーマニア、近畿選抜の4チームにしぼられてしまうとい意外な展開で幕明けた。ロシアも1分22秒遅れの13位と出遅れて最終的に8位まで押し上げるのがやっとというありさまであった。 眼中になかったケニアに「あれよ、あれよ」と逃げ切られ、あっさり勝たれてみると、さすがは長距離王国ケニア、選手層の厚さに、ただ驚くばかりである。2区のいデレバは別格だが、あとは5000Mで16分台の選手ばかりである。それゆえにバカにしていたが、スピードの生きる展開になって形勢は一転したようである。各選手に可能性をひめた潜在能力をフルに発揮されてはどうしようもない。
6連覇をねらった日本は山口衛里をのぞいて、今年は成長株の若手を起用してきた。野口みずき、大越一恵、渋井陽子は新鮮味あって、期待と不安の相半ばするスリル満点の演出であった。アンカーの山口衛里はテレビ中継の人寄せパンダなのだから、多くを期待するのは酷というもの。マラソンランナーに5キロを走らせるのだから、顔見せ興業以上のなにものでもない。要するに山口ぬきの若手5人でトップを奪うほか日本には勝機はなかったのである。 誤算は2区の大越一恵だが、期待が大きかっただけに落差が目立つ結果になった。32分台で走っているから大ブレーキとは言えないだろう。ブレ幅の範囲を逸脱したわけではなく、そういう意味で、現在の実力はあんなものかもしれない。むしろ近畿選抜で出場した同僚の西村みゆきが走りすぎた。そのせいで大越はワリをくってしまったといえる。 中国は1区のつまずきが大きかったが、馬軍団の3人にしても3区の季季をのぞいて、見かけ倒しに終わった。いったいヤル気があったのか。何のために日本まで出てきたのか。出場動機すら不明である。第一に前日の800メートルを走った林那を重要な1区に起用するなど、レースそのものをナメきっている。
健闘したのは近畿選抜である。1区・田村育子(グローバリー)、2区・西村みゆき(ダイハツ)3区・藤岡里奈(須磨学園)の快走で2区でトップを奪い、3区までは優勝戦線に顔を出していた。いずれの走者も区間3位以内で走るという堅実さであった。とくに西村みゆきの走りは本大会いちばんの収穫ではなかったか。 本大会いちばんの見どころをあげれば、やはりエース区間の2区(10キロ)だったろう。トップをゆく大越(日本)を9秒差でルーマニアのグラハム、13秒差で近畿選抜の西村みゆきが追う展開ではじまったが、25秒差でタスキをうけたケニアのデレバが4.4キロであっさりトップを奪ってしまう。大きなストライドで走るフォームはいかにも迫力があった。ぼつちぎりの独走かと思われたが、いちど交わされた近畿の西村みゆきがじりじりと追ってきて7キロでとうとうトップに立ってしまう。大きなストライドのデレバ、ピッチをつみかさねる西村、走法があまりにも対照的で見応えがあった。14秒差で区間賞こそ逃したが、デレバにトップを譲らなかった西村の走りは見事、その勝負強さになみなみならぬものがあるとみた。
日本選手のなかでは1区の野口みずき、3区の小鳥田貴子、4区の渋井陽子の走りが印象にのこった。小鳥田と渋井はともに区間新の快走だったが区間1位になれなかったのは不運というほかないだろう。野口みずきは今季になって急成長したランナーのひとりだが、その積極的にまえに出るレースぶりは実にさわやかであった。最優秀選手の一人には小鳥田貴子が選ばれたが、時評子の私は文句なしに野口をあげたい。もし野口の快走がなかつたなら日本チームの2位もなかった。おそらく3位か4位に沈んでいただろうと思う。 それにしても……。世界はひろい。6連覇をねらった日本がよもやケニアごときに足もとをすくわれるとは夢にも思わなかった。ケニアをはじめアフリカにはまだまだ潜在能力を秘めた選手が隠れているような気がする。オリンピックのマラソンでは思いがけない選手がとびだしてきそうな予感がする。シドニーに送る日本の女子マラソンの布陣は史上最強というふれこみだが、第2、第3のロルーペが現れて銅メダルにもとどかないという場面もあるやもしれない。ケニアの優勝はそんな不吉な予感をはこんできたように思えてならない。
区間第1位
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