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駅伝ファンのSAIJOさんのホームページ「SAIJO'S箱根駅伝・金利HOMEPAGE」(http://plaza9.mbn.or.jp/~01saijo/)は、箱根駅伝を中心にして、駅伝関係の記録・データ、写真などが掲載されていて、図書館のように、ときどき拝見させていただいている。先日アクセスしたら、「第76回箱根駅伝まで 24 日」と表示されていた。あれッ、もうそんな時節なのか……と、あらためて今年も残り少なくなっている現実を思い知った。そういえば10日には「箱根」のチームエントリーが行われ、各校14人の登録選手が発表されている。 10月10日から始まった今年度の駅伝も、いよいよクライマックスにさしかかろうとしている。この1カ月の間にビッグレースが4つもひかえているのである。12月12日(日)に行われた「全日本実業団対抗駅伝大会」(岐阜・長良川競技場発着 6区間42.195キロ)は、さしずめその第1弾というべきだろう。 女子駅伝はこのところ毎年のように勢力地図が大きく書き換えられている。積水化学の小出監督が「名前だけでは勝てない」というように、年を追うごとに選手たちのレベルが急速にレベルアップして、ゴマカシが効かなくなった。スポーツ記事の常套句でいえば、「戦国駅伝」の様相がこの2〜3年つづいている。各チーム実力接近で、今年も最後まで見応えのある大会だった。 今年は優勝のゆくえが終盤まで混沌としていた。4区を終わった時点でトップのスズキから45秒以内に10チームも入っていた。最長区間の5区終了時点でも、まだ優勝のゆくえは見えてこない。30秒差になかにひしめきあうスズキ、沖電気宮崎、東海銀行、積水化学の4チームにしぼられた感があったが、スズキをのぞく「女子駅伝3強」のいずれにも、まだチャンスはあったからである。 1〜2区はあさひ銀行、3区は日立、4〜5区はスズキがトップに立った。東海銀行、積水化学、沖電気宮崎の3強はいずれも後方に待機して、中盤から少しずつ追いあげる。近年まれにみる面白い展開であった。結果的に沖電気宮崎が最終区で逆転、2年ぶり3度目の優勝を果たすのだが、初めてトップに立ったのは残り4キロ付近からであった。
優勝した沖電気宮崎は1区でトップと34秒差の11位、2区は8位に上がったが、トップとは40秒差とかなり出遅れている。3区の岡本幸子が29秒差(7位)まで詰めたのは予定通りというところ。優勝の下地をつくったのは4区の山元愛だろう。4.1キロのつなぎ区間ながら3人抜きの4位、トップまで9秒差まで押しあげた。区間1位こそ逃したが、その走りは燻し銀のように光っている。川上優子は今回も最長の5区に出てきたが、良くも悪くもない普通の出来、トップに2秒差まで追いすがるにとどまった。彼女の実力を思えば凡走の部類だろう。巧走で区間1位こそ確保したが、不満の残る走りであった。エースで奪首できないままに、すべては6区・斉藤祐子にゆだねられたのである。 沖電気宮崎の勝因をあげれば、前半の1〜2区にあえて目をつむり、中距離ランナーの斉藤をアンカーに持ってきた作戦が図に当たったというべきだろう。斉藤は3キロ手前で大石友恵(スズキ)をあっさり振り切り、昨年と同じく逆転をねらう川嶋亜紀子(東海銀行)の追撃も断ち切ってしまった。今回の殊勲者をあげれば、斉藤祐子と山元愛の2人になるだろう。 連覇を逸した東海銀行は、むしろ5区を終わった時点で、最も優勝に近いところにいた。沖電気と同じように1区では10位と出遅れたが、4区の菅沙希世が7人抜きでトップと3秒差の2位まであがってくる。流れはこの時点で東海に傾きかけていた。爆走した新人・菅の勢いを受け継いで、5区の大南博美は一気にトップに突きぬけるかに思われたが、逆に川上優子と鄭桂霞(スズキ)の競り合いに弾きとばされてしまった。勢いに水を差すかたちになったが、それでもトップとはわずか20差、アンカー・川嶋亜紀子の力をもってすれば十分に逆転できるポジションにあったのである。 積水化学は伸びきれずに今年も4位に終わった。たとえ高橋尚子が完調だったとしても、優勝するには1枚足りないようである。このチームにとって〈1枚の壁〉が存外厚くて、それを突破するには、かなりの時間がかかりそうな気配である。 大健闘はスズキだろう。昨年16位から今年は最初から最後までトップグループに食らいついて、あわやと思わせる一瞬もあった。積水を押さえての3位はみごとな粘りというほかない。意外に不振だったのは京セラ、NEC、ノーリツといったところか。
