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男子50回、女子は11回目を数える全国高校駅伝競走大会は12月26日に行われたが、1900年代の最後を飾る駅伝レースにふさわしく、ともに白熱した展開で、最後までテレビの前を離れられなかった。朝がたは小雪、日中も時雨模様、気温は7度というから、いかにも京都らしい肌寒い天候のなかを男子58校、女子47校が火花散る競り合いをくりひろげた。 今年は男女ともに最終区に思いがけないドラマが待ち受けていた。男女ともにトラック勝負というのは大会史上はじめてではなかろうか。まれにみる面白い大会だったが、心残りがひとつだけある。女子の部で立命館宇治が高校ナンバー1のエースを故障で欠いたことである。それは評者の私が京都出身だからとうだけではない。宇治が万全の状態で出場していたら、レース全体がさらに盛りあがっただろうと思うからである。
男子は大混戦……というのが大会前の下馬評だったが、現実に4区を終わった時点でも優勝のゆくえは混沌としていた。第1区はおおかたの予想どうりに仙台育英のワイナイナが3年連続区間1位の快走、西脇工や大牟田など主力どころが1分差あまりで付けたのも予想どおりの展開だった。2区以降は西脇工、世羅、埼玉栄がトップに肉迫、4区を終わった時点ではトップに立った西脇工から21秒差に仙台育英、埼玉、世羅、佐久長聖がはいるというダンゴ状態になった。 優勝のゆくえが絞られてきたのは6区終了時点である。仙台育英と西脇工業はほぼ同時にタスキ渡し、40秒差で埼玉栄、43秒差であの佐藤清治を持つ佐久長聖がつづく。ここでトップをゆく仙台育英、西脇工を佐久長聖がどこで捕らえるか……という構図がみえてきたのである。 そういう意味で最大のみどころは、やはり最終区だったろう。トップ争いをする西脇工の野々村寛典と仙台育英の江村健太郎を佐久長聖の佐藤清治が埼玉栄をかわして激しく追いあげる。背後のオオカミに怯えながら、ひたすらに逃げる野々村と江村……。何度も後ろをふりかえる野々村、ひたすら前だけを見つめて粘る江村……。前半は3人の心理的な駆け引きまでも画面から透けてみえてくるようで興味がつきなかった。 佐藤は残り1キロで20秒差までくるのがせいいっぱい、最終的には前2人のトラック勝負にもつれこむ。渡辺高夫監督は「トラックまできたら勝てると思っていた」と答えているが、西脇工の野々村にしてみれば、まさか仙台育英に遅れをとるとは考えていなかっただろう。タスキを受けてから終始佐藤清治を相手に走っていた。併走する江村は見えていなかった。最後の直線で江村は満を持していたかのように猛然とスパート、そのとき後門のオオカミに神経をすりへらしていた野々村には、もう追う余力はなかった。
仙台育英の勝因には渡辺高夫監督の就任をあげておこう。高校までの競技スポーツは指導者しだいである。たかが高校生である。指導者のありかたによって、選手たちは大きく変わるという。渡辺監督は「原点にもどること……」に徹したというが、仙台育英の各ランナーたちは誰もが懸命に走っていた。ひたむきな姿勢が爽やかに感じられた。例年ならワイナイナの貯金を使い果たしたら、ずるずる落ちてだけなのだが、今年は2区以降のランナーで優勝をもぎとった。 仙台育英のランナーたちは、ひとたび追いつかれても、けっして離されはしない。粘り強く追っかけて、タスキを渡す直前でスパートをかける。なかでも4区の佐々木陽介の走りが強く印象に残った。3位でタスキを受けたが4位の埼玉栄に交わされてしまう。たがけっして離されることなく、併走しながら2位の世羅に追いつき、集団で西脇工を追っかける。だが抜け出したのは佐々木だった。7キロ付近では前をゆく西脇工の田中洋平をとらえ、最後はほとんど併走状態で5区につないだ。6区の村上渉がトップを奪ったのは、佐々木の粘走によるものだと思う。仙台育英のMVPは佐々木陽介である。
西脇工は4区までは優勝の最短距離にいた。3区でトップに立ったのは筋書どおりだっただろう。そこまでは、さすが……と思わせるレースぶりだった。敗因をあげれば4区で突っ放せなかったことである。さらに……。仙台育英を甘くみすぎていた。眼下の敵・仙台育英ではなく、佐藤清治の影を相手にレースをして、足もとをすくわれたという感が強い。それにしても……。西脇工にとっては記念大会は鬼門のようだ。前回40回大会は県予選で勝った報徳学園にトラック勝負で敗れているのである。同じ負けるにしてもトラック勝負というのは、いかにも皮肉というほかはない。 大牟田は3区までは圏内につけていたが、4区の及川賢人のブレーキで失速した。候補の一角・鎮西、九州学院はともに1区の出遅れで圏外に去った。健闘したのは6位の美馬商というところ。報徳学園も1区の出遅れがたたり、最終的には地力で5位まで押しあげてきたが、10年前の兵庫県対決には持ちこめなかった。