女子の駅伝日本一を決める大会らしく、出場選手の顔ぶれもすごかった。世界選手権出場の田中めぐみ、志水見千子、川上優子、高橋千恵美、弘山晴美、浅利純子、市河麻由美、さらに先日の東京マラソンで好記録をマークした山口衛里、復活をめざす高橋尚子……、女子長距離界の第一線の選手たちがすべて顔をみせたのである。トップランナーたちの顔見せレースとしても見どころ十分だった。 圧巻は今年もエース級のランナーがそろった1区、3区、5区であった。第1区は宮崎安澄(積水化学)が3キロ9分17秒という驚異的なハイペースで引っ張った。5キロでは宮崎と田中めぐみ(あさひ銀行)にマッチレースになりつつあったが、今シーズン急成長の熊坂香織(第一生命)が追ってきた。ベテラン・新鋭3人によるスパート合戦は迫力があった。 3区ではトップの堤文子(あさひ銀行)を、上野理恵(積水化学)、志水見千子(リクルート)、大南博美(東海銀行)。小鳥田貴子(デオデオ)、岡本幸子(沖電気宮崎)、高橋千恵美(日本ケミコン)、松岡理恵(ノーリツ)という日本代表クラスの選手たちがダンゴ状態で追いかけてくる。その大集団を日立のエスタ・ワンジロと松岡範子(スズキ)が音もなく接近、5.6キロ地点であっさりトップに立ってしまう。前半押さえて中盤からのびてくる。巧みな日本語をあやつるエスタは駅伝の本家・日本に学んで年ごとに強くなる。個性ある走りで今年も見せ場を創ってくれた。 5区の前半はめまぐるしかった。トップをゆく鄭桂霞(スズキ)から3秒遅れでタスキを受けとった大南博美(東海銀行)は、2.2キロ地点でひとたびトップに立ったが、3キロ手前で川上優子(沖電気宮崎)が追ってきて3人が集団になる。10秒遅れで6位からあがってきた高橋尚子が、あの独特の手の振りで追ってくる。そういう形勢がピタリと終盤まで崩れなかったのは驚異である。トップランナーたちの火花散る力の対決をみる思いで感動的なシーンだった。迫力ある映像をつくった画面のフレームワークもみごとだった。
今回は新顔の活躍も目立った。2区で区間1位の峰島奈都美は富士銀行を14位から一気に6位まで押しあげて、最終8位に残る土台をきずいた。3区ではスズキの松岡範子である。あのエスタ・ワンジロに食らいついて離れなかったスピードには驚嘆させられた。背の高いワンジロに終始よりそう小柄な松岡、まるでコバン鮫にようでおもしろかった。4区の菅沙希世(東海銀行)については、すでに触れたが、怖い者知らずのルーキというべきか。東海銀行が2位に残ったのは彼女の働きである。5区では8人抜きで10まで上がってきたダイハツの大越一恵だろう。柔らかな大きな走りに新鮮さを感じた。 昔の名前で出ているランナーでは、麓みどり(デオデオ)の快走に拍手を送りたい。彼女がトップランナーとして活躍したのは、もう10年ぐらいまえである。消長のはげしい女子ランナーのなかで、現在も走りつづけているだけでも驚異なのに、なんと最終区で区間第1位を獲得したのである。
高橋尚子が久しぶりにレースに出場した。ファンのひとりとして喜びたいと思う。小出監督が「名前では勝てない」といったように、結果は区間4位に終わった。昨年は区間賞の快走だっただけに、観ていてもどかしさを感じた。復活の舞台に故郷の岐阜を選んだのは筋書き通りだろうが、完調でない高橋をあえて本大会に出す必要があったのだろうか。左足の故障が癒えたと思ったら、こんどは左手首を骨折、10日までにギブスがとれたばかりで、3〜4割の仕上がりだと本人が言っている。 観戦者としては高橋が出てきてくれることは嬉しい。けれども出場させるのなら、完調の状態にすべきである。高橋は今や世界ナンバー1の潜在能力を持つマラソンランナーである。シドニーではぶっちぎりでゴールする。とほうもない夢をファンに抱かせてくれる稀有なランナーである。積水化学もそろそろ優勝という勲章がほしかったのかもしれないけれども、日本のスーパーエースに〈痛さ〉をこらえて走らせるようなケチなまねをしないで、名古屋国際一本に専念させてやるべきではなかったか。 完調でなくても、あれだけの走りができた……。周囲は「涙の復活」なんてはやし立てている。だが本人は不満だらけだろう。プライドをずたずたにされた悔しさを名古屋で晴らすことができるか。シドニーへの切符はあと1枚しかない。名古屋国際は崖っぷちに立つ高橋尚子にとって、真価を問われる苛酷なレースになる。 それはともかく……。今大会はベテランも新人も、それぞれの個性を活かしたユニークな走りを見せてくれた。日本女子の長距離陣は、ほんとうの意味で層が厚くなった。今は自信を持って、そう言いきることができる。 ☆沖電気宮崎(上妻知美、疋田みゆき、岡本幸子、山元愛、川上優子、斉藤祐子) 総合成績
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