女子に関するかぎり、今回は1区ですべてだった。昨年同様に今年も諫早の藤永佳子が飛び出した。須磨学園の藤岡里奈と筑紫女学園の長尾育子が追っかける展開で始まった。3人が後続をぶっちぎり、優勝のゆくえはこの3強にしぼられた。2区以降は終始3強の順位が入れ替わり、最終区にもつれこむのである。4区を終わった段階で、首位は須磨学園、2秒差で筑紫女学園、6秒差で諫早が追う。優勝のゆくえはまだ混沌としていた。 須磨学園・北山由美子と筑紫女学園・池田麻美の死力を尽くしたアンカー勝負。それが最大の見どころだった。終始、前へ前へと出る北山、追いすがる池田……、2人の激しいバトルに諫早の大渡ははねとばされてしまったようである。競技場にもつれこんでも、北山が常に積極的に前に出る。だが、最終的には中距離ランナー・池田のスピードが決め手になった。ゴール直前でトップに立った1年生の池田が両手をあげてテープを切った。 須磨学園・主将の北山はゴールの瞬間に膝を折ったが、爽やかな闘いぶりだった。泣き崩れる主将の悔しさをどのように生かせるか。須磨女から須磨学園へと名を変えた同校の新しい歴史がそこから育まれるだろう。須磨学園は選手層の厚さでは随一、1区で藤永に肉迫した藤岡はまだ2年生、2区では1年生の他顔朋美が区間第1位の快走で首位を奪った。来年も確実に優勝候補の一角を占めるだろう。 。
立命館宇治、諫早、筑紫女学園……、つまり阪田直子、藤永佳子、長尾育子という高校長距離界を代表する3強によって優勝争いが展開されるだろう。1区での3強対決が今年の最大の呼び物であった。ところが阪田直子がにわかに故障欠場、それが他の有力校に微妙な影響をもたらしたとみる。 結論から先に言おう。阪田の欠場によって諫早の手から「勝ち」がこぼれ、筑紫女学園に勝利をもたらした。ちょっと、うがちすぎるだろうか。実力伯仲の諫早と筑紫女学園の明暗を分けたのは、阪田の欠場にあるように私は思うのである。 つまり……。こういうことである。本来なら1区は藤永と阪田のマッチレースになるのが眼に見えている。そうなれば長尾や藤岡は2人ともマークしてゆかねばならない。ところが阪田がいなければ藤永ひとりをマークすればいい。藤岡がハナから藤永を追ったのはそういう背景からだろう。藤岡がゆくなら……というわけで長尾もメンツにかけて負けら七位。藤永は思いがけず2人に絡まれて、区間新を出したものの、わずか20秒しか貯金できなかった。それが最終的に諫早の誤算になった。 もし阪田が出場していたら、藤永とのツバ競り合いは相当はげしくなっただろうと思われる。両者ともに18分台で争い、筑紫女学園や須磨学園に大差をつけていたかもしれない。諫早にはそういう展開になったほうが優勝の確率は高かったはずである。阪田欠場で藤永は楽なレース展開になったが、自身の走りはまずまずでもチームの優勝にはマイナス効果になってしまった。結果として、後半重視の筑紫女学園や須磨学園の餌食になってしまったのである。
立命館宇治は優勝に最も至近距離にいたが、エース阪田の故障というレース以前の問題でまたしてもチャンスをのがした。たしか数年前にも優勝候補にあげられながら主力の故障で沈んでいる。同じ失敗を2度も繰り返す。前回の教訓を生かせなかったのは、指導者のありかたに問題があるのだろう。 阪田を欠いた立命館宇治は予想通りにスタートでもたついた。1区では桝本絵美が18位と大きく出遅れている。桝本は1分も遅れをとるランナーではないのだが、やはり気負いすぎたのだろう。それでも最終4位は健闘の部類、地力はさすがというべきか。昨年優勝の田村もエース阿部の故障欠場が影響したのか。13位まで押しあげるのがやっとというありさまだった。 阪田直子にはもう1年ある。初めて経験した挫折を乗り越え、さらに逞しくなってもどってきてほしい。20世紀最後の駅伝レースとなる来年の本大会では、悔しさをのりこえた須磨学園の藤岡里奈とともに大会史上に残る競り合いを演じてほしい。 ☆仙台育英(ワイナイナ、門間滋、木村知徳、佐々木陽介、村上歩、河村論、江村健太郎) ☆筑紫学園(長尾育子、山中洋美、田橋里花、有田真弓、池田麻美)
女子・総合成績
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